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83話「持ち物検査と大きくなった相棒と商人ギルドと」
しおりを挟むビスク帝国帝都『ナイルダム』
国を1つにまとめ、創立されて70年。
皆が帝都の事を王都と言うのには理由がある。
ビスク帝国に名前が変わる前、そこはナルビーデュ共和国と言う国だった。
帝国が嫌われているわけではない。
長命な魔法使い、エルフ、ダークエルフたちが昔なじみにそう呼んでいるのが、今の若者達に影響を与えているのだ。
帝国が創立に至った経緯としてあげられるもの。
それは黒髪の存在が大きかった。
黒髪は異世界から召喚、または転移してくる。
今までにこの世界に召喚された黒髪は歴史上3人と少ない。
それに対して黒髪は月に3人以上が確認されている。
そして転生してくる黒髪に共通するのが特殊能力。
例えば、魔法が女性にしか使えないという世界の理を無視して、召喚術、錬金術、精霊術、死霊術の類が使える男性が多い。
死霊術は黒髪が作り出した新しい魔法とも言われている。
黒髪が転生する度に、魔法は世代を越え、進化を遂げてきた。
そう、ビスク帝国が創立された理由。
それは新しい魔法と共に、力をつけたからである。
1世代前の魔法は直筆詠唱によるものだった。
これは、魔線 を左右どちらかの手から『引き』、呪文を綴ることで魔法を発動させるものだ。
今の魔法は、口頭による呪文詠唱。
こちらは、魔法の呪文を喋ることによって詠唱するものだ。
呪文詠唱が世に広がり始めてから、新しい魔法ができた。
精霊術、召喚術、死霊術である。
なお、錬金術は魔線の応用で作られた魔方陣を、魔力を込めた籠手に刻むことで使用が可能になったそうだ。
直筆詠唱と、呪文詠唱との違い。
まず直筆詠唱は、定められた魔力消費量、呪文ごとに同じ威力が特徴だ。
つまり、魔力が少ないものでも詠唱することが可能と言うことだ。
対して呪文詠唱は完全な魔力依存だ。
魔力が高い者ほど威力が高く、消費量も変わってくる。
先立った呪文詠唱の研究の末、帝国は今だ不敗を誇る島国となった。
そしてここに、男の身でありながら魔法の直筆詠唱が行なえる少年がいた。
少年の名は、ニケ・スワムポール。
黒髪の綴り手。少年は噂でそう呼ばれている。
人差し指と中指で魔線を引く、通称『双線』の使い手であり、同時に両手でも引くことができる。これは、歴史上に存在する英雄の一人の成し得た詠唱の進化系。
英雄は右手から双線を引くと共に、口頭による別の魔法の呪文詠唱を成した。
人々はその詠唱方法を『多重詠唱』と名付けた。
今だ多重詠唱を成し得たのは、ニケを含め世界で3人。
そして、魔法の類も複数習得している。
実際、魔法のみを習得すると、錬金術、精霊術、召喚術の類の習得は才能がない限り無理とされている。
少年は、その全ての魔法を使い、なおかつ詠唱も行なえる。
そんな少年が、ナイルダム北側防壁門に到着したようだ―――
―――ニケを乗せたガメリの馬車が王都に到着した。
夕暮れが影を伸ばす時間。
夜に着く予定が少し早めに到着したのだ。
ガメリは商人なので通行書を持っていると言う。
「ニケ。中に入ったら真っ直ぐ進んでくるんだ。
突き当たりにわしのギルドがある。そこで待っているぞ」
そういい残し、ニケを荷物検査の列に並ばせた。
「わかった。すぐに向かうよ」
「あぁ。道草食うんじゃないぞ? がっははははは」
高らかに笑い、ガメリは門を潜った。
列は思っていたほど長く、少し時間がかかりそうだ。
荷物検査の順番が来るでの間、ニケはシロとじゃれあっていた。
ニケの手を噛もうとする、シロと遊んでいると順番がすぐに回ってくる。
「次、ん? 君は黒髪か」
「うん。黒髪」
「とりあえず、そこのホワイトウルフは君の召喚獣か?」
「そうだ。シロは俺の相棒なんだ」
男は黙々と何かに書き込んでいる。
