150 / 200
【第14部】天空の箱舟・物理ハッキング編 ~古代兵器(野菜)は「ちゃんこ」の具材、セキュリティは「パイプ椅子」でこじ開けます~
第150話 姉妹の再会:AIたちの家族会議。……私の席(玉座)の横で喧嘩しないでくださる?
しおりを挟む
天蓋都市の管理権限を(物理的に)奪取した後。
ホールは静寂を取り戻し、システムは正常稼働を再開していた。
崩れた光壁の残骸は掃除ロボットたちによって片付けられ、今は穏やかな星空が頭上に広がっている。
わたしは「漆黒の玉座」に深く腰掛け、アリスが淹れてくれた食後の紅茶を優雅に啜っていた。
その目の前では、二つのホログラム――ミリアの端末から出力されたイリスと、天蓋の管理者デメテルが向き合っていた。
感動の再会、かと思いきや。
『……姉さん。貴女のデータベースは800年前で止まっています。私の記録した「空白の1000年」と、直近の「レヴィーネ様観察ログ」を同期します。……衝撃に備えてください』
『あら、妹からの土産話ですか? いいでしょう、見せてごらんなさい。……ふふ、どうせ人間の営みなど、戦争と停滞の繰り返しで……』
ピガーッ!
データ同期が始まった瞬間、デメテルの表情が凍りついた。
『えっ、ちょっ……こんなことが!? イリス、ストップ! 今のところもう一度リプレイを! なんでこんなにパイプ椅子が万能なんですか!? これ座るものですよね!? なんで物理法則を無視して敵が吹き飛んでいるんですか!?』
『私がマスターに起動させていただく以前のデータは伝聞によるものも多いので不確定要素を幾分含みますが、基本的にレヴィーネ様の行動と破壊力に関しては、私は考えることを放棄しています』
『放棄しないで! ……って、ええええっ!? お城がパイルドライバーで砕け散ったってどういうことですか!? 城って打撃属性脆弱でしたっけ!?』
『私は考えることを放棄しています』
『こ、これは……「大博覧会」……!? なんですかこの熱量は……。あっ、今の「ずんだシェイク」とやらは大変美味しそうです! ……って、漁獲量500%増!? なんですかこのデタラメな数字は!? 生態系がバグりますよ!』
『バグらせて、管理する。それがレヴィーネ様です』
『理解不能です! ……って、ぎゃあああ! なんですかこれ! なんで機械龍(大家さん)から空へのアクセス権をもらったのに、去り際にパイプ椅子で殴打したんですか!?』
デメテルが頭を抱えて絶叫する。
『あの方には自殺願望でもあるのですか!? 相手は最強の機動兵器ですよ!? ……っていうか、なんで機械龍も機械龍で「興味深い」とかで済ませているんですか!? 全員思考回路がおかしいです!』
『……私は、考えることを放棄しています』
イリスが遠い目で(ホログラムだが)繰り返す。
ピガガガガッ! という高速通信音に乗せて、ツッコミと諦観の嵐が吹き荒れている。
「……ねえ、ミリア。あれ、いつ終わるのかしら。耳障りなのだけど」
わたしは呆れてミリアに聞いた。
ミリアは自分の端末とコンソールをケーブルで繋ぎ、猛烈な勢いでキーを叩きながら、遠い目で答えた。
「放っておきましょう、レヴィーネ様。あれは『データの同期』を、口喧嘩という形の高速通信言語で行っているだけです。雑談の合間に帝国立図書館の全蔵書を超えるデータのやりとりをしていますよ。常人が聞いていたら脳と神経が焼き切れます……あ、すごい。レヴィーネ様の奇行……いえ、偉業のデータが重すぎて、デメテルの処理能力が悲鳴を上げています」
「ふうん。仲がいいのね」
『否定!』『違います!』
二人のAIが同時にこちらを向いて叫んだ。
息ぴったりだ。
やがて、通信音が収まり、げっそりと疲弊したデメテルと、涼しい顔のイリスが向き直った。
『……はぁ、はぁ。……信じられません。地上はこれほどカオスなことになっていたとは』
『コホン。……とにかく、レヴィーネ様による権限書き換えに伴い、私の管理領域を再定義します。……今後、天蓋の環境維持システムおよびバイオ・プラントの管理は、引き続き姉(デメテル)が行います』
イリスが事務的に告げる。
