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第一章
第八話 カレンに手を出したらタダでは済まされないからな
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「オーラオラオラ!」
俺に向けてタイガが何度も拳を放ってくる。
体に巻き付いている鎖の影響で避けることができない中、彼のパンチを何度も受けた。
事前に【肉体強化】を使っておいて良かった。お陰で痛みを感じないや。いや、寧ろ凝り固まった筋肉が解されてマッサージを受けているみたいだ。気持いい!
「オラ、オラ、オラ! どうだ! これで俺がツンデレではないことが分かったか!」
そう言えば、こいつのことをツンデレとか言ったから、こんなことになっていたんだったよな。あまりの気持よさに忘れていた。
「良い具合に筋肉がほぐれて気持いいぞ! ありがとうな。お前、マッサージ師になった方がいいんじゃないか? さっきから的確にツボを刺激してくれているお陰で、体が熱ってきている。次は背中のほうもよろしく」
「ふざけるな! 誰がマッサージ師だ! 俺は泣く子も黙る不良だぞ! サンドバックになっておきながら礼なんか言うな!」
だって、本当に気持いいんだもん。礼くらい言わないと罰が当たるって。
まぁ、スキルのお陰で肉体が強化されているからこその結果なんだけどね。多分【肉体強化】の効果が切れたら、めちゃくちゃ痛いと思う。下手したら気分が悪くなって嘔吐してしまうかもな。
でも、その前に倒させてもらう。さすがに効果が切れてまで攻撃を受けるほどのマゾではないからな。
「くそう! くそう! くそう! 俺の攻撃を食らっておきながら余裕な表情をしやがって! むかつくやつだ! もういい! お前なんかに俺の拳を食らわせる価値などない!」
声を上げ、タイガは後方に跳躍して俺との距離を開ける。
えー、もう終わり? 今度は背中の筋肉を解してもらいたかったのだけど。
「食らえ! 【武器の祭典】」
タイガの真上に剣や槍、斧といった様々な武器が展開されていく。
やつの攻撃が来る。そう思った瞬間、彼は俺に背を向けてカレンの方を見た。
「先にあの女の方を倒す! あいつの方が弱そうだ! 【武器の矢】!」
空中に展開された得物の数々がカレンに向けて放たれる。
まずい。彼女には一応落下ダメージを受けないように【肉体強化】を付与したが、自分以外に発動する際には、効果の持続時間が短い。既に切れているはず。
俺としたことが油断した。彼女が狙われることも十分に考えられたのに、調子に乗りすぎた。
でも、カレンには指一本触れさせない。彼女に触れていいのは、告白の返事待ちである俺だけだ!
体に力を入れ、拘束している鎖を引きちぎった。
既に【俊足】の効果は切れている。今からスキルを発動し直しても、彼女の前に移動することは難しい。
こうなるのなら、エレメント系のスキルを止めてユニークスキルの【瞬間移動】にしておけば良かった。
考えろ。今からスキルを発動して、カレンを攻撃から守る方法があるはずだ。
思考を巡らせると、やつのユニークスキルの設定を思い出す。
「そうだ。まだ間に合うじゃないか。スキル発動!【火球】【風】」
スキルが発動すると、カレンの前に火球が出現する。そしてその火球に向かって風が吹き、火球は瞬く間に巨大になっていく。
「バカな! 【死球】だと!」
「いいや、ただの【火球】だぜ。ただ通常よりも大きいってだけだ」
タイガの放った武器は、巨大な火の玉に入り込む。しかし、それらは貫通することはなかった。そしてドロドロに溶けた鉄が地面にゆっくりと落ちていく。
ふぅ、一発勝負だったけど、うまくいってくれて良かった。
二つのスキルを組み合わせて、上位のスキルを作り出すテクニックだ。ゲームではスキル同士のコマンドを選択するだけでよかった。だが、この世界では頭の中で思い描けば、上位のスキルを生み出すことも可能のようだ。
俺の【死球】がタイガの攻撃を防いでいる間にカレンに近付く。
「カレン、大丈夫か?」
「ええ、ユウリのお陰でケガはしていないわ」
これ以上カレンに危害が及ぶ前に、決着を付けよう。本当なら、タイガを仲間に引き込めれば最高だったのだけどな。
タイガの真上に武器がないことを確認し【死球】を消す。
