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第十六章
第三話 スカーヤと再会したけど、どうしてこうなる?
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俺たちは魔族の男性の家に入った。
「スカーヤ!」
ベッドで横になっている姉を見て、コヤンさんが声をかける。だけど返事はなかった。
「安心してくれ。ただ疲労で眠っているだけだ。必ず目が覚める」
男性の言葉を聞いて安堵する。
「よかったですね! コヤンさん! スカーヤさんと再会できて」
「ええ、心配をかけさせたので、目が覚めたら後でお説教します。皆様にもご迷惑とご心配をおかけしました」
クロエが笑顔を向けると、コヤンさんが丁寧に頭を下げる。
彼女の身の心配をしていたけれど、これで心置きなく、あいつらをぶっ飛ばすことができるな。最悪の場合、スカーヤさんが人質になる可能性があった。
「う、うーん。あれ? ワタクシはいつの間に眠っていたのでしょうか? ここはいったい?」
目覚めたスカーヤさんが上体を起こして辺りを伺う。
まだ目が覚めたばかりで視界がぼやけているのだろうな。まだ俺たちに気づいていないみたいだ。
「スカーヤ! 目が覚めたのですね」
「え、コヤン? どうしてあなたがここに?」
「宝玉を取り戻すために魔大陸まで来たのです。そしたらあなたがここに運び込まれたと聞いて、皆さんと来たのですよ」
「宝玉? そうでした! コヤン、あなたは魔王復活の条件を知っていますか!」
宝玉と聞いて、スカーヤさんが声を上げた。
「ええ。昔お母様から教えて貰いました」
「どうしてワタクシにも教えてくれなかったのですか!」
スカーヤさんが再び声を上げる。
コヤンさんだけが知っていた。その事実に、仲間外れにされたように思ったのかもしれないな。
「それは色々と偶然が重なって、話す機会がなかっただけです。わたくしも、お母様が他の人と話しているのを立ち聞きしただけですので」
「そうだったのですか。それで、魔王が復活するのに必要な条件とは?」
「それは満月の日に、月の光を当て続けることです。それをしない限り、魔王は復活することができません」
「んんん~ん! そう言うことだったのですね! よくやってくださいましたスカーヤ!」
この変わった咳払いは!
声が聞こえたほうに顔を向ける。しかしそこにはトーマンの姿はなく、俺たちをここに連れて来た魔族の男しかいない。
まさか!
「気付かれたようですね。そうです。僕ですよ! この町の魔族に変装していたのです」
男がパチンと指を鳴らすと、黒い霧に包まれた。そしてその霧が消えるとトーマンが姿を現す。
「トーマン!」
「偶然にもあなたたちを見かけたので、スカーヤを使って条件を聞き出そうと思ったのですが、こんなにも上手くいくとは思ってもいませんでした。本当に運がいい」
「トーマン。約束どおりワタクシを解放してくれるのですよね」
「ええ、魔王復活の条件は覚えました。約束どおりあなたを解放してあげましょう。ですが、その前にもう一つお仕事をしてもらいます。さぁ、あなたの中に眠る獣を目覚めさせるのです!」
「きゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
トーマンが再び指を鳴らす。その瞬間、スカーヤさんが胸を押さえながら悲鳴を上げた。
「スカーヤ!」
「トーマン! お前、スカーヤさんに何をした!」
「んんん~ん。彼女にはあなたたちを倒す駒とさせていただきました。彼女は自由を望んでいる。なら、災害の獣として自由にこの世界で生きさせようと思っただけです。魔王が復活すれば、魔族以外は生きづらい世の中になる。なら、魔物として生きた方が幸せではないですか。では、あとは頼みましたよ」
捨て台詞を残すと、トーマンは建物から姿を消す。
「スカーヤ! スカーヤ! きゃあ!」
コヤンさんが何度もスカーヤさんに声をかけていると、彼女は吹き飛ばされる。
『グルルルル!』
スカーヤさんは獣のような唸り声を上げると、両手を床につけて俺たちを睨みつける。そして尻尾を逆立て、威嚇してきた。
いったいどうすればいい。どうすれば彼女を正気に戻させることができる。
思考を巡らせていると、スカーヤさんは建物から出て行く。
このままでは、町の人々が襲われてしまう。早く追いかけないと。
「シロウ! コヤンさん、酷いケガをしていますわ」
「今の一撃で意識も失っているみたい」
コヤンさんが重症を負っていることを、マリーとクロエが伝える。
「シロウ。スカーヤの追跡は私がしておこう。見つけたらスライムで連絡するから」
「分かった」
ミラーカが建物から出て行くと、俺はコヤンさんを見る。
