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白の脅威

第58話 ようこ、お友達がピンチ

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 ー ピンデチ おばあさんが働くお店 ー

 おばあさんはログインしてお店にやってくると、哲夫と美咲が店番をしていたので挨拶をしながら店に入った。

「こんにちは、哲夫さん、美咲さん」

「こんにちは、洋子さん」
「こんにちは」

 するとその時、突然メイが慌てて店に走り込んできた。

「誰か助けて! マユとナミがヤバい!」

 それを聞いたおばあさんは驚きながら聞き返した。

「マユさんと、ナミさんが? メイさん、どうしたの!?」

「溶岩地帯でやられてリスポーンしたの! マユとナミがあぶない! アルマジロが盗られちゃう!」

 するとそれを聞いた美咲は店の外へ走り出した。

「わたしが行く!」

 美咲は店の外に出ると溶岩地帯に転移魔法で移動していった。


 ブーー……ン


 美咲が転移してくると、溶岩地帯の入口にはマユのモービルが置いてあった。

 美咲は走って溶岩地帯に近づくとマユとナミが数人と戦っているのが見えた。

 美咲は急いで走ってゆき、マユとナミの前に滑り込んだ。

 ズザァァア!

「美咲ちゃん!」

「マユさんナミさん、少し下がっていて」

「美咲ちゃん、大丈夫!?」

「まかせて」

 美咲はレイピアを構えながらそう言うと、マユとナミはアルマジロたちを抱えて走って下がった。

 相手は先日アルマジロを奪おうとした騎士たちと、召喚魔導士しょうかんまどうしだった。

 すると騎士の1人が美咲に気付いて言った。

「あ、こいつだ! 先輩、こいつがさっき話した女ブッ!!」

 ドスッ!

 一瞬で美咲のレイピアが騎士の1人を貫いた。

「一撃でHPが……。強すぎ……だろ……」

 そして消滅していった。

 美咲は残りの3人をにらみつけると静かに言った。

「わたし、友達を倒されて怒ってるの」

「は? うるせぇ!」

 それを聞いた槍の騎士は激昂げきこうすると、豪快に槍を突き出した。

「次は負けねぇぞ!」
 ブワッ!

 ズババッ!!

 しかし美咲はレイピアをしならせると、突撃してくる槍の騎士の腕を一直線に切り裂いた。

 ズバッ!

「うわぁぁああ!」

「とどめ」

 ドスッ!

 そして美咲は大きく踏み込んで一突ひとつききすると、槍の騎士は消滅していった。

「う、うわぁぁああ!」

 最後の騎士は逃げ出して、召喚魔導士だけが残った。

 すると残った召喚魔導士は美咲に言った。

「おい、女のくせに調子に乗るなよ。極悪な召喚獣しょうかんじゅうベヒーモスを召喚しょうかんしてやろう」

「してみな。詠唱始めたら一突きだよ」

「……」

「この距離で、わたしの突きより先に詠唱できる?」

「……」

「なら、こちらから行くよ」

「ま、まて! こ、この地上を越えた魔……」

 ドスッ!

