薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第八章

第十三話 スケットを頼むことになりました

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~シャカール視点~





 ルーナから逃げ惑った俺だったが、最終的には逃げ道を塞がれた。だが、機転を効かせて録音機を渡し、その上で誰にも口外しないと約束をすると、どうにかハンマーでの物理的記憶消去を免れることができた。

 その後、ルーナは俺に部屋で待てと言い残し、一度部屋を出て行く。

 手持ち無沙汰でいる中、待っているとしばらくしてルーナが部屋に戻ってきた。彼女は数人の女子生徒たちを引き連れていたが、彼女たちは全員が俺の知り合いだった。

 タマモ、クリープ、アイリン、アイネスビジン、ウイニングライブ、そしてシャワーライトだ。

「タマモたちを連れて来てどうしたんだ? まさか、俺を許したと言うのは嘘で、こいつらで動きを封じた間に物理的記憶の消去をするつもりか!」

「何を言っているんだい。そんなことをしたら、ワタシのアレも知られてしまうだろうが。そもそも、ワタシがシャカールに危害を加えようとしたら、彼女たちが全力で阻止するのは目に見えているだろうに」

 呆れた口調でルーナは言葉を連ねる。

「彼女たちはマーヤの店の配達係を手伝ってくれるそうだ。昨日、君が本格的に動いたと言う話を聞きつけ、外出届けワタシに持って来てね」

 どうして彼女たちを連れて来たのかの理由を語り、俺は意外な人物に視線を向ける。

「な、何こっちを見ているのですか! 言っておきますが、ウイニングライブさんが空いている時間に手伝うと言ったので、彼女をサポートするために協力するだけです。決してあなたのために協力する訳ではないのですからね!」

 ただ視線を向けただけにも拘らず、シャワーライトは俺を睨み付けながらこの場に居る理由を語った。

 いや、俺は何も言っていないだろうが。

「そんな訳だ。取り敢えず、休暇届と外出届は許可を出す。なので、直ぐにでも出発するといいさ……ッツ! また頭痛がしてきた。今日は無理のない範囲で仕事をすることにしよう。ここまで酷い二日酔いは久しぶりだ」

「あら? ルーナ学園長は二日酔いなのですか? なら、二日酔いに効くお薬をママが持っていますのでお渡ししますね」

 ルーナが二日酔いの状態であることを知ると、クリープは持っているポーチから、二日酔いの薬だと思われる球体が入っている瓶を取り出す。

「これを3錠飲んでください。少しは違うはずですよ」

「それはありがたい。早速服用させてもらうよ」

「水なしで飲めますので、そのまま飲んでくださいね」

 差し出された瓶をルーナが受け取ると、彼女は3錠取り出し口に含むと薬を飲み込む。

「これでしばらく様子を伺うことにしよう。それにしても、二日酔いの薬をどうして持っているんだ? まさか、隠れて飲酒をしているんじゃないだろうね?」

「ママがそんな悪いことをする訳がないじゃないですか? ルーナ学園長なら知っていますよね。ママは保健委員ですし、実家の両親が医者だって。医者の娘として、薬の研究の一環として開発したものを持っていただけですよ」

 おっとりとした口調で、クリープは薬を持っていた経緯を話す。

「これ、クリープが作ったのか! 飲んでしまったが、臨床実験は既にしてあるのだよな?」

 心配そうに尋ねるルーナだが、こんなに焦った様子の彼女を見るのは初めてかもしれない。

「臨床実験はしましたよ。たった今ですが。ルーナ学園長が被験体第一号です。安心してください。ママの作った薬は、今まで変な副作用は起きませんでしたので。因み、タマちゃんにあげた痛み止めの薬も臨床実験なしで上げました。ママが実際に使っていたと言うのは嘘です」

