【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい

文字の大きさ
13 / 45

⑤激甘溺愛への反撃は(4)


******



 リードネストは、突然訪ねてきたリンツ・マクラーヴィンとともに、庭園に出ていた。


 さっさと要件を聞いて帰そうと思っていたが、リンツ本人がリードネストの家の庭を見たいと言い出して、気は進まなかったが断りきれず案内したのだ。


 リンツが訪ねてきた理由こそ王から預かった大切な仕事について話を詰めるためだが、早々に仕事を終えたら、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら、庭園を見せろと言ってきた。



 リードネストは、ため息を吐いた。


 どうせ、最近番が現れたリードネストのことをからかうためだろうとわかっていたからだ。



 リードネストが女性に興味がないのは、邸の者はもちろん、王城で働く者たちにも周知の事実だ。



 だが、そんなリードネストに、つい最近やっと愛する番が見つかったようだと、話題になっているらしい。



 リードネストとよく仕事をする仲のリンツはちょうどその噂を聞き、仕事のついでにひやかしてやろうと企んだ。


 久しぶりに来たら、邸の雰囲気も以前とガラッと変わっており、玄関に入る時ちらっと見えた庭に関してはさらに驚いたため、リンツはカーヴィンに尋ねた。


 すると、リードネストは番が可愛すぎて庭にガゼボを作ったり、番の好きな花をたくさん植えて手入れしていることを知り、かなり尽くしていることがうかがえた。


 リードネストのあの仏頂面を崩せるかもしれない、とリンツのイタズラ心がむくむくわきあがる。




「すごいじゃないの。こんなに綺麗に手入れして。前は、見られればそれでいいって、必要最低限の花しか植えてなかったのに。あんなガゼボまで作って....」




 何故かリードネストの腕に絡みついてジロジロ庭を眺めるリンツに内心苛立ちながら、リンツのしたいようにさせる。


 気が済んだら、早く帰ってもらうためだ。



 .....リンツが帰ったら、モモネリアを久しぶりに食事に誘おうか。

 ......会わないのも、俺の方が限界だ。....会いたい、モモネリア。



 心ここにあらずという空気を察知したのだろう。


 リンツがむぅとむくれて、さらに身体を押し付けてきた。



「ちょっと。聞いてる?....もう、どうせ愛しい番のことでも考えてたんでしょう。全く。....それで?どんな子なの?その.....モモネリアって子は」



 今まで無表情を貫いていたリードネストが、明らかにムッとして鋭くリンツを睨みながら低い声を発する。



「.....俺のモモネリアを勝手に名前で呼ぶな」



 リンツは、呆れ顔になりゆるゆると首を振る。


「....わかったわよ。そんな怖い顔で怒らないでよ。独占欲の強い男は嫌われるわよ」




「.....ふん」



 嫌われる、と言われて一瞬狼狽えたのが手に取るようにわかって、リンツはさらにニヤニヤと笑みを深める。



「そんなに、大切なの?番ちゃんが」



「.....あぁ。もうモモネリアなしでは生きていけない。俺は、あんなに可憐で繊細で美しい生き物を知らない。彼女は、俺が大切に....大切に守っていきたい。こんな気持ちを教えてくれたことにも感謝してもしきれないよ」



 その瞬間、リードネストがふんわり甘く笑った。


 モモネリアに見せる、あの柔らかい笑顔だ。



 リンツは、目を瞬かせる。



「.....へぇ。あなたのそんな表情が見られるとはね。.....まぁ、あれね。おめでとう、とでも言っておきましょうか。せいぜい嫉妬心と独占欲をむき出しにしすぎて、愛想を尽かされないようにね」



 ふふん、と意味ありげに笑って見せたリンツに、リードネストは何か言おうと口を開きかけた。


 その時ーーーー。


 ガサッ。



 後ろで何か小さな音がして、リードネストは振り返った。


 そこに、リードネストが見間違うはずのない背中が遠ざかっていくのが見えたのだ。



「.......モモネリア?」


 リンツはその声に、リードネストの顔を見上げる。


「....なに?どうしたの?」


「.....モモネリア!.......泣いて、いるのか?.....離せ!追いかける」


「....えっ!?ちょっ.....なに!?どうしたのよーーー!」



 リードネストは、いきなりリンツの腕をすごい力で振り払い、その問いかけにも答えずに一目散に走っていく。



 リンツは、ただ呆然とその後ろ姿を見送っていた。







感想 2

あなたにおすすめの小説

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」 ⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎

