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10 夢うつつ(1)
しおりを挟む➓夢うつつ
ローネルとわかれ少し部屋で休んでから、夕食をとりそれぞれ湯浴みをした。
浴室から部屋に戻ると、リードネストは先に宿の露天風呂で湯浴みを終えてベッドに腰掛けていた。
普段、リードネストの邸では隣同士の部屋だが、旅先では、いつも以上に目の届かないところにモモネリアがいることが嫌らしく、ずっと同室になっている。
何かあればすぐ助けられるから、と。
この宿は、地下から湧き出る源泉を引いてきて、美しい庭園の景色を眺めながら湯浴みできる露天風呂をかまえていて、女性客やカップルから大変人気らしい。
モモネリアは疲れを感じたため、今日のところは露天風呂には行かず、部屋の備え付けのお風呂で湯浴みすることにした。
湯上がりで、まだモモネリアの艶やかな髪の毛が湿っており、毛先から滴が垂れている。
「おいで」
リードネストは、呼ばれるまま隣に腰掛けたモモネリアの後ろにまわり、髪の毛を丁寧に拭いてくれた。
ふわふわと優しい手つきがとても気持ちよくて、モモネリアは目を瞑り、されるがまま任せることにした。
拭き終えると、リードネストはベッドの上にあぐらをかいて座り、モモネリアを横抱きに自分の上に座らせた。
モモネリアは、がっしりとした腕に身体を預け、リードネストを見上げる。
唇をそっと重ねて、何度も角度を変え口付けられる。
彼の体温が、湯から上がり時間が経って少し冷えてきたモモネリアの唇をあたためた。
唇が離れ、ぎゅっと抱きしめられる。
そして、ついさっき拭いてくれたモモネリアの髪の毛に再び彼の指が絡み、ゆっくりと梳いていく。
シルクの寝衣を着たモモネリアの膝に、ふさふさの柔らかな毛並みの尻尾がふわりと乗せられ、まるで上質な毛皮の布団のようだ。
........あたたかい。
モモネリアはうっとり目を閉じ、心地よさにリードネストの胸に横顔を押し付けながら、うつらうつらし始めた。
「ん....気持ちいい」
「......眠いか?」
「.....ふぁぁ」
コクンと頷いて、欠伸をする。
リードネストは、そっと掛け布団をめくり、モモネリアの身体を抱えてそこに寝かせた。
想定外なことが起こり、体は休息を求めていたのだろう。
モモネリアはベッドに横になるとスーッと寝息を立て始める。
リードネストは彼女の隣に横になり、背中側からモモネリアをすっぽり抱きしめた。
そして、モモネリアの寝顔を長い時間見つめていたーーー。
********
誰かに呼ばれている。
それが誰かはわからない。
でも......私はこの声を知っている。
*******
ぼんやりと闇が覆う中、満月の光を反射してキラキラ波打つ水面。
空に浮かぶ月は黄色のはずなのに、なぜかその水面も、月が落とす影も、一面桃色にも見えて。
物語の一ページを切り取ったみたいに、幻想的な場所だった。
その不思議な湖のほとりで、10歳くらいの背格好をした男の子と女の子が寄り添って、腰を下ろしている。
二人の姿はうっすらと、柔らかく、発光している。
男の子は、女の子よりもぼやけて見えて輪郭がはっきりしない。
しかし、二人とも人間ではないことがわかった。
男の子は、何やら手に持ち、一口かぶりつく。
そして蜜に濡れた指先で、そっと隣の女の子の口元にそれを運んだ。
「.......はい、半分こ。ふふ........おいしいね」
女の子は小さな口をまるく開けると、落ちてくる長い髪を耳にかけながら素直にそれを齧った。
「..........うん。おいしい」
女の子の口の端から、一雫の蜜が伝う。
男の子はその蜜に顔を近づけ、舌でペロリと舐めとった。
女の子は驚いて、舐められた場所に手を当て固まっている。
男の子はその様子を見て、愛おしげに目を細めた。
「........ほら。もう一口」
男の子は、優しく次の一口を促す。
女の子はコクンと頷き、ゆっくりまた口をつける。
交互に食べてやがて全て食べ終えると、男の子は袖の裾で隣の女の子の口を拭ってあげた。
とても嬉しそうに微笑んだ男の子を、女の子もはにかみながら見つめている。
「......これで、また........。........でも一緒に........。..........は二人を..........。必ず君を...........」
*********
モモネリアは、ふっと覚醒した。
どうやらまたあの夢を見ていたようだ。
この夢は幼い頃からよく見る夢だ。
誰かに呼ばれている声が聞こえて、振り返ると先ほどの男の子と女の子が寄り添っているのだ。
そして、決まって最後に男の子が言った言葉は、途切れ途切れで聞き取れない。
何度見ても同じ内容で、さすがにここまで何度も見るということは、何か理由があるのだろう。
「一体、なんなんだろう」
そういえば、リードと出会ってからはしばらく見ていなかった。
この国に来てから、再び夢を見るようになった。
関係があるのだろうか。
「夢.....なのに、ひどく臨場感があるというか.....。夢なのに実際に体験したことのように感じるのよね」
そこまで考えてもさっぱりわからずモモネリアは、枕に顔を押し付けた。
「......モモネリア?どうした?」
パッと顔を上げて声のした方を見ると、リードネストが心配そうに眉を下げ、モモネリアのもとへと駆け寄ってきていた。
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