夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

文字の大きさ
54 / 93

53話「肉のにおいと作戦会議」

しおりを挟む

 村長の家に続く石の階段を下りながら、ミーチェは言った。

「先に夕食を摂るとしよう、そのあとに宿屋だ」

 ミーチェの後に続きながら、ニケが頭の上で腕を組みながら反応した。

「協会の連中はどうするんだよ?」

 ニケが喋っているのを、横で聞きながらアシュリーはうなづいていた。

「ここからユッケルまでの距離は一日だ。私達が、森に入ったのは昨日の夕方だろう?」

 ミーチェは、立ち止まり振り返ると笑って見せた。
 ニケは、まだわかっていない様子だった。
 シロは、わかる以前の問題であくびをしている。
 アシュリーは、指を折りながら計算している様子だ。

「はぁ……今日中にこの村に来ることはない」

 そういうと、ミーチェは再度階段を下り始めた。
 まぁそういうことか!っとニケは言うと、ミーチェの後に続いた。
 先に進むミーチェたちをみて、急いで後を追うアシュリー。
 シロは、後ろ足で頭を掻いていた。

 一同が、まず向かったのは村の露天街だった。
 村長の家へと続く階段を下った先は、噴水がある広場だ。
 その広場を右に進むと露天街がある。
 広場を真っ直ぐ行った先は、一同が最初に通った民家が並ぶ住宅街。
 左に進んだほうには、看板がいっぱい見える。店などが並んでいるのだろうか。
 露天街に入ると、人の行き来が激しくなった。
 敷物の上には、ツボや家具などが見える。
 そのおくには、馬車が並んでおり出店のようにも見える。

「小さな祭りみたいだ……」

 ふと異世界にいることを忘れさせるような雰囲気に、周りを見渡しながらニケは呟いた。
 手前のほうで出店をだしているのは、商人ではなく村人たちのようだった。
 馬車の手前までくると、雰囲気が変わる。
 こちらは生きるために商売をしているんだと、そんな雰囲気だ。
 ミーチェは、呼び込みなどを無視して奥へと進んでいく。
 奥からは肉を焼いたにおいがしていた。

「師匠が一番腹減ってるんじゃ……?」

 ニケが、ミーチェを見ながら呟いた。

「ば、馬鹿者!こっちから、いいにおいがするからだ」

 胸を張るミーチェをニケは白い目で見ていた。
 俗に言う、においに釣られるっとはこのことだなっと。
 一同が止まった馬車の出店には、牛肉の串焼きを焼いている出店だった。
 ニケは、美味そうだと思いながら横を見た。
 そこには、今にでもよだれを垂らしそうな顔をしたミーチェがいた。

「し、師匠……」

 眉毛を微妙に動かしながら、ニケはミーチェを見ていた。
 ミーチェは、ニケに見られていることを知ると口元を拭い買うぞっと言い放った。
 値段は安いのだろうか、一本55カッパーだった。
 日本円で言う、55円相当だ。
 そう考えると安いのだろう。
 ミーチェは、5本買っていた。対してニケは4本。アシュリーは、苦笑いを浮かべていた。

「そ、そんなに食べるんですか……?」

 串と言っても、大きさで言えば30cmほどだろう。意外と大きいのだ。
 肉を頬張りながら、幸せそうな顔をするミーチェ。
 それを見ながら、ニケも肉を頬張っていた。
 シロが、興味深そうに肉を見ていた。

「召喚獣は基本、魔力さえあれば空腹にならないはずなのだが」

 そういいながら、ミーチェはシロに串を向けてみた。
 シロは、においを嗅ぐと串を奪ってニケの後ろへと逃げていった。

「わ、私の肉が……」

 その場にひざをつくミーチェ。
 両手に肉串といういかにもアホな格好だ。
 そんなミーチェのアホらしさに、アシュリーが吹き出していた。

「ミ、ミーチェさん……ははは、あははははは」

 肉を頬張りながら、ニケも笑っていた。
 ニケの後ろでは、シロが肉をかじっていた。

「これは私のだ!」

 一気に肉を頬張り、飲み込んだミーチェ。
 立ち上がると、満足そうな顔つきをしていた。

「さて、ニケが食べ終わったら宿へ行こうか」

 それを聞いてニケは、急いで食べ終えた。
 一同は広場へ戻ると、村長が村人たちに何かを話しているのが見えた。

「っというわけじゃ。皆の者、この村を守るために力を貸してはくれんか?」

 どうやら、先ほどの話を冒険者たちに話ているところらしい。
 村長の呼びかけに、冒険者たちは互いを見ながらうなづくと答えた。

「俺らは、この村の為にいるんだ!」

「俺達がやらなきゃ誰がやるんだ!」

「そうと決まればお前ら!支度を済ませろ!」

 どうやら冒険者たちは、やる気に満ちている様子。
 それを見ながら村長のもとへ、ミーチェが歩いていった。

「おぉ、西の魔女様」

 村長が一礼をすると、冒険者達の目線がミーチェに集まる。

「私は、西の魔女ミーチェ・クリスタだ」

 ミーチェが名乗りをあげると、ちらほらと声が聞こえた。

「……『協会狩り』の、あの西の魔女か?」

「……たぶんそうだろう。あんなに若いなんて」

 『協会狩り』っと言う言葉に、冒険者達の顔つきが変わる。
 実績こそなければ、肩書きなど持たないはず。それを知っているからこそ、冒険者達は真面目にミーチェの言葉に耳を傾けた。

「協会は、ユッケルを襲撃した。その際、村人は全滅した。だが、私達がこちらに来る間に別の協会の者たちがユッケルに向かったと推測される」

 冒険者達の前に立ち、話をするミーチェはどこか遠い存在に見えたニケだった。
 話は進み、ミーチェが後衛に入ることになった。
 ニケとアシュリーは最前線に配備された。
 冒険者の人数は30弱。
 冒険者は基本5、6人のパーティーで行動する。
 今回は前衛、中衛、後衛で2パーティーずつの配置分けとなった。
 前衛は、剣などを持っている者たちが割り振られ中衛は、弓などの飛び道具を持つ者たち。
 後衛は、魔法使いを中心に割り振られていた。
 どうやらこれで作戦会議は終わりのようだ。

「来るとすれば、明日の早朝だろう。皆、警鐘が鳴ったらすぐにユッケル方面の入り口へ集合だ」

 ミーチェは、時間を教えると解散っと一言言うと、その場を降りた。

「そういうことで、皆の者頼んだぞ!」

 村長の締めの言葉に、冒険者達は声を張り上げて叫んだのだった。
 ミーチェが、ニケたちのもとへ戻ってきた。

「師匠すごくかっこよかった!」

「ふふ、そうか?」

 少し嬉しそうにミーチェは胸を張っていた。

「さて、宿へ行くとしようか」

 ミーチェは、看板の並ぶ通りへと歩いていった。
 それに続く、ニケ、アシュリー、シロだった……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界異話 天使降臨

yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。 落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。 それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

処理中です...