薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

文字の大きさ
10 / 269
第一章

第九話 模擬レースなのに、実況や解説もあるんだな

しおりを挟む
 ブタゴリラとの模擬レースを蹴って、学生寮に向かおうとすると、背後から聞き覚えのある声で、女の子が声を掛けてきた。

 この声ってまさか。

 どうしてお前が俺に声をかけるんだよ。

 声の主を悟って振り返ると、そこには予想通りに、茶髪の髪をツインテールに纏めたキツネ耳の女の子が立っていた。

「どうしてタマモが俺に声をかけるんだよ。昼休みにやり合ったじゃないか?」

「あたしだって、本当は声なんかかけたくないわよ。でも、あんたがレース場とは反対方向に歩き出すのを見たから、仕方なく教えてあげただけ」

 周囲には先生や生徒の姿が見当たらないからだろう。タマモは口調をかえ、砕けた感じで話す。

「どうしたんだ? 妙に口調が変わったじゃないか? 優等生らしい上品な口調はやめたのか?」

「あんたにはあたしの素の状態を曝け出してしまったから、もう猫を被る必要がないわよ。どうしてあんたの前まで、わざわざ疲れるようなことをしないといけないのよ」

 わざと訊ねてみると、タマモは素を曝け出した理由を語る。

 どうせなら、俺以外の前でも素を曝け出せば良いのにな。案外受け入れてくれるかもしれないのに。

 そんなことを考えながらも、会話の区切りが付いたところで、再び学生寮に向けて歩き出す。すると、タマモが距離を詰め、俺の腕を掴んだ。

「おい、何をするつもりだ?」

「何って決まっているじゃない。シャカールは方向音痴みたいだから、レース場に連れて行ってあげようと思って」

 素の状態だからか、タマモはとうとう俺を呼び捨てにするようになった。まぁ、別にそんな細かいことは気にしないのだがな。

「誰が方向音痴だ。俺は学生寮に帰って休む」

「ダメよ! あんたはレースに出場しなければいけないわ。学級委員長として、クラスメイトが歪み合い続けるのを見過ごす訳にはいかない。だからレースに出場して、決着を付けるのよ? それとも、これから先ずっとピックに絡まれ続ける学園生活を送りたいの?」

 タマモが脅迫紛いなことを言ってくる。

 確かにあの豚面に絡まれるのは、精神的にきつい。

「分かった。だけどひとつ条件がある。模擬レースに出場する代わりに、ブタゴリラが俺に絡んで来ないようにしてくれ」

「分かったわ。彼には誤解だったってことをあたしのほうから伝えておく」

 交渉成立となり、俺は嫌々ながらタマモとレース会場へと向かうことになった。





「遅い! 貴様! いつまで俺様たちを待たせていたんだ!」

「5分の遅れくらい見逃してくれよ。色々とあったんだから」

 選手の控え室に入ると、ブタゴリラがいきなり怒鳴り付けた。彼の後には飛び入りで参加したのか、他の魔族や獣人の姿も見られる。

 全員男ばかりか。なんだか暑苦しいレースになりそうだ。

「とにかく急ぐぞ! 次の模擬レースを予約している奴らがいるんだ。レースに遅延が発生したら、俺が責任を取ることになる」

 早くレースを始めたいのか、ブタゴリラは他の生徒を引き連れ、控え室から出て行った。

「面倒くさいが、さっさと終わらせて帰るか」

 小さく息を吐き、俺も控え室から出るとレース場に出て芝を踏み締める。

『さぁ、最後に入場しましたのは、シャカール走者! なんとこの学園唯一の人類であります。果たして最弱走者の異名を持つ人類が、どこまで食らい付いていくのか楽しみであります』

『この学園に入学できたと言うことは、それなりの実力があると思います。番狂わせが起きることを期待したいですね』

 入場すると、どこからか声が反響してきた。まさか実況と解説までいるとは、模擬レースなのに、やることはしっかりとしているんだな。

 観客席の方に視線を向けると、数十人の生徒が座り、俺たちの走りを見守っている。知り合いの応援なのか、それとも敵の視察なのか分からないが、よく観戦に来るものだ。

 観客席たちの方に顔を向けると、茶髪の髪をツインテールに纏めている狐耳の女の子が視界に入った。

 タマモも一応見に来たのか。これは無様な走りをしたら、後でストレス発散ついでに散々なことを言われそうだな。

『合計9人で行われる模擬レース、実況はわたくし高等部3年アルティメット、解説はサラブレットで行います。さぁ、今回の模擬レース、芝1400メートル、ギミックなしのシンプルなレースですが、解説のサラブレットは今回のレース、どのように思われていますか?』

『そうですね。芝の状態は良との発表です。これだけ芝が乾いていると、良い走りができますので、アックス走者が一番良い走りをしてくれそうです』

『僅かですが、かき集めた人気投票でも1位を獲得しています。1番人気の実力を発揮すれば、恐らく彼がこのレースを制するかもしれませんね』

 実況と解説のやり取りを耳にしながら、思わず苦笑いを浮かべた。

 ブタゴリラがレースの申請をしたからには、彼が1番人気になるレースにしたのかと思っていた。

 ゲートの方を見ると、5番ゲートだけが空いていた。既に抽選は行われていたみたいだな。それにしても一番真ん中か。レースが芝1400メートルの短距離で、俺のスタート位置が真ん中なら、ここは先行か差し辺りの走りで行くべきだろうか。

 模擬レースとは言え、ルーナ以外と勝負するのは初めてだ。他の走者がどのような走りが得意なのか分からない。最初は様子見をしながら、慎重に走った方が良さそうだ。

 戦略を考えながら、5番ゲートの中に入る。

『さぁ、シャカール走者がゲートイン完了しました。第一模擬レース戦、これより開始です』

 精神を集中して、閉じたゲートが再び開くのを待つ。俺がゲートインしたその数秒後、何の前触れもなくゲートが開いた。

『今、ゲートが開かれました! 走者一斉に走り出した!』
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...