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第七章
第六話 シャカール、トレーナになる
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~シャカール視点~
「何でそうなる!」
ルーナからの言葉に、俺は思わず声を上げる。
「別に良いではないか。人に指導するのも、走者としては立派な経験だよ。客観的に走者の走りを見て、新たな発見をして自分の走りを見つめ直すこともできる。シャカールにとっても悪くないと思うが?」
「そんなことはどうでも良い。俺は自分の時間を無駄にしたくないだけだ」
「そうかい? なら、シャカール、ちょっと耳を貸してくれないかな」
ニコッと笑みを浮かべながら、ルーナは手招きをする。何だか嫌な予感をしながらも、彼女の口に耳を近付ける。
「ワタシのお願いを聞かないのなら、別に構わない。だけどシャカールにはホースイエス賞までにフェインを狂わせた張本人を探す使命があるだろう。ワタシはその情報を掴みかけているところまでいった。後もう少しで確実に入手できる。その情報を君に提供しないことだってできるのだよ」
「ルーナ、お前は俺を脅すつもりか?」
手綱を握られた馬のような状況となり、俺は彼女を睨む。
「脅すとは人聞き悪い。交換条件だよ。サクラ様にはお世話になっているからね。きっと彼は弟子が大逃げで活躍をするところをみたいはずだ。さぁ、どうする? 別に断ってくれても構わない。だけど、その時には――」
「チッ、分かった。アイリンを大逃げの走者として育てれば良いってだけだろう。やってやる! 今から情報を集めても遅いだろうからな! たく……こうなるのなら最初から自分で情報を探しておけば良かった」
「それでこそワタシのシャカールだ。では、話しが纏ったところで、アイリンにはシャカールと共同生活をしてもらうために、シャカールハウス(仮)に入居してもらおう」
「何で話しの流れから、そうなるんだ! それにあの建物はシャカールハウスではなく、シェアハウスだろうが!」
あの建物にアイリンも住むようにルーナが言ったので、俺は思わず声を上げた。
「だって師匠と弟子と言う関係になるんだ。それなら同じ空間で生活した方が良いに決まっている」
「でも、それだと男女比にまた差が開くじゃないか」
そう、あのシェアハウスには目的があって俺たちは現在暮らしている。互いに違う種族同士が共に暮らし、互いに観察をすることで、レースに活かそうと言うのが目的だ。
しかし、トリプルクイーン路線を除き、様々なレースでは男女混合となる。なので、ある程度男女比に差が生まれないようにする必要があると言うのが、創設した時にルーナが言ったことだ。
現在、彼女は自分の決めたルールを破ろうとしている。
「あー、それなのだがな。やっぱり人生と言うのは思い通りに行かないみたいだ。なぜかワタシの思惑通りに事が進まず、隔たってしまっている。もう、シェアハウスではなく、シャカールのハーレムハウスとなってしまっている。なので、もう男はシャカール1人で十分な気がしてきた」
「ルーナが良くても俺が困る!」
「まぁ、良いじゃないか。人族にケモノ族、それに亜人のセイレーンにエルフが加わる。これだけでもそれなりのデータは取れるだろう。本当なら、後は魔族に神族、獣人などもいたら最高なのだが、またの機会にでも入居者を勧誘するとしよう」
ルーナが良くても、俺の方が困る。このまま男女比に差が生まれ続ければ、男の俺は肩身が狭くなってしまう。
ここは俺の方からも動いて、残りの種族は男にしてもらわないと。
「あのう……ひとついいですか?」
シェアハウスの男女比問題の対策を考えていると、アイリンが少し遠慮ぎみに手を上げ、訊ねてくる。
「なんだ? 何か質問があるのなら言ってみろ」
「さっきからわたしの意志が尊重されることなく話しが進んでいるのですが、拒否権は?」
「そんなものは存在するか! ルーナが決めた以上、強制的にお前は俺と共同生活をするんだ!」
