26 / 45
⑨危険な思惑(1)
しおりを挟む❾危険な思惑
「......!?........リード!」
ふわりとよく知った香りと体温に包み込まれて、モモネリアは後ろを振り返った。
そこには、額に汗を浮かべて息を切らして肩を揺らすリードネストの姿があった。
気がつくとモモネリアは、ひどく安堵した表情を浮かべるリードネストに強く抱きしめられていた。
密着した背中が熱い。
「......ど、どうしたの?」
何か問題でもあったのかと尋ねると、すぐに鋭い視線に射抜かれる。
「......どうした、じゃない。なるべく離れすぎないように言っておいたはずだ。お前の姿が、突然見えなくなって焦ったんだぞ。何度も花畑の中を回って、探したのにどこにも気配さえ感じないし。.......知らない土地で一人になって何かあったらどうする。危険だと、わかっているはずだ」
いつもモモネリアに甘く穏やかなリードネストには珍しく、強い口調で叱られたモモネリアは、萎れた花のようにしゅんとした。
「あ......ご、ごめんなさい」
「.......怪我は....なさそう、だな?」
モモネリアの全身に視線を遣り、怪我の有無を確認してから、つむじにキスを落とす。
「........心配した」
リードネストは、彼女の耳に唇を寄せ本音を漏らした。
耳元でそっと囁く声とほっと息を吐く熱にドキドキしながらも、本気で自分の身を案じてくれる存在がいることに嬉しさを隠せない。
不謹慎だが、こんなことでも愛されている自覚をもってしまう。
「.......大丈夫。なんともないわ。花を見ていただけだもの」
「.......そうか。......キツく言ってすまなかった」
モモネリアが無事だとわかると冷静になったのか、今度はリードネストがしゅんとして、謝ってきた。
モモネリアはふるふると首を振る。
確かに、旅先で女性がひとけのないところで一人になるのは危険だと自分でもわかる。
たまたま何もなく無事だったが、悪いことを考える者に狙われていた可能性だってある。
普段から、心配症で過保護なリードネストがどれほど肝を冷やしたか想像に難くない。
モモネリアを大切に思うが故の叱責であることをひしひしと感じるのだ。
謝ることなどない。
「ありがとう、リード。あなたの言うことはもっともだわ。次から十分注意する」
「......あぁ、そうしてくれ」
リードネストはふっと肩の力を抜き、微笑んだ。
モモネリアも、つられて笑顔を見せる。
「......おーい!そろそろ、いい?」
会話が落ち着いたところでじっと成り行きを見ていたローネルから、半ば呆れ顔で声がかかった。
「.......あ」
モモネリアは、しまったと思い、掌に視線を向ける。
そこには、プンスカと頬を膨らませてジト目でモモネリアとリードネストを見つめるローネルがいた。
「......ごめんね、ローネル」
モモネリアは、慌ててペコリと頭を下げた。
「.......そいつは?」
今、その存在に気づいた様子でリードネストがモモネリアに尋ねる。
「こちらは、ローネル。そこのお花の陰で倒れて気を失っていたから、心配で。ついさっき意識が戻ったのよ」
「.......初めまして。私は、ローネル。疲労で意識を失っていたところを、モモネリアに助けてもらった」
モモネリアに紹介され、ローネルはリードネストに挨拶した。
「........あぁ」
リードネストは、鋭い視線でローネルを射抜く。
声は低く、返事も実にぶっきらぼうだった。
モモネリアに対する甘い態度からは想像できないほどだ。
初対面ではあるが、ローネルは小さくて美しい女の子だ。
見たところ、子供ではないがまだ若いように見える。
もちろん、人間や獣人とは違う種族だと思われるので、見た目と年齢が比例しているかはわからないが。
それでも、若い女の子をそんな睨みつけるみたいに見なくても.....とモモネリアは内心ローネルがかわいそうになった。
怪訝に思いながらも、先ほどのローネルの言葉を思い出し、言いにくそうにモモネリアが口を開く。
「.......リード。ローネルがね、私たちと一緒に来たいって。......この国の子らしいし、勝手に連れ出すのもどうかとも思ったんだけど。女の子を一人にしておけないし......まだ疲れが残っていそうなの。放っておけないわ」
「.......女の子?」
リードネストがモモネリアを見て、首を傾げる。
「.........?」
モモネリアは頷いてから、なぜ聞き返されたのか不思議に思う。
ローネルを見れば、わかるだろう。
「.............」
何故か三人の間に沈黙が落ちる。
リードネストは、モモネリアからゆっくりローネルに視線を移し、眉間に深く皺を刻んだ。
ローネルはニコニコと笑みを浮かべ、黙って二人を見ている。
「........俺には、こいつが疲れているようには見えないが」
苛立ちと呆れが浮かぶ声で、リードネストは言った。
それを聞いたローネルは、あからさまに目眩でふらつくフリをして、モモネリアの掌に倒れ込んだ。
「あぁ、また目眩が....」と手の甲で目元を覆って呟く。
「.........ちっ、ほら吹きめ」
また倒れたローネルに気を取られ、リードネストの小さな声はモモネリアの耳に届かずーーーーー。
29
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~
百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。
放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!?
大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?
エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。
文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。
そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。
もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。
「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」
......って言われましても、ねぇ?
レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。
お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。
気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!
しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?
恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!?
※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる