恋と呼べるまで

ななし

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居場所Side天音

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 ベッドの上で腰掛ける大貴君は、いつもより少し気だるげで色っぽい。汗をしっとりと含んだ髪が首筋に張り付いている姿は、艶めいて、ぞくりとする。
 その姿は普段のほわほわした彼とは別人みたいで、少し、戸惑う。
 
 私、彼に抱かれたんだ――。じわじわと実感がわいてきて、恥ずかしくなってくる。

「どうしたの?」

視線に気が付いたのか、大貴君がこちらに向き直る。

「ん?」

眼差しが甘い。いたたまれず、私は布団を顔までかぶった。

「あぁ、もう、駄目だよ。顔を見せて。」
「やだ」
「もぅ、酷いなぁ…そういうとこも、好きなんだけど。」

リミッターを外した彼は、必要以上に甘すぎて困る。私が布団にもぐっているとぎゅっと布団ごと抱きしめられる。

「じゃあ、いいよ。そのまま聞いて。」

布団越しに聞く優しすぎる声にドキドキする。

「僕、すごく今、幸せだ。」
「……っ」

体中からピンク色の何かが飛び出してきそうだ。なんだか、窒息してしまいそう。
 こんな風に今更、幸せになってもよいのだろうか。そう思った瞬間、しん、と冷水をかぶったように浮かれていた心が冷えた。

「大貴君…あの、あのね……」
「だから、僕から逃げるって言わないで。」

ぎゅっと腕の力が強まって、私は泣きたくなる。
 彼の真剣な気持ちにきちんと自分も言葉を返したかった。

「ずっと、長い間、傷つけてごめん。今更って言われても仕方ないけど。」

すっと息をはく。

「………一緒にいても、いい?」
「……!もちろんだよ!」

ぎゅうっとますます力が強まり、私はうぐっと悲鳴を上げた。

「あ、ごめん。でも、嬉しくて。」
「……ほんとに後悔しない?」
「絶対にしない。」

 数えきれないほどの回り道をして、ようやく自分の想いに名前をつけることができる。
 振り回して傷つけてきたこの人を今度は私が幸せにしたい。もう一度。

 小さな決意を持って彼の背に腕を回し、私は目を閉じた。

                            ****

 「天音さん、手、つないでいい?」
「……そういうの、いちいち確認しなくていいんだって。」

頬を赤く染めながら、ん、と私は手を差し出した。

「ごめん。つい、不安になっちゃって。」

困ったように笑う大貴くんが可愛い。
 出会ったあの頃、手をつなぐことにもなんとも思わなかった。キスすることも、体をつなげることも、ただいろんなことから逃げるためだった。

 でも、今は。

 彼の照れた顔をみて、彼の情熱的な口づけを受け、そのすべてが愛おしいと思う。そのどれも、みていたいし、側にいたい。

 自分勝手な自分がようやくたどり着いた終着点で、私は幸せをかみしめる。

 「大貴君、ありがとう…」
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