「まず鞄の中身を見せてくれ」
言われたとおり、ニケは鞄をひっくり返した。
魔編みの鞄は、鞄に入れた者にしか取り出せない。
なおかつ、ひっくり返しても出てこないのだ。
「空か」
男は書き込み始める。
「次に、指につけているものを見せてくれ。
要は指輪を見せろっと言うことらしい。
ニケは指輪をはずし、男の隣にいた虫眼鏡を持った男に渡した。
「これは、はじめてみる指輪だね」
「それはこいつとの契約の際に」
「あぁ、そういうことか。
んで、この指輪なんだが。効果が書き換えられている」
「書き換え?」
「そうだ。何体か魔物を倒したときに変わった可能性が高い。
防御力が上がる効果が、装備している者の魔力を半減させるものになっている」
指輪を返されてはじめて気づく。
ニケの体内に蓄積されていた魔力が漏れ出していることに。
足元から砂埃が立つ。
ニケを取り巻くかのように、魔力の流れが生まれていた。
身体全体を覆う魔力も増幅したようにも感じられる。
シロの指輪をつけ、緑色の指輪は仕舞った。
「他に武器等はないな? ならば、行ってよし!」
ニケは、門をくぐる前にやりたいことがあった。
魔力が今まで以上に使える現状。シロを再度召喚したらどうなるのか。
思うが早く、シロを指輪に戻した。
「おいで、シロ!」
シロの召喚。
いつもなら小さな魔方陣が展開されるのだが。
今回は少し大きめに展開された。
突然魔方陣が展開されたことに、周囲にいた者たちが集まり始める。
魔方陣から姿を現しのたは、いつもよりふたまわりをど大きくなったシロだった。
体格も筋肉が増えたように感じ、4mはいっていると見える。
見物人たちが腰を抜かしたり、逃げ出したりと騒がしくなっていた。
ニケはシロの上に跨り、門を潜った―――
―――王都の中は夜と言うこともあって静かだった。
時々店の中から笑い声とかが聞こえる。
月明かりと松明の灯りを頼りに、ニケは突き当たりまで進んでいった。
聳え立つ大きな建物。
4階建てだろうか、窓の数からそう見える。
大きな扉を、ニケは叩いた。
「はーい」
中から声がした。
扉が開き、女性が顔を出した。
「どうかしました?」
「あの、ガメリさんにここに来いと」
「君がガメリさんが言ってた人だね!」
扉を全開にすると、女性は中へどうぞっと言った。
その言葉に甘え、ニケとシロが中へ。
豪華な内装。
敷物は手のこった物であり。
床材に使われている木材なんて、木目ひとつない上質なものばかりだ。
少ししてからガメリが階段を降りてきた。
「おぉ、やっときたか。って、シロのやつなんで急に大きく……」
「さっき、指輪鑑定してもらってさ、魔力が半減していることがわかったんだ」
「それで魔力が増えたことでシロも大きくなったと」
「そういうこと」
「この大きさだと通路通れないな……」
「あ、そうなんだ。ちょっと戻っててね、シロ」
シロは光と共に弾け、指輪へと消えていった。
「今日はもう遅い、ここに泊まって行くといい」
そういうと、ガメリは階段上り、部屋の前で止まった。
ニケはその後に続き、部屋へと案内される。
入り口とは違い、部屋は家具が少ない。
ベットと机、他は上着掛けなどしかない。
「とくにおもてなしもできないが、ゆっくりしていってくれ」
「ありがと、ガメリさん。泊まれるだけでありがたいよ」
「そういってもらえるだけでも嬉しいぞ! がっははははは!」
笑いながら、ガメリは部屋を後にした。
ニケはシロを呼び出し、ベットに寝転がった。
シロもニケの傍に寄り添うと、寝転がった。
シロの上でも寝れるんじゃないか。
思い立ったらすぐに行動。
シロの上に、ニケが寝転がる。
シロは嬉しそうに尻尾を振っていた。
「明日から師匠さがそうな、シロ」
ひとりと1匹の夜は更けていった……
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