悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~

みやもと春九堂@月館望男

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【第10部】東の島国・トヨノクニ開国(物理)編 ~悪役令嬢、黒船になる。鎖国? ならば「開国(物理)」して、美味しいお米と温泉をいただきます

第099話 決戦!関ヶ原レッスルマニア:数万の軍勢? 関係ありません、この戦場(リング)は私たちが支配します!

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 天下分け目の地、関ヶ原。
 そこには今、東軍(幕府・洗脳兵)五万と、西軍(レヴィーネ・ノブナガ連合軍)三万が対峙していた。

 東軍からは、妖刀の瘴気に当てられた暗い殺気と、「死」を望む虚ろな祈りが漂っている。
 対する西軍からは、タカニシキを食べて養った英気と、しかし「同胞を殺さねばならないのか」という迷いの空気が漂っていた。

「……空気が重いわね」

 両軍の中間地点。わたしは腕組みをして、ピリピリとした戦場を見渡した。
 隣には、白い巫女服をアレンジしたアイドル衣装のアリスが立っている。

「うん。……向こうの人たち、みんな『死ぬ気』だよ。こっちの人たちは『殺したくない』って思ってる。……これじゃ、ただの悲劇になっちゃう」

「ええ。脚本家の筋書き通り……なんて、癪に障るわ」

 わたしは鉄扇をパチンと閉じた。
 これまで各地で「アリーナ」や「ブーダカン」を展開してきたが、この規模の軍勢、そして広大な盆地全体を覆うには、わたしの影だけでは足りないかもしれない。

 その時、アリスがハッとしたように懐を探り、一冊の古びた書物を取り出した。
 西国巡礼の折、荒廃した古社で見つけたという「古文書」だ。

「レヴィちゃん! ……やっぱり、これだよ!」

 アリスがページを開き、わたしに見せる。
 そこには、古代の文字で記された「国創りの神話」の一節があった。

『光と闇は、反発する双極にあらず。
 闇は「器」を作り、境界を定め、ことわりを敷く。
 光は「中身」を満たし、命を育み、安らぎを与える。
 二柱の女神は背中合わせに座し、世界という揺り籠を回す――』

「大陸の教会じゃあ、『光と闇は相容れない敵対属性』だって教わってきたけど……嘘だったんだよ!」

 アリスの瞳が、確信に輝く。

「光と闇は、喧嘩なんかしてない! 本来は『隣り合う関係』……ううん、二人で一つのシステムだったんだよ!」

「……なるほどね」

 わたしはニヤリと笑った。
 腑に落ちた。
 なぜ、わたしアリスが、これほどまでに息が合うのか。
 それは前世を同じくするからというだけではない。
 なぜ、わたしの作る「過酷な環境獣の穴式トレーニング」と、アリスの「癒やし回復」がセットになると、人が劇的に強くなるのか。

 わたしが「枠(ルール)」を作り、逃げ場をなくす。
 アリスが「中身(ライフ)」を守り、死なせない。

 それは、究極の「マッチポンプ」であり――最強の育成機関だ。
 生命きんにくを育てる大いなる循環サークル・オブ・ライフなのだ。

「だったら、遠慮はいらないわね」
「うん! もう手加減なしだよ!」

 わたしとアリスは、背中合わせに立った。
 敵軍が、黒い波となって押し寄せてくる。数万の殺意。

「生意気ね。たかだか数万程度の観客で、わたしたちのステージを埋め尽くせると思って?」

 わたしは両手を広げた。
 足元の影が、アリスの光を受けて爆発的に膨れ上がる。

「アリス、合わせなさい! ……会場のグレードを上げるわよ!」
「了解! ……フルパワーで行くよ!」

 わたしの影が、大地を侵食し、物理的な質量を持って隆起する。
 ただの壁ではない。関ヶ原全域を覆い尽くす、巨大な屋根、堅牢な柱、そして何万人もの重量に耐えうる観客席。
 イメージするのは、前世の記憶にある最大級の屋内競技場。
 『ブーダカン崇高なる武道館』を超え、数多の伝説を生んだ『ドーム』へ!

「逃がさないわよ。……この空間すべてが、わたしの『掌の上』だわ!」

 ズゴゴゴゴゴゴゴォォォォッ!!!!

 大地が鳴動し、空が閉ざされる。
 関ヶ原という盆地そのものが、巨大な漆黒のドーム球場へと変貌していく。
 影魔法・領域結界『ザ・ドーム導夢の球場』。

 同時に、アリスが杖を掲げる。

「聖なる光よ、隅々まで満たして! この中にある全ての命を、傷も痛みも疲労も……『死』という概念そのものを否定して!!」

 カァッ!!!!

 ドームの天井(影)に、無数の光の星が灯る。
 それは人工の太陽となり、ドーム内を昼間のような明るさで照らし出した。
 アリスの光魔法が、わたしの作った閉鎖空間に充満し、濃密な「生命のスープ」のような環境を作り出す。
 光魔法・領域結界『常世のエターナル楽園サンクチュアリ』。

 敵兵たちが、呆然と空(天井)を見上げ、武器を取り落とす。

 「な、なんだここは……?」
 「体が……軽い? 傷が消えている?」

 わたしはドームの中央、高くせり上がったリングの上で、マイクを握りしめ、アリスと共に叫んだ。

「数万だろうが、数十万だろうが関係ないわ!!」

 わたしの声が、アリスの声が、ドーム内の空気を震わせる。

「「この場所は――わたしたちが『設営するルールを決める』ッ!!!」」

 その宣言こそが、新たな世界のルールとなった。

 1.このドーム内では、人は死ねない。
 2.脱出条件は、完全燃焼(満足)することのみ。
 3.全ての争いは、エンターテインメントとして処理される。

「「ルールはただ一つ!! 『不殺ころすな』!!!!!」」

 アリスが叫ぶ。

「安心して! どんな怪我しても治してあげるから!!」

 わたしが吼える。

「どんな物理も弾き返してみせるから!!! さあ、試合開始ゴングよ!!」

 わたしは「漆黒の玉座」をハンマーのように振り回した。

「「死ぬ気で……いえ、死ぬほど元気に!! 全力でやり合いなさいッッ!!!」」

 カーン!!!!

 開戦のゴングが、関ヶ原の空に鳴り響いた。

「う、うおおおおおおおおっ!!」
「死なねえんだな!? ならば思いっきり行けるぞ!」

 西軍の迷いが消えた。東軍の死への渇望が、「全力の闘争本能」へと上書きされた。

 ドームのありとあらゆる場所で、兵士達が組み合い、殴り合う。
 武器を振り回しても傷は立ち所に塞がるので、飛びつかれ、組みつかれ、かえって不利だ。
 そうなれば頼れるのは己の四肢のみ。
 体力の続く限り、殴り、組み、投げ、極める。
 武将も雑兵も関係ない、あるのは怪我なき痛みのみ。

 悲劇の戦争は終わった。
 ここにあるのは、史上最大の「大運動会バトルロイヤル」だ。

 その熱狂を見下ろしながら、ノブナガが腹を抱えて笑っていた。

「カッカッカ! 見ろ! まさに天下分け目の『大祭り』よ!」

 光と闇の最強タッグが作り出した奇跡の空間で、トヨノクニの歴史が大きく動こうとしていた。
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