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第二章 25th Birth day
秘密の計画②
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「あら、あなた、もう着いてたのね」
「あぁ、やっと戻ってきた。さっき着いたんだよ。今りんご剥いて食べてたところだ」
「そうだったの。あなた...あれは?」
「ん?あ...大丈夫。そこにある」
母が戻ってきて、父と会話し始める。
花乃はりんごをシャクシャク齧りながら、最後何故か小声になった両親の話を、ひとり蚊帳の外できいていた。
と、りんごを食べ終わったところで、父と母が流れていたラジオのスイッチを切った。
「ん?あれ?...ラジオ、切っちゃうの?うるさかった?」
「あ、いや。違うんだ。な?」
「えぇ。花乃に話があって、ね?あなた」
「あぁ」
「......?」
そこまで、話してシーンと病室が静まり返る。花乃は、首を傾げて、父と母の動向に耳を澄ませた。
「せーの」
「「 花乃!25歳の誕生日、おめでとう~!! 」」
パン!と控えめのクラッカーの音がした。
ガサッと何か擦れる音がして、花乃の目の前のサイドテーブルに、トンとものが置かれる。
「え?...誕生日?」
突然のことに、かたまっていると、両親が小さく笑う。
「忘れてたのか?明日誕生日だろ?」
「あ.....」
「ふふ、忘れん坊さんね。ほら、これ。二人で選んだのよ」
「あぁ。せっかくの25歳の誕生日だもんな。うんと悩んで選んだんだ」
「気に入ってくれたら嬉しいわ」
母は、そう言って、花乃の手を優しく誘導する。
カサッと目の前のものに手が触れた。
紙袋だった。
「....プレゼント?」
「えぇ。花乃に似合うと思って。ね?」
「あぁ、きっととっても可愛いぞ」
耳に響いた両親の声から、たくさんの愛情を感じて、花乃の目が潤んできた。
「...あり、がとう。う、嬉しい」
「あらあら」
母が、ティッシュをとって優しく涙を拭ってくれる。
「...なんだろう。開けても、いい?」
「もちろん。早く開けてみて?」
ガサガサと袋に手を入れ、中身を取り出す。
それは、透明のフィルムに包まれていた。
テープを剥がして開いてみると...ふわふわと肌触りのいい生地の...。
「...ワンピース?」
花乃は、ペタペタと手のひらで触れて、確認していった。
それは、上が毛糸で編まれ、下はシフォン素材のスカートになっている。風を通しにくいように、しっかり裏地も縫い付けられているつくりだ。
「あぁ。淡い桜色で、綺麗なんだ。肌触りもいいだろう?」
「薄すぎないし。この季節、これに上着を着たらちょうどいいと思うの。それから...下に、厚めのタイツを履いて...ほらブーツも合わせて買ってきたのよ?ローヒールだし、きっと歩きやすいわ」
「花乃、せっかくだから合わせてみよう。立てるか?」
「...う、うん」
サイドテーブルを横に避けて、花乃はベッドから立ち上がった。両親は、せっせとタグを切ったり、靴を準備したりしていて、ソワソワしながら待つ。
準備が終わると、父が退室した。
「うん、いいわ。ほら、これを履いて?そうよ。それから...こうして。ちょっと待っててね。....どう?お父さん」
母が、着るのを手伝ってくれる。
病室の外で待っていた父が、戻ってきた。
「...おぉ!!花乃、すっごく似合うぞ!なぁ、お母さん」
「...本当ね。花乃、可愛いわ。お姫様みたい」
「お姫様、なんて...もう、そんな大袈裟な」
「大袈裟なことあるか。本当に、どこぞの国のお姫様みたいに輝いてるぞ」
「そうよ、そうよ」
「あー。はいはい、ありがとう。嬉しい。....でも、私...」
花乃は、照れながら自分のワンピース姿を想像して微笑んだ。が、すぐに俯いて、両親に何か言いかける。
それに、待ったをかけるように父が口を開いた。
「わかってる。花乃の言いたいことは。...あのな、明日、それを着て出掛けておいで」
「....え?」
花乃は、今言われたことが理解できずに、再びかたまった。
そんな花乃を、母が抱きしめる。
そして、耳元で優しく囁いた。
「...明日になればわかるわ。詳しくは、明日話しましょう?」
「........」
「...とにかく。今日は、ケーキもあるのよ?当日は明日だけど、前祝いってことで....今から、家族三人でケーキを食べましょう?」
「あぁ、そうだな。お父さん、ケーキ大好きだ。おっきいの頼むぞ、お母さん」
「ふふ、はいはい。わかってるわよ、お父さん」
「...ふ、ふふふ。もう、お父さんったら」
子供みたいに言う父に、花乃は笑った。
状況は、よくわからない。でも...確かに、両親がさっき言っていた。「明日、出掛けておいで」と。
