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エピローグ
「幽霊少女が俺の恋愛成就を全力で阻止してくる。」
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ショッピングモールの喧騒にも掻き消されない、透き通った声。
まさか、と思った。
だって、幽子は既に成仏していて――俺自身、この目ではっきり見届けたのだ。
幻聴かなにかだと思うしかない。
とりあえず、もう一度服を着て、荷物を纏めて歩き出す。
きっと、このショッピングモールに居ること自体が良くなかったのだろう。
思い出の場所にいることで、破損した脳が刺激を受けたのかもしれない。
自分の異常さを認めて、声とは逆の方向へ、歩く、歩く。
しかし、例の叫び声は歩けども歩けども後ろにぴったりとついてきて。
そして、段々と距離を縮めてくる。
店を出て、大通りをひたすら家の方角へ。
それでも、声は止んでくれない。
ああ、もう! どうしてついてくるんだよ、うるさいなぁ!
幻聴だとは分かっていても、鬱陶しい。
痺れを切らした俺は、ついに後ろを振り返り、自分の精神に決着をつけることにした!
勢いよく身体を捻り、声のする方を向く。
そして、俺の方こそ叫んでやろうかと息を大きく吸い込んだところで……。
目の前に、おっぱいがあることに気が付いた。
紫色の下着に包まれた、官能的なおっぱい。
唖然として見ていると、そのおっぱいはだんだんと俺と距離を取って移動し――。
真っ白な肌に上下紫の下着を身につけた、幽霊の姿を形づくった。
俺は、目の前でポーズを取るド変態幽霊に、手を伸ばす。
どうせこの幽子は、俺が作り出した幻想、幻覚。
それならばいっそ、自分の手で消してしまおう、と。
ゆっくりと、開いたてのひらを幽子の胸に近づけていく。
そして、肌と空気の境目に触れた瞬間。
……ふにゅっ。
ひんやりとした、肌の感触があった。
…………本物?
「怜太さんっ! 再会したと思ったらいきなりセクハラですか!」
俺に触られながら、顔を真っ赤にした幽子が喚く。
しかし、そんなことはどうだっていい。
今聞きたいのは、この状況についての詳しい説明だ。
「お前……どうして、また俺の前に……?」
成仏したはずの幽子が、まだ人間界に幽霊として存在している。
その事実をまだ信じられないし、理由が分からない。
訊くと、幽子は照れたように舌を出して、赤面しながら答えてきた。
「ええとですね、その……成仏しなかった理由なんですけど……
新しい未練が、生まれちゃったみたいで……えへへ……」
その続きをなかなか言わない幽子に向かって、彼女に触れられたのをいいことに、秘儀・くすぐりを繰り出す。すると、彼女は苦しそうに腹を捩らせながら「いいます! いいますから!」と、観念したように床を叩いた。
改めて、幽子が白装束を身につけるなど身支度を整えて口を開く。
果たして、彼女が成仏をしなかった本当の理由とは――
「新しい未練が出来ててですね、それが……
……怜太さんと、結ばれることだったからなんですっ!」
恥ずかしそうに、それでいて満面の笑みで答える彼女。
なんと――幽子の未練は、更新されていたのだ。
以前の「友達作り」から、「恋人作り」へ。
「えへへ……」と、恥ずかしそうに笑う彼女。
そんな彼女の姿を見て、俺は不覚にもドキドキしてしまった。
これからも、俺の人生には常に幽霊が憑いてきて、こうして感情をかき乱すんだろう。
でも、俺だって一緒にいる間、少しは女の子に耐性が出来たんだからな!
以前のようにやられっぱなしだと思ったら大間違いだ。
俺も、自分の恋愛成就を全力で推し進めてやるんだから!