コヤンさん。直ぐに治してやるからな。
「ネイチャーヒーリング、ブラッドプリュース」
上級回復魔法を唱える。すると、彼女の身体の細胞が活性化され、損傷箇所を修復していった。続いてもう一つの魔法が発動し、失った血液が補充されたことで、顔色も良くなる。
「外傷は消えましたが、意識が戻りませんわね。シロウさん、コヤンさんはこのまま寝かせておきますか?」
エリーザの言うとおり、彼女をあのまま寝かせたほうがいいだろうか? いや、それはよくないかもしれない。どんな結末を迎えることになるのかは未知数だけど、彼女はきっと、最後まで見届けたいはずだ。
「いや、コヤンさんを起こそう。ウイークアップ」
覚醒魔法を唱え、強制的に彼女の目を覚まさせる。
「あれ? わたくしは……そうでした! スカーヤは!」
「外に逃げた。今、ミラーカが追っている」
「それでは今すぐに合流しましょう」
やっぱり、彼女を目覚めさせて正解だったな。
外を見ると、入口から一体のスライムが入って来た。
ちょうどいいタイミングで見つかったか。
「スライム、ミラーカとスカーヤさんがいる場所に案内してくれ」
連れて行くように言うと、スライムは体を反転させて外に出る。
付いて行くと、スライムは町の外に向かった。
町の外に向かったのか、これなら建物の倒壊を気にしないで、思いっきり戦うことができる。
町の外に出ると、ミラーカとスカーヤさんが対峙していた。
「さすがシロウだね、もう追い付いたんだ。上手いところ、スカーヤを町の外に誘導することが出来たよ」
「助かる。あのまま町で戦うことになったら、被害が拡大するからな」
スカーヤさんを見る。彼女の目は吊り上がり、こちらを睨み付けていた。
『ワウーン!』
スカーヤさんが吠える。すると彼女は姿を変えた。口が裂けて大きくなり、無数の牙に生え変わる。そして額からも目が現れて五つに増えた。尻尾は九つとなり、完全にスカーヤさんの原型を留めていない。
「白銀の九尾」
今の彼女に名前をつけるとすれば、これが妥当だとう。
警戒をしていると、彼女の変化はこれだけでは終わらなかった。
身体が何倍にも膨れ上がり、巨大になっていく。
ざっと見て、全長二十メートルと言ったところか。
「みんな戦闘準備、俺がスカーヤさんを元に戻す方法を考える。それまで動きを封じるのを手伝ってくれ」
「わかりましたわ」
「分かった」
「了解した」
「サポートの方は任せてください」
『ワン、ワン!』
「シロウさん。スカーヤのことをお願いします」
マリーたちが返事をすると全員が構える。
「行くぞ! 絶対に元に戻すんだ!」
「スカーヤ!」
ベッドで横になっている姉を見て、コヤンさんが声をかける。だけど返事はなかった。
「安心してくれ。ただ疲労で眠っているだけだ。必ず目が覚める」
男性の言葉を聞いて安堵する。
「よかったですね! コヤンさん! スカーヤさんと再会できて」
「ええ、心配をかけさせたので、目が覚めたら後でお説教します。皆様にもご迷惑とご心配をおかけしました」
クロエが笑顔を向けると、コヤンさんが丁寧に頭を下げる。
彼女の身の心配をしていたけれど、これで心置きなく、あいつらをぶっ飛ばすことができるな。最悪の場合、スカーヤさんが人質になる可能性があった。
「う、うーん。あれ? ワタクシはいつの間に眠っていたのでしょうか? ここはいったい?」
目覚めたスカーヤさんが上体を起こして辺りを伺う。
まだ目が覚めたばかりで視界がぼやけているのだろうな。まだ俺たちに気づいていないみたいだ。
「スカーヤ! 目が覚めたのですね」
「え、コヤン? どうしてあなたがここに?」
「宝玉を取り戻すために魔大陸まで来たのです。そしたらあなたがここに運び込まれたと聞いて、皆さんと来たのですよ」
「宝玉? そうでした! コヤン、あなたは魔王復活の条件を知っていますか!」
宝玉と聞いて、スカーヤさんが声を上げた。
「ええ。昔お母様から教えて貰いました」
「どうしてワタクシにも教えてくれなかったのですか!」
スカーヤさんが再び声を上げる。
コヤンさんだけが知っていた。その事実に、仲間外れにされたように思ったのかもしれないな。
「それは色々と偶然が重なって、話す機会がなかっただけです。わたくしも、お母様が他の人と話しているのを立ち聞きしただけですので」
「そうだったのですか。それで、魔王が復活するのに必要な条件とは?」
「それは満月の日に、月の光を当て続けることです。それをしない限り、魔王は復活することができません」
「んんん~ん! そう言うことだったのですね! よくやってくださいましたスカーヤ!」
この変わった咳払いは!
声が聞こえたほうに顔を向ける。しかしそこにはトーマンの姿はなく、俺たちをここに連れて来た魔族の男しかいない。
まさか!
