24 / 76
4 王国の危機
24 イル・ネクロ
しおりを挟む
イル・ネクロ……それは巨大な龍の魔物であり、伝承によると数百年に一度この辺りに現れるらしい。
元々この国のある場所はイル・ネクロの通り道だったらしく、それに気付かずここに国を築いてしまったためにどうしたものかと考えている内に今に至ると言う。
それだけならば今すぐどうこうということは無いだろう。
しかし今、この国にイル・ネクロが向かっていると周辺諸国から連絡があったようで、それはもう大変な騒ぎになっている。
何しろ他の街にイル・ネクロが訪れた際には、防衛施設が全く意味を持たずあっと言う間に壊滅したと言う報告もあるのだ。
当然この国が襲われればひとたまりもない。
そのため国王は国の保有している財だけでは無く私財を投じてまで、各国から有力な冒険者や傭兵を集めている。
そして集まった者たちで迎撃作戦を行うのだと言う。
この国が陥落すれば周辺諸国の貿易が停止してしまうため、辺り一帯に大きな被害が出てしまう。それを何としてでも食い止めたいのだろう。
冒険者が語った内容は概ねこんなものだった。
「情報提供助かるよ」
「俺もこの国出身じゃないから詳しくは知らないんだけどな。でもこの作戦で活躍すれば報酬たっぷりだから参加しない手は無いぜ!」
そう言ってその冒険者はギルドの奥へと向かって行った。
どこか楽観的な印象を受ける者だったが、それなりの装備を纏っていたため実力者であることは間違いないのだろう。
だとしても緊張感と言うか危機感が無さすぎる気もするが。
「私たちはどうするの?」
「受けるにしても情報が少なすぎるな。何の対策も無しに挑んでいい相手とは思えない」
詳しくはわからないものの、話し通りの存在となるとSランクパーティが複数でも辛いのではないだろうか。
魔物は通常『Eランク』から『Sランク』までのランク付けが行われている。
しかしその枠組みに当てはまらない『特異ランク』とされる例外的な魔物が存在する。その魔物は勇者パーティや複数の国の軍隊が出向くことになる程に強力な存在だ。
なお後から聞いた話だが、魔人ファレルロも特異ランクに指定される予定だったらしい。勇者パーティが敗北したのだから当たり前と言えば当たり前か。
それらを踏まえると、今回のイル・ネクロは恐らく特異ランクである気がする。
とは言えこれはあくまで経験則からの推測であって、普通にSランクの魔物である可能性もある。そう願いたい。
……これほどに冒険者が賑わっている時点でその願いも潰えているようなものかもしれないが。
「そこの冒険者さんも参加希望ですか?」
「え!? いえ俺たちは」
突然受付嬢が話しかけてくる。毎度の事だが受付嬢は気配遮断のスキルでも持っているのかと思う程にその接近に気付けない。妙なことをしたら背後からサクっとやられそうだ。
「参加希望であればこちらの書類にサインをお願いしますね」
受付嬢はやたらグイグイと迫って来る。
恐るべし王国の受付嬢。きっと普段からかなりの修羅場を潜り抜けているのだろう。面構えが違う。
「イル・ネクロについて情報が少なすぎますからね。今は一旦……」
「それなら心配はありませんよ。作戦前に情報交換含めての作戦会議を行いますので」
「そうなのですか?」
各パーティ単位での戦いになるのかと思っていたが、どうやら全員で一斉に戦いを挑む方式の様だ。
なおさらイル・ネクロが特異ランクである可能性が高まった。いやほぼ確実だろう。
それだけ入念に準備を進めなければならないと言うことは、それだけ国にとって脅威になると言うことに他ならない。
しかしそれなら好都合でもある。今以上の確かな情報が手に入る可能性も高い上に、先ほどの冒険者が言っていたように報酬の多さも魅力的だ。
作戦に参加するなら、ひとまず皆の意見も聞いておかないといけないな。
「皆はどうしたい」
「もしかして、私たちが日和って依頼を受けないと思ってるの?」
「はは、まさか」
メルもリアも、ランもファルも、皆その目には決意と覚悟が滲み出ていた。
そうか、俺たちは仮にも魔人と戦ったパーティだ。……もう俺が心配する必要も無いのかもな。
「早速贖罪が出来て嬉しいぞ。この国と、この国に住む人々を守って見せよう」
自らが過去に行った殺しの罪滅ぼしを行う絶好の機会であるためか、一際ファルは張り切っていた。
しかし危なっかしさも感じる。贖罪に力を入れ過ぎて自らのことを蔑ろにしている。そんな不安定さも感じてしまう。
「その意気だファル。だが決して人々のために死ぬみたいなことはやめてくれよ。お前はもう俺たちの仲間なんだから別れるのは悲しいんだ」
「……そうだな。忘れぬよう心に刻み込んでおこう」
そう言ってほほ笑んだファルだが、急にそんな表情をしたものだから思わずドキっとしてしまった。
落ち着け。今は少女の見た目だが中身は魔人だ。
一旦心を落ち着けるためにも、俺は作戦に参加するためのサインを書きに受付へと向かった。
