ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
5 / 171
第一章

第五話 クイーンフレイヤーを討伐せよ

しおりを挟む
 巨大な翼竜が爪を剥き出しにした状態で急降下してきた。

「あいつはクイーンフレイヤー! この巣はあいつが作ったものか!」

 きっと俺のことは、卵を狙う敵だと認識している。ここから直ぐに離れないとやつの爪の餌食になる。

 急いでカバンを掴むと、モンスターの巣から飛び降り、地面を転がる。

 立ち上がって巣の方を見ると、クイーンフレイヤーは着地を決めていた。

 危なかった。あともう少し気づくのが遅ければ、俺は奴の爪で身体を引き裂かれていたかもしれない。

 とにかくカバンを回収することはできた。このままゆっくりとこの場を離れて離脱しよう。

 この後の方針を決めていると、クイーンフレイヤーは俺の方を見る。

 そして両翼を広げると、口を大きく開けた。

 このモーションはマズイ!

 モンスターの動きから次の行動を予測した俺は横に逃げる。すると、クイーンフレイヤーの口から火球が放たれ、俺の真横を通過した。

 目標に命中することがなかった火球は地面に当たり、周辺を焦がす。

「マジかよ。もしかして俺は、クイーンフレイヤーから完全に敵として認識されてしまったのか」

 とにかく逃げなければならない。深緑の森を最短距離で脱出するには、来た道を引き返すのが一番だ。だけどそれには崖下に飛び降りなければならない。

 はっきり言って自殺行為だ。少し遠回りになるけど、八番、七番、五番、二番、一番の五つのエリアを移動して深緑の森を出なければならない。

 まずは七番のエリアだ。だけどそこに向かうには、クイーンフレイヤーの横を通る必要がある。

 逃げられる確率を上げるには、意表を突くしかない。

 そのためにも、一度攻撃に転じる。

 鞘から太刀を抜くと、構えながら走った。

 太刀を構えたことで、クイーンフレイヤーも戦闘に発展したと思い込んだようだ。俺に向かって突進してくる。

 やつの突進は、体力が有り余っているときは普通に突っ込んでくる。途中で転けるようなことはしない。そして突進の際は、足同士の間に隙間ができる。その間を抜ければ、一旦逃げられるはずだ。

 走りながらタイミングを伺い、ベストなタイミングでモンスターの懐に入り込んだ。そして太刀を鞘に収め、翼竜の足の間を抜ける。

「よし、上手くいった! あとはこのまま逃げきるのみ」

 全速力で走り、八番のエリアを出ると、七番のエリアに移動した。

 七番のエリアは広い洞窟だ。天井が空いているため、太陽光が降り注いでいる。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 全力疾走をしたせいで、スタミナの殆どを消費してしまったみたいだ。俺は両膝に手を置き、息が整うのを待つ。

「まさか、クイーンフレイヤーに目をつけられるとは思っていなかったな」

 ある程度息が整ったら七番のエリアから出よう。そう思ったとき、太陽光が遮断されて影が生じる。そして更に翼の羽ばたく音が聞こえてきた。

 まさか、もう見つかってしまったのか!

 顔を上げると、ゆっくりと降りてきているクイーンフレイヤーの姿が目に映った。

 くそう。もう見つかってしまったのかよ。とにかく、急いで五番のエリアに向かわないと。

 七番から五番のエリアに繋がる道は狭い。クイーンフレイヤーの大きさでは、通ることができない。そこに入れば、今度こそ逃げ切れるはず。

 地を蹴って、俺は再び全力でダッシュした。

 あと十メートル程で狭い道に入れる……あと八メートル……五メートル。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 クイーンフレイヤーの咆哮が聞こえた瞬間、後方を見た。翼竜も俺に向かって全力で走ってくる。

 俺とやつとでは足の歩幅が段違いだ。このままでは確実に追いつかれて、あの大きい口で頭から噛みつかれてしまう。

 こうなったら横に跳んで、モンスターの攻撃を躱すしかない。

 俺は走りながら横に跳ぶ。地面にダイブした後に起き上がると、クイーンフレイヤーが俺の横を通り過ぎて洞窟の壁にぶつかった。

 その時洞窟の一部が崩れて、五番エリアに繋がる道が岩で塞がってしまう。

 嘘だろう。退路をたたれてしまった。

 こうなってしまった以上、俺が生き残る道はただ一つしかない。

「クイーンフレイヤーを討伐して安全に八番エリアの崖を降りるしかない」

 もう一度鞘から太刀を抜いて構えた。

 クイーンフレイヤーの攻撃のモーションは頭の中に叩き込んである。

 その知識を上手く使い、モンスターの攻撃を一度も受けずに討伐してみせる。

「行くぞ!」

 地を蹴って駆け、翼竜との距離を縮める。

 やつが翼を広げて口を大きく開けた。火球を放ってくる。

 モンスターのモーションを見て横に飛び、敵の放った火球を避ける。しかし、やつの攻撃はこれだけでは終わらなかった。首を動かして俺に狙いを定め、再度火球を放つ。

 だけどクイーンフレイヤーの火球は一直線にしか進まない。やつの首と口の角度から計算すれば、どこに火球が跳んで来るのか容易に分かる。

「攻撃が来る場所さえ分かれば、避けるなんて簡単だ!」

 クイーンフレイヤーの攻撃を避けるとやつの懐に入り、太刀で足を斬りつける。刃が触れた箇所から鮮血が勢いよく噴き出した。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 痛みを覚え、クイーンフレイヤーは咆哮を上げると、足を軸にして回転した。

 この場合は下手に動かないで足元に隠れているのが一番安全だ。だけどそれでは時間がもったいない。

 今の内にもっと足を攻撃だ!

 腕に力を入れて太刀を振り、翼竜の足を斬っていく。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 再びクイーンフレイヤーが悲鳴をあげ、バランスを崩して地面に倒れる。

「今だ! まずはその邪魔な尻尾を切断だ!」

 跳躍して俺は翼竜の尻尾に目がけて太刀を振り下ろす。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 太刀が奴の尻尾に触れた瞬間、俺は雄叫びを上げた。

 これは別にかっこつけている訳ではない。人は瞬間的に大きな力を振るう際に声を上げることで、神経による運動制御の抑制を外し、自分の筋肉の限界に近い力を発揮させることができる。

 脳のリミッターを一時的に解除した俺の力により、クイーンフレイヤーの尻尾は切断された。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 尻尾を失ったことで翼竜は悲鳴を上げるも、やつはまだ起き上がることができていない。

「追撃するなら今だ!」

 今度は足の筋肉の収縮速度を速くすることを意識しつつ、翼竜の頭の前に移動。先ほどと同じように頭部に刃を叩き込む。

 さすがに頭は尻尾と違って固いな。首を狙っても切断することはできそうもない。そうなるうと、次に狙うとすれば胸か。

 攻撃する箇所を変え、俺はクイーンフレイヤーの胸に太刀を突き刺す。

 胸の皮膚は硬くなく、容易に突き刺さった。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 翼竜は悲鳴を上げると、それから動かなくなった。

「どうやら運よく心臓を貫いたようだな。よし、これでクイーンフレイヤーの討伐完了だ!」









最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントでも大丈夫です。

何卒よろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

処理中です...