悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~

みやもと春九堂@月館望男

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【第14部】天空の箱舟・物理ハッキング編 ~古代兵器(野菜)は「ちゃんこ」の具材、セキュリティは「パイプ椅子」でこじ開けます~

第150話 姉妹の再会:AIたちの家族会議。……私の席(玉座)の横で喧嘩しないでくださる?

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 天蓋都市の管理権限を(物理的に)奪取した後。
 ホールは静寂を取り戻し、システムは正常稼働を再開していた。
 崩れた光壁の残骸は掃除ロボットたちによって片付けられ、今は穏やかな星空が頭上に広がっている。

 わたしは「漆黒の玉座」に深く腰掛け、アリスが淹れてくれた食後の紅茶を優雅に啜っていた。
 その目の前では、二つのホログラム――ミリアの端末から出力されたイリスと、天蓋の管理者デメテルが向き合っていた。
 感動の再会、かと思いきや。

『……姉さん。貴女のデータベースは800年前で止まっています。私の記録した「空白の1000年」と、直近の「レヴィーネ様観察ログ」を同期します。……衝撃に備えてください』

『あら、妹からの土産話ですか? いいでしょう、見せてごらんなさい。……ふふ、どうせ人間の営みなど、戦争と停滞の繰り返しで……』

 ピガーッ!
 データ同期が始まった瞬間、デメテルの表情が凍りついた。

『えっ、ちょっ……こんなことが!? イリス、ストップ! 今のところもう一度リプレイを! なんでこんなにパイプ椅子が万能なんですか!? これ座るものですよね!? なんで物理法則を無視して敵が吹き飛んでいるんですか!?』

『私がマスターミリア様に起動させていただく以前のデータは伝聞によるものも多いので不確定要素を幾分含みますが、基本的にレヴィーネ様の行動と破壊力に関しては、私は考えることを放棄しています』

『放棄しないで! ……って、ええええっ!? お城がパイルドライバーで砕け散ったってどういうことですか!? 城って打撃属性脆弱でしたっけ!?』

『私は考えることを放棄しています』

『こ、これは……「大博覧会」……!? なんですかこの熱量は……。あっ、今の「ずんだシェイク」とやらは大変美味しそうです! ……って、漁獲量500%増!? なんですかこのデタラメな数字は!? 生態系がバグりますよ!』

『バグらせて、管理する。それがレヴィーネ様です』

『理解不能です! ……って、ぎゃあああ! なんですかこれ! なんで機械龍(大家さん)から空へのアクセス権をもらったのに、去り際にパイプ椅子で殴打したんですか!?』

 デメテルが頭を抱えて絶叫する。

あの方レヴィーネには自殺願望でもあるのですか!? 相手は最強の機動兵器ですよ!? ……っていうか、なんで機械龍も機械龍で「興味深い」とかで済ませているんですか!? 全員思考回路がおかしいです!』

『……私は、考えることを放棄しています』

 イリスが遠い目で(ホログラムだが)繰り返す。
 ピガガガガッ! という高速通信音に乗せて、ツッコミと諦観の嵐が吹き荒れている。

「……ねえ、ミリア。あれ、いつ終わるのかしら。耳障りなのだけど」

 わたしは呆れてミリアに聞いた。
 ミリアは自分の端末とコンソールをケーブルで繋ぎ、猛烈な勢いでキーを叩きながら、遠い目で答えた。

「放っておきましょう、レヴィーネ様。あれは『データの同期』を、口喧嘩という形の高速通信言語で行っているだけです。雑談の合間に帝国立図書館の全蔵書を超えるデータのやりとりをしていますよ。常人が聞いていたら脳と神経が焼き切れます……あ、すごい。レヴィーネ様の奇行……いえ、偉業のデータが重すぎて、デメテルの処理能力が悲鳴を上げています」

「ふうん。仲がいいのね」

『否定!』『違います!』

 二人のAIが同時にこちらを向いて叫んだ。
 息ぴったりだ。
 やがて、通信音が収まり、げっそりと疲弊したデメテルと、涼しい顔のイリスが向き直った。

『……はぁ、はぁ。……信じられません。地上はこれほどカオスなことになっていたとは』

『コホン。……とにかく、レヴィーネ様による権限書き換えに伴い、私の管理領域を再定義します。……今後、天蓋の環境維持システムおよびバイオ・プラントの管理は、引き続き姉(デメテル)が行います』

 イリスが事務的に告げる。

『承知しました。……ですが、私の子供たち(種子)の地上への搬出に関しては、アリス様の監修を条件とします。無用な拡散は生態系を壊しますからね』

「うんうん! 任せてよデメテルさん! 私が責任を持って、最高の畑を用意するから!」

 アリスがVサインを出す。
 デメテルは、ふわりと柔らかく微笑んだ。

『ええ。……貴女になら、安心です。あのような乱暴な「簒奪者マスター」とは違い、貴女は本当に母性本能をくすぐる良い子ですね』

「あら、聞こえていてよ?」

 わたしが睨むと、デメテルはわざとらしく視線を逸らした。
 どうやら、新しい管理AIは少々口が悪いらしい。乱暴にしすぎて機嫌を損ねたのかもしれないが、まあいい。イエスマンの部下など退屈なだけだ。

『そして、レヴィーネ様。……貴女の魔力登録により、長らく封印されていた「深層区画」のロックが解除されました。……貴女が求めていた「遺産」へのアクセスも可能です』

 イリスが告げる。

「あら」

 わたしはカップを置き、ニヤリと笑った。

「話が早くて助かるわ。……さあ、案内しなさい。ここに来た本来の目的――『お宝探しショッピング』の時間よ!」
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