11 / 45
⑤激甘溺愛への反撃は(2)
しおりを挟む*******
「.....しばらく、会いにこないでほしいの。ごめんなさい」
リードネストは、自室の机に突っ伏していた。
愛しいモモネリアにあの衝撃の言葉を放たれて、ニ日。
ずっとモモネリアの声が、頭の中でこだましていた。
なんとか仕事はこなしているが、心は悲しくて悲しくて、悲鳴を上げている。
何をしていても、頭の中にモモネリアがいて、会いたくてたまらなくなる。
触れたくて、声が聞きたくて、モモネリアの笑顔が見たくて。
せめて....と、頭の中でモモネリアをイメージしても、そのモモネリアにあの言葉を何度も繰り返し言われ、生きた心地もしない有様だ。
半身を失ったように身体は重く、できれば動きたくない。
食事などで顔を見ることもできるはずなのに、リードネストはわざと時間をずらして、それさえも二日間我慢していた。
もちろん、モモネリアの様子は家令のカーヴィンと侍女のハルカに、逐一報告は上げさせている。
どうやら最近は、自室にこもっている時間が長いようだ。
そして、時折リードネストのことを気にして尋ねてくる、ともカーヴィンから聞いている。
カーヴィンは、モモネリアが寂しがっている、食事だけでも一緒にとったらどうか、と言ってくるが本当にそうなのだろうか.....。
ただ、自分に会いに来ないか心配で、居場所を確かめているだけなのでは......?
なんとも後ろ向きなことばかり頭に浮かんで、会う勇気が出ない。
「モモネリア.....どうして.....俺のことが嫌になったのか?」
誰からも返事はないとわかっていながら、独り言ちる。
机に肘をついて、頭を抱えて大きくため息を吐いた。
あの瞬間に何故なのか尋ねれば良かったものを、リードネストはそうしなかった。
理由は明白だ。
モモネリアの口から、拒絶の言葉を聞きたくなかった。
もし、モモネリアから「一緒にいたくない」「顔を見るのが辛い」「嫌いだから」などと言われたら....そう思うと怖くて足がすくんだ。
「....しつこすぎた、だろうか」
モモネリアへの愛しさが溢れて、日に何度も会いに行ったのが重かったのか。
それとも、モモネリアが愛らしすぎて、我慢できずに触れすぎただろうか。
やはり、少しは心を開いてくれたと思っていたのは、俺の勘違いだったのかもしれない。
モモネリアは、自分勝手に攫ってきた俺を許しはしていないのだろう。
そんな俺が、しつこく会いに行き、聞きたくもない愛の言葉を囁き、自分に触れ、毎日のようにプレゼントを贈ってくる。
モモネリアはどれだけ辛く、重荷だっただろうか。
モモネリアは人間だ。
俺たち獣人の番への執着や、重い愛は理解できないだろう。
もしかしたら、怖がらせただろうか。
「.....はぁ。......モモネリア。会いたい」
例え、モモネリアに愛されなくても、俺はモモネリアを愛すると決めた。
モモネリアが側にいてくれるなら、それでも構わないと。
それなのに....いつのまに俺はこんなに貪欲になったんだ?
少しでも、モモネリアが心を許してくれた空気を感じたら....もっと、もっと、と欲が抑えられなくなった。
もっと笑ってほしくて、触れたくて、甘えてほしくなった。
モモネリアに嫌われたくない。
必要とされたい。
できれば......愛されたい。
もう誤魔化せなくて、リードネストはまた大きくため息を吐く。
「あぁ.....モモネリア。俺は.....どうすればいいんだ」
勝手に攫ってきたうえに、自分と同じように愛してくれ、などと言えるわけもない。
そんなこと絶対にしてはダメだ。
それなのに、理性ではモモネリアを慮り、本能ではモモネリアの愛を乞うている。
なんと滑稽なことかーーーー。
会える確率など奇跡に近い愛しい番に、会えた自分はものすごく幸運だ。
だが、会えたら今度は愛を乞い、自分と同じ愛が返ってこないことに、泣き叫びたくなるほど悲しみを覚える。
獣のようなコントロールのできない本能をもてあまして、苦しさから息の仕方もままならず、リードネストは初めて涙を一筋流していた。
女に興味もなく、愛することなど知らなかった。
そんな自分が番の愛を乞うて、泣く日が来るなど想像もしなかったーーーーー。
リードネストは、誰もいない自室で涙が収まるまで、しばらくひきこもっていた。
コンコン!
「.....なんだ?」
すっかり涙も落ち着いた頃、家令のカーヴィンがドアをノックした。
返事をするとすぐにドアが開かれ、カーヴィンが入ってくる。
「旦那様、お客様です」
「....誰だ?今日は来客の予定はなかったはずだが」
「....リンツ・マクラーヴィン様がお越しです。旦那様に、お会いしたいと。どうやらお急ぎだったらしく、先触れが出せなかったと仰っております。いかが致しましょうか」
「リンツが?....わかった。すぐいく」
リードネストは、その名前を聞いてすぐに自室から出て、邸の玄関に向かった。
39
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~
百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。
放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!?
大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?
エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。
文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。
そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。
もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。
「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」
......って言われましても、ねぇ?
レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。
お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。
気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!
しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?
恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!?
※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる