【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい

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⑤激甘溺愛への反撃は(2)

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「.....しばらく、会いにこないでほしいの。ごめんなさい」



 リードネストは、自室の机に突っ伏していた。



 愛しいモモネリアにあの衝撃の言葉を放たれて、ニ日。


 ずっとモモネリアの声が、頭の中でこだましていた。



 なんとか仕事はこなしているが、心は悲しくて悲しくて、悲鳴を上げている。



 何をしていても、頭の中にモモネリアがいて、会いたくてたまらなくなる。



 触れたくて、声が聞きたくて、モモネリアの笑顔が見たくて。



 せめて....と、頭の中でモモネリアをイメージしても、そのモモネリアにあの言葉を何度も繰り返し言われ、生きた心地もしない有様だ。
  


 半身を失ったように身体は重く、できれば動きたくない。



 食事などで顔を見ることもできるはずなのに、リードネストはわざと時間をずらして、それさえも二日間我慢していた。



 もちろん、モモネリアの様子は家令のカーヴィンと侍女のハルカに、逐一報告は上げさせている。


 どうやら最近は、自室にこもっている時間が長いようだ。



 そして、時折リードネストのことを気にして尋ねてくる、ともカーヴィンから聞いている。



 カーヴィンは、モモネリアが寂しがっている、食事だけでも一緒にとったらどうか、と言ってくるが本当にそうなのだろうか.....。



 ただ、自分に会いに来ないか心配で、居場所を確かめているだけなのでは......?


 なんとも後ろ向きなことばかり頭に浮かんで、会う勇気が出ない。




「モモネリア.....どうして.....俺のことが嫌になったのか?」




 誰からも返事はないとわかっていながら、独り言ちる。




 机に肘をついて、頭を抱えて大きくため息を吐いた。




 あの瞬間に何故なのか尋ねれば良かったものを、リードネストはそうしなかった。


 理由は明白だ。


 モモネリアの口から、拒絶の言葉を聞きたくなかった。


 もし、モモネリアから「一緒にいたくない」「顔を見るのが辛い」「嫌いだから」などと言われたら....そう思うと怖くて足がすくんだ。



「....しつこすぎた、だろうか」



 モモネリアへの愛しさが溢れて、日に何度も会いに行ったのが重かったのか。


 それとも、モモネリアが愛らしすぎて、我慢できずに触れすぎただろうか。


 やはり、少しは心を開いてくれたと思っていたのは、俺の勘違いだったのかもしれない。


 モモネリアは、自分勝手に攫ってきた俺を許しはしていないのだろう。


 そんな俺が、しつこく会いに行き、聞きたくもない愛の言葉を囁き、自分に触れ、毎日のようにプレゼントを贈ってくる。


 モモネリアはどれだけ辛く、重荷だっただろうか。


 モモネリアは人間だ。


 俺たち獣人の番への執着や、重い愛は理解できないだろう。


 もしかしたら、怖がらせただろうか。


 
「.....はぁ。......モモネリア。会いたい」



 例え、モモネリアに愛されなくても、俺はモモネリアを愛すると決めた。


 モモネリアが側にいてくれるなら、それでも構わないと。



 それなのに....いつのまに俺はこんなに貪欲になったんだ?


 少しでも、モモネリアが心を許してくれた空気を感じたら....もっと、もっと、と欲が抑えられなくなった。


 もっと笑ってほしくて、触れたくて、甘えてほしくなった。



 モモネリアに嫌われたくない。

 必要とされたい。

 できれば......愛されたい。



 もう誤魔化せなくて、リードネストはまた大きくため息を吐く。



「あぁ.....モモネリア。俺は.....どうすればいいんだ」


 
 勝手に攫ってきたうえに、自分と同じように愛してくれ、などと言えるわけもない。


 そんなこと絶対にしてはダメだ。



 それなのに、理性ではモモネリアを慮り、本能ではモモネリアの愛を乞うている。



 なんと滑稽なことかーーーー。
 

 会える確率など奇跡に近い愛しい番に、会えた自分はものすごく幸運だ。
 
 だが、会えたら今度は愛を乞い、自分と同じ愛が返ってこないことに、泣き叫びたくなるほど悲しみを覚える。



 獣のようなコントロールのできない本能をもてあまして、苦しさから息の仕方もままならず、リードネストは初めて涙を一筋流していた。



 女に興味もなく、愛することなど知らなかった。
 そんな自分が番の愛を乞うて、泣く日が来るなど想像もしなかったーーーーー。



 リードネストは、誰もいない自室で涙が収まるまで、しばらくひきこもっていた。





 コンコン!



「.....なんだ?」



 すっかり涙も落ち着いた頃、家令のカーヴィンがドアをノックした。 


 返事をするとすぐにドアが開かれ、カーヴィンが入ってくる。



「旦那様、お客様です」




「....誰だ?今日は来客の予定はなかったはずだが」




「....リンツ・マクラーヴィン様がお越しです。旦那様に、お会いしたいと。どうやらお急ぎだったらしく、先触れが出せなかったと仰っております。いかが致しましょうか」



「リンツが?....わかった。すぐいく」



 リードネストは、その名前を聞いてすぐに自室から出て、邸の玄関に向かった。





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