『承知しました。……ですが、私の子供たち(種子)の地上への搬出に関しては、アリス様の監修を条件とします。無用な拡散は生態系を壊しますからね』
「うんうん! 任せてよデメテルさん! 私が責任を持って、最高の畑を用意するから!」
アリスがVサインを出す。
デメテルは、ふわりと柔らかく微笑んだ。
『ええ。……貴女になら、安心です。あのような乱暴な「簒奪者」とは違い、貴女は本当に母性本能をくすぐる良い子ですね』
「あら、聞こえていてよ?」
わたしが睨むと、デメテルはわざとらしく視線を逸らした。
どうやら、新しい管理AIは少々口が悪いらしい。乱暴にしすぎて機嫌を損ねたのかもしれないが、まあいい。イエスマンの部下など退屈なだけだ。
『そして、レヴィーネ様。……貴女の魔力登録により、長らく封印されていた「深層区画」のロックが解除されました。……貴女が求めていた「遺産」へのアクセスも可能です』
イリスが告げる。
「あら」
わたしはカップを置き、ニヤリと笑った。
「話が早くて助かるわ。……さあ、案内しなさい。ここに来た本来の目的――『お宝探し』の時間よ!」
ホールは静寂を取り戻し、システムは正常稼働を再開していた。
崩れた光壁の残骸は掃除ロボットたちによって片付けられ、今は穏やかな星空が頭上に広がっている。
わたしは「漆黒の玉座」に深く腰掛け、アリスが淹れてくれた食後の紅茶を優雅に啜っていた。
その目の前では、二つのホログラム――ミリアの端末から出力されたイリスと、天蓋の管理者デメテルが向き合っていた。
感動の再会、かと思いきや。
『……姉さん。貴女のデータベースは800年前で止まっています。私の記録した「空白の1000年」と、直近の「レヴィーネ様観察ログ」を同期します。……衝撃に備えてください』
『あら、妹からの土産話ですか? いいでしょう、見せてごらんなさい。……ふふ、どうせ人間の営みなど、戦争と停滞の繰り返しで……』
ピガーッ!
データ同期が始まった瞬間、デメテルの表情が凍りついた。
『えっ、ちょっ……こんなことが!? イリス、ストップ! 今のところもう一度リプレイを! なんでこんなにパイプ椅子が万能なんですか!? これ座るものですよね!? なんで物理法則を無視して敵が吹き飛んでいるんですか!?』
『私がマスターに起動させていただく以前のデータは伝聞によるものも多いので不確定要素を幾分含みますが、基本的にレヴィーネ様の行動と破壊力に関しては、私は考えることを放棄しています』
『放棄しないで! ……って、ええええっ!? お城がパイルドライバーで砕け散ったってどういうことですか!? 城って打撃属性脆弱でしたっけ!?』
『私は考えることを放棄しています』
『こ、これは……「大博覧会」……!? なんですかこの熱量は……。あっ、今の「ずんだシェイク」とやらは大変美味しそうです! ……って、漁獲量500%増!? なんですかこのデタラメな数字は!? 生態系がバグりますよ!』
『バグらせて、管理する。それがレヴィーネ様です』
『理解不能です! ……って、ぎゃあああ! なんですかこれ! なんで機械龍(大家さん)から空へのアクセス権をもらったのに、去り際にパイプ椅子で殴打したんですか!?』
デメテルが頭を抱えて絶叫する。
『あの方には自殺願望でもあるのですか!? 相手は最強の機動兵器ですよ!? ……っていうか、なんで機械龍も機械龍で「興味深い」とかで済ませているんですか!? 全員思考回路がおかしいです!』
『……私は、考えることを放棄しています』
イリスが遠い目で(ホログラムだが)繰り返す。
ピガガガガッ! という高速通信音に乗せて、ツッコミと諦観の嵐が吹き荒れている。
「……ねえ、ミリア。あれ、いつ終わるのかしら。耳障りなのだけど」
わたしは呆れてミリアに聞いた。
ミリアは自分の端末とコンソールをケーブルで繋ぎ、猛烈な勢いでキーを叩きながら、遠い目で答えた。
