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知りたかった答えSide大貴
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ドアを開けると、固い表情の天音さんが立っていた。
今日の天音さんは休日だからか、いつもよりラフな装いで、そういえば、付き合っていた頃もこういう恰好を好んでいたな、なんて、関係ないことを思った。
その表情で、彼女が何を言いに来たのか、察しがついてしまったから。僕はないまぜになった感情をすべてのど元に押し込んで、彼女を歓迎した。
「………やぁ、いらっしゃい。」
部屋に入ると、彼女は僕から極力距離をとった。当然だと思いつつも、心がじくじく痛む。その痛みに気が付かないふりをして僕は笑った。
「さて…お茶でも飲みますか?」
「あ……その、申し訳ないから、いいよ。あんまり気を使わないで。」
「ううん、僕が飲みたいから。ちょっと待ってて。」
「じゃあ、手伝う」
そういって聞かない彼女は荷物を置くと台所までついてきた。腕まくりをして、てきぱきと動き始める彼女は相変わらずで、なんだか嬉しくなる。いいといったのに茶菓子まで購入していた彼女に呆れつつ、変わらない不器用なほどの真面目さに笑ってしまった。
あれから1年たつわけだが、彼女のこういう頑ななところは変わっていないのかもしれない。大事なところで、臆病風に吹かれる僕と同じで。
お茶を淹れて、天音さんと相対すると、僕は急に落ち着かない心地になった。天音さんもそれは同じなようで、手元がそわそわと揺れている。
「――じゃあ、本題に入ろうか。」
びくり、と天音さんの肩が揺れた。
「一年前の理由を教えて欲しい。」
未練がましいと自分でも思う。だけど、この1年間ずっと自分に問いかけてきた。
「――あの日、僕は無理やり君を抱こうとした。だから……嫌いになった?」
もし――あの日僕が違う行動をとっていたら…僕から君は離れないでいてくれたのかな。
「嫌いになんて、そんなわけないよ…」
沈黙が落ちる。俯いてそれ以上何も話そうとはしない彼女は、少し頼りなさげで、何かにおびえているようだった。僕はこくりと唾を飲むと、ずっと聞きたかったそれを口にした。
「天音さんはさ、僕こと、少しは好きだった?」
天音さんがはっとしたように、こちらを見る。
「彼の代わりとしてだったら、誰でもよかった?」
僕じゃなくても。だから、僕から離れていった?
「そんなこと…!」
顔色をなくした彼女が、何か言いかけてやめる。それは――怯え?それとも焦り?そこにわずかでも構わないから、自分に対する思いがあってくれたら、と馬鹿みたいに思う。
「大丈夫、ゆっくりでいいよ。何聞いても、僕は大丈夫だから。」
「大貴くん……私……」
天音さんの綺麗な顔が歪む。
どれほどの時間が経ったのだろう。天音さんは絞り出すような声で、小さく「ごめん」とつぶやいた。
「大貴君、ごめん。私、謝ろうって…思って。でも。」
天音さんが声もなく、はらはらと涙を流しはじめて僕は狼狽えた。
「え、あ……えっと…どうしよう……そうだ、とりあえず、これ使って。」
慌てて箱ティッシュを彼女の胸に押し付ける。しばらく、ずっ、と鼻をすする音だけが聞こえて、気まずい僕は、なすすべなく彼女を見つめた。
「ごめん…焦らすつもりは、なくて。とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いて?」
今日の天音さんは休日だからか、いつもよりラフな装いで、そういえば、付き合っていた頃もこういう恰好を好んでいたな、なんて、関係ないことを思った。
その表情で、彼女が何を言いに来たのか、察しがついてしまったから。僕はないまぜになった感情をすべてのど元に押し込んで、彼女を歓迎した。
「………やぁ、いらっしゃい。」
部屋に入ると、彼女は僕から極力距離をとった。当然だと思いつつも、心がじくじく痛む。その痛みに気が付かないふりをして僕は笑った。
「さて…お茶でも飲みますか?」
「あ……その、申し訳ないから、いいよ。あんまり気を使わないで。」
「ううん、僕が飲みたいから。ちょっと待ってて。」
「じゃあ、手伝う」
そういって聞かない彼女は荷物を置くと台所までついてきた。腕まくりをして、てきぱきと動き始める彼女は相変わらずで、なんだか嬉しくなる。いいといったのに茶菓子まで購入していた彼女に呆れつつ、変わらない不器用なほどの真面目さに笑ってしまった。
あれから1年たつわけだが、彼女のこういう頑ななところは変わっていないのかもしれない。大事なところで、臆病風に吹かれる僕と同じで。
お茶を淹れて、天音さんと相対すると、僕は急に落ち着かない心地になった。天音さんもそれは同じなようで、手元がそわそわと揺れている。
「――じゃあ、本題に入ろうか。」
びくり、と天音さんの肩が揺れた。
「一年前の理由を教えて欲しい。」
未練がましいと自分でも思う。だけど、この1年間ずっと自分に問いかけてきた。
「――あの日、僕は無理やり君を抱こうとした。だから……嫌いになった?」
もし――あの日僕が違う行動をとっていたら…僕から君は離れないでいてくれたのかな。
「嫌いになんて、そんなわけないよ…」
沈黙が落ちる。俯いてそれ以上何も話そうとはしない彼女は、少し頼りなさげで、何かにおびえているようだった。僕はこくりと唾を飲むと、ずっと聞きたかったそれを口にした。
「天音さんはさ、僕こと、少しは好きだった?」
天音さんがはっとしたように、こちらを見る。
「彼の代わりとしてだったら、誰でもよかった?」
僕じゃなくても。だから、僕から離れていった?
「そんなこと…!」
顔色をなくした彼女が、何か言いかけてやめる。それは――怯え?それとも焦り?そこにわずかでも構わないから、自分に対する思いがあってくれたら、と馬鹿みたいに思う。
「大丈夫、ゆっくりでいいよ。何聞いても、僕は大丈夫だから。」
「大貴くん……私……」
天音さんの綺麗な顔が歪む。
どれほどの時間が経ったのだろう。天音さんは絞り出すような声で、小さく「ごめん」とつぶやいた。
「大貴君、ごめん。私、謝ろうって…思って。でも。」
天音さんが声もなく、はらはらと涙を流しはじめて僕は狼狽えた。
「え、あ……えっと…どうしよう……そうだ、とりあえず、これ使って。」
慌てて箱ティッシュを彼女の胸に押し付ける。しばらく、ずっ、と鼻をすする音だけが聞こえて、気まずい僕は、なすすべなく彼女を見つめた。
「ごめん…焦らすつもりは、なくて。とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いて?」
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