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【第9部】無人島サバイバル編 ~悪役令嬢、無人島に漂着す。大自然が相手なら、島ごと「整地」させていただきますわ~
第075話 【新章・無人島編】難破しました。クラーケンは唐揚げの夢を見るか? (船が折れてもバタ足で進めばOKです)
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南の大陸、サン・ルーチャ王国での騒動を「物理とプロレス」で解決し、わたしたちは再び海の上にいた。
目指すは東の果てにあるという島国。ミソとショーユ、そしてカタナの故郷だ。
出航して数日。海は穏やかで、空は青く、平和そのものだった。
「……暑いわね」
甲板で優雅にトロピカルジュース(ミリア特製)を飲んでいたわたし、レヴィーネ・ヴィータヴェンは、たまらず扇子で胸元を仰いだ。
南洋の太陽は容赦がない。カジノで仕立てた黒いレースのドレスは通気性こそ良いものの、やはり熱を吸収する。
隣では、アリスがぐったりとデッキチェアに伸びていた。
「うぅ……溶けるぅ……。私、雪国育ちじゃないけど、この暑さは無理だよぉ……」
彼女が着ているのは、サン・ルーチャで買った厚手のポンチョと変装用のローブだ。見るからに暑苦しい。
「アリス、そんな厚着をしているからよ。……少し、風通しを良くしましょうか」
「無理だよぉ……。日焼けしちゃうし、乙女の肌を不用意に晒すなんて……」
そんな平和で騒がしい昼下がり。
突如として、空が急激に墨汁を流したように黒く染まり始めた。
「……雲行きが怪しいわね」
風がぴたりと止む。
代わりに、肌にまとわりつくような湿った生温かい空気が、海面から立ち上ってくる。不吉な予感に、わたしの肌が粟立つ。
「お嬢ちゃんたち! 船内へ入れ! 嵐が来るぞ!」
船長が怒鳴るのと同時だった。
船底を突き上げるような凄まじい衝撃が走り、海面が不自然に盛り上がった。
ドバァァァァァンッ!!!
水柱と共に現れたのは、船よりも巨大な、ぬらりと光る赤黒い触手の塊。
伝説の海の魔獣、「大王烏賊」だ。
その大きさは、以前ラノリアへの航路で遭遇した海竜にも匹敵する。吸盤の一つ一つが、人の頭ほどの大きさがある悪夢のような怪物だ。
「ひぃぃぃッ! クラーケンだぁぁ!?」
「おしまいだ! この海域の主だぞ!」
船員たちが絶望の悲鳴を上げて逃げ惑う。
だが、わたしの目は違った意味で輝いた。
「……あら。なんて立派なイカリングの材料かしら」
わたしは鉄扇をパチンと鳴らした。
ミリアのリュックには、まだショーユの在庫がある。小麦粉もある。あとは揚げ油さえあれば、船上イカパーティーの開催だ。
「アリス! ミリア! 準備なさい! 今夜はイカ尽くしよ!」
「レヴィちゃん!? あれ災害級だよ!? 食べるサイズじゃないよ!?」
「油の温度管理が間に合いません~!! しかも船が揺れすぎてコンロが出せません!」
わたしたちが構えようとした、その時だった。
クラーケンの触手が、鞭のようにしなった。
バキィィィィンッ!!!
轟音と共に、船体が枯れ枝のように真っ二つにへし折られた。
「あ」
足場が崩れ、重力が仕事を始める。
大自然の猛威。魔法障壁すら紙くずのように引き裂く圧倒的な質量暴力。
人間が作った木の船など、魔獣にとっては小枝細工に過ぎないのだ。
「……チッ。食事の前にテーブルをひっくり返すなんて、マナー違反もいいところね!」
わたしは即座に判断した。この船はもう駄目だ。沈む船と心中する義理はない。
わたしは空中で体勢を整えると、落下していくアリスとミリアの襟首を、左右の手でガシッと掴んだ。
ついでに、ミリアが死んでも離そうとしなかった巨大リュックのベルトも指に引っ掛ける。
「捕まっていなさい! 泳ぐわよ!」
「えええええええ!?」
「リュックだけは! おミソとショーユだけはお守りしますぅぅ!」
ドボォォォォンッ!!