愛されすぎて落ち着かないなんて初めてです

星乃和花
恋愛
恋をすると、私は少し面倒くさくなる。 好きと言いたいし、好きと言われたい。 会いたいし、一緒にいたい。 ずっと変わらないものを、つい求めてしまう。 そんな自分を持て余していた私が、 恋の相談をしていた相手は―― 「重くないですよ」 と、何でもない顔で受け止めてくれる人でした。 優しくて、穏やかで、包み込むみたいな同僚。 気がつけばその人が、いちばん話したい相手になっていて。 そして、いちばん好きな人になっていました。 付き合ってみた結果―― 想像以上に大事にされて、 想像以上に愛されて、 毎日ちょっと落ち着かない。 それでも。 こんなふうに愛されるのは、初めてで、 どうしようもなく、しあわせです。 やさしくて甘い、 “安心できるのに落ち着かない”恋のお話。 (完結済ー全12話+エピローグ+番外編2話)

試用期間の終わりに、伯爵様から永久雇用と指輪を渡されました

星乃和花
恋愛
植物が大好きな控えめ庭師見習いのリネットは、伯爵邸での試用期間を終える日、不安な気持ちで呼び出される。 けれど若き伯爵アルヴェインに告げられたのは、まさかの永久雇用。しかも“約束の証”として、美しい指輪まで渡されて――? 「君さえ望むなら、生涯ここにいていい」 控えめな自分が安心できるようにと考えられた、伯爵様の優しさの塊みたいな契約更新。 ……だと、リネットは本気で思っていた。 一方の伯爵様は、至って真面目に求婚のつもり。 求婚が通じたと思っている伯爵様と、 超手厚い福利厚生だと思って感激している庭師見習いの、 甘くて可愛いすれ違いラブコメディ。 (完結済ー全8話)

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ! ⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎

完璧な政略結婚のはずでしたが、宰相閣下の“私の妻”扱いが甘すぎます

星乃和花
恋愛
政略結婚のはずでした。 家同士の利も、立場の釣り合いも、全部きちんと整った、完璧に合理的な結婚。 ……なのに、夫となった冷徹宰相は、なぜか人前で私を「最高の妻」と紹介し、暮らしを完璧に整え、他人に近づかれると不機嫌になってしまいます。 “天使”と噂される穏やかな令嬢フィオナもまた、 そんな不器用な優しさに少しずつ心をほどかれて――。 これは、条件で選ばれたはずの夫婦が、 いつの間にかお互いを“ただ一人”として欲しくなるまでの、甘くてやさしい政略結婚物語。 (完結済ー全8話)

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

政略結婚のはずが、旦那様の独占欲が想定外です

星乃和花
恋愛
公爵家の令嬢フローラは、花とレースが似合う無邪気な娘。 家族や使用人に大切にされ、気づけば結婚相手まで決まっていた。 お相手は、王都でも完璧と名高い青年伯爵レオネル。 実務的で理性的な彼は、この婚姻を“問題のない政略結婚”として受け入れた――はずだった。 けれど、隠し事がまったくできないフローラの真っ直ぐさに、女を信用できないレオネルの心は少しずつほどけていく。 一方のフローラもまた、初めて「自分で選びたい」と思う相手に出会ってしまい……。 「問題ない」から始まったはずの結婚は、 やがて「君でよかった」になり、最後には「君がよかった」へ変わっていく。 甘くて可愛い、政略結婚ラブコメディ。 ――政略結婚ですが、好きになってもよろしいですか? ♢こんな“好き“をお持ちの方へ 政略結婚から本物の恋になるお話が好きな方 理性的なヒーローの独占欲がじわじわ強くなる展開が好きな方 新婚後ますます甘くなる夫婦ものが好きな方 (完結済ー本編10話+番外編5話)