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まだまだ現役

第84話 ひろし、早起きする

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 おばあさんがVRグラスを外すと、ちょうどおじいさんもVRを外して帰ってきた。

「あら、おかえりなさい。すぐ夕飯作るわね。今日も楽しかったわぁ」

「ただいま。わたしも手伝おうか」

 おじいさんとおばあさんは立ち上がって腰を伸ばすと、一緒に台所へ行った。

「おばあさん、なんだか最近元気になったなぁ」

「そうかしら? でも、あなたも最近元気そうよ」

「ははは、そうかもしれないなぁ」

「今日はゲームで何か面白いことはありましたか?」

「あぁ、今日はイベントをやってな。ウールのジャージをもらったんだ」

「あら、なんだか高級そうね」

「ああ、とても着心地が良いんだよ。おばあさんは、お店順調かい?」

「ええ、今日は新しいキノコを見つけて、また新しい商品ができたんです」

「へぇ。おばあさんはお店を繁盛させているんだなぁ」

「いえいえ、わたしは大したことなんかやってないですよ」

 2人はゲームの話をしながら一緒に夕飯を作り始めた。

 そして、2人で楽しく夕飯を済ませると、おじいさんは明日早いので、今日は早めに寝ることにした。


 ー 翌朝、午前5時 ー

 おじいさんが寝室から出てくると、テーブルにサンドイッチが置いてあった。

 そして横には「朝ごはんです。いってらっしゃい」の書き置きがあった。

「あぁ、ありがたいなぁ」

 おじいさんはテーブルに座ると、ゲームのくせで思わず脳波でサンドイッチを取ろうとしてしまった。

「ああ、そうか。現実世界では、ちゃんと手で取らないとなぁ。ははは」

 おじいさんは笑いながらサンドイッチを手に取ると、次々とサンドイッチを食べていった。

「なんだか最近楽しいせいか食欲があるなぁ。本当に元気になったのかもしれないな……」

 おじいさんはそう呟いて朝食を食べ終わると、引き出しからペンを取り出した。

 そして、おばあさんの書き置きのメモに「ごちそうさまでした。ありがとう」と書き足すと、立ち上がって軽く気合を入れた。

「よし、今日はメインクエストがんばろう」

 おじいさんはVRグラスをかけてゲームにログインした。


 おじいさんが時計台の前に現れると、もうすでに全員集まっていた。

「おはようございます! みなさん、お早いですね」

「「おはようございます!!」」

 おじいさんたちは挨拶を交わすと、おじいさんは哲夫と和代が格好良くなっている事に気がついた。

「哲夫さん、和代さん、とてもお似合いですね」

 すると甲冑姿かっちゅうすがたの哲夫が答えた。

「ありがとうございます! 孫が私達に買ってくれたんですよ。これで私たちも戦いに参加できます」

 美しい軽装けいそうよろいを着た和代も嬉しそうに言った。

「美咲ちゃんが哲夫さんを騎士に、わたしを召喚士にしてくれたんです」

「おお、それは頼もしいですね!」

「はい、美咲ちゃんのおかげで、軍神さんっていう強い人を呼び出せるようになったんですよ」

「あぁ、それはとても心強いです。実は軍神さんとは戦った事があるのですが、とても強いですからね。ははは」

 その時、おじいさんは元自衛官たちの弓が随分ずいぶんと立派になって、格好の良い服になっている事に気づいた。

「おお、みなさんも立派な弓をお持ちですね」

 それを聞いて元自衛官の山口が答えた。

「ははは。我らは課金というものをしまして……」

 横にいた大槻も少し嬉しそうに言った。

「我々三人は、ガチャで強い武器と防具を手に入れました」

 木下も笑いながら言った。

「最初は課金に少し気が引けたのですが、家内かないが許してくれまして……。ははは」
 
 おじいさんはパワーアップしたメンバーに嬉しそうにすると、みんなに尋ねた。

「みなさん、本日のクエストなのですが、私の同世代の友人も参加しても宜しいでしょうか」

「もちろんですとも」
「一緒に行きましょう」
「みんなでクリアしましょう」
「大勢のほうが楽しいわね」
「そうだな」

「ありがとうございます!」

 こうして、メンバーは大熊笹を待つことにした。

 ◆

 5時45分を過ぎた頃、大熊笹がログインしてきた。

