推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

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第一章

第五話 カレンへの愛でスキルを買います

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 カウンターから顔を出した女性が俺のところに向かってくる。

「ふふふ、目が覚めてくれて良かった。初めての試みだったから、うまくいくか心配したのだけど、成功して安心したわ」

 紫色のロングヘアーの女性が、妖艶な笑みを浮かべる。

「お前はいったい誰だ! どうして俺はこんなところで縛られている! カレンはどこだよ!」

 目の前の女は、どうして俺がこんな状態で、この場所にいるのかを知っているはず。そう判断して彼女に訊ねる。

「さっき紹介したと思うのだけど、忘れたのかしら? 若年性アルツハイマーにしては早いわね」

「ふざけるな!」

 思わず声を上げてしまう。

 何なんだよこの女は、せっかくカレンと二人だけの空間で幸せを感じていたのに。幸せな気分が台無しじゃないか。

「はい、はい。意地悪してごめんなさい。全く、ワタシがあなたにユニークスキルを授けてあげたのに、あの子とこんなに態度が違うなんて悲しいわ」

「お前が俺に、ユニークスキルを授けた……ってことは!」

「そう。ワタシがあなたをこちらの世界に転生させた女神よ。愛を司る女神カーマ、宜しくね」

 目の前にいる女性が、俺をこの世界に転生させたカーマ神であると名乗る。だが、それを聞いた俺は疑問に思った。

「仮にも愛を司るカーマ神であるのなら、なんで女なんだよ。史実では男のはずだろう?」

 いぶかしむように彼女に視線を送る。

「細かいことは気にしないでくださる? 性転換だなんてよくあることじゃない。私の今の姿は、人間の願望が形になった姿なのよ」

 カーマの言葉に、ムリやりだが納得することにした。確かにゲームでは、性転換だったり擬人化だったりというのはよくあることだ。この世界が聖神戦争の世界観である以上、史実を捻じ曲げてあっても、何も不思議ではないか。

「分かった。怪しんですまなかった。それで、どうして俺は椅子に縛られているんだ?」

「ワタシの趣味」

「ぶん殴るぞ」

「いやーん! こんな美しい女神に暴力を振るなんて、サイテー! 男の風上にもおけないわ」

 体をくねらせる女神の姿に、若干のイラつきを覚える。今は縛られて動けないが、もし自由であったのなら、勢いに任せて殴りかかっていたかもしれない。

「まぁ、冗談はこの辺にして。ワタシがいくら声をかけても目が覚めてくれなかったから、縛ってみたのよ。体がキツくなれば、痛みで目を覚ますかなって思ったのだけど、それでも目が覚めないから放置していたの。放置プレイが好きなのね。カウンターで商品の確認をした瞬間に目が覚めるだなんて」

 彼女の言葉に再びイラッとする。

 今ので確信した。この女、俺が嫌いなタイプだ。

「まぁ、まぁ、そんなに怖い顔をしないでよ。今すぐにその縄を解いてあげるから」

 カーマが後に回ると縛っていた縄が解かれ、自由になる。

「自由になったことだし、次の質問に移らせてもらう。ここはどこだ?」

「さっきも言ったけど、ここはワタシが経営するスキルショップよ。ユニークスキルから通常スキルまで揃っているわ。あなたの抱いているカレンへの愛が溜まったから、ワタシが魂だけをこの世界に呼び寄せたのよ」

 彼女の説明で理解した。確かに俺の作ったユニークスキルは、カレンへの愛を使ってユニークスキルを手に入れると言うものだ。

 だから彼女が、魂だけをここに呼び寄せた。それにしても、なんてタイミングだよ。もっと空気を読んでもらいたい。

「状況は理解した。なら、早く要件は済ませよう。俺は一秒でも早くカレンのもとに戻りたい」

「そんなにワタシと一緒にいる時間が嫌なの? これでもワタシは君のことを気に入っているのだけどなぁ?」

「カーマに気に入られてもあまり嬉しくはない」

「あまりってことは、少しだけは嬉しいんだ。やった!」

 どうしてそこで嬉しがるんだよ。

「とにかく早くスキルを見せてくれ」

「ふふふ、では、カーマちゃんの自慢のスキルをご覧あれ」

 カーマが指をパチンと鳴らすと、目の前にカードのようなものが無数に展開される。

「今溜まっている愛は、十万ラブよ。たった数時間でここまで貯まるなんて本当に凄いわ。正直妬けちゃうけど、そこまで彼女のことを愛しているのね」

「当たり前だろう」

 当然のことを訊ねられたが、今はそんなことよりも溜まった愛を使ってスキルを手に入れることが先だ。

 色々と見てみるが、カードに記載されているスキル名に比例して、必要なラブが大きい。

 まぁ、それもそうだろうな。まずはユニークスキルよりも、スキル系を手に入れた方がいい。

 俺がこの世界ですべき役目は、カレンを死の運命から救い出すことだ。そのためには、どんな運命からも彼女を守ってあげる力が必要となる。

「まずは強化スキルからだ【肉体強化エンハンスドボディー】と【俊足スピードスター】だな。あとエレメント系のスキルとして【火球ファイヤーボール】【氷柱アイシクル】【ウインド】【岩石ロック】のスキルを頂こう」

