【完】25年後、君と答え合わせ

こころ ゆい

文字の大きさ
15 / 53
第二章 25th Birth day

秘密の計画②

しおりを挟む
「あら、あなた、もう着いてたのね」
「あぁ、やっと戻ってきた。さっき着いたんだよ。今りんご剥いて食べてたところだ」
「そうだったの。あなた...あれは?」
「ん?あ...大丈夫。そこにある」

 母が戻ってきて、父と会話し始める。
 花乃はりんごをシャクシャク齧りながら、最後何故か小声になった両親の話を、ひとり蚊帳の外できいていた。

 と、りんごを食べ終わったところで、父と母が流れていたラジオのスイッチを切った。

「ん?あれ?...ラジオ、切っちゃうの?うるさかった?」
「あ、いや。違うんだ。な?」
「えぇ。花乃に話があって、ね?あなた」
「あぁ」
「......?」

 そこまで、話してシーンと病室が静まり返る。花乃は、首を傾げて、父と母の動向に耳を澄ませた。

「せーの」

「「 花乃!25歳の誕生日、おめでとう~!! 」」

 パン!と控えめのクラッカーの音がした。
 ガサッと何か擦れる音がして、花乃の目の前のサイドテーブルに、トンとものが置かれる。

「え?...誕生日?」

 突然のことに、かたまっていると、両親が小さく笑う。

「忘れてたのか?明日誕生日だろ?」
「あ.....」
「ふふ、忘れん坊さんね。ほら、これ。二人で選んだのよ」
「あぁ。せっかくの25歳の誕生日だもんな。うんと悩んで選んだんだ」
「気に入ってくれたら嬉しいわ」

 母は、そう言って、花乃の手を優しく誘導する。
 カサッと目の前のものに手が触れた。
 紙袋だった。

「....プレゼント?」
「えぇ。花乃に似合うと思って。ね?」
「あぁ、きっととっても可愛いぞ」

 耳に響いた両親の声から、たくさんの愛情を感じて、花乃の目が潤んできた。

「...あり、がとう。う、嬉しい」
「あらあら」

 母が、ティッシュをとって優しく涙を拭ってくれる。

「...なんだろう。開けても、いい?」
「もちろん。早く開けてみて?」

 ガサガサと袋に手を入れ、中身を取り出す。
 それは、透明のフィルムに包まれていた。
 テープを剥がして開いてみると...ふわふわと肌触りのいい生地の...。

「...ワンピース?」

 花乃は、ペタペタと手のひらで触れて、確認していった。
 それは、上が毛糸で編まれ、下はシフォン素材のスカートになっている。風を通しにくいように、しっかり裏地も縫い付けられているつくりだ。

「あぁ。淡い桜色で、綺麗なんだ。肌触りもいいだろう?」
「薄すぎないし。この季節、これに上着を着たらちょうどいいと思うの。それから...下に、厚めのタイツを履いて...ほらブーツも合わせて買ってきたのよ?ローヒールだし、きっと歩きやすいわ」
「花乃、せっかくだから合わせてみよう。立てるか?」
「...う、うん」

 サイドテーブルを横に避けて、花乃はベッドから立ち上がった。両親は、せっせとタグを切ったり、靴を準備したりしていて、ソワソワしながら待つ。
 準備が終わると、父が退室した。

「うん、いいわ。ほら、これを履いて?そうよ。それから...こうして。ちょっと待っててね。....どう?お父さん」

 母が、着るのを手伝ってくれる。
 病室の外で待っていた父が、戻ってきた。

「...おぉ!!花乃、すっごく似合うぞ!なぁ、お母さん」
「...本当ね。花乃、可愛いわ。お姫様みたい」
「お姫様、なんて...もう、そんな大袈裟な」
「大袈裟なことあるか。本当に、どこぞの国のお姫様みたいに輝いてるぞ」
「そうよ、そうよ」
「あー。はいはい、ありがとう。嬉しい。....でも、私...」

 花乃は、照れながら自分のワンピース姿を想像して微笑んだ。が、すぐに俯いて、両親に何か言いかける。
 それに、待ったをかけるように父が口を開いた。

「わかってる。花乃の言いたいことは。...あのな、明日、それを着て出掛けておいで」
「....え?」

 花乃は、今言われたことが理解できずに、再びかたまった。
 そんな花乃を、母が抱きしめる。
 そして、耳元で優しく囁いた。

「...明日になればわかるわ。詳しくは、明日話しましょう?」
「........」
「...とにかく。今日は、ケーキもあるのよ?当日は明日だけど、前祝いってことで....今から、家族三人でケーキを食べましょう?」
「あぁ、そうだな。お父さん、ケーキ大好きだ。おっきいの頼むぞ、お母さん」
「ふふ、はいはい。わかってるわよ、お父さん」
「...ふ、ふふふ。もう、お父さんったら」

 子供みたいに言う父に、花乃は笑った。
 状況は、よくわからない。でも...確かに、両親がさっき言っていた。「明日、出掛けておいで」と。

 もし、それが本当なら...花乃は、出られるのだろうか。ほんの一日だけでも。

 ずっと憧れていた、外の世界にーー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

処理中です...