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第一章
第二十話 ティルヴィングの正体
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「さぁ、今からが本番だ。俺の命を引き換えに、お前たち全員を皆殺しにしてやる」
致命傷を負ったゼッペルが、魔剣ティルヴィングから現れた触手に体を突き刺す。
その自滅とも言える光景に、思わず言葉を失ってしまった。
ゼッペルのやつは何を企んでいるんだ? 自ら肉体を傷つけて何の得になる?
死に近づくだけの行動にしか見えないが、やつの顔を見る限り、この戦いの勝利を諦めていない。
必ず何かしらの裏があるはずだ。
「魔剣ティルヴィング! 俺の肉体をくれてやる! だからこの城にいる人間共を皆殺しにしろ!」
『キエエエエエエエエエェェェェェェェェェェ!』
ゼッペルが声を上げると、突然剣から音波が放たれる。
まるで野生生物の雄叫びのようだ。
「食らえ!」
ゼッペルが剣先を俺の方に向けた瞬間、ティルヴィングから触手が現れ、こちらに向けて放たれる。
「そうはさせるか!」
敵が攻撃を仕掛けたその時、トウカイ騎士団長が間に入ると、次々と触手を切り倒す。だが、斬られた触手は直ぐに再生が始まり、完全回復をすると再度襲ってきた。
敵の触手が再生をする度にトウカイ騎士団長が斬ってくれているが、あれではイタチごっこだ。
彼が時間稼ぎをしてくれている間に、俺が戦況を変える何かを見出さなければならない。
何か、何かないのか? この状況を打破する策は?
周囲を観察して逆転の一手を模索していると、ゼッペルの顔色が悪くなっていることに気付く。
ゼッペルのやつ、優勢なのに何かに耐えているかのように歯を食い縛っているな。しかも、触手が再生をする度に苦痛で顔を歪めている。
もしかして、触手が再生をする度に、魔剣ティルヴィングがゼッペルの生命力を奪っているのか?
なら、このまま耐え続ければ、やつは破滅へと導かれていくはずだ。
「トウカイ騎士団長はそのまま触手を斬り続けてください。俺も参戦します」
現状を維持するように言うと、屍と化した頭部のない大臣に近付き、彼が握っていた剣を拾う。そしてそのまま触手に近付くと、剣を振り下ろして一刀両断をする。
刃が触れた触手は切れて床に落ち、引き上げられた魚のように小さく飛び跳ねる。
しかしトカゲの尻尾のように、斬られた断面から新たな触手が生え、再び交戦してきた。
俺はあんまり剣術と言うのを身に付けていない。でも、護身程度のことなら一応学んでいる。
とにかく今は、ティルヴィングにゼッペルの生命力を吸い出させ、やつが死ぬのを待つだけだ。
使用者のいない剣であれば、動くことはできないはず。
敵の触手を攻撃し続け、その度に切っていく。すると敵の再生が遅くなった。
「触手の再生が遅い! もう少しだ!」
「くそおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」
復活する速度が遅くなっていることで、己の死が近付いていることをゼッペルも感じ取ったようだ。彼は声を上げ、顔を歪める。
その後、全ての生命力を吸収し尽くしたのか、ゼッペルに突き刺さった触手が抜け落ち、地面に落下した。
「これでゼッペルも死んだ。もう、この城の脅威となる者はいないだろう。フリード、心から礼を言う。お前が依頼を受けてくれなければ、このような結果にはならなかったかもしれない」
トウカイ騎士団長が礼を言うが、俺は変な胸騒ぎを感じつにはいられなかった。
なんでだろう? どうしてこんなにも落ち着かないんだ? まるで何かを見落としているかのような気がする。
不安の正体を探っていると、トウカイ騎士団長の背後から、剣が忍び寄っていることに気付く。
「トウカイ騎士団長、後ろ!」
「何! グアッ!」
