ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十章

第二話 姉との再会

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~ユリヤ視点~



「それでは行ってきます」

「気を付けて行って来てね。事情は聞いたけど、あまり無茶してはダメよ。えーとそれから」

 私ことユリヤは、恒例になっているエレーヌさんの言葉を聞き、苦笑いを浮かべました。私と同じように、リュシアンさんたちも同じ表情をしています。

 ですが今では当たり前になっていて、逆にこれがないと調子が狂うくらいです。

「分かっています。安心してください。みんな行こう」

 リュシアンさんが声をかけ、私たちはギルドを出ると手配した馬車に乗り込みました。

 馬車で移動中、私たちは無言です。

 本当なら私の姉のことについてもう少し詳しく聞きたいと思っているはずです。だけど、私の気持ちを考えて口には出さないでいてくれているのだと思います。皆さん本当に優しいです。

「ねぇ、ユリヤ。男爵邸のある街ってどんなところなの?」

 無言が続いていると、テレーゼさんが話しかけてきました。

「とてもいいところですよ。暮らしている人は親切な人たちばかりです」

 笑みを浮かべながら、テレーゼさんの質問に答えます。

 リュシアンさんたちは、特産品や名物などのを訊ね、私たちはしばらくの間楽しい時間を過ごしました。





 それから数時間が経ち、太陽が一番高い位置に来た頃、馬車は実家の前で止まりました。

 馬車から降りて建物を見ます。

 数年振りに帰って来ましたが、外観は何も変わっておらず、あの時のままです。

 リュシアンさんが門を開けようとしましたが、開くことはありませんでした。

 鉄格子の隙間からは扉を見ますが、誰も出て来る気配がありません。

「どうやら鍵がかかっているみたいだな。ユリヤ、どうしたら開けてもらえるんだ?」

「えーとですね」

 私が答えようとしたところで玄関の扉が開き、メイド服を着た女性が外に出て来ました。

 彼女は私たちに気付くとこちらに歩いて来ます。

「何か御用でしょうか?」

「あ、俺たちは――」

「あなたはユリヤお嬢様!」

 リュシアンさんが身分を明かそうとしたところで、メイドが私の存在に気付いたようで声を上げました。

「た……ただいま」

 挨拶をしましたが、緊張していたせいか、出た声は小さかったです。

「俺たちはヴィクトーリア様からの依頼を受け、ユリヤをお連れしました」

「わ、わかりました。少々お待ちください」

 リュシアンさんが要件を伝えると、メイドは急いで家の中に戻って行きます。そして体感で五分くらい経ったでしょうか。再びメイドが外に出ると、門を開けてくれました。

「お待たせしました。ヴィクトーリアお嬢様が応接室でお待ちです。ご案内しますので付いて来てください」

 メイドに案内され、私たちは屋敷に入ります。

「ヴィクトーリアお嬢様、ユリヤお嬢様とハンターの皆様をお連れしました」

「入室を許可いたしますわ」

 扉越しに声が聞こえると、メイドは一礼して家の奥に向かいました。

「失礼します」

 リュシアンさんが扉をノックして、今から入ることを告げてから扉を開けました。

 部屋にはピンク色の髪をハーフツインにしている女の子が、カップを持ったままこちらを見ています。

 間違いなく私の姉、ヴィクトーリアです。

 彼女の後には褐色の筋肉質の男がスーツを着て控えていました。あの人は姉の護衛をしているボブです。数年振りにあのツルツル頭を見ました。少しだけ懐かしいですね。

「あら、ハンターですのに以外と礼儀正しいのですね。意外ですわ。もっと野蛮に扉を開けて、ズカズカと入って来るものだと思いましたわ」

 姉は持っているカップをテーブルの上に置き、座っているソファーから立ち上がるとこちらに歩いて来ます。そして私の前に立つと、右手を振り上げてそのまま勢いよく平手打ちをしました。

 頬が当たった瞬間、ジンジンと痛み出し、思わず涙が出そうになりました。

 叩かれた頬に手を添えます。

「よくも逃げ出してくださいましたね。この男爵家の恥晒しゴミ! あなたが居なくなったせいで、わたくしのストレス発散ができなくなって、お肌が荒れる毎日ではなかったですの!」

 もう一度姉が腕を振り上げました。もう一度反対側の頬を叩くつもりなのでしょう。

 過去に姉から受けた暴力を思い出し、体が動きません。また打たれるのでしょう。

 両の瞼を閉じて受け入れようとしましたが、数秒経っても反対側の頬は痛くありませんでした。

 閉じていた瞼を開けると、目の前にリュシアンさんの背中が見えます。

「その手を離しなさい! 平民風情がわたくしをなんだと思っているのです!」

 どうやらリュシアンさんが姉の腕を掴み、庇ってくれたようです。

「男爵令嬢ですよね。そのくらい分かっています。ですが、これ以上ユリヤに手をあげる必要はないはずです」

「これはわたくしたち、イグナイチェフ家の問題です。平民には関係ないですよ」

「関係ない訳あるか! ユリヤは俺たちの大切な仲間だ! 仲間が暴力を振るわれて、そのまま見ぬふりができる訳がないだろう!」

 リュシアンさんが声を上げ、彼の言葉が耳に入った瞬間胸が苦しくなります。

 リュシアンさんは私のために動いてくれている。それなのに、私は姉を目の前にした瞬間動くことのできない案山子となっている。

 このままではダメ。リュシアンさんやみんなの気持ちに応えるためにも、ここで奮い立たないといけない。

「お姉ちゃん! いえ、ヴィクトーリア!」

 声を上げると、姉は信じられないものを見るかのように目を大きく見開きました。

「あなた、姉に向かって呼び捨てとは良い度胸ですね。そんな態度を取ってどうなるのか分かっているのですか」

「分かっている。でも、ここで私が立ち向かわないと、私の未来は今のまま変わらない。だから、勝負です!私が勝ったら二度と私に関わらないでください!」

 お腹から声を出して大声で勝負を仕掛けました、そんな私を見て、姉は片目をピクピクさせます。

「そこまで言うのなら受けて立ちましょう。ですがわたくしが勝てば、この男をわたくしの使用人にします。この男はわたくしの邪魔をしました。なので、痛い目に遭ってもらわなければ気が済みませんわ」

「どうしてそうなるのですか! リュシアンさんは関係ありません!」

「なら、勝負はなしですわ。ボブ、彼らを追い出してください」

「わかりました。お嬢様」

 ボブが近づき、リュシアンさんたちを睨みます。

「分かった。その条件を飲もう」

「リュシアンさん!」

リュシアンピグレット!」

「リュシアン王子!」

 私たちは一斉に彼の名を口にします。

「ユリヤは負けやしない。負けるのはお前だ」

「では、契約成立と言うことで、勝負は明日行いましょう。内容は明日お話ししますわ」

 リュシアンさん、巻き込んでごめんなさい。ですが、絶対に勝ちます。
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