推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

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第二章

第七話 そんなバカな!どうして認識阻害が効かない!

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~サク視点~



「さぁ、カレンを返してもらおうか」

 俺ことサクは、突然現れたユウリに邪魔をされ、指を向けられる。

 今、あの男は俺を見破っているかのような発言をしていなかったか? いや、そんなまさかな。さすがに俺の認識阻害を無効化している訳がない。

 そんなスキル、俺には聞いたことも見たこともない。そうだ。きっと何かの聞き間違いに決まっている。

「何を言ってのよ。どう見たってカレンじゃない。あなたの方がおかしいんじゃないの?」

 ほら、女の方はしっかりと俺のユニークスキルの影響下にある。やっぱり俺のスキルに異常が起きた訳ではないな。

「なら、今からあいつにかけられているデバフを解除するから、その目で確かめてみろ。【脳治療ブレインセラピー】」

 男がスキル名のようなものを呟く。その瞬間、女が驚きの表情を浮かべた。

「うそ、さっきまでカレンが居た場所に男がいる」

 そ、そんなバカなああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 あの女、俺のユニークスキルの効果が切れただと! 本当にユウリは、俺の【認識阻害インピード・レゴグニッション】を打ち消したと言うのか!

「バカな! 俺のユニークスキルが破られるなんて。そんな技、聞いたことがないぞ!」

「それもそうだろうな。だって、このスキルは中盤で登場するスキルだ。ゲーム序盤であるこの時期に、知っている訳がない」

 ユウリが意味の分からないことを言ってくる。

 中盤で登場する? ゲームの序盤? こいつは何のことを言っているんだ?

「せっかくだからカレンを連れ去った報いとして、お前の心を折ってやろう」

 口角を上げ、ユウリはニヤリと笑う。

 俺の心を折るだと? いったい何をする気だ。

「お前のユニークスキル【認識阻害インピード・レゴグニッション】がどうして認識を変えられるのか、そのトリックを当ててやる」

 何だと! こいつわかるのか? いや、そんな訳がない。たいていイケメンは顔だけだ。そうでなければ、俺が顔でも頭脳でも敗北することになる。

「まず、お前は魔力を微小な粒子に変えて周囲に放つ。それを人が鼻腔から吸引し、鼻の粘膜から吸収して血液に混じると、摂取した成分が脳へと送り込まれる。それにより脳は、負荷によって脳内神経伝達物質の過剰分泌で生じた脳回路の異常が発生する。脳回路上を制御、抑制されない情報が駆け巡るという暴走状態に陥った脳は、情報のつながりが統合できなくなって混乱してしまう。フィルターのかからない、あらゆる刺激情報が直接脳に入力されることになり、脳の記憶を司る海馬に架空の記憶を植え付けた」

 こ、この男! 俺のユニークスキルの効果を、俺以上に詳しく説明しやがる! いったい何なんだよこいつは! 俺以上の天才じゃないか!

「あ、因みに俺の使ったスキル【脳治療ブレインセラピー】の説明もしてやろうか? どうしてお前の【認識阻害インピード・レゴグニッション】を打ち消したのか、知りたいだろう?」

「誰がそんなことを知りたいか! 俺が逆に答えてやる!」

 正直、かなり知りたい。だけどここで答えを教えてもらったら、俺の心が折られてしまう。そうなっては、こいつの思う壺だ。

 考えろ、俺の頭脳を信じるんだ。

「それはな、脳内で異常な興奮が起きたときに、それを押さえてくれる働きをする神経伝達物質のGABAギャバを、脳神経のGABA受容体に結合するようにした。その結果、脳回路が抑制されて余計な情報を遮断できた結果、お前の認識を阻害するスキルを無力化させたというわけだ」

「今考えていたのに、答えを言うなああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 思考を巡らせた瞬間にあっさりと答えを聞かされた俺は、プライドがズタズタにされる。

 感情的になってしまい、俺は地を蹴って走ると、短剣を構えてユウリに斬りかかった。

「答えをバラされたからってそんなに怒るなよ。簡単に切られる訳にはいかないから、反撃させてもらう【肉体強化エンハンスドボディー】【俊足スピードスター】!」

 ユウリがスキル名と思われる言葉を言うと、一瞬にしてやつの姿が消える。

 何! いったいどこに消えた!

「後ろだ!」

「何?」

 後方から声が聞こえ、直ぐに振り返る。しかしやつの姿はどこにも見当たらない。

「残念、またお前の背後に回っている」

 再び背後からユウリの声が聞こえ、踵を返す。その瞬間、顔面に何かがぶつかったようで痛みが走り、思いっきり後方に吹き飛ばされた。

 地面をバウンドしながら転がり、置いてあったポリバケツに激突する。それによって俺の体は止まったが、ポリバケツの中にあったゴミが散乱して異臭が漂う。

 くそう。やつがスキルを発動した瞬間、猛スピードで移動したことは分かった。でも、頭では理解しても体が追い付かない。

 ユニークスキルが破られた今、俺はただの一般人のようなもの。

 この男には絶対に勝てない。

 くそう。このままでは負ける。

 よろよろと立ち上がり、ユウリを睨みつける。

 考えろ。この窮地でもどうにかなる方法がきっとあるはずだ。

「今のが俺を欺いた分の一撃だ。だけどまだまだこれで終わらせるつもりはない。あと、カレンが裏切ったと思い込んだアリサの心の傷の分と、カレンを誘拐した罪の分が残っている。まだまだ俺のターンを継続させてもらう」

 ユウリが言葉を吐き捨てた瞬間、顎に強烈な痛みが走り、空中に飛んだような浮遊感を覚える。

「これがアリサの分!」

「グハッ!」

「そしてこれがカレンの分だ!」

 続いて腹部に強烈な痛みを覚えると同時に、背中にも激痛が走る。

 どうやら空中に浮いた俺を地面に叩き落としたようだ。まったく見えなかった。これが……スキルがゴミと化したものの末路か。

 起き上がろうとするも力が入らない。頭がぼーっとする中、俺の体が光る。

 この現象は粒子化か。どうやら俺は、聖神戦争に敗北したみたいだな。

 起き上がることはできないが、足の方から消えて行くのが感覚的に分かった。

『サク・アケチ、お前は良くやった。ここでお前を失うのは痛手だが、お前の目を通していいデーターを取ることができた。あとはコワイに任せろ』

 体が消えゆく中、あの方の声が聞こえてくる。

 そうだ。俺はここでリタイアだが、俺たちにはあの方がいる。どうせこの男はあの方には勝てない。最後は殺されかけ、命と引き換えにあの方の駒になるに決まっている。

「俺の負けだ。だけどまだ、コワイやあの方がいる! お前があの方に倒され、自分の命欲しさに駒にされるところを、あの世から見ておいてやる!」

 その言葉を最後に、俺の意識は消え去った。











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