ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第一章

第二話 クビになった俺は、女の子がモンスターに襲われてシーンに遭遇する。

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「リュシアン、お前を今からクビにする! このギルドを出ていけ!」

 ギルドマスターのアントニオの言葉を聞いた俺は、一瞬耳を疑った。

 この俺がクビ? そんなバカな。何かの冗談だろう?

「じょ、冗談ですよね? 俺をクビにするなんて、そんなのあり得ない」

「俺様が冗談を言っているように見えるか?」

 アントニオは俺を睨みつける。彼の表情は真剣であり、とても冗談を言っているようには思えなかった。

 どうして俺がクビにならない。納得なんかできるわけがない。

「な、何で俺がクビになるのですか! 可笑しいでしょう!」

「フェルディナンから聞いたぞ。お前、危うく任務を失敗しそうになったんだってな。それをフェルディナンが頑張ってカバーをしてくれたらしいじゃないか」

 俺が任務を失敗しそうになった? フェルディナンがカバーしてくれた? そんなの、嘘八百じゃないか。

「それはフェルディナンの嘘だ! 俺はちゃんとピッグコングを倒した。裏切ったのはあいつの方だ!」

「それを証明できる物でもあるのか?」

 低い声で問い質してくるアントニオに、俺は何も言えなくなる。

 証拠なんて何もないに決まっているじゃないか。

「それじゃ、フェルディナンが本当のことを言っているって証拠はあるのかよ!」

「そんなものないに決まっているだろうが」

「なら!」

「うるさい! それ以上は無駄口を叩くな! 証拠が互いにない場合は、俺様がどっちを信じるかだ! フェルディナンはきちんと仕事を終わらせるのに、お前は常にギリギリだ! 今回の任務だって帰って来るのが遅かったではないか! どうせサボっていたに決まっている!」

 アントニオは睨みながら俺に人差し指を向ける。
 
「フェルディナンは優秀な部下だが、お前はこのギルドの穀潰しだ! よって、お前をクビにする! もちろん一ギルたりとも退職金なんかやらないからな! さぁ、さっさとこのギルドから出て行け! 出ないと力付くで出て行ってもらう!」

 アントニオが斧を取り出して刃先を俺に向けた。

 カウンターで見えていなかったけど、足元に隠していたのか。

 ギルドマスターは血走っている。下手に刺激をしたら殺されるかもしれない。

 俺は無言のまま後退ると、斧の間合いから離れた時点で踵を返し、逃げるようにギルドから出て行く。





「はぁー、これからどうしようか」

 ハンターギルドをクビになり、町に居場所を無くした俺はトボトボと森の中を歩いていた。

「とりあえずは実家の村に帰るか。あそこなら知り合いもいるし、次の仕事を見つけることができるはず」

 ポケットに手を突っ込み、中に入れてある硬貨を取り出す。

 俺の所持金は宿台の釣り銭である300ギル。これじゃあまともに生活もできない。

 この森で食べられるキノコや野草なんかを探して数日は飢えを凌ぐしかないな。

『ヒヒーン』

「きゃ!」

 うん? 今、馬と女の子の悲鳴が聞こえなかったか?

 もしかしたら気のせいかもしれない。けど、妙な胸騒ぎもするんだよな。

 もし、気のせいではなく本当にモンスターや野盗に襲われていたとしたら、俺はきっと後悔することになるだろう。

「よし、行ってみるか。杞憂であってほしいのだがな」

 俺は声が聞こえた方に向けて走る。すると、馬車を囲むように白銀の毛並みを持つオオカミの集団が見えた。

 あれはハクギンロウ! やっぱり気のせいではなかったか。

「エレーヌさんは私が守ります!」

 女の子が手に短剣を持ったままハクギンロウと対峙している。だけどあんなにリーチの短い得物では、ハクギンロウと相性が悪い。

 ハクギンロウは集団で狩りを行い、とても素早い動きで間合いを詰めてくる。

 得物を振る前に懐に入られればなすすべがない。

「はあ! クッ、きゃ!」

 どうにか応戦しているみたいだけど、数の暴力には抗えない。ここは俺が助太刀をしないと。

 足の筋肉の収縮速度を速くするように意識しながら、俺は地を蹴って思いっきり走る。

「きゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 女の子は悲鳴を上げるが、ハクギンロウの牙が彼女に当たるよりも速く、俺の太刀を間に入れることに成功した。

 刃を噛んだ瞬間、オオカミの口から血が滴り落ちる。

 よし、今だ!

 俺はそのまま腕に力を入れてハクギンロウを地面に叩き付けた。

『キャン!』

 オオカミは短い悲鳴を上げると動かなくなった。

 頭から地面に叩きつけられたからな。脳震盪のうしんとうを起こしてしばらくは動けないはず。

「あ、あなたは?」

「通りすがりの無職です。勝手ながら助太刀します」

 簡単に挨拶を済ませると、俺は残りのハクギンロウを見る。

 あと四匹いるか。こいつらはとくに特殊な能力を持っていないが、集団で狩りをする程度の知能は持っている。

 攻撃手段は牙と爪。それくらいしか特徴がない。そして攻撃するのは常に下っ端だ。

 こいつらを全員相手にするのは少々面倒だ。こうなったらこいつらを統率しているリーダーを倒して、追い払うのがいい。

 いったいどいつだ? いや、この場にいるとも限らないな。もしかしたら四匹とも手下の可能性もある。

『ワウーン!』

 考え事をしていると、一匹のハクギンロウが吠える。その瞬間、三匹が一斉に襲ってきた。

 なるほど、単体でダメなら大勢で畳みかけるか。なかなか考えるじゃないか。だけどそれが逆に命取りになる。

 跳躍して躱すと、俺がいた地点に三匹のオオカミが群がった。

 そしてやつらの上に着地すると、こいつらを踏み台にして背中を蹴り、吠えたハクギンロウとの距離を詰める。

「こいつで終わりだ!」

『キャウーン!』

 間合いに入った瞬間、俺は太刀を振り下ろす。刃がボスのクビを切り裂き、鮮血が噴き出る。

「太い血管を切った。お前はもう助からない」

 地面に横たわるボスに最後の言葉を送り、踵を返して残りのハクギンロウを見る。

「さぁ、お前たちのボスは倒した。仇を打ちたいのなら来い! 俺が相手をしてやる」

 堂々とした振る舞いで残党に言うと、やつらは無言でこの場から逃げて行く。

 ふぅ、どうにか逃げてくれたか。

 太刀にべっとりと付いたモンスターの血を払い、鞘に仕舞う。

「へぇー、あなたってなかなか強いのね? どこの所属のハンターさんなのかしら?」

 馬車から女性が出て来ると、彼女は俺にどこの所属なのかを訊ねた。










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