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第一章
第九話 模擬レースなのに、実況や解説もあるんだな
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ブタゴリラとの模擬レースを蹴って、学生寮に向かおうとすると、背後から聞き覚えのある声で、女の子が声を掛けてきた。
この声ってまさか。
どうしてお前が俺に声をかけるんだよ。
声の主を悟って振り返ると、そこには予想通りに、茶髪の髪をツインテールに纏めたキツネ耳の女の子が立っていた。
「どうしてタマモが俺に声をかけるんだよ。昼休みにやり合ったじゃないか?」
「あたしだって、本当は声なんかかけたくないわよ。でも、あんたがレース場とは反対方向に歩き出すのを見たから、仕方なく教えてあげただけ」
周囲には先生や生徒の姿が見当たらないからだろう。タマモは口調をかえ、砕けた感じで話す。
「どうしたんだ? 妙に口調が変わったじゃないか? 優等生らしい上品な口調はやめたのか?」
「あんたにはあたしの素の状態を曝け出してしまったから、もう猫を被る必要がないわよ。どうしてあんたの前まで、わざわざ疲れるようなことをしないといけないのよ」
わざと訊ねてみると、タマモは素を曝け出した理由を語る。
どうせなら、俺以外の前でも素を曝け出せば良いのにな。案外受け入れてくれるかもしれないのに。
そんなことを考えながらも、会話の区切りが付いたところで、再び学生寮に向けて歩き出す。すると、タマモが距離を詰め、俺の腕を掴んだ。
「おい、何をするつもりだ?」
「何って決まっているじゃない。シャカールは方向音痴みたいだから、レース場に連れて行ってあげようと思って」
素の状態だからか、タマモはとうとう俺を呼び捨てにするようになった。まぁ、別にそんな細かいことは気にしないのだがな。
「誰が方向音痴だ。俺は学生寮に帰って休む」
「ダメよ! あんたはレースに出場しなければいけないわ。学級委員長として、クラスメイトが歪み合い続けるのを見過ごす訳にはいかない。だからレースに出場して、決着を付けるのよ? それとも、これから先ずっとピックに絡まれ続ける学園生活を送りたいの?」
タマモが脅迫紛いなことを言ってくる。
確かにあの豚面に絡まれるのは、精神的にきつい。
「分かった。だけどひとつ条件がある。模擬レースに出場する代わりに、ブタゴリラが俺に絡んで来ないようにしてくれ」
「分かったわ。彼には誤解だったってことをあたしのほうから伝えておく」
交渉成立となり、俺は嫌々ながらタマモとレース会場へと向かうことになった。
「遅い! 貴様! いつまで俺様たちを待たせていたんだ!」
「5分の遅れくらい見逃してくれよ。色々とあったんだから」
選手の控え室に入ると、ブタゴリラがいきなり怒鳴り付けた。彼の後には飛び入りで参加したのか、他の魔族や獣人の姿も見られる。
全員男ばかりか。なんだか暑苦しいレースになりそうだ。
「とにかく急ぐぞ! 次の模擬レースを予約している奴らがいるんだ。レースに遅延が発生したら、俺が責任を取ることになる」
早くレースを始めたいのか、ブタゴリラは他の生徒を引き連れ、控え室から出て行った。
「面倒くさいが、さっさと終わらせて帰るか」
小さく息を吐き、俺も控え室から出るとレース場に出て芝を踏み締める。
『さぁ、最後に入場しましたのは、シャカール走者! なんとこの学園唯一の人類であります。果たして最弱走者の異名を持つ人類が、どこまで食らい付いていくのか楽しみであります』
『この学園に入学できたと言うことは、それなりの実力があると思います。番狂わせが起きることを期待したいですね』
入場すると、どこからか声が反響してきた。まさか実況と解説までいるとは、模擬レースなのに、やることはしっかりとしているんだな。
観客席の方に視線を向けると、数十人の生徒が座り、俺たちの走りを見守っている。知り合いの応援なのか、それとも敵の視察なのか分からないが、よく観戦に来るものだ。
観客席たちの方に顔を向けると、茶髪の髪をツインテールに纏めている狐耳の女の子が視界に入った。
タマモも一応見に来たのか。これは無様な走りをしたら、後でストレス発散ついでに散々なことを言われそうだな。
『合計9人で行われる模擬レース、実況はわたくし高等部3年アルティメット、解説はサラブレットで行います。さぁ、今回の模擬レース、芝1400メートル、ギミックなしのシンプルなレースですが、解説のサラブレットは今回のレース、どのように思われていますか?』
『そうですね。芝の状態は良との発表です。これだけ芝が乾いていると、良い走りができますので、アックス走者が一番良い走りをしてくれそうです』
『僅かですが、かき集めた人気投票でも1位を獲得しています。1番人気の実力を発揮すれば、恐らく彼がこのレースを制するかもしれませんね』
実況と解説のやり取りを耳にしながら、思わず苦笑いを浮かべた。
ブタゴリラがレースの申請をしたからには、彼が1番人気になるレースにしたのかと思っていた。
ゲートの方を見ると、5番ゲートだけが空いていた。既に抽選は行われていたみたいだな。それにしても一番真ん中か。レースが芝1400メートルの短距離で、俺のスタート位置が真ん中なら、ここは先行か差し辺りの走りで行くべきだろうか。
模擬レースとは言え、ルーナ以外と勝負するのは初めてだ。他の走者がどのような走りが得意なのか分からない。最初は様子見をしながら、慎重に走った方が良さそうだ。
戦略を考えながら、5番ゲートの中に入る。
『さぁ、シャカール走者がゲートイン完了しました。第一模擬レース戦、これより開始です』