もし、それが本当なら...花乃は、出られるのだろうか。ほんの一日だけでも。
ずっと憧れていた、外の世界にーー。
「あぁ、やっと戻ってきた。さっき着いたんだよ。今りんご剥いて食べてたところだ」
「そうだったの。あなた...あれは?」
「ん?あ...大丈夫。そこにある」
母が戻ってきて、父と会話し始める。
花乃はりんごをシャクシャク齧りながら、最後何故か小声になった両親の話を、ひとり蚊帳の外できいていた。
と、りんごを食べ終わったところで、父と母が流れていたラジオのスイッチを切った。
「ん?あれ?...ラジオ、切っちゃうの?うるさかった?」
「あ、いや。違うんだ。な?」
「えぇ。花乃に話があって、ね?あなた」
「あぁ」
「......?」
そこまで、話してシーンと病室が静まり返る。花乃は、首を傾げて、父と母の動向に耳を澄ませた。
「せーの」
「「 花乃!25歳の誕生日、おめでとう~!! 」」
パン!と控えめのクラッカーの音がした。
ガサッと何か擦れる音がして、花乃の目の前のサイドテーブルに、トンとものが置かれる。
「え?...誕生日?」
突然のことに、かたまっていると、両親が小さく笑う。
「忘れてたのか?明日誕生日だろ?」
「あ.....」
「ふふ、忘れん坊さんね。ほら、これ。二人で選んだのよ」
「あぁ。せっかくの25歳の誕生日だもんな。うんと悩んで選んだんだ」
「気に入ってくれたら嬉しいわ」
母は、そう言って、花乃の手を優しく誘導する。
カサッと目の前のものに手が触れた。
紙袋だった。
「....プレゼント?」
「えぇ。花乃に似合うと思って。ね?」
「あぁ、きっととっても可愛いぞ」
耳に響いた両親の声から、たくさんの愛情を感じて、花乃の目が潤んできた。
「...あり、がとう。う、嬉しい」
「あらあら」
母が、ティッシュをとって優しく涙を拭ってくれる。
「...なんだろう。開けても、いい?」
「もちろん。早く開けてみて?」
ガサガサと袋に手を入れ、中身を取り出す。
それは、透明のフィルムに包まれていた。
テープを剥がして開いてみると...ふわふわと肌触りのいい生地の...。
「...ワンピース?」
花乃は、ペタペタと手のひらで触れて、確認していった。
それは、上が毛糸で編まれ、下はシフォン素材のスカートになっている。風を通しにくいように、しっかり裏地も縫い付けられているつくりだ。
「あぁ。淡い桜色で、綺麗なんだ。肌触りもいいだろう?」
「薄すぎないし。この季節、これに上着を着たらちょうどいいと思うの。それから...下に、厚めのタイツを履いて...ほらブーツも合わせて買ってきたのよ?ローヒールだし、きっと歩きやすいわ」
「花乃、せっかくだから合わせてみよう。立てるか?」
「...う、うん」
サイドテーブルを横に避けて、花乃はベッドから立ち上がった。両親は、せっせとタグを切ったり、靴を準備したりしていて、ソワソワしながら待つ。
準備が終わると、父が退室した。
「うん、いいわ。ほら、これを履いて?そうよ。それから...こうして。ちょっと待っててね。....どう?お父さん」
母が、着るのを手伝ってくれる。
病室の外で待っていた父が、戻ってきた。
「...おぉ!!花乃、すっごく似合うぞ!なぁ、お母さん」
「...本当ね。花乃、可愛いわ。お姫様みたい」
「お姫様、なんて...もう、そんな大袈裟な」
「大袈裟なことあるか。本当に、どこぞの国のお姫様みたいに輝いてるぞ」
「そうよ、そうよ」
「あー。はいはい、ありがとう。嬉しい。....でも、私...」
花乃は、照れながら自分のワンピース姿を想像して微笑んだ。が、すぐに俯いて、両親に何か言いかける。
それに、待ったをかけるように父が口を開いた。
「わかってる。花乃の言いたいことは。...あのな、明日、それを着て出掛けておいで」
「....え?」
花乃は、今言われたことが理解できずに、再びかたまった。
そんな花乃を、母が抱きしめる。
そして、耳元で優しく囁いた。
「...明日になればわかるわ。詳しくは、明日話しましょう?」
「........」
「...とにかく。今日は、ケーキもあるのよ?当日は明日だけど、前祝いってことで....今から、家族三人でケーキを食べましょう?」
「あぁ、そうだな。お父さん、ケーキ大好きだ。おっきいの頼むぞ、お母さん」
「ふふ、はいはい。わかってるわよ、お父さん」
「...ふ、ふふふ。もう、お父さんったら」
子供みたいに言う父に、花乃は笑った。
状況は、よくわからない。でも...確かに、両親がさっき言っていた。「明日、出掛けておいで」と。
もし、それが本当なら...花乃は、出られるのだろうか。ほんの一日だけでも。
ずっと憧れていた、外の世界にーー。
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