「気付かれたようですね。そうです。僕ですよ! この町の魔族に変装していたのです」
男がパチンと指を鳴らすと、黒い霧に包まれた。そしてその霧が消えるとトーマンが姿を現す。
「トーマン!」
「偶然にもあなたたちを見かけたので、スカーヤを使って条件を聞き出そうと思ったのですが、こんなにも上手くいくとは思ってもいませんでした。本当に運がいい」
「トーマン。約束どおりワタクシを解放してくれるのですよね」
「ええ、魔王復活の条件は覚えました。約束どおりあなたを解放してあげましょう。ですが、その前にもう一つお仕事をしてもらいます。さぁ、あなたの中に眠る獣を目覚めさせるのです!」
「きゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
トーマンが再び指を鳴らす。その瞬間、スカーヤさんが胸を押さえながら悲鳴を上げた。
「スカーヤ!」
「トーマン! お前、スカーヤさんに何をした!」
「んんん~ん。彼女にはあなたたちを倒す駒とさせていただきました。彼女は自由を望んでいる。なら、災害の獣として自由にこの世界で生きさせようと思っただけです。魔王が復活すれば、魔族以外は生きづらい世の中になる。なら、魔物として生きた方が幸せではないですか。では、あとは頼みましたよ」
捨て台詞を残すと、トーマンは建物から姿を消す。
「スカーヤ! スカーヤ! きゃあ!」
コヤンさんが何度もスカーヤさんに声をかけていると、彼女は吹き飛ばされる。
『グルルルル!』
スカーヤさんは獣のような唸り声を上げると、両手を床につけて俺たちを睨みつける。そして尻尾を逆立て、威嚇してきた。
いったいどうすればいい。どうすれば彼女を正気に戻させることができる。
思考を巡らせていると、スカーヤさんは建物から出て行く。
このままでは、町の人々が襲われてしまう。早く追いかけないと。
「シロウ! コヤンさん、酷いケガをしていますわ」
「今の一撃で意識も失っているみたい」
コヤンさんが重症を負っていることを、マリーとクロエが伝える。
「シロウ。スカーヤの追跡は私がしておこう。見つけたらスライムで連絡するから」
「分かった」
ミラーカが建物から出て行くと、俺はコヤンさんを見る。
コヤンさん。直ぐに治してやるからな。
「ネイチャーヒーリング、ブラッドプリュース」
上級回復魔法を唱える。すると、彼女の身体の細胞が活性化され、損傷箇所を修復していった。続いてもう一つの魔法が発動し、失った血液が補充されたことで、顔色も良くなる。
「外傷は消えましたが、意識が戻りませんわね。シロウさん、コヤンさんはこのまま寝かせておきますか?」
エリーザの言うとおり、彼女をあのまま寝かせたほうがいいだろうか? いや、それはよくないかもしれない。どんな結末を迎えることになるのかは未知数だけど、彼女はきっと、最後まで見届けたいはずだ。
「いや、コヤンさんを起こそう。ウイークアップ」
覚醒魔法を唱え、強制的に彼女の目を覚まさせる。
「あれ? わたくしは……そうでした! スカーヤは!」
「外に逃げた。今、ミラーカが追っている」
「それでは今すぐに合流しましょう」
やっぱり、彼女を目覚めさせて正解だったな。
外を見ると、入口から一体のスライムが入って来た。
ちょうどいいタイミングで見つかったか。
「スライム、ミラーカとスカーヤさんがいる場所に案内してくれ」
連れて行くように言うと、スライムは体を反転させて外に出る。
付いて行くと、スライムは町の外に向かった。
町の外に向かったのか、これなら建物の倒壊を気にしないで、思いっきり戦うことができる。
町の外に出ると、ミラーカとスカーヤさんが対峙していた。
「さすがシロウだね、もう追い付いたんだ。上手いところ、スカーヤを町の外に誘導することが出来たよ」
「助かる。あのまま町で戦うことになったら、被害が拡大するからな」
スカーヤさんを見る。彼女の目は吊り上がり、こちらを睨み付けていた。
『ワウーン!』
スカーヤさんが吠える。すると彼女は姿を変えた。口が裂けて大きくなり、無数の牙に生え変わる。そして額からも目が現れて五つに増えた。尻尾は九つとなり、完全にスカーヤさんの原型を留めていない。
「白銀の九尾」
今の彼女に名前をつけるとすれば、これが妥当だとう。
警戒をしていると、彼女の変化はこれだけでは終わらなかった。
身体が何倍にも膨れ上がり、巨大になっていく。
ざっと見て、全長二十メートルと言ったところか。
「みんな戦闘準備、俺がスカーヤさんを元に戻す方法を考える。それまで動きを封じるのを手伝ってくれ」
「わかりましたわ」
「分かった」
「了解した」
「サポートの方は任せてください」
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