「安心したまえ、さっきも言ったが、残りは女の子ばかりだ。だから君が心配する必要はないよ。みんな良い子たちだ。きっと直ぐに仲良くなれる」
「いや、ほら、荷物とかがあるじゃないですか? 移動するにも人手が入りますし、身支度にもそれなりに準備があります。だから、シェアハウスの件はまたの機会にでも――」
「ああ、それなら大丈夫だ。安心したまえ」
ルーナがニヤリと口角を上げて指をパチンと鳴らす。
「今、魔法で君の部屋にあった荷物は、シェアハウスの空いている部屋に移動した。だからその心配はいらない。今から入居してもらう」
「あはは、もう冗談はよしてくださいよ。いくら魔法でも一瞬で部屋にあるものを移動させるなんて」
ルーナの説明に、アイリンは苦笑いを浮かべる。
それもそうだろう。俺も最初に聞いた時には耳を疑った。
「疑うなら結構だ。自分の目で確かめて来るといい。ワタシとシャカールはここで待っているから」
「なら、永遠にここで突っ立っていることになりますよ。わたしには、嘘であることが分かっていますので」
小さく舌を出し、アイリンは小走りで女子寮へと入って行く。そして数分後、彼女は猛ダッシュで戻って来た。
「わたしの部屋、蛻の殻でした! 何もありません! いったいどこに隠したのですか!」
涙目になりながら戻って来ると、アイリンはルーナの肩に手を置いて上下に揺らす。
「だからシェアハウスに移動させたと言っているだろう? 安心したまえ、間取りも同じように転移させてある。紛失物はないと補償するから、今から見に行こうじゃないか」
ルーナが少し疲れた表情でアイリンを説得して落ち着かせると、俺たちはシェアハウスへと向かって行く。
俺たちの暮らす建物が見えると、扉の前にはなぜかタマモたちがおり、こちらを見ている。
そしてシェアハウスから5メートル手前で水色の髪をハーフアップにしている女の子が走ってきた。そして俺に抱きつくと、クリッとしたあどけないまん丸な目で俺見て来る。
彼女の目尻には涙が溜まっており、今にも零れ落ちそうになっていた。
もしかしてタマモたちと何があったのか?
「マーヤ、何かあったのか?」
「何でそうなる!」
ルーナからの言葉に、俺は思わず声を上げる。
「別に良いではないか。人に指導するのも、走者としては立派な経験だよ。客観的に走者の走りを見て、新たな発見をして自分の走りを見つめ直すこともできる。シャカールにとっても悪くないと思うが?」
「そんなことはどうでも良い。俺は自分の時間を無駄にしたくないだけだ」
「そうかい? なら、シャカール、ちょっと耳を貸してくれないかな」
ニコッと笑みを浮かべながら、ルーナは手招きをする。何だか嫌な予感をしながらも、彼女の口に耳を近付ける。
「ワタシのお願いを聞かないのなら、別に構わない。だけどシャカールにはホースイエス賞までにフェインを狂わせた張本人を探す使命があるだろう。ワタシはその情報を掴みかけているところまでいった。後もう少しで確実に入手できる。その情報を君に提供しないことだってできるのだよ」
「ルーナ、お前は俺を脅すつもりか?」
手綱を握られた馬のような状況となり、俺は彼女を睨む。
「脅すとは人聞き悪い。交換条件だよ。サクラ様にはお世話になっているからね。きっと彼は弟子が大逃げで活躍をするところをみたいはずだ。さぁ、どうする? 別に断ってくれても構わない。だけど、その時には――」
「チッ、分かった。アイリンを大逃げの走者として育てれば良いってだけだろう。やってやる! 今から情報を集めても遅いだろうからな! たく……こうなるのなら最初から自分で情報を探しておけば良かった」
「それでこそワタシのシャカールだ。では、話しが纏ったところで、アイリンにはシャカールと共同生活をしてもらうために、シャカールハウス(仮)に入居してもらおう」
「何で話しの流れから、そうなるんだ! それにあの建物はシャカールハウスではなく、シェアハウスだろうが!」
あの建物にアイリンも住むようにルーナが言ったので、俺は思わず声を上げた。
