転生勇者と黒龍少女~戦死エンドから逃れるために黒龍の少女と添い遂げようとしたら、いつの間にかゲームには無かったルートに進んでしまいました~

遠野紫

文字の大きさ
12 / 39
プロローグ

12 卒業試験

しおりを挟む
 学内剣術大会で圧倒的なまでの力の差を見せつけ、優勝をかっさらった里奈。
 その影響は大きく、彼女は冒険者学校内どころか町全体に名が知られる程の有名人となっていた。

 まあそれも考えてみれば当然の事ではある。
 冒険者学校にはかなりの実力者がいるのだ。そう言った存在を容赦なくぶち飛ばしていったのであれば、こうなるのも当然と言えば当然のことと言えるだろう。

 なお、その事実に耐えきれなかったあの少年は自ら冒険者学校を去っており、その後どうなったのかは誰も知らない。

 とは言え彼がどうなろうと里奈には関係が無いのもまた事実だ。
 それどころか彼が去ったことで彼と共に里奈のことを迫害をしていた者たちもいなくなっていた。
 つまり、里奈はこれでやっと順風満帆な冒険者学校ライフを送ることが出来るようになった訳である。

 それもあってか、里奈は卒業試験までの二年間の内に冒険者として活動する上で必要なありとあらゆる事を満足に学ぶことが出来たのだった。

 唯一の心残り……或いは不満点があるとすれば、対等に戦える者がいないために魔法や剣術の腕を上げることが出来なかった所だろう。
 しかし、それを抜きにしてもこの二年間は間違いなく彼女にとって有益な二年間であった。

 事実、このまま冒険者として放り出されても充分やっていける程の知識と実力が今の里奈にはある。
 なのでこのまま卒業して終わり……と行きたい所だが、そういう言う訳にもいかなかった。
 冒険者学校には最後の最後に「卒業試験」があるのだ。
 
 卒業試験とは言っても、この試験は卒業のための試験では無い。
 では何のための試験なのか……それを説明するためにも、まずは冒険者ランクについて語る必要がある。

 冒険者ランクと言うのはその名の通り冒険者に割り当てられたランクであり、簡単に言えばその冒険者がどれくらいの実力を持っているのかを示すランクだ。

 この冒険者ランクにはFランクからSランクまでの7つのランクがあり、基本的に冒険者登録をした者は皆Fランクから始めることになる。
 その後、冒険者として活動していく中で一定数の依頼をこなしたり強力な魔獣を討伐するなどの功績をあげることで、そのランクは少しずつ上昇していくのである。

 ……と、本来はそう言う仕様なのだが、冒険者学校の卒業試験を受ける場合はその限りではない。
 冒険者学校を卒業した者はそのまま冒険者として登録を行うことが可能となり、その際のランクが卒業試験の結果次第で変動するのである。

 要は卒業試験で結果を残せば通常よりも高ランクから冒険者活動を始めることも可能となる訳だ。
 と言うより、冒険者学校に入学する者のほとんどはこの仕組みを利用するために入学していると言っても過言ではなかった。

 そんな夢のあるシステムがこの卒業試験と言う物の本質であるため、当然里奈も特段気合を入れて臨むつもりだった。
 当たり前の話だが冒険者ランクが高くなるほどに受けられる依頼にも危険なものが増えていくため、実力を高めたいのであれば冒険者ランクが高いに越したことは無いのである。

 更に付け加えるとすれば、高ランク向けの依頼は報酬が多い……と言ったところだろうか。
 報酬は危険度に見合った額が与えられるため、手っ取り早く財を築きたいのであればそれこそ高ランクを目指すべきなのだ。
  
 そんな訳で迎えた卒業試験当日。
 今年の試験内容は町から少し離れた場所にある森での魔獣の討伐だった。

 この森には多くの魔獣が生息しているが、その内の大半は危険度の低い低級の魔獣だ。
 中にはやや歯ごたえのある種類も混ざっているものの、冒険者学校を卒業する頃の実力であればまず負けることは無いであろう魔獣がほとんどである。

 ……しかし、今日この日に限っては状況が違った。

「ひぃっ……!? な、なんなんだよコイツ……!!」

「こんなの聞いてねえぞ!?」

 卒業試験を受けていた生徒たちの前に、突如として一体のクッソデカい魔獣が現れたのだ。
 彼らの反応からもわかる通り、こんなサイズの魔獣は本来この森には存在しない。

 だがこうなってしまった以上、その常識は所詮は過去の情報でしかなかった。
 もはやそんなものに意味は無いのだ。
 現に今、彼らの前にはその魔獣がいるのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...