元々この国のある場所はイル・ネクロの通り道だったらしく、それに気付かずここに国を築いてしまったためにどうしたものかと考えている内に今に至ると言う。
それだけならば今すぐどうこうということは無いだろう。
しかし今、この国にイル・ネクロが向かっていると周辺諸国から連絡があったようで、それはもう大変な騒ぎになっている。
何しろ他の街にイル・ネクロが訪れた際には、防衛施設が全く意味を持たずあっと言う間に壊滅したと言う報告もあるのだ。
当然この国が襲われればひとたまりもない。
そのため国王は国の保有している財だけでは無く私財を投じてまで、各国から有力な冒険者や傭兵を集めている。
そして集まった者たちで迎撃作戦を行うのだと言う。
この国が陥落すれば周辺諸国の貿易が停止してしまうため、辺り一帯に大きな被害が出てしまう。それを何としてでも食い止めたいのだろう。
冒険者が語った内容は概ねこんなものだった。
「情報提供助かるよ」
「俺もこの国出身じゃないから詳しくは知らないんだけどな。でもこの作戦で活躍すれば報酬たっぷりだから参加しない手は無いぜ!」
そう言ってその冒険者はギルドの奥へと向かって行った。
どこか楽観的な印象を受ける者だったが、それなりの装備を纏っていたため実力者であることは間違いないのだろう。
だとしても緊張感と言うか危機感が無さすぎる気もするが。
「私たちはどうするの?」
「受けるにしても情報が少なすぎるな。何の対策も無しに挑んでいい相手とは思えない」
詳しくはわからないものの、話し通りの存在となるとSランクパーティが複数でも辛いのではないだろうか。
魔物は通常『Eランク』から『Sランク』までのランク付けが行われている。
しかしその枠組みに当てはまらない『特異ランク』とされる例外的な魔物が存在する。その魔物は勇者パーティや複数の国の軍隊が出向くことになる程に強力な存在だ。
なお後から聞いた話だが、魔人ファレルロも特異ランクに指定される予定だったらしい。勇者パーティが敗北したのだから当たり前と言えば当たり前か。
それらを踏まえると、今回のイル・ネクロは恐らく特異ランクである気がする。
とは言えこれはあくまで経験則からの推測であって、普通にSランクの魔物である可能性もある。そう願いたい。
……これほどに冒険者が賑わっている時点でその願いも潰えているようなものかもしれないが。
「そこの冒険者さんも参加希望ですか?」
「え!? いえ俺たちは」
突然受付嬢が話しかけてくる。毎度の事だが受付嬢は気配遮断のスキルでも持っているのかと思う程にその接近に気付けない。妙なことをしたら背後からサクっとやられそうだ。
「参加希望であればこちらの書類にサインをお願いしますね」
受付嬢はやたらグイグイと迫って来る。
恐るべし王国の受付嬢。きっと普段からかなりの修羅場を潜り抜けているのだろう。面構えが違う。
「イル・ネクロについて情報が少なすぎますからね。今は一旦……」
「それなら心配はありませんよ。作戦前に情報交換含めての作戦会議を行いますので」
「そうなのですか?」
各パーティ単位での戦いになるのかと思っていたが、どうやら全員で一斉に戦いを挑む方式の様だ。
なおさらイル・ネクロが特異ランクである可能性が高まった。いやほぼ確実だろう。
それだけ入念に準備を進めなければならないと言うことは、それだけ国にとって脅威になると言うことに他ならない。
しかしそれなら好都合でもある。今以上の確かな情報が手に入る可能性も高い上に、先ほどの冒険者が言っていたように報酬の多さも魅力的だ。
作戦に参加するなら、ひとまず皆の意見も聞いておかないといけないな。
「皆はどうしたい」
「もしかして、私たちが日和って依頼を受けないと思ってるの?」
「はは、まさか」
メルもリアも、ランもファルも、皆その目には決意と覚悟が滲み出ていた。
そうか、俺たちは仮にも魔人と戦ったパーティだ。……もう俺が心配する必要も無いのかもな。
「早速贖罪が出来て嬉しいぞ。この国と、この国に住む人々を守って見せよう」
自らが過去に行った殺しの罪滅ぼしを行う絶好の機会であるためか、一際ファルは張り切っていた。
しかし危なっかしさも感じる。贖罪に力を入れ過ぎて自らのことを蔑ろにしている。そんな不安定さも感じてしまう。
「その意気だファル。だが決して人々のために死ぬみたいなことはやめてくれよ。お前はもう俺たちの仲間なんだから別れるのは悲しいんだ」
「……そうだな。忘れぬよう心に刻み込んでおこう」
そう言ってほほ笑んだファルだが、急にそんな表情をしたものだから思わずドキっとしてしまった。
落ち着け。今は少女の見た目だが中身は魔人だ。
一旦心を落ち着けるためにも、俺は作戦に参加するためのサインを書きに受付へと向かった。
63
あなたにおすすめの小説
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる