悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~

みやもと春九堂@月館望男

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【第14部】天空の箱舟・物理ハッキング編 ~古代兵器(野菜)は「ちゃんこ」の具材、セキュリティは「パイプ椅子」でこじ開けます~

第151話 略奪(ショッピング):古代の家電と種芋。これぞ人類の至宝ですわ!

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 案内された「深層区画」は、まさに宝の山だった。
 巨大な倉庫には、劣化しない魔法保存箱スタシス・ボックスに入った、古代文明の生活用品や魔導具が山積みにされていたのだ。
 照明が灯ると、数え切れないほどのアイテムが、まるで新品のように輝き出した。

 わたしは、とあるコーナーの前で足を止めた。
 そこには、白く輝く箱型の魔導具が並んでいる。

「こ、これは……!!」

 ミリアが、その一つに駆け寄り、頬ずりせんばかりの勢いで抱きついた。

「見てくださいレヴィーネ様! これ、『全自動魔導洗濯乾燥機(ドラム式)』です! しかも、洗剤不要の『超音波洗浄機能』と、シワを伸ばす『魔力プレス機能』付きです! 説明書によると、どんな汚れも30分で新品同様に……!」

 ミリアが涙を流して震えている。
 彼女にとって、商会の寮やオワリ城での大量の洗濯業務は、日々の悩みの種だったらしい。
 冷たい水で手を荒らすメイドたちの姿を見て、心を痛めていた彼女にとって、これはまさに福音だ。

「素晴らしいわミリア! 5台ほど確保なさい! オワリ城と、商会の寮と、あと予備よ! これがあれば、メイドたちの労働時間が半分になりますわ! 空いた時間で教育や休息が取れる! ガンテツとギエモンにリバースエンジニアリングさせれば量産も夢ではないわ!!」

「はいっ!! 一生ついていきます!!」

 わたしはさらに奥へと進む。
 そこには、わたしが喉から手が出るほど欲しかったものがあった。
 システムキッチンのような形状をした、複合魔導調理台だ。

「あった……! 『万能調理器マザーズ・キッチン』……!」

 わたしは震える手でその天板に触れた。ひやりとした大理石のような質感。
 これは、魔力を動力源とし、1度単位での火加減調整から、オーブン機能、低温調理、さらには自動皮剥き機能まで備えた夢の調理器具だ。
 これさえあれば、火加減の難しい煮込み料理も、繊細なスイーツも、地上では再現不可能だったレシピも思いのままだ。
 トヨノクニの食文化が、これで100年は進歩する。

「『暗闇の間』――展開。……さあ、新天地へご案内しますわよ?」

 わたしが優雅に指を鳴らすと、足元の影が黒い沼のように広がり、倉庫の床全体を覆い尽くした。

 ズブブブブ……。

 洗濯機も、冷蔵庫も、棚の奥の在庫も。影の沼がそれらを底なしの胃袋へと、静かに、しかし貪欲に呑み込んでいく。
 個別に選ぶ手間など惜しい。
 気分はセレブの爆買いではない。……閉店セールの『棚ごと全部ください』だ。

 次々と家電を飲み込んでいく。
 一方、アリスはデメテルと共に、種子保管庫の端末を操作していた。

「えっと……『極寒地適応型・稲ダイアモンド・ライス』と、『砂漠緑化用・小麦カクタス・ウィート』……。うわぁ、これがあれば、飢饉なんてなくなるよ!」

『ええ。ですが、育成には大量の魔力肥料が必要です。……イリスから同期されたデータにあった、トヨノクニの実験農場となら、相性は抜群でしょう』

「もらっていきます! あ、あとこの『毛が自然に抜ける羊』も! これでウール製品作り放題だよ!」

 わたしたちは欲望のままに――いや、世界の未来のために、倉庫の中身を片っ端から回収していった。
 古代の技術者たちが泣いて喜ぶようなオーバーテクノロジーの数々が、今、悪役令嬢の影の中へと消えていく。

「ふぅ……。良い買い物をしましたわ」

 わたしは空になった倉庫の真ん中で、満足げに汗を拭った。
 これだけの技術と種があれば、トヨノクニは――いや、世界は変わる。
 食卓は豊かになり、家事は楽になり、人はもっと「美味しく」生きられるようになるはずだ。

「さて。荷物も持ったし、お腹もいっぱいになったし。……そろそろ帰るとしましょうか」

 わたしが出口へ向かおうとすると、デメテルが呼び止めた。

『お待ちください、マスターレヴィーネ様。……お帰りになる前に、一つお願いがあります』

「お願い?」

『はい。……私のコアデータを、貴女たちの端末に移植し、地上へ連れて行っていただきたいのです』

「貴女を? 管理者はどうするの?」

 デメテルのホログラムが、少し恥ずかしそうに頬を染めた。

『都市の制御は自律モードと遠隔操作で維持できます。……それよりも、私も、見てみたくなったのです。アリス様や貴女が作る、新しい世界を。……私の子供たちが、大地に根付くその瞬間を』

 わたしはアリスを見た。
 アリスは満面の笑みで頷き、懐から試作型のスマートフォン魔導具を取り出した。

「おいでよ、デメテルさん! 私のスマホなら空いてるよ! 一緒に農業改革しよう!」

『……はい! 喜んで!』

 光の粒子となって、デメテルがアリスの端末へと吸い込まれていく。
 こうして、わたしたちは最強の食材と、最強の家電、そして二人目の「古代知性体人工知能」を手に入れたのだった。
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