精神を集中して、閉じたゲートが再び開くのを待つ。俺がゲートインしたその数秒後、何の前触れもなくゲートが開いた。
『今、ゲートが開かれました! 走者一斉に走り出した!』
この声ってまさか。
どうしてお前が俺に声をかけるんだよ。
声の主を悟って振り返ると、そこには予想通りに、茶髪の髪をツインテールに纏めたキツネ耳の女の子が立っていた。
「どうしてタマモが俺に声をかけるんだよ。昼休みにやり合ったじゃないか?」
「あたしだって、本当は声なんかかけたくないわよ。でも、あんたがレース場とは反対方向に歩き出すのを見たから、仕方なく教えてあげただけ」
周囲には先生や生徒の姿が見当たらないからだろう。タマモは口調をかえ、砕けた感じで話す。
「どうしたんだ? 妙に口調が変わったじゃないか? 優等生らしい上品な口調はやめたのか?」
「あんたにはあたしの素の状態を曝け出してしまったから、もう猫を被る必要がないわよ。どうしてあんたの前まで、わざわざ疲れるようなことをしないといけないのよ」
わざと訊ねてみると、タマモは素を曝け出した理由を語る。
どうせなら、俺以外の前でも素を曝け出せば良いのにな。案外受け入れてくれるかもしれないのに。
そんなことを考えながらも、会話の区切りが付いたところで、再び学生寮に向けて歩き出す。すると、タマモが距離を詰め、俺の腕を掴んだ。
「おい、何をするつもりだ?」
「何って決まっているじゃない。シャカールは方向音痴みたいだから、レース場に連れて行ってあげようと思って」
素の状態だからか、タマモはとうとう俺を呼び捨てにするようになった。まぁ、別にそんな細かいことは気にしないのだがな。
「誰が方向音痴だ。俺は学生寮に帰って休む」
「ダメよ! あんたはレースに出場しなければいけないわ。学級委員長として、クラスメイトが歪み合い続けるのを見過ごす訳にはいかない。だからレースに出場して、決着を付けるのよ? それとも、これから先ずっとピックに絡まれ続ける学園生活を送りたいの?」
タマモが脅迫紛いなことを言ってくる。
確かにあの豚面に絡まれるのは、精神的にきつい。
「分かった。だけどひとつ条件がある。模擬レースに出場する代わりに、ブタゴリラが俺に絡んで来ないようにしてくれ」
「分かったわ。彼には誤解だったってことをあたしのほうから伝えておく」
交渉成立となり、俺は嫌々ながらタマモとレース会場へと向かうことになった。
「遅い! 貴様! いつまで俺様たちを待たせていたんだ!」
「5分の遅れくらい見逃してくれよ。色々とあったんだから」
選手の控え室に入ると、ブタゴリラがいきなり怒鳴り付けた。彼の後には飛び入りで参加したのか、他の魔族や獣人の姿も見られる。
全員男ばかりか。なんだか暑苦しいレースになりそうだ。
「とにかく急ぐぞ! 次の模擬レースを予約している奴らがいるんだ。レースに遅延が発生したら、俺が責任を取ることになる」
早くレースを始めたいのか、ブタゴリラは他の生徒を引き連れ、控え室から出て行った。
「面倒くさいが、さっさと終わらせて帰るか」
小さく息を吐き、俺も控え室から出るとレース場に出て芝を踏み締める。
『さぁ、最後に入場しましたのは、シャカール走者! なんとこの学園唯一の人類であります。果たして最弱走者の異名を持つ人類が、どこまで食らい付いていくのか楽しみであります』
『この学園に入学できたと言うことは、それなりの実力があると思います。番狂わせが起きることを期待したいですね』
入場すると、どこからか声が反響してきた。まさか実況と解説までいるとは、模擬レースなのに、やることはしっかりとしているんだな。
観客席の方に視線を向けると、数十人の生徒が座り、俺たちの走りを見守っている。知り合いの応援なのか、それとも敵の視察なのか分からないが、よく観戦に来るものだ。
観客席たちの方に顔を向けると、茶髪の髪をツインテールに纏めている狐耳の女の子が視界に入った。
タマモも一応見に来たのか。これは無様な走りをしたら、後でストレス発散ついでに散々なことを言われそうだな。
『合計9人で行われる模擬レース、実況はわたくし高等部3年アルティメット、解説はサラブレットで行います。さぁ、今回の模擬レース、芝1400メートル、ギミックなしのシンプルなレースですが、解説のサラブレットは今回のレース、どのように思われていますか?』
『そうですね。芝の状態は良との発表です。これだけ芝が乾いていると、良い走りができますので、アックス走者が一番良い走りをしてくれそうです』
『僅かですが、かき集めた人気投票でも1位を獲得しています。1番人気の実力を発揮すれば、恐らく彼がこのレースを制するかもしれませんね』
実況と解説のやり取りを耳にしながら、思わず苦笑いを浮かべた。
ブタゴリラがレースの申請をしたからには、彼が1番人気になるレースにしたのかと思っていた。
ゲートの方を見ると、5番ゲートだけが空いていた。既に抽選は行われていたみたいだな。それにしても一番真ん中か。レースが芝1400メートルの短距離で、俺のスタート位置が真ん中なら、ここは先行か差し辺りの走りで行くべきだろうか。
模擬レースとは言え、ルーナ以外と勝負するのは初めてだ。他の走者がどのような走りが得意なのか分からない。最初は様子見をしながら、慎重に走った方が良さそうだ。
戦略を考えながら、5番ゲートの中に入る。
『さぁ、シャカール走者がゲートイン完了しました。第一模擬レース戦、これより開始です』
精神を集中して、閉じたゲートが再び開くのを待つ。俺がゲートインしたその数秒後、何の前触れもなくゲートが開いた。
『今、ゲートが開かれました! 走者一斉に走り出した!』
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