記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

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第一章

第十三話 記憶喪失のショタは魔族を知る

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 この屋敷からお化けさんたちが居なくなった後、空から鳥が羽ばたくような音が聞こえてきた。

 僕は顔を上げて上空を見上げると、夜空に紛れて何かが降りて来る。

 鳥にしては大きい。それに人の形をしている。

 あれは何だろう?

 呆然と眺めていると、人の形をしたものが中庭に降りて来た。

 パッと見た感じは人間だけど、背中にコウモリのような羽が生えている。

 もしかして天使様が舞い降りたのかな?

 そう考えたけれど、よく思い出せば、物語に登場する天使さんとは雰囲気が違う。

 背中から生えている翼は白くないし、頭にはリングが浮かんでいない。

 天使様ではないのなら、この人はいったい誰だろう。

『どうして人間のガキがここに居る? 警備役のモンスターはなぜ排除しなかった』

 羽の生えているおじさんが僕を見ながら言葉を漏らす。

 警備役のモンスターって何?

『まぁ良い。誰かここに来い! このガキどもを始末しろ!』

 おじさんが声を上げて誰かに言う。だけど、数秒経っても誰も来なかった。

『おかしい。どうして亡霊ナイトやスペルブックが出て来ない?』

 誰もやって来ようとはしない廊下を見ながら、おじさんは首を傾げる。

「モンスターってもしかして勝手に動く鎧や本のこと? それならラルスが倒したわよ」

『何だと!』

 ローザがおじさんの疑問に答えると、彼は信じられないものを見たかのように大きく目を見開く。

「もしかしてあのお化けさんたちはおじさんの知り合いだった? それならローザを守るために倒したよ。多分今頃天に昇っているんじゃないかな?」

 おじさんが驚いていたので、彼女が言っていることは本当だと教える。

 するとおじさんは怖い顔で僕のことを睨み付けてきた。

 ものすごく怒っているよ! やっぱり倒したのがいけなかったのかな?

 お化けでもおじさんにとって大切な存在だったら、やっぱり許せないよね。

『お前が倒しただと? つまりお前は勇者なのか?』

 やっぱり謝るべきかと考えていると、おじさんが僕の正体は勇者なのかと訊ねてきた。

「僕は勇者様じゃないよ?」

『勇者ではない? もしそれが事実であったとしても、見過ごすことはできない。お前が育ち、成長すれば脅威となるだろう」

 おじさんが右手を掲げると、空中に大きな火の玉が現れた。

 凄い! 火の玉が出てきた! あれって魔法って言うやつだよね!この目で魔法を見たのは初めてだよ!

 僕が使える魔法は、肉体強化系の魔法だけ。だから炎を出す魔法を見ると、かなり興奮する!

『何だこのガキは、そんなに目を輝かせながら俺のことを見やがって。気持ち悪いんだよ!』

 おじさんが声を上げると火球が僕の方へと飛んで来る。

 早く避けないと丸焼けになっちゃう。

 地面を蹴って横に飛び、ローザを守るために彼女の前に立つ。

「おじさん! どうして火の魔法を飛ばしてくるの! 危ないじゃないか!」

『お前を排除すると言っておろうが! この俺のアジトに乗り込んだのが運の尽きだったな』

 再び空中に火の玉が現れる。

『今度こそ燃やしてやる!』

 また火の玉が飛んできた!

 迫り来る火球を避けるために、後ろに居るローザを抱き抱える。そして直ぐに横に飛んで躱した。

 あのおじさんは僕を狙っている。なら、ローザとは別々に行動した方が良いよね。

 中庭を見渡す。でも、彼女が隠れそうな場所は見当たらなかった。

 こうなったら、僕がおじさんの気を引いてローザが巻き込まれないようにしないと。

 その場にローザを下ろすと、地面を蹴って走り、ローザとの距離を開ける。

『まさか俺のファイヤーボールが避けられるとはな。やはりただのガキではない。今度こそお前を消し炭にしてくれる』

 走りながらおじさんの方を見る。彼は手を翳すと再び僕に向けて火球を放つ。

 今のスピードなら、あの火を避けることは難しくない。

 とにかく走り回っておじさんの火球が当たらないようにした。

『くそう! なんて速さだ。本当にガキなのか! 精霊でも乗り移っているんじゃないのか!」

 攻撃を避け続けているからか、おじさんは苛立っている様子だった。額に青筋が浮き上がっている。

 このまま攻撃を避け続けても、何も変わりそうにない。だったら、僕の方からも攻撃をしないと。

 視線を下げると、足元には石が転がっている。確か使用可能技に石投げって言うのがあったよね。

 石を拾っておじさんに投げ付ける。

『そんな石を投げられただけでこの俺が臆すとでも思っているのか!』

 投げた石をおじさんが掴むと、地面に投げ捨てる。

 こんなの変だよ。だって、ソフィーお姉さんやシルヴィアお姉さんは、僕が石を投げただけで、野盗とか言う悪いおじさんたちを倒したって言っていたもん!

 どうして今回は、僕が投げた石が通用しなかったの?

 考えてみると、ある可能性に思い当たる。

 もしかして、これまでは無意識だったからバカ力が発揮していたのかも。自分のユニークスキルのことを知って、意識的にスキルを発動するようになったから、失敗しているのかもしれない。

 もしかしたら違っているかもしれない。だけど何事もやってみないと分からないよ。

「今から的当てゲームを始めるよ! 的はおじさんね!」

 今から的当てゲームを始めることを宣言する。するとおじさんは理解していないみたいで首を傾げていた。

「行くよ! せーの!」

 地面に落ちている石を拾い、脳内に的当てゲームだと意識させる。

 これでユニークスキルの遊びが発動して、さっきと違った結果になるかもしれない。

 願いを込めて第一球を投げる。

『何が的当てゲームだ! ふざけるな!』

 おじさんが声を上げて飛んで来る石を手で弾こうとする。

『そんなバカな! さっきと威力が桁違いじゃないか!」

 投げた石をおじさんは弾こうとする。でも、両手を使っているのにも関わらず、弾き返すことはできなかった。

『くそおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 弾き返すことができなかったおじさんは、逆に僕が投げた石に弾き飛ばされた。

 屋敷の壁にぶつかり、口から血が流れている。

 やり過ぎちゃたかな? どうしよう! 大ケガになっていなければ良いけど?

『おのれ! こうなったら奥の手だ』

 ケガをしたおじさんを心配していると、彼は走ってローザのところに向かう。

「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 おじさんはローザを捕まえ、火球を生み出した。

『お前が一歩でも動いたら、こっちのガキを燃やす。こいつを助けたければ俺の言うことを聞くんだな』

 ローザが捕まってしまった! 僕はどうすれば良いの!
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