悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~

みやもと春九堂@月館望男

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【第9部】無人島サバイバル編  ~悪役令嬢、無人島に漂着す。大自然が相手なら、島ごと「整地」させていただきますわ~

第080話 【決戦】陸に上がった大王烏賊(クラーケン)。イカ焼きパーティーの火力は「直火焼きプレス」で!

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 ――漂着、4日目:早朝。

 ダンジョンの最深部で魔導システムを物理的に停止(破壊)させ、島全体を覆っていた魔力嵐が止んでから一日が経過した。
 畑を作り、温泉を掘り、昨晩は快適なベッドで眠ることができた。
 魔力という文明の利器を取り戻したわたしたちの朝は、実に優雅なものだった。

「水よ、出ろー! ……うん、今日もばっちりだね!」
 アリスが顔を洗いながら杖を振り、清らかな水を出して満足げに頷く。
「火加減も自由自在です! これで火起こしの手間が省けますね!」
 ミリアも指先から種火を出し、朝食のスープを温め直している。

 文明の灯が戻り、これで快適なサバイバル生活(バカンス)が約束された――そう誰もが油断していた、その時だった。

 ズズズズズ……!!

 唐突に、島全体が大きく揺れた。
 地震ではない。もっと生物的な、地面の下から何かが這い出してくるような振動。
 そして、ジャングルの奥深くから、空気を震わせるような咆哮が響き渡った。

「グオオオオオオオオオッ!!!」

 木々がなぎ倒される轟音と共に、拠点の目の前に巨大な影が現れた。
 それは、海でわたしたちの船を襲ったあの「大王烏賊ギガント・クラーケン」――いや、違う。
 無数の触手の下に、太く強靭な「脚」が生えている。
 陸上環境に適応し、さらに凶暴化した島の主、「陸戦型ギガント・クラーケン」だ。

「うわぁぁぁ! イカが歩いてるぅぅ!?」
 アリスが悲鳴を上げる。
「なんて大きさ……! 推定重量300トンはあります!」
 ミリアもリュックを抱えて後ずさる。

(……なるほど。あの魔力嵐は、こいつを封じ込めるための檻でもあったわけね)

 ダンジョンの警備システムを壊して檻が消えたことで、島の主が活動を再開したのだ。 怒り狂うクラーケンが、触手を鞭のように振り回し、わたしたちの愛する拠点(ヴィータヴェン城(仮))を破壊しようと迫る。

 だが、わたしは不敵に笑った。

「……あら。冷蔵庫を手に入れたと思ったら、さっそく中身イカの方から歩いて来るとはね。手間が省けたわ」

 わたしは足元の影に意識を向けた。
 そこには、深く、冷たい闇の空間が広がっている。
 そしてその奥底で、愛おしい相棒が「待っていた」とばかりに震えたのがわかった。

 通じる。繋がっている。
 今度の出番は農機でも建機でも重機でもない。

「――来なさい、相棒!」

 わたしは影の中に手を突っ込み、一気に引き抜いた。

 ズヌゥッ……!!!

 影からせり上がってきたのは、光さえ吸い込むような絶対的な黒。
 ドワーフの秘法とわたしの魔力で焼き直された、物理最強の鈍器。

 ガシャン!

 重厚な金属音と共に、『漆黒の玉座オリジン』が展開される。
 わたしはそれを片手で軽々と担ぎ上げ、クラーケンを見据えた。

「さあ、お待たせ。……ここからは『完全武装』の悪役ヒール令嬢が相手よ!」


 ――漂着、4日目:朝食。

「総員、調理開始戦闘配置!」

 わたしの号令と共に、戦いの火蓋が切って落とされた。

「行くよ、新装備! もう魔力残量ガス欠なんて気にしないんだから!」

 アリスが『星光の聖杖スターライト・ロッド』を掲げる。
 杖の先端にある宝石が、太陽のように輝いた。無限のリソース供給による、最大出力の光魔法。

「大いなる光よ、切り裂け! 極大聖光破斬極太レーザー乱れ撃ちッッ!!」

 チュドォォォォォン!!!

 極太の光線が雨あられと降り注ぎ、クラーケンの触手を焼き払う。
 再生しようとする肉体を、光の熱量が上回る。

「食材は鮮度が命です! 捌きますよぉぉ!」

 ミリアが『永久の包丁アダマンタイト・ナイフ』を構えて疾走する。
 その切れ味は凄まじい。鋼鉄のようなクラーケンの皮膚を、まるで豆腐のようにスパスパと切り裂いていく。
 切断面が美しすぎて、クラーケンも切られたことに気づいていないほどだ。

「はい! イカ刺し一丁あがりです!」

 そして、わたしは。

墨袋は破らせ自爆はさせないわよ!」

 身体強化フルパワー。
 わたしは砲弾のように飛び出し、クラーケンの懐に潜り込んだ。
 振り下ろされる巨大な脚を、「玉座」で受け止め、弾き返す。

 ガギィィンッ!!

「邪魔よッ!」

 わたしは玉座をフルスイングし、クラーケンの足を一本、また一本と物理的にへし折っていく。骨があるかどうかはどうでもいい。全てブチ折ってやるのだ。

 巨体がバランスを崩し、グラリと傾く。

「仕上げよ! アリス、目潰し! ミリア、油!」

「了解! 『閃光フラッシュ』!」
「はいッ! 特製ごま油、行きます!」

 アリスの放った強烈な閃光がクラーケンの目をくらませ、ミリアが足元に大量の油を撒く。
 わたしは玉座をハンマーのように振りかぶり、体勢を崩したクラーケンの脳天めがけて跳躍した。

「美味しく焼けなさいッ!! ――『直火焼きプレスバーニング・ハンマー』ッ!!!」

 ドゴォォォォォォンッ!!!

 玉座の一撃がクラーケンの頭部を地面に叩きつけると同時に、ミリアの種火が油に引火した。
 爆発的な炎が巻き起こり、クラーケンを包み込む。

 ジュワァァァァァッ!!!

 香ばしい、あまりにも香ばしいイカ焼きの匂いが、浜辺いっぱいに広がる。
 クラーケンは完全に沈黙し、ただの巨大な食材へと変わった。

 ――その直後。
 浜辺では、盛大な「イカ焼き&海鮮ちゃんこパーティー」が開催された。

「ショーユの焦げる匂いこそが、勝利の凱歌よ!」
「イカリング食べ放題だー!」
「保存食用の燻製も作りますよー!」

 大自然の脅威を物理と食欲でねじ伏せたわたしたちは、満腹になるまで勝利の味を噛み締めたのだった。
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