「【岩】!」
続いてスキルを発動してやつの真上にある天井を切り離し、岩石を落とす。
「さっきと同じ攻撃か! そんなものは俺には通用しない!ウエポン――」
「それはこっちのセリフだ! 同じように躱されてたまるか! 【風】」
風のスキルを使い、タイガの足元に向けて気圧を変化させる。
「くっ、目にゴミが」
悪いが、土埃を舞い上がらせてもらった。
俺の目潰しを食らったタイガは落下してくる岩に押しつぶされ、生き埋めとなった。
これでタイガはリタイアだ。そう思った瞬間、カレンが俺の横を通り過ぎ、落盤した場所へと走る。
「カ、カレン! なにをやっているんだよ」
カレンは落下した岩を掴むと、小さい岩を持ち上げる。
「う、重い。でも、彼を助けないと」
「カレン、もしかしてタイガを助けようとしているのか」
「そうだよ。まだ粒子化が始まっていない。死んでいないのならまだ助けることができる」
神の駒同士での戦闘で敗北した者は、肉体を粒子化されて魂は天へと登る。まぁ、神の駒は全員一度死んでいる設定だからな。演出としてそうなっているのだろう。
必死に岩を退けようとする推しを見る。
それにしても、やっぱりカレンは良い子すぎるだろう! 敵であるタイガを助けようとするなんて天使すぎる!
「でも、どうして急に助けようとしたんだ?」
「それは、ユウリが最初にあの男と戦おうとはしなかったから。ユウリが本当はいい奴って言うのなら、助けてあげないとあなたが悲しむでしょう」
彼女の言葉に、俺は胸を打たれる。
俺が悲しむと思って助けようとしてくれているのかよ! カレンマジ天使!
「分かった。一度はリタイアさせようかと思っていたけど、カレンがそう言うのなら俺もタイガを助ける」
強化スキルの【肉体強化】の効果はまだ持続している。効果が切れる前に岩を退かそう。
強化された腕力のお陰で、岩を持ち上げても全然キツくはなかった。
これなら短時間で岩を退かすことができるな。
岩の除去作業を始めること体感で約五分。気絶している状態でタイガを発見した。
着ている服はボロボロで、所々血を流している。
「今は回復アイテムを持っていないし、一旦ギルドに連れて行くか。あそこなら回復系のスキルを持っている人がいるかもしれない」
気を失っているタイガを担ぐ。
「それじゃあ、私は夢見の花を摘んでくるわね」
背中にタイガの重みを感じていると、カレンは採取品を取りに向かった。
夢見の花を一輪だけ摘んだ彼女が戻ってくると、俺たちはギルドへと帰る。
「よくやった! さすがワシが見込んだ男だ。夢見の花を持って帰って来ただけではなく、邪魔をしていた男まで倒して連れてくるとはあっぱれだ」
ギルドに帰り、採取用アイテムとタイガをギルドマスターに見せると、彼は声を上げて喜んでくれた。
「報酬金をやろうではないか。おい! 持って来てくれ」
ギルドマスターが受付嬢に声をかけると、彼女は金が入っていると思われる布袋を持ってくる。
「こちらが報酬となります」
受付嬢から袋を受け取ると、ずしりとした重みを感じる。
おいおい、思ったよりも重いじゃないか。この重さからして相当入っているぞ。
袋の縁を開けて中を確認すると、金貨や銀貨がたくさん入っていた。
「金貨百枚、銀貨二百枚が今回の報酬となります」
「そ、そんなにもらっていいの!」
受付嬢が袋に入っている金の中身を言うと、カレンが驚きの声をあげる。
いくらタイガが邪魔をしていたからと言っても、この金額は多すぎる。これだけあれば、しばらくはギルドでサブストーリーをしなくて済むな。
「良かったですね。プチ金持ちですよ」
「そうだな」
「ギルドマスターいるか!」
報酬をカレンと喜びあっていると、ギルドの扉が勢いよく開き、一人の女性が入って来る。
「おう、どうした。そんなに血相をかいて」
「ギルドマスター、助けてくれ! グロスの町が大変なことになった!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。
何卒宜しくお願いします。
俺に向けてタイガが何度も拳を放ってくる。
体に巻き付いている鎖の影響で避けることができない中、彼のパンチを何度も受けた。
事前に【肉体強化】を使っておいて良かった。お陰で痛みを感じないや。いや、寧ろ凝り固まった筋肉が解されてマッサージを受けているみたいだ。気持いい!
