夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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39話「意識のある者」

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 アンデットを薙ぎ払うニケを見ながら、ミーチェはガリィの傍を走り抜けた。

「ニケ!伏せろ!」

 その声を聞くと、ニケは即座に伏せた。
 ニケの頭上を、大鎌が風を切りながら通り抜ける。

「師匠!危ないだろ!?」

 立ち上がりながら、ニケは叫んだ。
 アンデットたちは薙ぎ払われ、地に転がり動かなくなった。

「あと少しだな」

 残ったアンデットは、3体。
 ニケと、ミーチェは駆け出す。
 左側の狩人風のアンデットは弓を構えた。

「師匠ッ!」

 ミーチェの前に、ニケが入り込む。狩人風のアンデットは、矢を放った。
 迫り来る矢をニケは、太刀で弾く。

「すまないな、ニケ」

 そう言いながらも、ミーチェは走る足を止めなかった。
 狩人風のアンデットに目掛けて鎌を振りあがる。
 大鎌は、腹部に刺さると深く食い込んだ。
 それを横目に、ニケは中央にいる魔法使い風のアンデットに切りかかる。
 魔法使い風のアンデットは、持っていた杖で剣を受け止めるがニケの腕力に耐えれず、杖は粉砕した。
 そのまま押し切るニケ、刀身が脳天から喉にかけて入った。
 魔法使い風のアンデットは、膝をついて地に突っ伏した。
 ニケは、太刀を構えると最後のアンデットに切りかかった。

「っきゃ……」

「きゃ?」

 アンデットに刃が触れる寸前に、ニケは太刀を止めた。

「どうかしたのか?」

 ミーチェが、ニケのもとへ歩いてきた。

「なんか。今、しゃべった気がしたんだ」

 目の前にいる、自分の身を守るかのように身構えるアンデットを指差すニケ。

「ん?お主、意識があるのか?」

 小さく頷くアンデット。
 アンデットは、身長が低く服装はフードを被っていて下には、灰色の布の服を着ていた。

「アンデットって意識あるのか?」

 ミーチェの一言に、ニケは問いかけた。

「極まれに、死ぬ前の気を記憶と人格を残してる者がおると、本に書いてあったのだ」

 まさか実際に出会うとはっとミーチェは、アンデットを見ながら呟いた。
 ニケは、ミーチェが言うことが半信半疑のようだ。

「あんた、人間では……ないんだよな?」

「あ、はい。私は、すでに死んでしまったようですね」

 アンデットは、構えを解くと下を向きながら答えた。

「ふむ。普通にしゃべれるのか」

「そうみたいだな」

「あ、あの……私は……殺さないんですか?」

 アンデットは、服の端を握り閉めながら問いかける。

「んー。攻撃してこないし、たたかう理由ないんじゃない?」

「そ、そういう問題なんですかっ」

 少し、叫ぶようにアンデットは言った。
 ニケは、頭を掻きながらミーチェを見た。

「確かに。攻撃する意思があるなら、襲い掛かってきているはずだからな」

 問題ないだろ、っとミーチェは呟きながら橋へと歩いていった。
 それを見ながら、ニケはアンデットに問いかけた。

「あんたも来るか?」

「え、え?私、アンデットですよ?」

「でも、喋れるしたたかう気ないんだろ?」

「は、はい……」

 そう答えると、アンデットは再度うつむいてしまった。

「いいから、きなよ」

 ニケは、アンデットの手をとると歩き出した。

「ま、待ってください……」

 その声は、ニケの耳には届かなかった。
 朝日が昇り始め、あたりに薄く霧がかかり始めた。
 ニケ、ミーチェ、シロ、ガリィ、アンデットと世にも不思議な面子が焚き火を囲っていた。

「ニケよ。このアンデットを、連れて行く気なのか?」

「一緒にいても、問題ないだろ?」

「あ、あの……わ、私は、どうすれば……」

 そう答えるアンデットを、ミーチェは興味深そうに見つめた。

「お主は、ついてくる気はあるのか?」

「い、行くあてもないですし……そ、それもいいなら。つ、ついていってもいいですか?」

 アンデットはおどおどしながら、答えた。
 アンデットと、ミーチェのやり取りを見ながらニケは大きくあくびをするのであった。
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