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第一章
第四話 新しい職場と初任務
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「あ、リュシアンさん! 私たちのギルドがある町が見えてきましたよ!」
馬車を運転しながら、ユリヤは前方に指を差す。
俺にも見えてきた。あの町がこれからお世話になるギルドがある町か。
馬車が町の中に入ると、俺は町の風景を眺める。
結構のどかだな。町の人々ものびのびとしている。
町の中を馬車の助手席から見ていると、ギルドと思われる建物が見えてきた。
お、あれがギルドだな。建物事態は俺が前にいたギルドに似ているな。
ギルドの前に到着すると馬車は止まり、ユリヤは俺を見た。
「ギルドに到着しました。エレーヌさんが降りましたら、馬車を馬屋に連れて行きますので降りてもらっていいですか?」
「分かった」
俺は助手席から降りると、馬車の扉が開かれてこの町のギルドマスターであるエレーヌさんが姿を見せる。
「ようやく到着したわね。それでは、正式に手続きをしましょうか」
エレーヌさんは俺の手を握ると、ギルドの扉を開けて俺を中に連れて行く。
「あ、ギルマス。お帰りなさい。あら? そちらの方は?」
ギルド内に入った瞬間、受付嬢がエレーヌさんに気付き、声をかけてくる。
「この子はリュシアン。今日からこのハンターギルドの専属ハンターになってもらうから、その手続きをお願いできるかしら?」
「分かりました。えーと、リュシアンさんでしたね。こちらに来てもらってもよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
俺は受付に向かうと用紙を渡される。
「では、この書類に必要事項を記入してください」
「分かりました」
羽ペンを握り、俺は用紙に書かれてある項目を全て記入する。
「できました」
「ありがとうございます。では、これでリュシアンさんはこのハンターギルドの一員となります」
これで俺はこのギルドの一員になった。またハンターとして活動できる。これで、あの人との約束を破らずに済んだ。
「あら、リュシアン君の契約は済んだかしら?」
「はい。たった今終わりましたよ。ギルマス」
契約が終わると、エレーヌさんが俺のところにやって来る。
「明日からよろしくね。今夜はリュシアン君の加入を祝してパーッとやりましょう」
エレーヌさん、俺のお祝いをしてくれるんだ。前のギルドではこんなことなかったから凄く嬉しい。
「さぁ、そうと決まればお店の予約をしないと。どこが良いかしら?」
エレーヌさんが頬に手を置いて首を傾げたその時、ギルドの扉が勢い良く開かれた。
「ギ、ギルドマスターはいるかい?」
五十代くらいのおっさんがギルドに入ってきたな。血相をかいて顔を青ざめさせている。何かあったみたいだ。
「あら、どうしました?」
エレーヌさんが男性に近づき要件を訊く。
「ギルドマスター! 緊急で依頼を頼みたいんだ!」
「い、依頼ですか?」
男性が依頼を頼みたいと行った途端にエレーヌさんは困った顔をしたな。
どうしたのだろう? なんだか困っているみたいだ。
「あのう、どうかしたのですか?」
気になった俺は二人に近づくとエレーヌさんに訊ねる。
「リュシアン君。それがね、この方が依頼を頼みたいらしいのだけど、今いるギルドのハンターは全員別の依頼で出払っているのよ。ユリヤも私をギルドに送り届けた後、すぐに別の依頼を受けに向かったから、今手の空いているハンターがいなくて」
それでエレーヌさんは困っていたのか。でも、それなら話が早いじゃないか。
「なら、その依頼は俺が受けますよ」
「ほ、本当かい!」
俺が依頼を受けると言うと、おっさんは顔を綻ばせた。
「本当にいいの? リュシアン君は契約上、明日から仕事をしてもらうことになっているのよ」
「困っている人がいたら助ける。それがハンターの仕事です。たとえ時間外労働であったとしても、依頼主の笑顔を守るために働くのがハンターです」
「あ、ありがとう。本当に助かるよ。実は、この町に戻る最中に、モンスターに襲われたんだ。俺は命からがら逃げてきたのだけど、その最中にカバンを落としたんだ。その中には命の次に大切な宝物が入っている」
命の次に大切な宝物か。それは絶対に戻ってきて欲しいよな。
「分かりました。では、そのカバンの特徴を教えてもらってもいいですか?」
「ああ、全体的にはクリーム色をしている。大きさは君の肩幅くらいだ」
「クリーム色で肩幅くらいのカバンですね。因みに落とした場所はどのあたりですか?」
「深緑の森だ。多分八番エリア辺りだったと思う」
深緑の森か。あの森は前のギルドでも行ったことがあるな。八番エリアとなると結構奥になる。
「分かりました。では今から行ってきます」
「あ、待ってください! リュシアン君!」
後方から俺を呼び止めるエレーヌさんの声が耳は入る。しかしそのままギルドを飛び出すと、深緑の森に向かった。