わたしたちは荒れ狂う海へとダイブした。
冷たい海水。押し寄せる高波。視界は泡と闇に覆われる。
だが、わたしのバタ足は止まらない。
身体強化フルパワー。脚力だけでスクリューのような水流を生み出し、推進力に変える。
「根性入れてしがみつきなさい! 陸地が見えるまで、絶対に離さないわよ!」
「うわぁぁぁん! レヴィちゃんのバタ足が暴走した魔導船みたいだよぉぉぉ!」
クラーケンが追撃してこようとしたが、わたしの放つ水流の乱れと、あまりの移動速度に目標を見失ったようだった。
わたしたちは嵐の海を、物理的な推力だけで突き進んでいった。
目指すは東の果てにあるという島国。ミソとショーユ、そしてカタナの故郷だ。
出航して数日。海は穏やかで、空は青く、平和そのものだった。
「……暑いわね」
甲板で優雅にトロピカルジュース(ミリア特製)を飲んでいたわたし、レヴィーネ・ヴィータヴェンは、たまらず扇子で胸元を仰いだ。
南洋の太陽は容赦がない。カジノで仕立てた黒いレースのドレスは通気性こそ良いものの、やはり熱を吸収する。
隣では、アリスがぐったりとデッキチェアに伸びていた。
「うぅ……溶けるぅ……。私、雪国育ちじゃないけど、この暑さは無理だよぉ……」
彼女が着ているのは、サン・ルーチャで買った厚手のポンチョと変装用のローブだ。見るからに暑苦しい。
「アリス、そんな厚着をしているからよ。……少し、風通しを良くしましょうか」
「無理だよぉ……。日焼けしちゃうし、乙女の肌を不用意に晒すなんて……」
そんな平和で騒がしい昼下がり。
突如として、空が急激に墨汁を流したように黒く染まり始めた。
「……雲行きが怪しいわね」
風がぴたりと止む。
代わりに、肌にまとわりつくような湿った生温かい空気が、海面から立ち上ってくる。不吉な予感に、わたしの肌が粟立つ。
「お嬢ちゃんたち! 船内へ入れ! 嵐が来るぞ!」
船長が怒鳴るのと同時だった。
船底を突き上げるような凄まじい衝撃が走り、海面が不自然に盛り上がった。
ドバァァァァァンッ!!!
水柱と共に現れたのは、船よりも巨大な、ぬらりと光る赤黒い触手の塊。
伝説の海の魔獣、「大王烏賊」だ。
その大きさは、以前ラノリアへの航路で遭遇した海竜にも匹敵する。吸盤の一つ一つが、人の頭ほどの大きさがある悪夢のような怪物だ。
「ひぃぃぃッ! クラーケンだぁぁ!?」
「おしまいだ! この海域の主だぞ!」
船員たちが絶望の悲鳴を上げて逃げ惑う。
だが、わたしの目は違った意味で輝いた。
「……あら。なんて立派なイカリングの材料かしら」
わたしは鉄扇をパチンと鳴らした。
ミリアのリュックには、まだショーユの在庫がある。小麦粉もある。あとは揚げ油さえあれば、船上イカパーティーの開催だ。
「アリス! ミリア! 準備なさい! 今夜はイカ尽くしよ!」
「レヴィちゃん!? あれ災害級だよ!? 食べるサイズじゃないよ!?」
「油の温度管理が間に合いません~!! しかも船が揺れすぎてコンロが出せません!」
わたしたちが構えようとした、その時だった。
クラーケンの触手が、鞭のようにしなった。
バキィィィィンッ!!!
轟音と共に、船体が枯れ枝のように真っ二つにへし折られた。
「あ」
足場が崩れ、重力が仕事を始める。
大自然の猛威。魔法障壁すら紙くずのように引き裂く圧倒的な質量暴力。
人間が作った木の船など、魔獣にとっては小枝細工に過ぎないのだ。
「……チッ。食事の前にテーブルをひっくり返すなんて、マナー違反もいいところね!」
わたしは即座に判断した。この船はもう駄目だ。沈む船と心中する義理はない。
わたしは空中で体勢を整えると、落下していくアリスとミリアの襟首を、左右の手でガシッと掴んだ。
ついでに、ミリアが死んでも離そうとしなかった巨大リュックのベルトも指に引っ掛ける。
「捕まっていなさい! 泳ぐわよ!」
「えええええええ!?」
「リュックだけは! おミソとショーユだけはお守りしますぅぅ!」
ドボォォォォンッ!!
わたしたちは荒れ狂う海へとダイブした。
冷たい海水。押し寄せる高波。視界は泡と闇に覆われる。
だが、わたしのバタ足は止まらない。
身体強化フルパワー。脚力だけでスクリューのような水流を生み出し、推進力に変える。
「根性入れてしがみつきなさい! 陸地が見えるまで、絶対に離さないわよ!」
「うわぁぁぁん! レヴィちゃんのバタ足が暴走した魔導船みたいだよぉぉぉ!」
クラーケンが追撃してこようとしたが、わたしの放つ水流の乱れと、あまりの移動速度に目標を見失ったようだった。
わたしたちは嵐の海を、物理的な推力だけで突き進んでいった。
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