「オラ、オラ、オラ! どうだ! これで俺がツンデレではないことが分かったか!」
そう言えば、こいつのことをツンデレとか言ったから、こんなことになっていたんだったよな。あまりの気持よさに忘れていた。
「良い具合に筋肉がほぐれて気持いいぞ! ありがとうな。お前、マッサージ師になった方がいいんじゃないか? さっきから的確にツボを刺激してくれているお陰で、体が熱ってきている。次は背中のほうもよろしく」
「ふざけるな! 誰がマッサージ師だ! 俺は泣く子も黙る不良だぞ! サンドバックになっておきながら礼なんか言うな!」
だって、本当に気持いいんだもん。礼くらい言わないと罰が当たるって。
まぁ、スキルのお陰で肉体が強化されているからこその結果なんだけどね。多分【肉体強化】の効果が切れたら、めちゃくちゃ痛いと思う。下手したら気分が悪くなって嘔吐してしまうかもな。
でも、その前に倒させてもらう。さすがに効果が切れてまで攻撃を受けるほどのマゾではないからな。
「くそう! くそう! くそう! 俺の攻撃を食らっておきながら余裕な表情をしやがって! むかつくやつだ! もういい! お前なんかに俺の拳を食らわせる価値などない!」
声を上げ、タイガは後方に跳躍して俺との距離を開ける。
えー、もう終わり? 今度は背中の筋肉を解してもらいたかったのだけど。
「食らえ! 【武器の祭典】」
タイガの真上に剣や槍、斧といった様々な武器が展開されていく。
やつの攻撃が来る。そう思った瞬間、彼は俺に背を向けてカレンの方を見た。
「先にあの女の方を倒す! あいつの方が弱そうだ! 【武器の矢】!」
空中に展開された得物の数々がカレンに向けて放たれる。
まずい。彼女には一応落下ダメージを受けないように【肉体強化】を付与したが、自分以外に発動する際には、効果の持続時間が短い。既に切れているはず。
俺としたことが油断した。彼女が狙われることも十分に考えられたのに、調子に乗りすぎた。
でも、カレンには指一本触れさせない。彼女に触れていいのは、告白の返事待ちである俺だけだ!
体に力を入れ、拘束している鎖を引きちぎった。
既に【俊足】の効果は切れている。今からスキルを発動し直しても、彼女の前に移動することは難しい。
こうなるのなら、エレメント系のスキルを止めてユニークスキルの【瞬間移動】にしておけば良かった。
考えろ。今からスキルを発動して、カレンを攻撃から守る方法があるはずだ。
思考を巡らせると、やつのユニークスキルの設定を思い出す。
「そうだ。まだ間に合うじゃないか。スキル発動!【火球】【風】」
スキルが発動すると、カレンの前に火球が出現する。そしてその火球に向かって風が吹き、火球は瞬く間に巨大になっていく。
「バカな! 【死球】だと!」
「いいや、ただの【火球】だぜ。ただ通常よりも大きいってだけだ」
タイガの放った武器は、巨大な火の玉に入り込む。しかし、それらは貫通することはなかった。そしてドロドロに溶けた鉄が地面にゆっくりと落ちていく。
ふぅ、一発勝負だったけど、うまくいってくれて良かった。
二つのスキルを組み合わせて、上位のスキルを作り出すテクニックだ。ゲームではスキル同士のコマンドを選択するだけでよかった。だが、この世界では頭の中で思い描けば、上位のスキルを生み出すことも可能のようだ。
俺の【死球】がタイガの攻撃を防いでいる間にカレンに近付く。
「カレン、大丈夫か?」
「ええ、ユウリのお陰でケガはしていないわ」
これ以上カレンに危害が及ぶ前に、決着を付けよう。本当なら、タイガを仲間に引き込めれば最高だったのだけどな。
タイガの真上に武器がないことを確認し【死球】を消す。
「【岩】!」
続いてスキルを発動してやつの真上にある天井を切り離し、岩石を落とす。
