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第二章
第八話 無限回路賞③
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~タマモ視点~
まさか、こんな展開になるなんて!
あたしの影から突如、影の魔族であるシャドーナイツが現れた。彼は漆黒の剣を振り翳し、そのまま勢い良く振り下ろす。
レースが開始されれば、ルール内であれば何でもありのこの競技。もちろん、魔法剣の使用も許可されている。
あの剣に当たれば、無傷では済まされない。
簡単に当たってたまるものですか!
芝を思いっきり蹴り、その場で前方に跳躍する。すると、ワンテンポ遅れてあたしがいた場所に剣が振り下ろされた。
剣先は芝に突き刺さり、その反動で地面が抉れ、土が噴き出す。
『背後から奇襲を仕掛けたシャドーナイツですが、タマモ走者の方が速度は上だった! 攻撃を避け、ノーダメージのまま先頭を突き進む!』
奇襲をされたからと言って、足を止める訳にはいかない。このまま駆け抜けさせてもらうわ。
『依然1番手はタマモ、2番手のシャドーナイツは、スキル【影移動】を使いながら、柵の影を経由して前進して行きます!』
『影移動を使えば、スタミナの消費を抑えられますが、その代わりに魔力の消費が激しくなります。まだ中盤に差し掛かったところでのこのスキルの連発は、後半に響く恐れがあるかと』
どうやら、シャドーナイツは影を移動しながら、あたしを追いかけているみたいね。本当にしつこいわね。ストーカーなの? 1位を諦めないその根性だけは、認めてあげてもいいわ。でも、絶対に1位は譲らないのだから。
『さぁ、ここで次々と後続が無限芝を攻略し、未だ霧から追い出されているピックを除けば、全員が第2のギミックへと向かって行くことになりました!』
『隊列は依然縦長となっております。後続が追い付いていけるのかは、ここからのギミックによってまた変わってきます。ピック以外はまだ諦めるには早いです』
『順位を振り返っていきましょう。依然先頭を突き進むのはタマモ、3メートル離れてシャドーナイツ、そこから5メートル離れてシャンデリアン、カルディアン並走、ここでサトノヒカリが並んできた。2メートル後方にハッピーパーティー、内を走りましてシャカール、キングスペが1メートル差、外側を走ってシンキングオパール、後方サザーク、ならんでアマソン。そして絶望的な開きだ。まだ最初のギミックを突破できないピックの順番となっています』
さすがシャカールね。最初のギミックで順位を上げて来るなんて。でも、あたしと彼との差はおよそ10メートル。この開きは大きいわ。あたしがこれからのギミックでヘマをしない限り、追いつくのは困難のはず。
でも、今は2位のシャドーナイツをどうにかするのが先だわ。
『ここで先頭を進むタマモ走者、第2のギミックエリアに到達したぞ!』
『ここのエリアは様々な魔法を、いかにして素早く対処できるかが鍵となります』
『タマモ走者が第2のギミックエリアに到達した瞬間に、またしてもシャドーナイツが動いた! 凄まじい脚力でタマモ走者との距離を縮める! 影が! 黒い影が迫って来る! タマモ走者! 逃げ切れるのか!』
このタイミングで追い上げてきた! あたしよりも先にこのギミックをクリアして、1位に上がるつもりなの!
『これは……シャドーナイツ! 再び影移動のスキルを発動! タマモ走者の影に侵入し、姿が見えなくなる』
『あそこで全身全霊の走りをしたのは、このためだったのでしょう。影の中に入ってスタミナを回復しつつ、ギミックを回避する。狡賢くも恐ろしい戦略です』
またしてもあたしの影の中に入られた! このままでは、シャドーナイツの思い通りだわ。
こいつはここで走行不能にまで追い込まないと、最後の最後で追い抜かれてしまう。
きっと何かがあるはずだわ。こいつをざまぁする何かが。
『影の中に入られたままのタマモ走者、ここで第2のギミック、魔道砲から射出される魔法が降り注ぐ! 彼女を襲ったのは火球魔法だ!』
本来であれば、可憐に回避して先に進むところだけど、シャドーナイツの戦略にはムカつくものがある。逆にこのギミックを利用して、シャドーナイツをあたしの影から引き離す。
火球はあたしに向けて一直線に突き進んでいる。なら、こうするまでよ。
火球があたしに直撃する寸前で、足の筋肉のバネを利用し、その場で上空に跳躍。ジャンプしたタイミングで火球は芝に激突し、周辺を燃やす。
「ギャアアアアアアアァァァァァァァァァァ!」
『タマモ走者が迫り来る火球を跳躍で躱し、影に隠れていたシャドーナイツに直撃! 影から飛び出し、芝の上を転げ回る!』
『一時的とは言え、跳躍したことで影はその場から動くことはできません。ギミックを利用した素晴らしい策です。さすがスカーレット家のご令嬢。1番人気に相応しい可憐な回避です』
これでうざったいシャドーナイツの動きを封じることができた。直ぐには起き上がることができないでしょうし、今の内に距離を空けさせてもらうわ。
着地と同時に再び芝を蹴り、レースコースを駆け抜ける。
『先頭を走りますタマモ走者、次々と魔道砲から射出される魔法を回避し、後続との距離を開く! もうすぐ最後のギミックだぞ!』
『ここからがこの無限回路賞の真の走者が問われます。果たして最後に笑うことができる豪運の持ち主は、タマモ走者か! それとも後続の誰かか!』
まさか、こんな展開になるなんて!
