夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

文字の大きさ
71 / 93

70話「広場での一戦とひとつの油断と」

しおりを挟む

 広場は先ほどとは違い、人の行き来が減っていた。
 正確には、減ったというより何かを避けて通っているようだ。
 広場の中央、噴水の周りにデオドラと数人の柄の悪い連中が居座っている。
 村人は目を合わせないように中央を避けて歩いている。露天を出していた人たちは、そそくさと片付けを始めていた。
 デオドラを無視して、ニケは先ほどの店に戻ろうと広場を横切った。

「おい、待てよクソガキ」

 案の定デオドラに声を掛けられた。
 ニケはそのまま無視して進もうとした、だがデオドラの周りにいた柄の悪い男が道を塞いだ。
 それを合図に、他の連中もニケを囲うように移動した。
 デオドラを含め人数は6人。5人がニケを囲みながら不気味な笑みを浮かべている。

「ガオックの討伐依頼、それを取り消す方法を教えてやる」

 噴水の端に座っていたデオドラが、立ち上がりながら呟いた。
 ニケはデオドラを見た。デオドラは、呑気そうにあくびをするとニケの前にやってきた。

「黒髪の血は高く売れるんだってな」

 デオドラは剣を抜き、ニケの首もとに剣と突きたてた。

「てめぇは裏で売らせてもらうぜ」

 ニケの近くにいた男が縄を取り出した。
 横目で縄を確認すると、ニケは剣を手の甲でどけた。

「状況がわかってないようだなッ!!」

 デオドラは剣を振り上げた。
 身構えるニケを、後ろにいた男が押さえ込む。
 押さえ込まれたままニケは、後ろへと飛び跳ねた。

「な、なんだこいつッ!?」

 押さえ込んでいた男が、ニケを放した。
 広場全体にざわめきが走る。見物しようとする者、逃げていく者、止めようとするが睨まれて戻っていく者。
 そんな中、ニケが左手に魔力を送り込み練成を始める。左手が光を帯びると刀を練成した。
 刀を握り締め、デオドラに向けた。

「さっきの続きか?おい、お前ら!」

 デオドラの言葉に、周りにいた男達が一斉に武器を構える。
 飛び道具の類なとはなく剣と短剣だ。
 ニケの後ろにいた男が、短剣を突き出しニケの背中目掛けて走ってくる。
 男の動きを察知したニケは、右足を下げ左足を軸に少し倒れながら男とその手に握る短剣を避けた。
 他の4人の男達が、ニケを囲うように移動を始めた。
 短剣を持った男が振り向き様に、ニケの喉目掛けて短剣を振るう。
 少し後ろに下がりながら避けると、ニケは刀を右腰に沿わせると同時に左上へと切り上げる。
 短剣を振るった男の左腰から、右肩へと刃が抜けていく。
 
「っぐふ……」

 短剣を落とすと男は切られた胸を押さえながら、血を吐き出し前のめりに倒れた。
 それを見るや右側から男が剣を振り下ろしてきた。
 身体を捻りながらかわすと、左側から別の男が剣を衝いてきた。
 衝かれた剣をニケは刀で受け流す。
 すぐさま後ろから剣が迫りくる、振り向き様に刀で剣を弾く。
 剣を弾かれた男がよろめく、ニケは男の胸部へと刀を衝いた。
 刀身が胸部へと刺さり、男は膝を付く。
 足で男を押しながら刀を抜く。男達はニケの反射神経に驚きながら距離を置いた。

「おまえらじゃ無理だ、俺がやる」

 デオドラがニケの前に立つと剣をニケに向けた。

「クソガキが、今度こそ殺してやるッ!」

 言葉を吐き出すと同時に、デオドラが剣を振り上げる。
 ニケは振り下ろされるだろう位置に刀を流すように振り上げる。
 カンッ!甲高い金属音と共に、刀の刀身を滑るようにデオドラの剣が流される。
 デオドラはニケの横をすり抜け、振り返ると剣を横に薙ぎ払う。
 ニケは後ろに飛び跳ねるように避けると、刀を両手で握り駆け出す。
 カンッ!剣と刀が交わる、互いに睨みあうと両者は得物を押し合った。
 キリキリと音が鳴りあう。ニケは押し離すように力を加えた。
 押されたデオドラは、後ろに2、3歩下がる。
 デオドラが何かに対して合図を送るかのように頷いた。
 ニケは、その合図を送ったであろう方向に振り向いた。
 だが、何もなく村人さえもいない。急いで視線をデオドラに向ける。
 デオドラより先に、小さな針のようなものが見えた。
 急いで目に意識を集中させるが、視線から見える世界がゆっくりになるにつれて針が腹部へと刺さっていく。
 一度刺さった針はどうすることもできず、刺さり終わってから抜くことしかできなかった。
 ドクン。体内で何かが起きたのだろうか。視線がぐらりと揺れ世界が速度を瞬時に戻した。
 足がふらつき始める、膝の力が抜けニケは地を舐めた。

「こんな子供騙しに引っかかるなんてなぁ!」

 ニケの頭の上で、デオドラがニケを見下しながら高らかに笑い始めた。
 身体に力が入らず、小刻みに震えるニケ。

「毒は気持ちいいだろ?」
 
 周りにさっきの男達とは別の連中が集まってきている。
 フードを被りいかにも怪しい感満載の雰囲気だ。

「よし、運べ」

 デオドラは周りの連中に声を掛けると、その場を立ち去っていった。
 ニケは縄で縛り上げられると首に何かを着けられた。
 そのまま引きづられながら、ニケは南の入り口へと連れて行かれてしまった……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界異話 天使降臨

yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。 落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。 それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

処理中です...