永遠の生命と想い出の花園 〜鷹華キャラシナリオ〜

最終話 あなたの憧れであるために

「いらっしゃいませ！2名様でしょうか？ 」

私の名前は鷹華ようか。

今は長い間お嬢様とともにお世話になったこの宿屋で住み込みで働いている。

店長様は、そんなのいいのに、といっていただけたのだけれど他に行く当てもないというと快く働かせてくれた。本当にいい方だと思う。

幸いにも私は召使いとして働いていた経験があるためすぐに仕事を覚えることはできた。

できたのだが……ひとつだけできないことが、いや、できなくなってしまったことがあった。


パリンッ、と鋭い音が厨房に響いた。店長様が心配そうに駆け寄ってくる。

「…嬢ちゃん、怪我はないか？皿洗いは俺がやるから。…毎回割られちゃたまんないしな 」

「……申し訳ございません 」

…そう。皿洗いをしようとすると手が震えるようになってしまった。おそらく、心の何処かで無意識に"彼女"のことを意識してしまっているのだろう。お嬢様が亡くなってからというもの、私のなかの彼女という存在がより一層強くなっている気がする。

「…やっぱりまだつらいか？ 」
店長様が話しかけてきてくださった。

「…いえ、もう平気です… 」

そう言って皿の破片を拾い集める。

「……無理はせんようにな 」

店長様がそう言って立ち去っていく。



それでも私ももう変わらないといけない。お嬢様は最後に言ってくださった。

『…ありがとう鷹華…あなたは私の憧れよ… 』

彼女の憧れであるために、私は頑張らないといけないのだから。最後に見せた彼女の素敵な笑顔を思い出して、私は立ち上がった。

「ありがとう鈴りん、私もあなたに会えて良かったです！ 」

そう小声でいうとまた仕事に取り掛かった。

いつかみたいに、窓から見える空は雲ひとつない青空だった。