「あの薬、臨床実験なしであたしに飲ませたのですか! まぁ、あのあと特に変な副作用は起きなかったから、信頼性はあるかと思いますよ」

「このワタシを実験動物モルモットにするとは、やってくれたね。だが、タマモにも何も起きなかったと言うのなら、ここは信用するとしよう」

「安心してください。ママは薬の調合の天才ですから」

 クリープのやつ、自分の才能を信じすぎているな。今度彼女から薬をもらうことがあれば、気を付けることにしよう。

「おや? なんだか気分が良くなってきたな。即効性があるみたいだ。これなら、今日の仕事も頑張れるような気がする。とにかく、お前たちも頑張って、マーヤの実家を助けて来るが良い。さぁ、早く部屋から出て行ってくれ。仕事の邪魔だ」

 自分から呼んでおいて、要件が終われば直ぐに追い出すんだな。

「取り敢えず、学園の馬車を使って、マーヤの実家に向かおう」

 俺たちは早速学園から出ると、マーヤの実家に向かった。

 増援が駆け付けてくれたことにマーヤの両親であるヴァンシーとマルゼンは驚いていたが、昨日の忙しさもあり、大変喜んでくれた。

「さて、それじゃあ始めますか」





 今回話が短かったので、オマケストーリーを追加します。



 おまけストーリー『もしもシャカールがツンデレパワハラ上司だったら』



 あたしの名はタマモ・スカーレット。今年、株式会社魔競走に入社した新人よ。

 毎日毎日覚える仕事が沢山あって、もうてんてこ舞い。

「もうこんな時間か」

 壁にかけられてある時計を見ると、夜の10時になっていた。同僚たちは既に帰っているので、この場にはあたししかいない。

「あー、疲れたぁ。でも、これを終わらせないと家に帰れないよ」

 思わず愚痴が漏れてしまう。でも、やるべきことはしなければ。

「よし、スカーレット家たるもの。どんな時も優雅に可憐に大胆によ。こんな仕事、優雅に終わらせてみせるわ!」

「おい、まだ終わっていなかったのかよ」

「ひゃい!」

 背後から声が聞こえ、思わず変な声が漏れてしまった。振り返ると、そこには主任のシャカールさんが立っていた。

「シャ、シャカール主任! すみません。直ぐに終わらせますから!」

「別に焦るな。焦ってやっても、ミスして仕事を増やすだけだ。それよりも、お前がいてくれてちょうどよかった。こいつをくれてやるから飲め」

 シャカール主任は懐から缶を取り出し、机の上に置く。ラベルには、あの人気商品のハチミーと書かれている。

「これってハチミーじゃないですか! どうしたのですか! 人気すぎて、常に売り切れ状態だと言うのに」

「偶然にも自販機であったから、買った。そしたら偶然にも当たりが出てもう一本出た。2本はカロリーが高いから、処分しようとしたら、偶然にもお前が残っていた。だからお前にくれてやる。取り合えずはそれを飲め。主任命令だ。上司の命令は絶対が、この部署のテーマ」

「は、はい」

 命令を受け、あたしは人気商品のハチミーを飲みます。

 あれ? そう言えば、ハチミーは人気すぎて、自販機での販売は中止になったような? 気のせいだったかな?

「それで、どこまでやればお前は帰れるんだ?」

「あ、それが……ここまでなんですか」

「なるほど、なら、続きは俺が引き継ぐ。お前は帰れ」

「そ、そんな訳にはいきませんよ! これはあたしが任された仕事なのですよ!」

「もう遅い時間帯だ。これ以上残ったら、過剰な残業扱いとなってしまう。ルーナから部下の管理もできないのかと怒られる。だからこれは命令だ。それを飲んだらさっさと帰れ」

「でも、それでも流石に悪いですよ。これはわたしが頼まれた仕事ですし!」

「何だと!上司の命令が聞けないと言うのか! それとも、俺がルーナに怒られている姿を見たいとでも言うのか!」

「そうは言っていません。分かりました。命令なら仕方がないですね」

 こうしてあたしは、シャカール主任のパワハラを受け、思ったよりも早い時間帯に帰宅することができました。

 本当にシャカール主任のパワハラにも困ったものです。
 
 終わり
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