「ありがとうございます。では、以上のスキルを付与させていただきますね」

 カーマが指を鳴らす。すると俺が選択したスキルカードが体内に侵入した。

「これであなたは、先程購入したスキルが使えるようになります」

 スキルカードが体内に入ったと言うのに、気持ち悪さなどは感じられない。魂のみだからか?

 本当は【瞬間移動テレポーテーション】のユニークスキルも欲しかったが、愛が足りないので買うことができない。

 心の中で思ったことだけど、愛が足りないって言葉、少し怖くないか?

「ちょうど十万ラブですね。これであなたが抱いているカレンへの愛がなくなりました」

 カーマの棘のある言葉に、若干苛立つ。

 そんな言い方をするなよ。まるで俺が、カレンのことを好きではなくなったみたいになるじゃないか。

「では、また愛がある程度溜まったタイミングで、お呼びしますね」

「今度空気を読んでくれよ」

「分かりました。では今後は空気を読んで、いい雰囲気になったところでお呼びし、全力で邪魔をして差し上げましょう」

「全然分かっていないじゃないか」

「それはそうですよ。カーマのもう一つの顔はマーラ、魔王ですもの。人の幸せを嫌い、人間を滅ぼす存在です。では、次の機会にお会いしましょう」

 その言葉を最後に、俺の意思は遠退く。





「ユウリ、ユウリ! ねぇ、しっかりして!」

 カレンの声が耳に入り、俺は我に変える。

 目の前にはテーブルから上体を乗り出して、心配そうに声をかけるカレンがいた。

「カレン? あれ? 俺……ああ、そうか。戻ってきたのか」

「大丈夫? 急に眠ってしまったから驚いたわよ。睡眠薬が入っているのかと思って私も飲んでみたけど、私は何も起きなかったわ。もしかして疲れた?」

「多分、そんなところかな? どれくらい眠っていた?」

「一分も満たないと思うわ。直ぐに異変に気付いて声をかけたから」

 なるほど、カーマに呼ばれているときは殆ど時間の流れがないのか。

 それにしても、意識を失った俺を心配してくれるなんて、カレンはどれだけ天使なんだよ。本当にこの一瞬でも幸せを感じてしまう。

 推しが俺を心配してくれる。その事実が心を温かくさせた。

 きっと、この心の温かさが、ラブに変換されるのだろうな。

「心配してくれてありがとう。とても嬉しいよ」

 心の底から思ったことを口にすると、カレンの頬が朱色に染まる。そして乗り出していた上半身を引っ込めると、居住まいを正す。

「ま、まぁ、返事は保留ってことで、あなたがどんな人なのかを知るために、一緒に行動させてもらうわ。だから一応ペアを組むような形になったし、相方を心配するのは当然でしょう? そ、それよりもこれからどうやって私を助けてくれるのかな?」

 ああ、そうだな。彼女の側に居られることになった以上、直ぐに行動に移らなければ。

「まずはギルドに行こう。そして適当に依頼を受けようと思う」

 ギルドは聖神戦争のサブストーリーだ。オマケ要素が強く、本編とは関わり合いがない。

 なので、ギルドの依頼をしている限りは、カレンの死ぬ要素はないだろう。

 ギルドの依頼を受けつつカレンへの愛を貯め、この聖神戦争の支配者であるゼウスを倒す鍵を手に入れてみせる。

「ギルドに向かえば、私の命は救われるのね。それでは行きましょう」

「お待たせしました。こちら、ご注文の紅茶です」

 会計に入ろうかとしたタイミングで、ウエイトレスが紅茶を二つ持って来た。

 そう言えば、サービスの紅茶しか飲んでいなかったな。





 紅茶を全て飲み干した俺たちは、紅茶代を支払って町のギルドの前に来た。

 ここがギルドか。画面越しで見るよりも迫力があるな。

 この中に入れば、あのイベントは必須だ。面倒臭いことになるが、カレンには指一本触れさせない。

「それじゃ、入ろうか」

 扉を開けてギルドの中に入る。そして受付に向かって歩こうとしたときだ。

「ちょっと待った!」

 円卓の上でカードゲームをしている強面の男が椅子から立ち上がり、俺たちに声をかけてきた。











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