剣が這い寄っていることに気付き、注意を促すも時既に遅かった。彼が振り返った瞬間、刃が振り下ろされてトウカイ騎士団長の右肩を斬りつけた。
「魔剣ティルヴィングが独りでに動いているだと」
目の前の光景に、驚きを隠せなかった。
剣が独りでに動いているなんて考えられない。
「ガーラース! 行け!」
奴隷化した黒鳥に命令を下し、ティルヴィングの周辺を攻撃する。だが、何者かにぶつかったり、声を上げたりしなかった。
『アハハハハ! 透明人間でもいると思ったのか? 残念だったな! お前の勘は大外れだ』
ティルヴィングからゼッペルの声が聞こえる。
「まさか!」
『おや? その反応、もしかして気付いたのか? そうだ。私はティルヴィングと同化したのだ。生命力が奪われたのではなく、俺の意識を剣に宿した。今の俺は、剣を模ったトラップソードと言ったところかな?』
「トラップソード……つまりはミミック型のモンスターになったと言う訳か」
「グッ」
魔剣のモンスターとなったゼッペルと対峙しながら会話をしていると、トウカイ騎士団長が呻き声を上げて我に返る。
「トウカイ騎士団長、ケガの具合は?」
「肩を斬られたが、命には別状はないだろう。隠し持っていた薬草で応急処置をするが、利き腕を斬られた以上、戦闘には参戦できない」
苦痛で顔を歪めながら、トウカイ騎士団長が体の状態を教えてくれた。
利き腕と反対の腕で剣を握ったとしても、戦闘力は大きく激減するはず。無理をさせて戦わせるよりも、回復に専念してもらった方が良いだろうな。
「分かりました。後のことはお任せください」
後のことは任せるように言い、視線を魔剣に戻す。
さて、どうやってあの魔剣を倒そうか?
「フリードちゃん、こっちの方は終わったよ。大臣の悲鳴が聞こえて、兵士たちは敗北したと思って降参してくれた……って、剣が独りでに直立している!キモイ」
『誰がキモイだ! 小娘め、散々俺のことをバカにしやがって。あの時の仮、ここで返させてもらう』
思考を巡らせていると、陽動作戦が終わったマヤノがこちらに合流してくれた。
彼女の魔力があれば、この戦いを終わらせることができるだろう。
「マヤノ、あの剣はゼッペルだ。この戦いでゼッペルと決着をつける。君の力を貸してくれ」
「了解! マヤノの魔法でぶっ壊して上げるんだから!」
致命傷を負ったゼッペルが、魔剣ティルヴィングから現れた触手に体を突き刺す。
その自滅とも言える光景に、思わず言葉を失ってしまった。
ゼッペルのやつは何を企んでいるんだ? 自ら肉体を傷つけて何の得になる?
死に近づくだけの行動にしか見えないが、やつの顔を見る限り、この戦いの勝利を諦めていない。
必ず何かしらの裏があるはずだ。
「魔剣ティルヴィング! 俺の肉体をくれてやる! だからこの城にいる人間共を皆殺しにしろ!」
『キエエエエエエエエエェェェェェェェェェェ!』
ゼッペルが声を上げると、突然剣から音波が放たれる。
まるで野生生物の雄叫びのようだ。
「食らえ!」
ゼッペルが剣先を俺の方に向けた瞬間、ティルヴィングから触手が現れ、こちらに向けて放たれる。
「そうはさせるか!」
敵が攻撃を仕掛けたその時、トウカイ騎士団長が間に入ると、次々と触手を切り倒す。だが、斬られた触手は直ぐに再生が始まり、完全回復をすると再度襲ってきた。
敵の触手が再生をする度にトウカイ騎士団長が斬ってくれているが、あれではイタチごっこだ。
彼が時間稼ぎをしてくれている間に、俺が戦況を変える何かを見出さなければならない。
何か、何かないのか? この状況を打破する策は?
周囲を観察して逆転の一手を模索していると、ゼッペルの顔色が悪くなっていることに気付く。
ゼッペルのやつ、優勢なのに何かに耐えているかのように歯を食い縛っているな。しかも、触手が再生をする度に苦痛で顔を歪めている。
もしかして、触手が再生をする度に、魔剣ティルヴィングがゼッペルの生命力を奪っているのか?
