【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい

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11忍び寄る影(1)


11.忍び寄る影




 今、リードネストとモモネリア、ローネルは街の市場に来ている。




 外国の市場になどはじめて来たモモネリアは、そこかしこで賑わう風景を見ているだけで、ウキウキと楽しい気分になってくる。




 隣を歩くリードネストの三角耳と尻尾も忙しなく動いていて、彼も楽しんでくれていることが伝わった。




 ただし、リードネストの場合、楽しそうにしているモモネリアを見るのを喜んでいるようにも思うが。




 馬車が通れるほど、広い道を挟んで両側にズラッと様々な露店が並んでいる。




 一番多いのは、食べ歩きや外で食べることを目的に作った、手軽な料理を提供している店だ。




 この街の名物料理である刻んだ野菜とひき肉をこねて作った餡を薄い皮で包んで焼いたもの、あずきを甘く似たあんこをパンに似た生地で包んで蒸しあげたもの、アヒル肉をこんがり焼いてもちっとした皮で野菜と濃いめのタレと共に巻いたもの。
 


 
 香ばしいかおりが、鼻をくすぐり食欲をそそる。




 それ以外にも、手作りの服や雑貨、子供のおもちゃやドライフラワー。





 古本のお店もある。





「わぁ!とっても綺麗!リード、みて!!」





 モモネリアは目をキラキラさせてはしゃぎながら、手作りの小物類が並ぶ露店で足を止めた。






 小さな薄桃色の貝殻と真珠でつくられた髪留を指差して、リードネストに笑顔を向ける。







 彼女はそれを手に取って、脇に置いてある小ぶりの丸い鏡の前で自分の髪の毛に合わせてみせた。






「お嬢さん、お目が高いね。それはね、ここいらじゃ手に入らない外国の海に生息する貝でね。『運命の赤い糸を手繰り寄せる』って言い伝えがあるらしい。つまり、運命の人と出会えるってことさ。真珠も天然物で、100カイリはくだらないよ。質の良さは、おりがみつきさ」





 威勢よく、女店主が話しかけてきた。





「よく似合う。気に入ったならひとつ買って行こう」






 リードネストは満足げに頷くと、店主に目で合図してお金を支払っていく。





「えっ、でも.....さっきから買ってもらってばかりだわ。こんなにたくさん、悪いわ」



 先ほどから、モモネリアが足をとめ手に取って見たものだけでなく、少し気になりチラッと視線を向けたものまで全てリードネストが購入していってしまうのだ。





 言葉に出してもいないのに、視線の先にあるものを的確に購入してくるあたりがリードネストらしい。





 どこまでもモモネリアをよく見ている。





「モモネリアは、慎ましいな。そんなお前も魅力的だが、俺には素直に甘えてくれ。俺はお前になら何でもしてやりたい。それに、俺が贈ったもので全身を飾るお前を見るのが、好きなんだ。モモネリアを包むものが、全て俺からの贈り物なんて、幸せすぎる。......『運命の赤い糸を手繰り寄せる』っていうのはもう必要ないがな。モモネリアの魂の伴侶は、俺だけだ」




「もう、リードったら」





 そう言われると、断れない。




「ちょっとぉ。お二人さん。私の存在、忘れないでよぉ!」






「......なんだ、お前いたのか」





 リードネストの右肩には、ローネルがのっていた。




 二人の世界に入ってしまって、戻ってこないモモネリアとリードネストに、とうとう大声で呼びかけたのだ。





「うぅ。リードは冷たいよね。ついてきていいって言ったのはリードじゃないかぁ」





 余程傷付いたのか、ローネルはぐすん、と鼻を鳴らした。


 


「ごめんね......ローネル。初めての市場に興奮しちゃって。つい我を忘れてしまったわ。許してちょうだい?.......次はローネルが見たがっていた、棒付きのカラフルなチョコレートのお店に行ってみましょ?」





 気を取り直して言ったモモネリアに、ローネルは甘えるようにふわりと飛んで頬に擦り寄った。





 それを見てリードネストの機嫌は、急降下する。





 凍りつきそうな冷気を放ち、尻尾と耳はピンと張りつめている。




 
 地を這うほどの低い声が、ローネルを咎めた。





「.......ローネル。やめろ。.......だいたい、しつこくついてきたいと聞かなかったのはお前だろ。......おい。モモネリアにベタベタするな」





 言っても聞かないローネルにさらに苛立ち、リードネストはローネルをつまみ上げ、自分の右肩に投げる。






「うわぁ!.....ぶーーー!リードのいじわる!ちょっとくらいモモネリアとくっついたっていいじゃないかぁ」






「ダメだ。モモネリアにくっついていいのも、触れていいのも、全て俺だけだ」






「.......独占欲強すぎて、嫌われるよ」





 不満が溜まるローネルは、リードネストが一番堪えるであろう言い方を選んだ。






 ギクリ、と肩を揺らした彼は、頭の上の三角耳を倒して恐々とモモネリアに視線を向けた。






「......そんなことで嫌いません」






 モモネリアはふっと口を小さく丸めて吹き出し、フォローした。





「もう。モモネリアが甘やかすから~。リードがこんなに私に鬼畜になるんだよ~」






「ふふ、ごめんね。ローネル」






「モモネリアが謝ることではない」






「.......もう勝手にして。バカップルめ」






 吐き捨てるように言ったローネルは、諦めてリードネストの肩に座り直した。











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