記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

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第三章

第六話 第二騎士団長の正体

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 ~ラルス視点~





 玉座の後に隠れて隠れん坊をしていると、玉座の間の扉が開いて一人の男性が入ってきた。

 シルヴィアお姉さんの言った通りだ。ここからはお姉さんのお手伝いをやり切らないと。

 今から1時間ほど前、突然シルヴィアお姉さんが家に訪ねて来た。

 お姉さんは、王様の命を狙っている悪者がいる。だから、命を助けてくれとお願いされた。

 悪いことをする人は、亡くなった後に地獄に落とされてしまう。罪を増やす前に止めないといけない。

 そんな気持ちから、僕はお姉さんのお願いを聞くことにした。もちろん、久しぶりのお城の中に入れると言うワクワクがあったってことも本当だよ。

 王様に近付く1人の男性を、隠れて覗き見しながら様子を見る。

 あの人は僕に気付いていない。まぁ、隠れん坊をしているから、見つかることはないと思う。

 この遊びは、透明化と気配遮断の効果を持つ。普通の隠れん坊と違う点は、隠れている人が声をかけるか、姿を現さない限り、存在を認識できないということだけ。

「王様! 覚悟! 貴様を倒し、私がこの国の王様となってやる!」

「何だと! アルベルト、貴様!」

 王様がアルベルトと呼んだ男性が腰に差してあった剣を抜き、王様の首に向けて振り下ろす。

 このままでは王様の首が飛んでしまう! そうはさせないから!

 急ぎ、王様に対してある遊びを発動させる。

「バカな! どうして王の首が飛ばない!」

 アルベルトさんが驚きの声を上げたのが耳に入り、ホッとした。

 良かった。どうにか王様を一時的に守ってあげることができたみたい。

「それは、王様が高鬼をしているからだよ。鬼役のあなたがいくら攻撃しても、鬼よりも高い場所にいる間は、10秒の間だけどんな攻撃も受け付けない」

 遊びの効果をお兄さんに教えつつ、玉座の後から出て姿を見せる。

 アルベルトさんが僕を見た瞬間、歯を食い縛って睨み付けてきた。

「おのれ! またしても邪魔をするか! ラルス!」

 お兄さんが僕の名を叫ぶ。だけど、僕はお兄さんのことを知らない。

「アルベルトさんは僕のことを知っているみたいだけど、僕はあなたの顔を見たのは初めてだよ」

「そうか。いくら規格外のガキでも、気配で私の真の姿を見破ることはできないみたいだな。良いだろう。本当の姿を見せてやる。

 不思議に思って首を傾げていると、アルベルトさんは黒い霧に包まれた。そしてその霧が消えると、冒険者の格好をした男性に姿を変えた。

「あなたは、僕に嘘をついた冒険者さん!」

「私、いや、俺の名はアンブル、アルベルトを殺害し、やつに成り代わった魔族だ。内部の近しい者に成り代わって国王を殺害して、この国を俺の物にする計画であった。だが、また俺の邪魔をしてくれるとはな」

「僕が前にあなたの計画を邪魔した?」

 心当たりがなく、再び首を傾げる。

「俺はウイークの計画を利用してラルスを連れ去り、ソフィーがシルヴィアとこの国の兵士を連れて来る予定であった。だが、ソフィーはシルヴィアだけを連れて来た。それが最初の邪魔だ」

 アンブルさんの説明を聞きながら、苦笑いをしてしまう。

 それって直接僕が邪魔をした訳じゃないじゃないか。なに人のせいにしているの?

「そして今回は王の後に隠れるなどと、卑怯なことをして俺の邪魔をしよって。それだけの力があるのなら、正々堂々真正面から待ち構えるものだろうが」

 いや、卑怯なのはアンブルさんの方だと思うのだけどなぁ? 王女様を攫って、兵士さんたちの数を減らしているうちに王様の命を狙う方が、卑怯だと思うのだけど。

 だけど僕が何を言っても聞く耳持ってくれそうな感じがしないし、ここは普通にスルーしておこう。

「僕、子どもだから大人の言うことが分からない?」

「ふざけるな! こうなったら、本気でお前を倒し、王の首を刎ねてくれる!」

 アンブルさんが声を上げ、人差し指を僕に向けてきた。その瞬間、火の玉が現れてどんどん大きくなる。

「こいつで骨を残すことなく消し炭にしてくれる! デスボール!」

 火球は更に大きくなり、熱量も増していく。このままあの火球に当たってしまえば、僕は間違いなく死んでしまう。

「王様、いーろ、いーろ、何の色って聞いて!」

「う、うむ。いーろ、いーろ、何の色?」

「赤!」

「何! 体が勝手に火球に向かって……ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 色鬼を発動し、王様に何色なのか訪ねてもらう。そして鬼となった僕が色を指定した瞬間、アンブルさんが自ら生み出した火球に突っ込んだ。

 この遊びは、対象となる人物が鬼の指定した色に触れてしまう。

 一番近い場所にある火球の色は赤、つまり赤色を指定してあげれば、アンブルさんは自滅すると言う訳だ。

「まさか、自分の生み出した魔法に自ら突っ込むとは、本当に哀れな男だ」

 玉座に座ったまま、王様がポツリと言葉を漏らす。

 こんな光景を目の当たりにしても動じないとは、王様は肝が据わっているな。

「熱い! 熱い! 熱い! おのれ! この俺を自滅に誘い込みやがって! ウォーター!」

 火だるまになっているアンブルさんが叫ぶ。すると空中から水が現れ、火球を消した。

 水蒸気が舞う中、アンブルさんの姿が見える。彼は所々火傷を負っており、痛々しい姿になった。

「くそう! よくも俺をコケにしやがって」

 アンブルさんが僕を睨んでくる。

 これで彼も、無闇に魔法を発動させることができないと分かったよね。

 さて、次はどんな遊びに付き合ってもらおうかな?
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