なら、このまま耐え続ければ、やつは破滅へと導かれていくはずだ。
「トウカイ騎士団長はそのまま触手を斬り続けてください。俺も参戦します」
現状を維持するように言うと、屍と化した頭部のない大臣に近付き、彼が握っていた剣を拾う。そしてそのまま触手に近付くと、剣を振り下ろして一刀両断をする。
刃が触れた触手は切れて床に落ち、引き上げられた魚のように小さく飛び跳ねる。
しかしトカゲの尻尾のように、斬られた断面から新たな触手が生え、再び交戦してきた。
俺はあんまり剣術と言うのを身に付けていない。でも、護身程度のことなら一応学んでいる。
とにかく今は、ティルヴィングにゼッペルの生命力を吸い出させ、やつが死ぬのを待つだけだ。
使用者のいない剣であれば、動くことはできないはず。
敵の触手を攻撃し続け、その度に切っていく。すると敵の再生が遅くなった。
「触手の再生が遅い! もう少しだ!」
「くそおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」
復活する速度が遅くなっていることで、己の死が近付いていることをゼッペルも感じ取ったようだ。彼は声を上げ、顔を歪める。
その後、全ての生命力を吸収し尽くしたのか、ゼッペルに突き刺さった触手が抜け落ち、地面に落下した。
「これでゼッペルも死んだ。もう、この城の脅威となる者はいないだろう。フリード、心から礼を言う。お前が依頼を受けてくれなければ、このような結果にはならなかったかもしれない」
トウカイ騎士団長が礼を言うが、俺は変な胸騒ぎを感じつにはいられなかった。
なんでだろう? どうしてこんなにも落ち着かないんだ? まるで何かを見落としているかのような気がする。
不安の正体を探っていると、トウカイ騎士団長の背後から、剣が忍び寄っていることに気付く。
「トウカイ騎士団長、後ろ!」
「何! グアッ!」
剣が這い寄っていることに気付き、注意を促すも時既に遅かった。彼が振り返った瞬間、刃が振り下ろされてトウカイ騎士団長の右肩を斬りつけた。
「魔剣ティルヴィングが独りでに動いているだと」
目の前の光景に、驚きを隠せなかった。
剣が独りでに動いているなんて考えられない。
「ガーラース! 行け!」
奴隷化した黒鳥に命令を下し、ティルヴィングの周辺を攻撃する。だが、何者かにぶつかったり、声を上げたりしなかった。
『アハハハハ! 透明人間でもいると思ったのか? 残念だったな! お前の勘は大外れだ』
ティルヴィングからゼッペルの声が聞こえる。
「まさか!」
『おや? その反応、もしかして気付いたのか? そうだ。私はティルヴィングと同化したのだ。生命力が奪われたのではなく、俺の意識を剣に宿した。今の俺は、剣を模ったトラップソードと言ったところかな?』
「トラップソード……つまりはミミック型のモンスターになったと言う訳か」
「グッ」
魔剣のモンスターとなったゼッペルと対峙しながら会話をしていると、トウカイ騎士団長が呻き声を上げて我に返る。
「トウカイ騎士団長、ケガの具合は?」
「肩を斬られたが、命には別状はないだろう。隠し持っていた薬草で応急処置をするが、利き腕を斬られた以上、戦闘には参戦できない」
苦痛で顔を歪めながら、トウカイ騎士団長が体の状態を教えてくれた。
利き腕と反対の腕で剣を握ったとしても、戦闘力は大きく激減するはず。無理をさせて戦わせるよりも、回復に専念してもらった方が良いだろうな。
「分かりました。後のことはお任せください」
後のことは任せるように言い、視線を魔剣に戻す。
さて、どうやってあの魔剣を倒そうか?
「フリードちゃん、こっちの方は終わったよ。大臣の悲鳴が聞こえて、兵士たちは敗北したと思って降参してくれた……って、剣が独りでに直立している!キモイ」
『誰がキモイだ! 小娘め、散々俺のことをバカにしやがって。あの時の仮、ここで返させてもらう』
思考を巡らせていると、陽動作戦が終わったマヤノがこちらに合流してくれた。
彼女の魔力があれば、この戦いを終わらせることができるだろう。
「マヤノ、あの剣はゼッペルだ。この戦いでゼッペルと決着をつける。君の力を貸してくれ」
「了解! マヤノの魔法でぶっ壊して上げるんだから!」
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