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4 王国の危機

23 王国

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 俺たちは装備を新調するためにルガレア王国へとやって来た。
 人の姿になったファルの装備を整えるというのも理由の一つだが、金が溜まりパーティとしての実力も上がってきたのでいっそのこと全員の装備を一新させようというわけだ。
 ……流石に皆揃ってオリハルコン装備みたいなのは金銭的に無理だが。
 
「流石はルガレア王国。とにかく規模が大きいな」

 ルガレア王国の城門は荘厳な雰囲気を醸し出しており、何度見上げても見飽きることは無い。それだけ圧巻の存在感を放っているのだ。
 
「本当だよね。外側を一周するだけで日が暮れちゃいそうだよ」

 リアの言う通り外周を周るだけでとてつもなく時間がかかりそうな程、ルガレア王国はとにかく大きい国である。
 しかし国の発端を考えるとそれもそのはずだ。
 ルガレア王国は周辺諸国のちょうど中間あたりに存在しているため、貿易が盛んに行われている。
 最初の内は各国の商人が集まって来て小さな集落をつくる程度のものだったらしいが、貿易の規模が拡大するとともにどんどん大きくなって行き、最終的に国を築き上げたという歴史があるのだ。
 そしてこの国の王は元商人であったためか、商人の待遇が良くなるようなシステムを多く作り出している。希望があれば店舗も斡旋され、商売を行う上での税も低めに設定されている。
 まさしく商人にとっては天国のような環境であろう。
 そのような事柄も相まって、装備品だけでは無く薬品や調度品、魔法を用いた道具であるマジックアイテムなども数多く集まっている。
 色々揃えるのならここ以上に向いている場所は無い。そう断言できる程だ。

 それだけ発展していれば当然人も集まるものだ。居住区の発展具合からもそれが窺える。
 しかし今日は妙だった。人の往来があまりにも少なすぎるのだ。いや、少ないと言うより全く無いと言って良いだろう。
 ルガレア王国に来てから出会ったのは、城門を守っている兵士と巡回している兵士だけである。
 
「……なんか、人が少なすぎないか?」

「だが人の持つ魔力自体は感じる。どうやら皆建物の中にいるようだな」

 ランは住民の魔力を感知したようで、少なくとも人はいるということを伝えてくれた。
 つまり何かしらの理由があり住民は外へ出ていないと言うことになる。

「ちょっと不気味だね……」

 あまりにも静かすぎる街に、ある種の不気味さを感じてしまう。
 この状況について誰かに聞こうにも、そもそも誰もいない以上はどうしようもない。

「……ひとまず装備を買いに行きましょう?」

「そうだな」

 メルはこの場の異常性に耐えられなくなったのか武具屋へ行くことを進めた。
 そのため一旦このことは置いておくことにする。国内の状況がどうこうというのは今回関係ないことだ。
 ひとまず俺たちは目的である装備の新調を優先し武具屋へと向かった。

 しかし、その武具屋は閉まっていた。
 それどころか雑貨屋や食事処などありとあらゆる店が開いていなかった。商売が盛んな国であるはずが、もはやどの商店も開いていない寂しい国になってしまっている。
 明らかな異常事態である。
 
「やはり何かがおかしい」

「国民の休日……と言うわけでも無いのだろうな」

 一斉に揃って休日と言う節も無くは無いが、それならば人の往来が無いのは不自然だ。出かけている人が一人もいないなんてそんなことありえないだろう。

「ギルドでなら何かわからないかしら」

「それだ」

 メルがギルドへ行くことを提案する。
 今の今まで頭から抜け落ちていたが、確かに冒険者が集まるギルドでなら何かしらの情報が手に入るはずだ。流石にギルドが閉まっているということも無いだろうしな。
 そう願い俺たちはギルドへと向かった。




 これだけ街中の人の出入りが無いのだから、ギルドも寂しくなっているものかと思っていた。
 しかしギルドにたどり着いて驚愕する。
 今までどのギルドでも見たことのない程に人がいて活気があったのだ。

 酒と焼けた肉の匂いが建物内に充満している。吟遊詩人のものと思わしき歌声や楽器の演奏も聞こえてくる。
 先ほどまでの街の静けさが嘘のように賑わっている。

「外には全く人がいなかったのにこれはどういう……」

「確かにこの国は大きいから冒険者も多いでしょうけど……いくらなんでもこれは多すぎないかしら?」

 もちろんこれだけ大きな国の冒険者ギルドであればそれだけ規模も大きいだろう。
 俺の故郷の村の冒険者ギルドはせいぜい十数人が集まるのが限界な程の規模であり、そこと比べればここは何倍も大きい。それだけ人が集まると言うことでもある。

 だが、だとしてもこの賑わい方は異質だ。

「お、アンタらも作戦に参加するのか?」

「作戦?」

「なんだ知らないのか? この国に近づいている脅威……『イル・ネクロ』をよ」

 入口付近で立ち尽くしていた俺たちに声をかけてきた冒険者は『イル・ネクロ』について語り始めたのだった。
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