夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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37話「名付けと早朝の訪問者」

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 ニケの頭を撫でる、オーガ・リック。
 その触手をどけるニケ。

「こいつにも、名前決めてあげないとな」

 触手でニケに触れようとするオーガ・リックを横目に、ミーチェは問いかけた。

「だいぶ、懐かれておるな」

 そういいながら、ミーチェは焚き火の傍に腰をかけた。
 ニケも、ミーチェの近くへと寄るとオーガ・リックが、触手を足にしてこちらへと近づいてきた。

「そこで待ってて」

 ニケが、そういうとオーガ・リックは身体を地に着けた。

「師匠。オーガ・リックで歩くの……」

「あぁ。あいつらは、餌を求めて移動するのだ」

 稀に巨木にくっついているぞっと、ミーチェは言った。

「移動できたんだな」

 オーガ・リックを見上げなら、ニケは呟いた。

「そうだ、名前……」

 ニケは、頭を掻きながらしばらく考え込んだ。

「んー。オーガ・リックだから『ガリィ』で、いいかな」

「ガリィか、悪くないんじゃないか?」

 魔道書を読んでいたミーチェが、そう言いながら顔を上げた。
 ガリィは、相変わらず触手をうねうねしていた。

「それにしても、オーガ・リックと契約するものがおるとはな」

 ミーチェは、苦笑いを浮かべながら言った。

「どういうこと?」

「そやつは、食人草なのだ。人々から、嫌われてもしょうがないだろう?」

「あぁ。そういうことか」

 ニケは、小さく頷きながらガリィのもとへと歩み寄った。

「これからよろしくな。ガリィ」

 ガリィの花の部分に手を添えると、ニケは小さく囁いた。
 身体を撫でられるのがくすぐったいのだろうか、ガリィは身体を小刻みに動かしていた。

「さて、そろそろ寝るか」

 ミーチェは、そう言うと魔道書を枕にして寝転がった。
 寝転がるミーチェの傍に、シロがゆっくりと歩いてきた。

「シロ、一緒に寝るか?」

 シロは、小さく咆えるとミーチェの傍まで行った。
 ミーチェに枕にされるシロ。

「ニケ。私たちは先に寝るから、後は頼んだ」

「え、何を頼まれたの俺」

 突然声をかけられ、驚くニケ。
 満足そうに寝転がるシロを、すこし引き気味見るニケ。

「ガリィ。俺も寝るから、見張り頼める?」

 ニケが、そう言うとガリィは触手でニケの頭を撫でた。

「なんか、立場が逆な気がするなぁ」

 ニケはそういうと、焚き火に薪を放り込むと横になった。
 見上げる星空は、初日に見たときより綺麗に見えた。相変わらず月は二つだ。

「ここまでくるに、いろいろとあったな」

 仰向けのまま、月を掴むかのように右手を伸ばした。
 少しして、ニケは右手を下ろした。

「いつも見てた星空と違うと、やっぱ異世界に来たって実感するな」

 星空を眺めながら、ニケは眠りへとついた……

 あたりがまだ暗闇のなか、鎧の音がこだまする。
 カシャン、カシャン。
 その音は、次第に近くなってきた。

「なんの音だ……?」

 ミーチェは、目を覚ました。
 寝てからどれくらい経ったことか、星空は薄っすらと明るくなっていた。
 カシャン、カシャン。
 聞こえる音の主を探そうと、立ち上がるミーチェ。
 枕にされていたシロは、ミーチェが立ち上がると同時に目を覚ます。

「どこからだ?」

 音の主は未だに見えない、ミーチェは石作りの橋へと出るとその正体を知る。
 橋の上に立っていたのは、錆びた鎧を着たアンデットだった。

「なぜ、こんなところに」

 目の前にいる、アンデットの後ろにアンデットの群れが見える。

「これは、まずいな。ニケ!おきろ!」

 ミーチェは、ニケの傍へと駆け寄るとニケの肩を揺らした。

「ん……ん?し、師匠!?」

 顔を前後に揺らされ、ニケは目を覚ました。

「アンデットの群れが、こちらに向かってきている!」

「え?どこからッ!」

 ニケは、勢いよく立ち上がった。

「橋の向こうからだ、戦闘は避けられないだろう」

「わかった。ガリィ、戻れ!」

 ニケは、ガリィをネックレスに戻した。

「シロ、橋で先に迎え撃ってくれ!」

 シロは、咆えると橋へと走っていく。
 ニケは、左手に魔力を流し込む。右手が光を帯びると、光は刀の形に変わった。
 練成し終えた刀を手に取ると、ニケは橋へと歩き出した。
 ミーチェは、堂々としたニケの背中を見ながら後に続いた。

「さぁ!早朝のアンデット狩りと洒落込もうぜ!」

 ニケは、掛け声と共に駆け出した。
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