夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

文字の大きさ
56 / 93

55話「鳴り響く鐘の音」

しおりを挟む

 夜が更けて、辺りが静かになりはじめた。

「朝は……まだですか……?」

 何もすることがないアシュリーは、寝ることもできずただただ窓から外を眺めていた。
 アンデットになった身体は、肉の身体の喜びすらなくただただ生ける屍の一文字だった。

「なんで、アンデットになってしまったのでしょうか……」

 アシュリーは、二つの月にささやきかけた。
 だが、返ってきたのは静寂のみだった。
 目の前に見える通りは、営業を終えた様子で人の行き来が見られなかった。

「外に出たいけど、寝ている二人を放置して行くわけにもいきませんし……」

 やることがなく、ただただ夜が明けるのを待つアシュリーだった。
 そんなアシュリーの気持ちを知ってか知らずか、夜はゆっくりと更けていった。
 遠くの空が青くなり始めた頃だった。

 カン!カン!カン!カン!

 鐘の音が村中に鳴り響いた。

「きたッ!」

 アシュリーは立ち上がると、ミーチェの肩を揺らした。

「ミーチェさん!起きてください!」

 起こしてもおきないミーチェの肩を、両手で掴むとアシュリーは更に激しく揺らした。

「ミーチェさぁぁぁぁぁんッッ!!!」

 激しく揺らされて、ミーチェは目を覚ました。

「……吐きそう。や、やめてくれ、アシュリー」

 顔色を悪くしながら、ミーチェはアシュリーの肩を叩いた。
 ミーチェが起きると、アシュリーはニケのもとへ歩み寄った。
 アシュリーは、ニケの肩を叩きながら起こし始めた。

「ニケさん、起きてください」

「アシュリー……私、より対応が良くないか?」

 ふと疑問に思い、ミーチェはアシュリーに声をかけた。

「え!?そんなことないですよ!」

 驚きながら、アシュリーはミーチェに答えた。
 ニケは、目を覚ますと外に響き渡る音に気が付いたようだ。

「この鐘の音は?」

 身体を起こすと、窓の外を眺めた。
 ミーチェは、ベットから降りると身体を動かしていた。

「さて、広場に急ぐとしよう」

 顔色は先ほどよりよくなっていた。
 鞄を肩に掛けると、ニケはベットから降りた。

「いくか!」

 ミーチェは、それを確認するとドアへと歩いていった。
 アシュリーは、大剣を背負うとミーチェの後を追った。
 ニケは、窓から見える村を見てから部屋を立ち去った。
 階段を降りたところで、ミーチェが受付に鍵を返していた。

「先に行っててくれ。後から追いかける」

「わかった」

 ニケは、ミーチェに返事をするとアシュリーと共に外に出た。

「広場に人が集まっているみたいだな」

 出てすぐに広場の方向を見るニケ。
 広場には、村人の全員だろうか。かなりの人数が集まっていた。
 村長が話をしている様子だ。ニケとアシュリーは、広場へと向かった。

「たった今報告があった。ユッケル方向から、大量のアンデットが接近中とのことじゃ」

 その言葉に、村人たちからざわめき始めた。

「なんでこんなときに……」

「わ、私たちはどうなっちゃうんだい!?」

 そこらへんから、声があがった。

「みんな聞いてくれ!」

 大声をだしたのはルトだった。
 ルトは、村長の横に立つと村人たちに向けて話し始めた。

「今この村には、西の魔女さんが来てくれている!俺達冒険者と、共に戦ってくれるんだ!」

 それを聞くと、村人達が話を始めた。

「西の魔女だったさ……」

「協会狩りしかできないんだろ?大丈夫かよ……」

 不安の声が募るなか、ミーチェがニケたちと合流した。

「どういう状況だ?」

「なんか、アンデットたちがこっちにきてるんだとさ」

 やはりかっとミーチェは、つぶやいていた。
 そんな中、ルトは話を再開していた。

「なんとかなるさ!俺達冒険者に任せろ!」

 胸を叩くルトと、それに歓声を上げる村人たちだった。
 村長の家に村人達は避難していった。
 それを見ながら、ルトはミーチェを見つけると駆け寄ってきた。

「ミーチェさん、今回はよろしくおねがいするよ」

 ルトは、ミーチェに手を差し出した。
 ミーチェは、その手を握り返すと小さく微笑んだ。

「それじゃ、迎え撃ちにいくか!」

 ルトは、後ろを振り返ると冒険者たちに声を掛けた。
 冒険者達は、雄叫びをあげた。
 ユッケル方面に移動を始めた冒険者を見ながら、ミーチェはニケにささやきかけた。

「無茶だけはするでないぞ」

「わかってるよ」

 ニケは、そう言うと冒険者たちの後に続いた。

「いざとなったら、私が助けるから大丈夫ですよ」

 アシュリーが、すれ違い際にミーチェにそう言った。

「まぁ、何事もなければいいのだがな」

 ため息混じりに、ミーチェはそうつぶやいた。
 入り口に向かう冒険者を眺めながら、ミーチェも入り口へと向かっていったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界異話 天使降臨

yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。 落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。 それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

処理中です...