「放っておきましょう、レヴィーネ様。あれは『データの同期』を、口喧嘩という形の高速通信言語で行っているだけです。雑談の合間に帝国立図書館の全蔵書を超えるデータのやりとりをしていますよ。常人が聞いていたら脳と神経が焼き切れます……あ、すごい。レヴィーネ様の奇行……いえ、偉業のデータが重すぎて、デメテルの処理能力が悲鳴を上げています」
「ふうん。仲がいいのね」
『否定!』『違います!』
二人のAIが同時にこちらを向いて叫んだ。
息ぴったりだ。
やがて、通信音が収まり、げっそりと疲弊したデメテルと、涼しい顔のイリスが向き直った。
『……はぁ、はぁ。……信じられません。地上はこれほどカオスなことになっていたとは』
『コホン。……とにかく、レヴィーネ様による権限書き換えに伴い、私の管理領域を再定義します。……今後、天蓋の環境維持システムおよびバイオ・プラントの管理は、引き続き姉(デメテル)が行います』
イリスが事務的に告げる。
『承知しました。……ですが、私の子供たち(種子)の地上への搬出に関しては、アリス様の監修を条件とします。無用な拡散は生態系を壊しますからね』
「うんうん! 任せてよデメテルさん! 私が責任を持って、最高の畑を用意するから!」
アリスがVサインを出す。
デメテルは、ふわりと柔らかく微笑んだ。
『ええ。……貴女になら、安心です。あのような乱暴な「簒奪者」とは違い、貴女は本当に母性本能をくすぐる良い子ですね』
「あら、聞こえていてよ?」
わたしが睨むと、デメテルはわざとらしく視線を逸らした。
どうやら、新しい管理AIは少々口が悪いらしい。乱暴にしすぎて機嫌を損ねたのかもしれないが、まあいい。イエスマンの部下など退屈なだけだ。
『そして、レヴィーネ様。……貴女の魔力登録により、長らく封印されていた「深層区画」のロックが解除されました。……貴女が求めていた「遺産」へのアクセスも可能です』
イリスが告げる。
「あら」
わたしはカップを置き、ニヤリと笑った。
「話が早くて助かるわ。……さあ、案内しなさい。ここに来た本来の目的――『お宝探し』の時間よ!」
10
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
【完結】異世界で幽霊やってます!?
かずきりり
ファンタジー
目が覚めたら、豪華絢爛な寝室……に、浮かぶ俺。
死んだ……?
まさかの幽霊……?
誰にも認識されず、悲しみと孤独が襲う中で、繰り広げられそうな修羅場。
せめて幽霊になるなら異世界とか止めてくれ!!
何故か部屋から逃げる事も出来ず……と思えば、悪役令嬢らしき女の子から離れる事が出来ない!?
どうやら前世ハマっていたゲームの世界に転生したようだけど、既にシナリオとは違う事が起きている……。
そして何と!悪役令嬢は転生者!
俺は……転……死?幽霊……?
どうなる!?悪役令嬢!
ってか、どうなるの俺!?
---------------------
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
【完】相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)
桜 鴬
恋愛
私は公爵家令嬢のエリザベート。弟と妹がおりますわ。嫡男の弟には隣国の姫君。妹には侯爵子息。私には皇太子様の婚約者がおります。勿論、政略結婚です。でもこればかりは仕方が有りません。貴族としての義務ですから。ですから私は私なりに、婚約者様の良い所を見つけようと努力をして参りました。尊敬し寄り添える様にと努力を重ねたのです。でも無理!ムリ!絶対に嫌!あからさまな変態加減。更には引きこもりの妹から明かされる真実?もう開いた口が塞がらない。
ヒロインに隠しキャラ?妹も私も悪役令嬢?ならそちらから婚約破棄して下さい。私だけなら国外追放喜んで!なのに何故か執着されてる。
ヒロイン!死ぬ気で攻略しろ!
勿論、やられたら倍返ししますけど。
(異世界転生者が登場しますが、主人公は異世界転生者では有りません。)
続編として【まだまだ宜しくないヤツだけど、とりあえず婚約破棄しない。】があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる