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帰省
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「.....な、なんだよ。どうして....」
圭吾は、バッと勢い込んで他の日記も確認する。
何冊にも及ぶ、日常が綴られた日記。
圭吾との幸せな日常。
一緒に散歩に出た時に出会った野良猫が可愛かった、圭吾が夕食を作ってくれた、圭吾の仕事が忙しそうで見ていられない。何かできないか、など。
それは、全て圭吾とのことについて。
そう、不自然なほどに全てーーー。
全くと言っていいほど、他の人間について書かれていないのだ。
そして、やはり....圭吾と出会う前。彼女が高校三年の夏を迎えるまでの日記は.....なかった。
元々書いていなかったのか....それともーーー。
日記の前半部分、圭吾と出会う前の日付のページが引きちぎられていたことを思うと.....捨てた?
.....何のために?
圭吾は、のぞみの両親や親族と良好な関係を築いている。
優しく穏やかな両親で、いくら思春期であろうとページを引きちぎるほど関係が不和だったとは考えにくい。
のぞみ本人もそんな素振り見せたこともないし、昔はよく家族の話もしてくれた。
のぞみの口から語られる両親は、愛情あふれる親だったように思う。
圭吾を、言い知れぬ不安が襲ってきた。
不審に思って、他の段ボールを探ってみれば、部屋の目立たぬ一番奥に、小さな段ボールがあった。
諦め半分、最後にガサゴソと漁ってみると日記とも似つかないノートが出てきた。薄汚れた一冊のノート。
胸騒ぎがした。
ドクドクと嫌な音をたてる心臓に頭を支配されながら、圭吾はゆっくりとページをめくった。
「なん、だよ....これ。本当、どうしちゃったんだよ.....の、ぞみ....?」
ノートのページ。パラパラと全てめくってみても、中身は何を書かれていたかわからなかった。
全て塗りつぶされていたのだ。
文字は綴られた形跡はある.....が、黒のマジックで上からぐちゃぐちゃに塗りつぶされていた。
十数年連れ添った妻の.....知り尽くしていると思っていた愛する妻の.....何か、別の顔を知ろうとしている気がしてーーー。
圭吾の背中を嫌な汗が流れる。
彼女に抱いたことのない、恐怖感のようなものを、圭吾は彼女の死後、初めて抱くことになったーーー。
******
「山本さん、今日から二週間有給だって?」
「.....はい、ご迷惑おかけします」
「いいよ、いいよ。ゆっくりリフレッシュしておいで。顔色、悪いよ?.....無理もないよ、奥さん大変だったね」
「......すみません」
「.....うんうん。休みの間は、君の仕事はみんなで手分けして引き受けとくから」
「はい、お願いします....」
圭吾は、仕事を二週間休むことにした。
体調が優れないから、という理由にしてあるが、圭吾にはもう一つ目的があった。
******
「おかえりなさい」
「....ただいま」
「夕食は?食べたの?」
「いや、まだ。....何かある?」
圭吾は、実家に帰ってきた。
両親は、久しぶりの息子の帰省にせっせと世話を焼こうとする。
「....ちょっとは、落ち着いたんかね」
「........」
「.....のぞみちゃんも、残念だったなぁ。良い子だったのに....どうしてあんないい子がなぁ」
母が、落ち込んだ様子で言う。
圭吾は、返す言葉が思いつかない。
「昔はここに来たら、よくお喋りしてくれてよ。楽しそうに話す顔見てたら....こんないい嫁さんもらえて、圭吾は幸せものだって思ってたのによ」
「......あぁ」
「.....そういえば、のぞみちゃん....体の調子ずっと悪かったんじゃないかい?.....だって、いつの頃からか、ここに来てもあまり話さなくなっただろ?お前と二人の家では、いつも通り話してたんか?」
「.......」
「....もしかしたら、体しんどいの我慢してたんかもなぁ。急に、余命宣告だ、なんて」
我慢?のぞみが....?
そういえば、お喋りだったのぞみが、いつの頃からか急に口数が減ったことを思い出した。
......あれは、いつ頃だ?
最近ではなかった。
そんな前から、体調が悪かったのか?
......本当に?
また変な違和感が襲ってきて、ぐるぐると圭吾の頭の中はのぞみのことでいっぱいになる。
「....もういいのかい?気持ちもわかるけど、食べなかったらあんたまで倒れるよ?」
「.....あぁ」
とても食べる気にならず、その日はすぐに布団に入った。
圭吾は、バッと勢い込んで他の日記も確認する。
何冊にも及ぶ、日常が綴られた日記。
圭吾との幸せな日常。
一緒に散歩に出た時に出会った野良猫が可愛かった、圭吾が夕食を作ってくれた、圭吾の仕事が忙しそうで見ていられない。何かできないか、など。
それは、全て圭吾とのことについて。
そう、不自然なほどに全てーーー。
全くと言っていいほど、他の人間について書かれていないのだ。
そして、やはり....圭吾と出会う前。彼女が高校三年の夏を迎えるまでの日記は.....なかった。
元々書いていなかったのか....それともーーー。
日記の前半部分、圭吾と出会う前の日付のページが引きちぎられていたことを思うと.....捨てた?
.....何のために?
圭吾は、のぞみの両親や親族と良好な関係を築いている。
優しく穏やかな両親で、いくら思春期であろうとページを引きちぎるほど関係が不和だったとは考えにくい。
のぞみ本人もそんな素振り見せたこともないし、昔はよく家族の話もしてくれた。
のぞみの口から語られる両親は、愛情あふれる親だったように思う。
圭吾を、言い知れぬ不安が襲ってきた。
不審に思って、他の段ボールを探ってみれば、部屋の目立たぬ一番奥に、小さな段ボールがあった。
諦め半分、最後にガサゴソと漁ってみると日記とも似つかないノートが出てきた。薄汚れた一冊のノート。
胸騒ぎがした。
ドクドクと嫌な音をたてる心臓に頭を支配されながら、圭吾はゆっくりとページをめくった。
「なん、だよ....これ。本当、どうしちゃったんだよ.....の、ぞみ....?」
ノートのページ。パラパラと全てめくってみても、中身は何を書かれていたかわからなかった。
全て塗りつぶされていたのだ。
文字は綴られた形跡はある.....が、黒のマジックで上からぐちゃぐちゃに塗りつぶされていた。
十数年連れ添った妻の.....知り尽くしていると思っていた愛する妻の.....何か、別の顔を知ろうとしている気がしてーーー。
圭吾の背中を嫌な汗が流れる。
彼女に抱いたことのない、恐怖感のようなものを、圭吾は彼女の死後、初めて抱くことになったーーー。
******
「山本さん、今日から二週間有給だって?」
「.....はい、ご迷惑おかけします」
「いいよ、いいよ。ゆっくりリフレッシュしておいで。顔色、悪いよ?.....無理もないよ、奥さん大変だったね」
「......すみません」
「.....うんうん。休みの間は、君の仕事はみんなで手分けして引き受けとくから」
「はい、お願いします....」
圭吾は、仕事を二週間休むことにした。
体調が優れないから、という理由にしてあるが、圭吾にはもう一つ目的があった。
******
「おかえりなさい」
「....ただいま」
「夕食は?食べたの?」
「いや、まだ。....何かある?」
圭吾は、実家に帰ってきた。
両親は、久しぶりの息子の帰省にせっせと世話を焼こうとする。
「....ちょっとは、落ち着いたんかね」
「........」
「.....のぞみちゃんも、残念だったなぁ。良い子だったのに....どうしてあんないい子がなぁ」
母が、落ち込んだ様子で言う。
圭吾は、返す言葉が思いつかない。
「昔はここに来たら、よくお喋りしてくれてよ。楽しそうに話す顔見てたら....こんないい嫁さんもらえて、圭吾は幸せものだって思ってたのによ」
「......あぁ」
「.....そういえば、のぞみちゃん....体の調子ずっと悪かったんじゃないかい?.....だって、いつの頃からか、ここに来てもあまり話さなくなっただろ?お前と二人の家では、いつも通り話してたんか?」
「.......」
「....もしかしたら、体しんどいの我慢してたんかもなぁ。急に、余命宣告だ、なんて」
我慢?のぞみが....?
そういえば、お喋りだったのぞみが、いつの頃からか急に口数が減ったことを思い出した。
......あれは、いつ頃だ?
最近ではなかった。
そんな前から、体調が悪かったのか?
......本当に?
また変な違和感が襲ってきて、ぐるぐると圭吾の頭の中はのぞみのことでいっぱいになる。
「....もういいのかい?気持ちもわかるけど、食べなかったらあんたまで倒れるよ?」
「.....あぁ」
とても食べる気にならず、その日はすぐに布団に入った。
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