二人の間に、涼しい風が通り抜ける。
それは、幽子の復活を祝福しているかのように爽やかな風で。
「じゃあ、幽子……とりあえず、帰るか」
「はいっ! ……そういえば、ゲームの対戦する約束してましたよね?」
「……よし、帰ったら成瀬にでも連絡して遊びに行こうかなー!」
「無視しないでくださいいいいい!」
だから俺たちは、背中を押されるように家路を急いだ。
――きっと今日も、明日も、明後日も。
幽子は、俺の恋愛成就を全力で阻止してくる。
まさか、と思った。
だって、幽子は既に成仏していて――俺自身、この目ではっきり見届けたのだ。
幻聴かなにかだと思うしかない。
とりあえず、もう一度服を着て、荷物を纏めて歩き出す。
きっと、このショッピングモールに居ること自体が良くなかったのだろう。
思い出の場所にいることで、破損した脳が刺激を受けたのかもしれない。
自分の異常さを認めて、声とは逆の方向へ、歩く、歩く。
しかし、例の叫び声は歩けども歩けども後ろにぴったりとついてきて。
そして、段々と距離を縮めてくる。
店を出て、大通りをひたすら家の方角へ。
それでも、声は止んでくれない。
ああ、もう! どうしてついてくるんだよ、うるさいなぁ!
幻聴だとは分かっていても、鬱陶しい。
痺れを切らした俺は、ついに後ろを振り返り、自分の精神に決着をつけることにした!
勢いよく身体を捻り、声のする方を向く。
そして、俺の方こそ叫んでやろうかと息を大きく吸い込んだところで……。
目の前に、おっぱいがあることに気が付いた。
紫色の下着に包まれた、官能的なおっぱい。
唖然として見ていると、そのおっぱいはだんだんと俺と距離を取って移動し――。
真っ白な肌に上下紫の下着を身につけた、幽霊の姿を形づくった。
俺は、目の前でポーズを取るド変態幽霊に、手を伸ばす。
どうせこの幽子は、俺が作り出した幻想、幻覚。
それならばいっそ、自分の手で消してしまおう、と。
ゆっくりと、開いたてのひらを幽子の胸に近づけていく。
そして、肌と空気の境目に触れた瞬間。
……ふにゅっ。
ひんやりとした、肌の感触があった。
…………本物?
「怜太さんっ! 再会したと思ったらいきなりセクハラですか!」
俺に触られながら、顔を真っ赤にした幽子が喚く。
しかし、そんなことはどうだっていい。
今聞きたいのは、この状況についての詳しい説明だ。
「お前……どうして、また俺の前に……?」
成仏したはずの幽子が、まだ人間界に幽霊として存在している。
その事実をまだ信じられないし、理由が分からない。
訊くと、幽子は照れたように舌を出して、赤面しながら答えてきた。
「ええとですね、その……成仏しなかった理由なんですけど……
新しい未練が、生まれちゃったみたいで……えへへ……」
その続きをなかなか言わない幽子に向かって、彼女に触れられたのをいいことに、秘儀・くすぐりを繰り出す。すると、彼女は苦しそうに腹を捩らせながら「いいます! いいますから!」と、観念したように床を叩いた。
改めて、幽子が白装束を身につけるなど身支度を整えて口を開く。
果たして、彼女が成仏をしなかった本当の理由とは――
「新しい未練が出来ててですね、それが……
……怜太さんと、結ばれることだったからなんですっ!」
恥ずかしそうに、それでいて満面の笑みで答える彼女。
なんと――幽子の未練は、更新されていたのだ。
以前の「友達作り」から、「恋人作り」へ。
「えへへ……」と、恥ずかしそうに笑う彼女。
そんな彼女の姿を見て、俺は不覚にもドキドキしてしまった。
これからも、俺の人生には常に幽霊が憑いてきて、こうして感情をかき乱すんだろう。
でも、俺だって一緒にいる間、少しは女の子に耐性が出来たんだからな!
以前のようにやられっぱなしだと思ったら大間違いだ。
俺も、自分の恋愛成就を全力で推し進めてやるんだから!
二人の間に、涼しい風が通り抜ける。
それは、幽子の復活を祝福しているかのように爽やかな風で。
「じゃあ、幽子……とりあえず、帰るか」
「はいっ! ……そういえば、ゲームの対戦する約束してましたよね?」
「……よし、帰ったら成瀬にでも連絡して遊びに行こうかなー!」
「無視しないでくださいいいいい!」
だから俺たちは、背中を押されるように家路を急いだ。
――きっと今日も、明日も、明後日も。
幽子は、俺の恋愛成就を全力で阻止してくる。
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