あたしの影から突如、影の魔族であるシャドーナイツが現れた。彼は漆黒の剣を振り翳し、そのまま勢い良く振り下ろす。
レースが開始されれば、ルール内であれば何でもありのこの競技。もちろん、魔法剣の使用も許可されている。
あの剣に当たれば、無傷では済まされない。
簡単に当たってたまるものですか!
芝を思いっきり蹴り、その場で前方に跳躍する。すると、ワンテンポ遅れてあたしがいた場所に剣が振り下ろされた。
剣先は芝に突き刺さり、その反動で地面が抉れ、土が噴き出す。
『背後から奇襲を仕掛けたシャドーナイツですが、タマモ走者の方が速度は上だった! 攻撃を避け、ノーダメージのまま先頭を突き進む!』
奇襲をされたからと言って、足を止める訳にはいかない。このまま駆け抜けさせてもらうわ。
『依然1番手はタマモ、2番手のシャドーナイツは、スキル【影移動】を使いながら、柵の影を経由して前進して行きます!』
『影移動を使えば、スタミナの消費を抑えられますが、その代わりに魔力の消費が激しくなります。まだ中盤に差し掛かったところでのこのスキルの連発は、後半に響く恐れがあるかと』
どうやら、シャドーナイツは影を移動しながら、あたしを追いかけているみたいね。本当にしつこいわね。ストーカーなの? 1位を諦めないその根性だけは、認めてあげてもいいわ。でも、絶対に1位は譲らないのだから。
『さぁ、ここで次々と後続が無限芝を攻略し、未だ霧から追い出されているピックを除けば、全員が第2のギミックへと向かって行くことになりました!』
『隊列は依然縦長となっております。後続が追い付いていけるのかは、ここからのギミックによってまた変わってきます。ピック以外はまだ諦めるには早いです』
『順位を振り返っていきましょう。依然先頭を突き進むのはタマモ、3メートル離れてシャドーナイツ、そこから5メートル離れてシャンデリアン、カルディアン並走、ここでサトノヒカリが並んできた。2メートル後方にハッピーパーティー、内を走りましてシャカール、キングスペが1メートル差、外側を走ってシンキングオパール、後方サザーク、ならんでアマソン。そして絶望的な開きだ。まだ最初のギミックを突破できないピックの順番となっています』
さすがシャカールね。最初のギミックで順位を上げて来るなんて。でも、あたしと彼との差はおよそ10メートル。この開きは大きいわ。あたしがこれからのギミックでヘマをしない限り、追いつくのは困難のはず。
でも、今は2位のシャドーナイツをどうにかするのが先だわ。
『ここで先頭を進むタマモ走者、第2のギミックエリアに到達したぞ!』
『ここのエリアは様々な魔法を、いかにして素早く対処できるかが鍵となります』
『タマモ走者が第2のギミックエリアに到達した瞬間に、またしてもシャドーナイツが動いた! 凄まじい脚力でタマモ走者との距離を縮める! 影が! 黒い影が迫って来る! タマモ走者! 逃げ切れるのか!』
このタイミングで追い上げてきた! あたしよりも先にこのギミックをクリアして、1位に上がるつもりなの!
『これは……シャドーナイツ! 再び影移動のスキルを発動! タマモ走者の影に侵入し、姿が見えなくなる』
『あそこで全身全霊の走りをしたのは、このためだったのでしょう。影の中に入ってスタミナを回復しつつ、ギミックを回避する。狡賢くも恐ろしい戦略です』
またしてもあたしの影の中に入られた! このままでは、シャドーナイツの思い通りだわ。
こいつはここで走行不能にまで追い込まないと、最後の最後で追い抜かれてしまう。
きっと何かがあるはずだわ。こいつをざまぁする何かが。
『影の中に入られたままのタマモ走者、ここで第2のギミック、魔道砲から射出される魔法が降り注ぐ! 彼女を襲ったのは火球魔法だ!』
本来であれば、可憐に回避して先に進むところだけど、シャドーナイツの戦略にはムカつくものがある。逆にこのギミックを利用して、シャドーナイツをあたしの影から引き離す。
火球はあたしに向けて一直線に突き進んでいる。なら、こうするまでよ。
火球があたしに直撃する寸前で、足の筋肉のバネを利用し、その場で上空に跳躍。ジャンプしたタイミングで火球は芝に激突し、周辺を燃やす。
「ギャアアアアアアアァァァァァァァァァァ!」
『タマモ走者が迫り来る火球を跳躍で躱し、影に隠れていたシャドーナイツに直撃! 影から飛び出し、芝の上を転げ回る!』
『一時的とは言え、跳躍したことで影はその場から動くことはできません。ギミックを利用した素晴らしい策です。さすがスカーレット家のご令嬢。1番人気に相応しい可憐な回避です』
これでうざったいシャドーナイツの動きを封じることができた。直ぐには起き上がることができないでしょうし、今の内に距離を空けさせてもらうわ。
着地と同時に再び芝を蹴り、レースコースを駆け抜ける。
『先頭を走りますタマモ走者、次々と魔道砲から射出される魔法を回避し、後続との距離を開く! もうすぐ最後のギミックだぞ!』
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