親の裏切りで幼馴染を買い損ねた奴隷商は、異世界転生者の生まれ変わりの娘と孫と共に彼女を買い戻す旅に出る〜全裸追放から始まる成り上がり生活2〜

仁徳

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第三章

第九話 石橋突破戦

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 メリュジーナさんから地上に出る道を教えてもらい、俺たちは早速サクラの城へと向かった。

 メリュジーナさんが住んでいた地下空間と、サクラの城は案外離れておらず、30分程で城下町に辿り着くことができた。

「まさか、こんなに近くにメリュジーナさんが住んでいたなんて。どうしてもっと早く気付くことができなかったのでしょう。もし知っていたのなら、宰相の暴走を止めてもらうように協力要請を直ぐにしていたのに」

 意外と城下町から離れていないという事実に打ちのめされたのか、サクラは肩を落として落ち込んでいる様子を見せた。

「まぁ、まぁ、マヤノもこんなに近いなんて知らなかったんだし、そんなに落ち込まないでよ。これから大きな戦いをするのかもしれないんだよ」

 落ち込むサクラを元気付けさせようとしているのか、マヤノが彼女の肩に手を置いて言葉をかけるも、内容が物騒だ。

 まぁ、事実なのだからしょうがないのだが。

 城下町を歩いていると、前方から馬車が向かってきた。

 馬車の周囲には鎧を着た兵士たちが居ることから、城の馬車の可能性が高い。

「マヤノ、サクラ、どうする?」

「もし、異世界の兵器だったら大変なことになるよ」

「幸いにも、日が沈んで時間が経っているお陰で、人通りはないです。多少暴れても、民たちに危害が及ぶことはないでしょう」

 異世界の兵器が積まれている可能性を考慮して、交戦に入ることを彼女たちは告げる。

 マヤノたちが戦うと決断した以上は、俺も一緒に戦うまでだ。

「分かった。だけどなるべく地味に兵士たちを倒そう。城下町で暴れれば、城から兵士が送り込まれる。そうなれば、城下町に住む人々にも危害が及ぶ」

「分かったよ」

「そうですね。その戦法で行きましょう」

 少しずつ距離を縮めて来る馬車を見ながら、マヤノとサクラは両手を前に出す。

「「シャクルアイス!」」

 2人が魔法を発動した瞬間、兵士たちの足元に出現した水が纏わり付き、氷へと変化する。

「何だ!」

「急に足が凍ったぞ!」

 突然氷に拘束された自身の足を見て、兵士たちは驚きの声を上げる。

 敵の注意が足元に向いている今がチャンスだ。

「スピードスター!」

 兵士の注意が逸れている間に、俊足の魔法を発動。瞬く間に距離を詰めると、次々と兵士の首筋に手刀を打ち込み、気絶させていく。

 1分も経たずに兵士たちの意識を奪うことに成功した。

「さすがフリードちゃんだね」

「今の内に積荷を確認しましょう」

 サクラが馬車に近付き、積荷の確認を行う。袋から取り出したものは、今まで見たことのないものばかりだった。

 俺の知らないものばかりだ。あれが異世界に存在するという物なのだろうか。

 あの中に、大量殺戮兵器がなければいいのだが。

「どうやら、ガラクタばかりのようですね。まだ兵器関連は持ち出されてはいないみたいです。これらは私が回収しておきましょう」

 城から持ち出されたものを奪い返すと、サクラは持っていたバッグに次々と収納していく。

 もしかして、あれって噂に聞くアイテムボックスと言うやつか。この目で見たのは初めてだ。

「いたた。くそう。いったい何が起きて……お前……いやあなたは! くそう!」

 どうやら肉体強化を行なっていない素の状態では、勢いが足らなかったみたいだ。目覚めてしまった兵士がサクラを見ると、慌てて懐から紐の付いた筒状の物を取り出す。

 そして先を上空に向けると、紐を引っ張る。その瞬間、筒の先から何かが飛び出し、夜空に光が輝く。

 もしかして、あれって信号弾か? 襲撃に遭ったことを城に伝えている可能性が高い。

「マヤノ、サクラ、急いで城に向かうぞ! こいつら、城に何かしらの合図を送っている!」

 彼女たちに言葉を投げ、地を蹴って走り、城に向かう。

 早くしないと、城下町が戦場になる。兵士たちが駆け付けて来る前に、なるべく城に近い場所で戦闘を行うようにしないと。

 まだ俊足魔法の効果は残っている。今ならきっと間に合うはずだ。

「フリードちゃん。待ってよ」

「私たちを置いていかないでください。城に潜入したとしても、私たちがいなければ、最短距離で宰相に辿り着くことができないじゃないですか」

 走っていると、後方からマヤノとサクラの声が聞こえてきた。

 このスピードに追いついていると言うことは、彼女たちも同じ魔法を使用したのだろう。

 全速力で走っていると、城と城下町の境目にある大きな石橋が見えた。そして橋を渡り切った先に、1人の男が立っているのが視界に入る。

 男は右手を前に突き出した瞬間、小さい物体が空中に浮き、ホバリングを行う。

 何だあれは? 物質系のモンスターか?

「あれってドローン!」

「しかもあれを操っているのって宰相じゃないですか。まさか、秘密の隠し部屋まで発見されていたなんて」

 マヤノが空中に浮く物体の名を告げる。

 あの物体がドローンか。確か爆薬を積めば、破壊兵器にもなり得る代物だとマヤノが言っていたな。

「行け!」

 男が合図を送ると、ドローンが放たれる。しかし進行方向は俺たちに向かって真っ直ぐではなく、途中から急降下を始めた。

 もしかして、爆破で石橋を破壊しようとしているのか。

 石橋を破壊されれば、城に辿り着くのは困難だ。

「くそう! 間に合え!」
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