この世界はそれぞれエリアごとに番号が振り分けられている。深緑の森は全部で十ヶ所のエリアに分けられ、場所によって縄張りにしているモンスターが違っている。
深緑の森はこの町からだと走って三十分の場所だ。そして八番のエリアにたどり着くための最短距離は、エリアの一から始まり、三を経由して崖を登ることだ。崖を登り切れば八番のエリアにたどり着くことができる。
しばらくの間走り、深緑の森にたどり着く。
「さて、まずは三番のエリアを目指すことが先だな」
この一番のエリアから三番のエリアに行くには、足場の悪い獣道を進んでいかないといけない。
草木も生い茂っており、雑草が腰の高さまで伸びている。地面も小石などが転がっており、気をつけて歩かないと石を踏んで転んでしまうことにもなり得る。
急がないといけないけど、ここは慎重に歩いていかないといけないな。
幸いにも周辺にはモンスターの気配がしない。このまま俺のほうも気配を消しつつ、三番のエリアに向かう。
獣道を歩き終えると、三番のエリアに辿り着いた。目の前には断崖絶壁の崖があり、ここを登っていかないといけない。
この崖は本当にしんどいけど、前に何回も登ったことがある。だから問題はないはずだ。
だけど油断はできない。万が一足を踏み抜いてしまえば、そのまま崖下に落下して命を落とすことにもなりかねないからな。
手を置くポイントを確認しながらロッククライミングを始めた。
崖を登ること体感で三十分、ようやく崖を登り切り、頂上に辿り着く。
「さて、崖を登って八番のエリアに来たけど、依頼主のカバンはどこに落ちているのだろう?」
首を左右に振って探すも、周辺にはカバンが落ちていなかった。
八番のエリアは崖の上だからそんなに広くはない。あのおっさんが間違えていなければ、ここに間違いなくあるはずだ。
もう少し奥の方を歩いていると、モンスターの巣が視界に入った。そして木の枝で作られた巣の中に、クリーム色のカバンがあることに気付く。
あった。あれが依頼主の落としたカバンだな。でも、どうしてモンスターの巣の中にあるんだ?
疑問に思いつつも、俺は巣に近づく。
近づいてみると結構大きいな。俺ごと入ることができるし、卵も大きい。これは巨大なモンスターの巣とみて間違いないだろう。早くカバンを取ってここから離れないと、親のモンスターが現れたら面倒臭いことになる。
『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』
カバンを手に取った瞬間、上空からモンスターの鳴き声が聞こえ、顔を上げる。
上空には巨大な翼竜がおり、爪を剥き出しにしながら俺に向けて急降下してきた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントでも大丈夫です。
何卒よろしくお願いします。
馬車を運転しながら、ユリヤは前方に指を差す。
俺にも見えてきた。あの町がこれからお世話になるギルドがある町か。
馬車が町の中に入ると、俺は町の風景を眺める。
結構のどかだな。町の人々ものびのびとしている。
町の中を馬車の助手席から見ていると、ギルドと思われる建物が見えてきた。
お、あれがギルドだな。建物事態は俺が前にいたギルドに似ているな。
ギルドの前に到着すると馬車は止まり、ユリヤは俺を見た。
「ギルドに到着しました。エレーヌさんが降りましたら、馬車を馬屋に連れて行きますので降りてもらっていいですか?」
「分かった」
俺は助手席から降りると、馬車の扉が開かれてこの町のギルドマスターであるエレーヌさんが姿を見せる。
「ようやく到着したわね。それでは、正式に手続きをしましょうか」
エレーヌさんは俺の手を握ると、ギルドの扉を開けて俺を中に連れて行く。
「あ、ギルマス。お帰りなさい。あら? そちらの方は?」
ギルド内に入った瞬間、受付嬢がエレーヌさんに気付き、声をかけてくる。
「この子はリュシアン。今日からこのハンターギルドの専属ハンターになってもらうから、その手続きをお願いできるかしら?」
「分かりました。えーと、リュシアンさんでしたね。こちらに来てもらってもよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
俺は受付に向かうと用紙を渡される。
「では、この書類に必要事項を記入してください」
「分かりました」
羽ペンを握り、俺は用紙に書かれてある項目を全て記入する。
「できました」
「ありがとうございます。では、これでリュシアンさんはこのハンターギルドの一員となります」
これで俺はこのギルドの一員になった。またハンターとして活動できる。これで、あの人との約束を破らずに済んだ。
「あら、リュシアン君の契約は済んだかしら?」
「はい。たった今終わりましたよ。ギルマス」
契約が終わると、エレーヌさんが俺のところにやって来る。
「明日からよろしくね。今夜はリュシアン君の加入を祝してパーッとやりましょう」
エレーヌさん、俺のお祝いをしてくれるんだ。前のギルドではこんなことなかったから凄く嬉しい。
「さぁ、そうと決まればお店の予約をしないと。どこが良いかしら?」