「だって師匠と弟子と言う関係になるんだ。それなら同じ空間で生活した方が良いに決まっている」
「でも、それだと男女比にまた差が開くじゃないか」
そう、あのシェアハウスには目的があって俺たちは現在暮らしている。互いに違う種族同士が共に暮らし、互いに観察をすることで、レースに活かそうと言うのが目的だ。
しかし、トリプルクイーン路線を除き、様々なレースでは男女混合となる。なので、ある程度男女比に差が生まれないようにする必要があると言うのが、創設した時にルーナが言ったことだ。
現在、彼女は自分の決めたルールを破ろうとしている。
「あー、それなのだがな。やっぱり人生と言うのは思い通りに行かないみたいだ。なぜかワタシの思惑通りに事が進まず、隔たってしまっている。もう、シェアハウスではなく、シャカールのハーレムハウスとなってしまっている。なので、もう男はシャカール1人で十分な気がしてきた」
「ルーナが良くても俺が困る!」
「まぁ、良いじゃないか。人族にケモノ族、それに亜人のセイレーンにエルフが加わる。これだけでもそれなりのデータは取れるだろう。本当なら、後は魔族に神族、獣人などもいたら最高なのだが、またの機会にでも入居者を勧誘するとしよう」
ルーナが良くても、俺の方が困る。このまま男女比に差が生まれ続ければ、男の俺は肩身が狭くなってしまう。
ここは俺の方からも動いて、残りの種族は男にしてもらわないと。
「あのう……ひとついいですか?」
シェアハウスの男女比問題の対策を考えていると、アイリンが少し遠慮ぎみに手を上げ、訊ねてくる。
「なんだ? 何か質問があるのなら言ってみろ」
「さっきからわたしの意志が尊重されることなく話しが進んでいるのですが、拒否権は?」
「そんなものは存在するか! ルーナが決めた以上、強制的にお前は俺と共同生活をするんだ!」
「安心したまえ、さっきも言ったが、残りは女の子ばかりだ。だから君が心配する必要はないよ。みんな良い子たちだ。きっと直ぐに仲良くなれる」
「いや、ほら、荷物とかがあるじゃないですか? 移動するにも人手が入りますし、身支度にもそれなりに準備があります。だから、シェアハウスの件はまたの機会にでも――」
「ああ、それなら大丈夫だ。安心したまえ」
ルーナがニヤリと口角を上げて指をパチンと鳴らす。
「今、魔法で君の部屋にあった荷物は、シェアハウスの空いている部屋に移動した。だからその心配はいらない。今から入居してもらう」
「あはは、もう冗談はよしてくださいよ。いくら魔法でも一瞬で部屋にあるものを移動させるなんて」
ルーナの説明に、アイリンは苦笑いを浮かべる。
それもそうだろう。俺も最初に聞いた時には耳を疑った。
「疑うなら結構だ。自分の目で確かめて来るといい。ワタシとシャカールはここで待っているから」
「なら、永遠にここで突っ立っていることになりますよ。わたしには、嘘であることが分かっていますので」
小さく舌を出し、アイリンは小走りで女子寮へと入って行く。そして数分後、彼女は猛ダッシュで戻って来た。
「わたしの部屋、蛻の殻でした! 何もありません! いったいどこに隠したのですか!」
涙目になりながら戻って来ると、アイリンはルーナの肩に手を置いて上下に揺らす。
「だからシェアハウスに移動させたと言っているだろう? 安心したまえ、間取りも同じように転移させてある。紛失物はないと補償するから、今から見に行こうじゃないか」
ルーナが少し疲れた表情でアイリンを説得して落ち着かせると、俺たちはシェアハウスへと向かって行く。
俺たちの暮らす建物が見えると、扉の前にはなぜかタマモたちがおり、こちらを見ている。
そしてシェアハウスから5メートル手前で水色の髪をハーフアップにしている女の子が走ってきた。そして俺に抱きつくと、クリッとしたあどけないまん丸な目で俺見て来る。
彼女の目尻には涙が溜まっており、今にも零れ落ちそうになっていた。
もしかしてタマモたちと何があったのか?
「マーヤ、何かあったのか?」
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