ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第一章

第三話 ホワイトギルドからの誘い

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 馬車から出てきた女性は、水色の髪をモテの王道であるクラシカルストレートにしており、ムッチリとした身体付きからは、大人の色気が感じられた。

 彼女は緑色の瞳で俺のことを見てくる。

 どこの所属なのかを問われても、答えることができないんだよな。今の俺は無職で、どこにも所属はしていない。

「エレーヌさん、この人はどこにも所属していない無職です。さっき自分で言っていました」

 短剣を握っている女の子が、俺が無職であることをバラす。

 そう言えば、助太刀に入った時にそんなことを言ってしまったな。

「へぇー、無職なの」

 ムッチリとした女性は俺に近づいて目の前に立つと、舐め回すように俺の全身を見る。

「なかなかの筋肉をしているわね。わたし好みの身体だわ。ハクギンロウとの戦いを見る限り、相当な手練れだと思うのだけど、どうしてそんなあなたが無職なのかしら? もしかして無職と言うのは比喩表現で、野良のハンターさんってこと?」

 女性がジッと見てくる。母親以外の女の人からジッと見られるのは初めてで、変な緊張感に包まれてしまう。

 さっきから心臓の鼓動が高鳴っているし、速くこの状況から解放されたい。

 ここは正直に言うべきだろうな。

「いや、無職なのは本当だ。俺は前に所属していたハンターギルドをクビにされた。だから今はどこにも所属していない」

 正直に答えると、ムッチリとした女性は己の唇をペロリと舐めると、妖艶な笑みを浮かべる。

「どこにも所属していないんだ。それは好都合ね」

 女性は俺の顎に手を置くと、親指でクイッと持ち上げる。そして顔を更に近づけた。

 もう少しで鼻と鼻が触れ合いそうになり、更に鼓動が激しくなる。

「あ、あのう。これは、いったい」

「うふふ、顔を赤くして可愛いわね。お姉さん、益々あなたのことを気に入ったわ。あなた、わたしのハンターギルドに入らないかしら?」

「え? ハンターギルド?」

 鼓動が激しくなる中、俺はやっとのことで声を絞り出して女性に訊ねた。

「そう、わたしはこの森を抜けた先にある街でハンターギルドを経営しているのよ。あなたはハンターとして素晴らしい素質を持っている。無職でいるなんてもったいない。だからあなたをスカウトしたいのよ」

 ムッチリとした女性は更に顔を近づけ、俺の耳元に顔を持って来る。

「ねぇ、返事を聞かせてくれないかしら?」

 彼女が喋る度に生暖かい風が耳の中に入ってくる。ムッチリとした女性の胸や太ももが当たり、俺の思考回路はショートしかけていた。

「は、はい……よろしくお願いします」

 頭の中が真っ白になっていた俺は、いつの間にかそんな返事をしていた。

「うふふ、ありがとう。正式な契約はギルドについてからだけど、とりあえずは仮契約ということで」

 思考がはっきりとしない中、俺の頬に柔らかいものが当たった。とても柔らかく、甘い香りが漂っていたけど、おそらく俺は、ギルドマスターから頬にキスをされた。

 女性が俺から離れると、若干頬が赤くなっているような気がした。

「わたしはギルドマスターのエレーヌ・デュマ。そしてこの子がユリヤ・イグナチェフよ」

 ギルドマスターが自己紹介をしたあと、両手で顔を隠している女の子に手を向けて、彼女の名前を教える。

 俺たちのやり取りを見て顔を隠したつもりだったのだろうが、指の間から茶色い瞳が見えている。

「よ、よろしくお願いします。ユリヤです。さっきの戦いは凄かったですね。ハクギンロウの親玉を見つけて倒し、群れを蹴散らすなんて」

「いや、あれくらい俺レベルなら普通だよ。たいしたことはしていない」

「へぇー、ハクギンロウの親玉を一瞬で見抜いて倒すことが普通と言えるなんてね。本当にたいしたものだわ。やっぱりわたしの目に狂いはなかった」

 二人は褒めてくれるけど、俺の中ではやっぱり普通だ。あの激務の中ではいかに効率よく依頼をこなせるかが重要だったからな。自然と身に付いてしまって俺の中では全然すごい内には入らない。

 だけど、褒めてもらったことなんて何年もなかったから、正直に言って嬉しい。

「そうそう、まだあなたの名前を教えてもらっていなかったわね。名前はなんて言うのかしら?」

「あ、そう言えば名前を言ってはいなかったですね。俺の名はリュシアン・プライムって言います」

「リュシアンね。あなたのご両親は素敵な名前をあなたにつけて下さったのね」

「エレーヌさんも素敵な名前ですよ」

「うふふ、ありがとう。それじゃあそろそろ出発しましょうか。早く町に戻って、リュシアン君の手続きをしないといけないから」

 ギルドマスターのエレーヌさんが微笑むと、彼女は踵を返して馬車の中に入る。

「あ、リュシアンさんも良ければ馬車の中にどうぞ。エレーヌさんも歓迎してくれると思いますので」

 俺に笑みを向けると、ユリヤは御者席に座る。

 ここはお言葉に甘えるところなんだろうけど、どうしても万が一のことを考えてしまう。すぐに行動に移すためにも、俺も外にいた方がいい。

「ありがとう。でも、良ければ助手席の方に座らせてくれないか。俺も実は御者の経験があって、それなりにサポートはできる」

「そうなのですね。では、サポートしてもらえると私も助かります」

 ユリヤの許可を貰い、俺は助手席に座る。すると、ユリヤは手綱を上下に動かして馬に合図を送り、隣町に向けて馬を歩かせた。









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