エレーヌさんが頬に手を置いて首を傾げたその時、ギルドの扉が勢い良く開かれた。
「ギ、ギルドマスターはいるかい?」
五十代くらいのおっさんがギルドに入ってきたな。血相をかいて顔を青ざめさせている。何かあったみたいだ。
「あら、どうしました?」
エレーヌさんが男性に近づき要件を訊く。
「ギルドマスター! 緊急で依頼を頼みたいんだ!」
「い、依頼ですか?」
男性が依頼を頼みたいと行った途端にエレーヌさんは困った顔をしたな。
どうしたのだろう? なんだか困っているみたいだ。
「あのう、どうかしたのですか?」
気になった俺は二人に近づくとエレーヌさんに訊ねる。
「リュシアン君。それがね、この方が依頼を頼みたいらしいのだけど、今いるギルドのハンターは全員別の依頼で出払っているのよ。ユリヤも私をギルドに送り届けた後、すぐに別の依頼を受けに向かったから、今手の空いているハンターがいなくて」
それでエレーヌさんは困っていたのか。でも、それなら話が早いじゃないか。
「なら、その依頼は俺が受けますよ」
「ほ、本当かい!」
俺が依頼を受けると言うと、おっさんは顔を綻ばせた。
「本当にいいの? リュシアン君は契約上、明日から仕事をしてもらうことになっているのよ」
「困っている人がいたら助ける。それがハンターの仕事です。たとえ時間外労働であったとしても、依頼主の笑顔を守るために働くのがハンターです」
「あ、ありがとう。本当に助かるよ。実は、この町に戻る最中に、モンスターに襲われたんだ。俺は命からがら逃げてきたのだけど、その最中にカバンを落としたんだ。その中には命の次に大切な宝物が入っている」
命の次に大切な宝物か。それは絶対に戻ってきて欲しいよな。
「分かりました。では、そのカバンの特徴を教えてもらってもいいですか?」
「ああ、全体的にはクリーム色をしている。大きさは君の肩幅くらいだ」
「クリーム色で肩幅くらいのカバンですね。因みに落とした場所はどのあたりですか?」
「深緑の森だ。多分八番エリア辺りだったと思う」
深緑の森か。あの森は前のギルドでも行ったことがあるな。八番エリアとなると結構奥になる。
「分かりました。では今から行ってきます」
「あ、待ってください! リュシアン君!」
後方から俺を呼び止めるエレーヌさんの声が耳は入る。しかしそのままギルドを飛び出すと、深緑の森に向かった。
この世界はそれぞれエリアごとに番号が振り分けられている。深緑の森は全部で十ヶ所のエリアに分けられ、場所によって縄張りにしているモンスターが違っている。
深緑の森はこの町からだと走って三十分の場所だ。そして八番のエリアにたどり着くための最短距離は、エリアの一から始まり、三を経由して崖を登ることだ。崖を登り切れば八番のエリアにたどり着くことができる。
しばらくの間走り、深緑の森にたどり着く。
「さて、まずは三番のエリアを目指すことが先だな」
この一番のエリアから三番のエリアに行くには、足場の悪い獣道を進んでいかないといけない。
草木も生い茂っており、雑草が腰の高さまで伸びている。地面も小石などが転がっており、気をつけて歩かないと石を踏んで転んでしまうことにもなり得る。
急がないといけないけど、ここは慎重に歩いていかないといけないな。
幸いにも周辺にはモンスターの気配がしない。このまま俺のほうも気配を消しつつ、三番のエリアに向かう。
獣道を歩き終えると、三番のエリアに辿り着いた。目の前には断崖絶壁の崖があり、ここを登っていかないといけない。
この崖は本当にしんどいけど、前に何回も登ったことがある。だから問題はないはずだ。
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手を置くポイントを確認しながらロッククライミングを始めた。
崖を登ること体感で三十分、ようやく崖を登り切り、頂上に辿り着く。
「さて、崖を登って八番のエリアに来たけど、依頼主のカバンはどこに落ちているのだろう?」
首を左右に振って探すも、周辺にはカバンが落ちていなかった。
八番のエリアは崖の上だからそんなに広くはない。あのおっさんが間違えていなければ、ここに間違いなくあるはずだ。
もう少し奥の方を歩いていると、モンスターの巣が視界に入った。そして木の枝で作られた巣の中に、クリーム色のカバンがあることに気付く。
あった。あれが依頼主の落としたカバンだな。でも、どうしてモンスターの巣の中にあるんだ?
疑問に思いつつも、俺は巣に近づく。
近づいてみると結構大きいな。俺ごと入ることができるし、卵も大きい。これは巨大なモンスターの巣とみて間違いないだろう。早くカバンを取ってここから離れないと、親のモンスターが現れたら面倒臭いことになる。
『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』
カバンを手に取った瞬間、上空からモンスターの鳴き声が聞こえ、顔を上げる。
上空には巨大な翼竜がおり、爪を剥き出しにしながら俺に向けて急降下してきた。
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