 それを見たおじいさんは笑顔で大熊笹に挨拶をした。

「あ、大熊笹さん、おはようございます」

「ひろしさん、おはようございます」

 大熊笹が笑顔で答えると、おじいさんは大熊笹をみんなに紹介した。

「みなさん、こちらが大熊笹さんです。柔道のオリンピック金メダリストなんです」

「「おおーー!!」」

 大熊笹は少し照れくさそうに頭を下げた。

「みなさん、宜しくおねがいします」

「これは心強いですね!」
「宜しくお願いします」
「金メダリストとご一緒できるとは」
「素敵ですね」
「すごいなぁ」

「では行きましょうか!」

「「はい」」

 おじいさんの号令で、みんなは海賊のいるハーイムへと向かった。

 ◆

 ハーイムへ向かう途中、おじいさんは思い出したようにみんなに提案した。

「あの、荷台に乗ることになってしまうのですが、もし良かったら軽トラがあるので乗っていきますか?」

「おお、車ですか!」
「いいですね」
「そうしましょう」
「まぁ、それは便利ですね」
「たすかります」

 ボンッ!

 おじいさんは、軽トラを出現させた。

 元自衛官の3人はヒラリと荷台に乗り込むと、大熊笹も続いた。

 哲夫は元自衛官の山口に助けられてよじ登った。

「あ、ありがとうございます。……よいしょ」

 荷台によじ登った哲夫は元自衛官たちに言った。

「みなさん、ヒラリと乗り込みますな」

「我々はトラックでの移動がほとんどでしたから。ははは」

「いやぁ、自衛隊のみなさまには頭が下がります」

 最後に和代が助手席に乗り込むと、おじいさんが窓から顔を出してみんなに言った。

「では、出発しますね」

「「はい」」

 ブゥーー……ン

 軽トラはハーイムへ向かってゆっくりと走り出した。


 ハーイムへ向かう途中、元自衛官の山口が大熊笹に尋ねた。

「その柔道着は格好良いですね。どこで買われたのですか?」

「ありがとうございます。これはコーシャタで買ってもらいました」

「なるほど、防御力はあるのでしょうか」

「ええと、防御力のある服を着て……、なんと言いましょうか、コーシャタの服を上から着ているというか」

「ほぉ、それは興味深いですね」

「見た目はコーシャタの服なのですが、中身は防御力のあるものでして」

「なるほど、意味はわかりました。防具を着ていてもコーシャタで買った服の見た目になるのですね」

「はい、そうなんです」

 すると横に居た元自衛官の木下が山口に言った。

「山口殿、これはやはり、あの店に」

「うむ、そうだな。コーシャタのミリタリーショップへ行かねばなるまい」

 それを聞いていた同じく元自衛官の大槻も嬉しそうに言った。

「やはり、迷彩服めいさいふくでないと気分が上がりませんからね」

「ですな!」

「「ははははは」」

 荷台で服の話で盛り上がっていると、ほどなくして軽トラはハーイムに到着した。


 全員が軽トラから降りると、おじいさんがクエストの説明をした。

「みなさん、この町に近づくと海賊が来ますので、それを倒した後に親分おやぶんと対決します。では気をつけて行きましょう」

「「はい!!」」

 おじいさんたちが町に近づくと、いつものようにNPCの町人が走ってきて、海賊がやってきた。

 NPCの町人はおじいさんの前に来ると話し始めた。

「助けてください! あの海賊は、この町に伝わる、伝説の宝玉を狙って……」

「弓用意! 撃て!」

 ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ!

 さっそく追いかけてきた海賊に元自衛官の3人が矢を放つと、大熊笹も走り込んでいった。

「はい、よいしょ」

 ズダン!

 大熊笹が海賊を投げると、哲夫が走り込んで刀を振り下ろした。

「やあ!」

 ブンッ、ズバッ!

 そして、おじいさんの石もうなりを上げて飛んでいった。

 シャァァアアアァァ……、ズガン!

「「うわぁああ」」

 海賊たちは総攻撃を受けて全滅すると、町人がお礼を言いにやってきた。

「ありがとうございます! お守り頂いたお礼に、ぜひ伝説の宝玉を見ていってください」

 NPCの町人は一行いっこうを村の中心の大きな宝物庫へ案内した。
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