「さっきと同じ攻撃か! そんなものは俺には通用しない!ウエポン――」
「それはこっちのセリフだ! 同じように躱されてたまるか! 【風】」
風のスキルを使い、タイガの足元に向けて気圧を変化させる。
「くっ、目にゴミが」
悪いが、土埃を舞い上がらせてもらった。
俺の目潰しを食らったタイガは落下してくる岩に押しつぶされ、生き埋めとなった。
これでタイガはリタイアだ。そう思った瞬間、カレンが俺の横を通り過ぎ、落盤した場所へと走る。
「カ、カレン! なにをやっているんだよ」
カレンは落下した岩を掴むと、小さい岩を持ち上げる。
「う、重い。でも、彼を助けないと」
「カレン、もしかしてタイガを助けようとしているのか」
「そうだよ。まだ粒子化が始まっていない。死んでいないのならまだ助けることができる」
神の駒同士での戦闘で敗北した者は、肉体を粒子化されて魂は天へと登る。まぁ、神の駒は全員一度死んでいる設定だからな。演出としてそうなっているのだろう。
必死に岩を退けようとする推しを見る。
それにしても、やっぱりカレンは良い子すぎるだろう! 敵であるタイガを助けようとするなんて天使すぎる!
「でも、どうして急に助けようとしたんだ?」
「それは、ユウリが最初にあの男と戦おうとはしなかったから。ユウリが本当はいい奴って言うのなら、助けてあげないとあなたが悲しむでしょう」
彼女の言葉に、俺は胸を打たれる。
俺が悲しむと思って助けようとしてくれているのかよ! カレンマジ天使!
「分かった。一度はリタイアさせようかと思っていたけど、カレンがそう言うのなら俺もタイガを助ける」
強化スキルの【肉体強化】の効果はまだ持続している。効果が切れる前に岩を退かそう。
強化された腕力のお陰で、岩を持ち上げても全然キツくはなかった。
これなら短時間で岩を退かすことができるな。
岩の除去作業を始めること体感で約五分。気絶している状態でタイガを発見した。
着ている服はボロボロで、所々血を流している。
「今は回復アイテムを持っていないし、一旦ギルドに連れて行くか。あそこなら回復系のスキルを持っている人がいるかもしれない」
気を失っているタイガを担ぐ。
「それじゃあ、私は夢見の花を摘んでくるわね」
背中にタイガの重みを感じていると、カレンは採取品を取りに向かった。
夢見の花を一輪だけ摘んだ彼女が戻ってくると、俺たちはギルドへと帰る。
「よくやった! さすがワシが見込んだ男だ。夢見の花を持って帰って来ただけではなく、邪魔をしていた男まで倒して連れてくるとはあっぱれだ」
ギルドに帰り、採取用アイテムとタイガをギルドマスターに見せると、彼は声を上げて喜んでくれた。
「報酬金をやろうではないか。おい! 持って来てくれ」
ギルドマスターが受付嬢に声をかけると、彼女は金が入っていると思われる布袋を持ってくる。
「こちらが報酬となります」
受付嬢から袋を受け取ると、ずしりとした重みを感じる。
おいおい、思ったよりも重いじゃないか。この重さからして相当入っているぞ。
袋の縁を開けて中を確認すると、金貨や銀貨がたくさん入っていた。
「金貨百枚、銀貨二百枚が今回の報酬となります」
「そ、そんなにもらっていいの!」
受付嬢が袋に入っている金の中身を言うと、カレンが驚きの声をあげる。
いくらタイガが邪魔をしていたからと言っても、この金額は多すぎる。これだけあれば、しばらくはギルドでサブストーリーをしなくて済むな。
「良かったですね。プチ金持ちですよ」
「そうだな」
「ギルドマスターいるか!」
報酬をカレンと喜びあっていると、ギルドの扉が勢いよく開き、一人の女性が入って来る。
「おう、どうした。そんなに血相をかいて」
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