Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第八章

第十話 魔物となったレオだけど、人間ではなくなったので思いっきり叩き潰すから

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 ~シロウ視点~



 目の前の光景に、俺は信じられないでいる。

 レオが瓶に入った液体を飲んだ瞬間、彼の身体に変化が起きた。十数倍にも巨大化したかと思えば、形状が変化した。

 一本の柱のように胴体は太く、無数の目がある。そして頭頂部にはウネウネと動く触手らしきものがあった。一言で表すのであれば木の化け物がしっくりとくるだろう。

『そうか、そうか! なら、親善試合の続きといこうではないかシロウ!』

 レオが戦う意志を示した途端、無数の目が俺に視線を向け、複数の触手が飛んでくる。

 触手の動きを見極め、僅かな動きで躱していく。

 まさか、こんな展開になるとは思わなかったな。どうやってやつを止めようか。

「「「シロウ」」」

「「シロウさん」」

 俺のところにマリー、クロエ、ミラーカ、エリーザ、そしてプルタルコスがやってきた。

「シロウ。あれはおそらく、私たち魔族が研究している秘薬を飲んだと思われる。人を魔物に変える効果がある。この親善試合には、私以外の魔族が関与しているようだ」

「何だと! それでは、息子は元に戻らないと言うのか!」

 プルタルコスが声を荒げる。

 彼の反応は親としては当然だろう。いかにバカ息子であろうとも、自分の子供なのだから。

「それは何とも言えない。まだ研究段階であり、実践するのはまだ速いと言われている代物だ。もしかしたら元に戻すこともできるかもしれないが、私にはその方法が分からない」

「魔物に成り果てたレオのことより、今は観客たちを逃すことが大事ですわ」

「マリーの言う通りだな。エリーザとクロエは観客たちの避難誘導を頼む。ミラーカはレオに秘薬を渡した魔族を探し出してくれ。マリーとプルタルコスと俺は、観客席に攻撃が向かないように誘導するぞ」

 俺はそれぞれに指示を出すと、一人の女の子がこちらに向かってきた。ケガをしているようで、右手で左肩を押さえている。

「エリナ! そのケガはレオにやられましたの?」

「これは、壊された闘技場の破片が当たっただけよ。見た目ほど酷くはないわ」

「とにかく傷を治そう。ヒール」

 エリナに回復魔法をかける。しかし、彼女は不満げな顔をした。

「シロウに傷を直してもらうなんて屈辱ね。でも、お礼は言わないから。あなたが勝手に治したのだから」

「別にお礼を言ってもらおうと思って治した訳ではない」

「まぁ、いいわ。レオをあんな化け物に変えたやつの名はブラゴよ。白い肌にいつもニコニコとしている男」

「ブラゴだって? まさかあの男が関与しているとは思わなかったよ。その男は私が前にいたパーティーメンバーの男だ。顔を見ればすぐにわかる。やつの捜索は任せたまえ」

 そう告げると、ミラーカはこの場から走り去っていく。

「私もあの男を探してみる。こうなってしまったのも、あのとき私がレオを止められなかったのが原因だから」

 エリナも俺たちから離れ、ブラゴの捜索に向かっていく。

「クロエさん。わたしたちも一般人の避難誘導に向かいますわよ」

「うん」

『何をごちゃごちゃと言っていやがる! リングに上がった以上は、お前たちを纏めてぶっ潰してくれる!』

 俺たちがそれぞれのやるべきことを話していると、二本の触手が襲ってきた。

 まったく、空気を読んでくれよ。だけどまぁ、別の意味ではちゃんと空気を読んでいることにはなるか。

「させるか!」

「クロエやエリーザはワタクシたちが守りますわ」

 襲いかかる触手をプルタルコスとマリーが剣と鞭で受け止める。

「レオ! お前の相手は俺だろうが! それとも俺が認識できないほどバカになったのか!」

『シロウ!お前は俺がぶっ潰す!』

 再び複数の触手が俺に向けて飛んできた。

 全く、攻撃パターンがワンパターンじゃないか。そんなんじゃ俺を倒すなんてことは夢のまた夢だぞ。

「ウォーターカッター!」

 呪文を唱えると、水分子が集まり、水を形成する。それらは直径一ミリほどの細さになると、触手に向けて解き放つ。

 水が触れた触手は切断されて吹き飛び、リングに落ちる。切り離された触手は釣り上げられた魚のようにピチピチと動いていた。

『ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 触手が切られ、ダメージを負ったようだ。レオは悲鳴をあげる。

 魔物になってもこの程度かよ。これなら、少しだけ本気を出す程度で済むな。

『なんちゃって! そんな攻撃、全然痛くないんだよ!』

 レオが声を上げると、複数の触手が鞭のようにランダムな動きでリングを叩きつける。

『あの叫び声は演技だ! 今はどんな気持ちだ? ダメージを与えていると思ったら、実は効いていなかったときの心境は? 悔しいか? ギャハハハハ!』

 本当は演技だったことを告げ、レオは声高らかに訊いてくる。

「それはよかった。あの程度の攻撃で弱音を吐くようなら、どうしようかと思った。まだ準備運動の段階だったからな」

『そうかよ! なら、さっさと本気を出せよカスやろうが! 今の俺には痛覚がない! 痛みを感じない分、怯むことはない!』

 触手の動きが激しくなり、何本もの触手が俺に叩きつけられた。

 しかし、やつの攻撃がヒットしておきながらも、俺にはなんのダメージも受けていない。

 まだエンハンスドボディーの効果は残っているからな。触手の攻撃を利用して体内の水分を使い、肉体を強固にさせることができている。

「本当に同じ攻撃ばかりだな。攻撃というのはこうするんだ! ダズリンライト! 皆、今すぐ目を瞑るんだ!」

 仲間たちに聞こえるように声を張り上げ、目を瞑るように言う。その後すぐに俺も瞼を閉じた。

『ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 目が、目があああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 瞼を閉じた直後に魔法が発動したようで、レオの苦しむ声が耳に入る。

 もしかしたらまた演技の可能性も否定はできないが、通用しなかったときはそのときだ。また別の方法を考えよう。

 そんなふうに考えながら、俺は閉じていた瞼を開ける。

 すると俺の視界には、全ての瞼を閉じて苦しむ魔物の姿が映った。

「どうやら光には弱いようだな」

 ダズリンライトは、周囲に眩しい光を発生させる魔法だ。

 これでひとまずはレオの動きを封じることができる。今のうちに次の策を考えるとするか。










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