「うわっ!」

 慌てて詠唱を始めた召喚魔導士の足を美咲のレイピアが貫いた。

 召喚魔道士は恐怖に顔を歪ませると、その場にへたり込んだ。

 美咲は召喚魔導士に言った。

「今の動画で撮ってた。拡散していい?」

「え?」

「女のくせにって言ったよね。これ拡散したらネットでたたかれるよ」

「待ってください! すみませんでした、許してください」

「じゃあ、1時間後に溶岩キノコ100個集めてピンデチの時計台に来て。そうしたら許してあげる」

「溶岩キノコ?」

「溶岩キノコ100個。1時間後。ピンデチの時計台。わかったらすぐに集めて」

「は、はい!!」

 召喚魔導士は溶岩キノコを探しにバタバタと溶岩地帯へ走っていった。

 そして、やられた騎士たちと逃げた騎士にボイスチャットを繋いだ。

「おい、みんな早く来い! 溶岩キノコ100個集めるぞ! 何でもいいから早く来い!」

 その様子を後ろから見ていたナミとマユは嬉しそうに美咲にお礼をした。

「美咲ちゃん、ぁりがとぅ」

「ほんと、ありがとう! 美咲ちゃん、強いね!」

 美咲は少し照れながら答えた。

「え、いや。そうかな」

 するとマユは感心しながら言った。

「それにしても咄嗟とっさに動画撮ってたなんて驚いたよ」

「ふふ。あれ、うそ」

「え!?」

「わたし録画する機械も持ってないもん」

「え、そうなの!?」

「「あはははは」」

 3人は美咲の言葉に笑いあうと、お喋りしながらマユのモービルへと向かった。


 そのころ、召喚魔導士とリスポーンした騎士たちは必死に溶岩キノコを探していた。

「おい、これでいくつだ!?」

「やっと20個っす先輩」

「バカ、間に合わねぇよ! お前ら町で溶岩キノコ買い占めてこい」

「は、はい!」

 騎士たちは慌ててモービルを出現させ、町へと走らせた。

 そして先輩は再び溶岩キノコを集め始めた。

「あ、溶岩キノコあった! これで21個……」

 ◆

 マユたちはモービルでレググリの港へ移動すると、モービルをしまって船に乗り込み、ピンデチへと向かった。

 マユとナミは船の上でグループチャットにメッセージした。

 ーーーーーーーーーーーー
 マユ:メイごめんね、美咲ちゃんのおかげで、あたしたちもアルマジロも無事だよ

 メイ:よかったー

 ナミ:大丈夫?痛かった?

 メイ:うん、でも、それどこじゃなかったっていうか

 洋子:良かったわ、みんな心配してたのよ。

 マユ:ごめんね。いま船でピンデチに向かってるから

 メイ:おっけー。まってるね
 ーーーーーーーーーーーー

 マユたちがメッセージを終えると、美咲が話しかけてきた。

「あマユさん。ちょっと、あの港に寄れるかな」

「あの港? ……って、あそこってイークラト地区だよね!」

「うん。なつかしい」

「あそこって、モンスターが最強レベルだって」

「うん。でもイークラトの町にある『ドラゴン大福』って美味しいんだ」

「え、なんか美味しそうな名前!」

「港から近いからバイクのモービルでちょっと行ってくるよ」

「……じゃあ、お願いしちゃおうかな」

 マユは船長のプンペに指示してイークラトの港に着岸ちゃくがんさせた。

 美咲は船から降りてビッグ・スクーターのモービルを出現させると、一気に加速してイークラトの町へ向かった。


 マユとナミは船の上から双眼鏡で美咲を見守りながら話していた。

「美咲ちゃん、すごいね」

「ぅん」

「あ、え? すごい大きいドラゴンが飛んできた!」

「ぁ」

「え? え? 美咲ちゃんに襲い掛かってるんだけど」

「ぁ、でも」

「うわ。うわうわ。倒しちゃった」

「すご」

「あ、またバイクに乗って町に向かったね」

「ぅん」

 美咲は遠くに見えるイークラトの町の前でバイクを降りると、入口近くにあるお土産物店でドラゴン大福を買った。

「あ、何か買ったね。ドラゴン大福かなぁ」

「ぅん」

「またバイクに乗って船へ戻って来たね」

「ぁ」

「え、やば! 何かヤバい巨人に追いかけられてるんだけど」

「あ、降りた」

「うわ。うわうわうわ。倒した」

「ぅん」

 そして、またバイクに乗ると船に戻って来た。

「ただいま」

「おかえり! やっぱりヤバいモンスターいたね!」

「え? あ、うん。そう?」

 こうして3人はピンデチに戻って行った。
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