薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第六章

第七話 匂いで興奮、天井鼻血事件

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 ゴブリン(♀)に襲われていたウイニングライブたちを助け、どうにか俺の貞操を守ることができた。

 屋根の上に立って居られるのも気分が悪いと言うことで、無理やりスペースを作ってもらい、現在馬車の中で開催する町へと向かっている。

 チラリとウイニングライブたちを見ると、シャワーライトの鼻から赤い液体が流れようとしていた。

「まさか、ウイニングライブさんとこんなに密着するなんて。ここは天国、わたしはあの世に来てしまったの?」

 幸せそうに顔を綻ばせながら、シャワーライトはまだ鼻血に気付いていないようだ。

「シャワーライトちゃん大丈夫? 鼻から血が流れているよ。ほら、ティッシュをあげるからこれで止めて」

 ウイニングライブがポケットから小型のティシュを取り出すと、シャワーライトに手渡す。

「あ、ありがとございます。ああ、ウイニングライブさんの匂いが――」

 ブシャー!

 言葉を連ねたシャワーライトが、ティッシュに鼻を詰めようとしたその時、何がきっかけだったのか分からないが、再び彼女の鼻から普通では考えられない量の鼻血が噴き出た。

 幸いと言って良いのか分からないが、彼女の顔の角度が斜めを向いていた。そのため、馬車の天井にぶっかける形となり、天井が赤く染まる。

「シャ、シャワーライトちゃん大丈夫!」

「あ、ああ、ウイニングライブさんの声が……彼女の隣で死ねるなら……本望」

 鼻血による出血多量によるものか、ウイニングライブは白目を向いて動かなくなった。

 天井から赤い液体がポタポタと滴り落ちる。

 馬車の中は、まるで殺人事件が起きたかのようにカオスとなっていた。

「シャワーライトちゃん! しっかりして!」

 白目を向いているシャワーライトにウイニングライブが声をかけるも、返事をしない。

 鼻血で多くの血を失ったことで、貧血状態になったのだろう。

 命に別状はないとは言え、このまま彼女が出場を辞退してしまっては、助けた意味がない。

「たく、世話をかけさせやがって。ブラッドブリュース」

 意識を失ったシャワーライトに向かって、血液生産魔法を発動した。

 この魔法は、骨髄から作り出された幹細胞が赤血球、血小板に分化し、最終的に成熟したものが血液中に放出され、失った血液を補うようにする魔法だ。

「あれ? わたし……意識を失って」

「シャワーライトちゃん! 良かった。意識を失って、シャカール君が魔法を使って意識を取り戻してくれたのよ」

「シャカール君が?」

 意識を取り戻したシャワーライトだったが、まるで警戒しているかのように目を細めて睨み付けて来る。

「どうしてわたしを助けるのですか? そのまま意識を失えば、わたしはそのまま出場辞退となります。ライバルが1人減れば、あなたの優勝が近づくと言うのに……まさか、塩を送った礼として、わたしの体を要求するつもりでは! さすが年中発情期種族、わたしの清き体もこれまでなのね」

「シャカール君、もしシャワーライトちゃんに酷いことをしようなら、私が許さないのだから」

「どうしてお前らは直ぐにそんな発言をするんだよ」

 何かあると、直ぐに年中発情期種族と言いやがる、さすがに言われ慣れすぎて、呆れてしまうぐらいだ。

 どうしてこいつらは、すぐそんなことを言うのだろうか? だいたいエロい方に思考が向くと言うことは、本人がエロいことを考えているからこそ、そのような発言が出てくるのではないのか?

 そう思ってしまったが、口走りそうになった気持ちをグッと堪える。

 不注意に発言してもし違ったのなら、俺の立場は更に悪くなるだろう。

 今はマキョウダービーを控えている身だ。意味のない争いは極力避けるべきだろう。

「何を言うかと思えば、そんなくだらないことかよ。いいか、別に俺はお前のような胸の小さい女は守備範囲外だ」

「シャカール君、それ女の子に対して最低の言葉よ。謝って」

 このままでは、俺が体目的で助けたことになりそうになったので、小ぶりの胸には興味がないと嘯く。しかし今の発言を聞いたウイニングライブが差別だと言い、謝るように言ってきた。

 咄嗟とは言え、さすがに今の発言は言いすぎたかもしれない。

 くそう。どうしたら収拾が付くんだ?

「あー、済まない。今のはさすがに言い過ぎた。だけどこれだけは言っておく。お前たちだって、俺は人族であることから年中発情期種族なんて言って、差別しているからな。そこだけは理解してくれ。そもそも、シャワーライトの意識を戻してやったのは、お前たちは俺が優勝するための演出に必要だからだ。俺の優勝が際立つには、お前たちが必要。だから助けた」

 一度謝罪の言葉を述べ、続いて彼女たちは優勝するための駒として必要だからと答える。

「へぇー、駒ね。でも今の状態で言っても、弱者が精一杯虚勢を張っているようにしか聞こえないのだけど。モンスターと戦って、今もシャワーライトちゃんに魔力を使った。どう考えても、魔力面ではかなりの不利よ。魔力なしで勝てるほど、魔競走のレースは甘くないわよ。しかも今回のレースはクラウン路線のダービー。G Iレースである以上、強敵ばかりが出場している」

「何を言い出すかと思えば、そんなことかよ。こんなの丁度良いハンデだ。これでお前たちと対等にレースをすることができる。良かったな。全力の俺がレースに出たら、お前たちは大差で負けることになるのだから」

 大量の魔力を失った事実を、ハンデだと言って強がってみせる。

 レースは当日になった瞬間、開始する前から始まっている。ここで少しでも弱みを見せれば、俺は不利な状態となってしまう。

 実際のレース戦はまだ先だが、心理戦は既に始まっている。

「それじゃあ、もし私たちが勝っても言い訳をしないでよね。「僕はレース前で魔力を消費して居なかったら勝っていたんだ」って言われるとこっちが困ってしまうもの」

 挑発をしているのか、ウイニングライブはバカにするような口調で情けなくセリフを言う。

 そもそも、俺の一人称は僕ではないからな。

「俺はあいつのように、負けを認められないほど愚かではない。誰がそんな無様なことを言うかよ」

 俺はある人物を思い浮かべながら言葉を連ねる。

 そう言えば、噂をするとくしゃみが出るとか言うよな、今頃あいつがくしゃみをしていたらウケる。

「まぁ、ほとんどの魔力を失って、まともに魔法が発動できないことを言い訳にしないのなら良いわ。お互いに生成堂々と戦いましょう。誰が優勝しようと、マキョウダービーで競うのは、今日が最初で最後になるのだから」

「ああ、お互いに悔いのないよう全力を尽くそうじゃないか」

 互いに闘志を燃やしつつ、俺たちは会場にたどり着くのを待った。

 確かに俺は、レース中に殆どの魔法が使えない。タイミングなどを間違えれば、優勝はおろか、入賞も厳しいかもしれない。だけど俺には策がある。

 上手く作戦通りに事が進めば、優勝だってできるはずだ。
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