悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~

みやもと春九堂@月館望男

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【第14部】天空の箱舟・物理ハッキング編 ~古代兵器(野菜)は「ちゃんこ」の具材、セキュリティは「パイプ椅子」でこじ開けます~

第153話 星を継ぐもの:空から持ち帰ったのは、世界を変える「種」でした

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 帰還から数日後。
 トヨノクニは、上を下への大騒ぎになっていた。
 空から船が降ってきたことへの驚きもさることながら、わたしが持ち帰った「お土産」が、国の常識を覆し始めていたからだ。

 城の厨房では、ガンテツとギエモンが「万能調理器マザーズ・キッチン」の前で、子供のように目を輝かせていた。
 彼らの目の前には、イリスとデメテルのホログラムが浮遊し、解析データを表示している。

「おい見ろギエモン! このコンロ、火を使っとらんぞ! 魔力を通すだけで鍋底だけを加熱しとる! 熱効率が100%に近い! この『誘導加熱魔術』の回路、複雑だが美しいのう!」
「うむ! しかもこのオーブン、中の湿度を一定に保つ機能がついとるわい。これならパンもケーキも失敗知らずじゃ! このセンサー技術、革命じゃ!」

 二人のドワーフは、未知の技術ブラックボックスを前に、恐れるどころか歓喜していた。
 イリスが淡々と解説し、デメテルが「壊さないでくださいね? 元に戻せる範囲でお願いしますよ?」とハラハラしている。
 かつての神話の遺産が、現代最高峰の技術者たちの手で紐解かれ、新たな技術として芽吹こうとしていた。

 一方、洗濯場では、さらに劇的な光景が広がっていた。
 ミリアが持ち帰った5台の「全自動魔導洗濯乾燥機」がフル稼働しているのだ。

「す、すごいです……! ボタンを押しただけで、洗いから乾燥まで……!」
「しかも、仕上がりがふわふわです! アイロンがいりません!」

 女中たちが洗濯機を取り囲み、拝むように手を合わせている。
 冬場の冷たい水での洗濯は、彼女たちの指を赤切れだらけにしていた重労働だ。それが、これ一台で解決したのだ。
 見回りに来た武士団の団員が、回転するドラムの中で踊る衣類を眺めながら、恍惚の表情を浮かべていた。

「ああ……回っている。妻の苦労が、水流と共に浄化されていく……。これぞ文明。これぞ福利厚生……!」

 オワリ城の天守閣では、ノブナガとイエヤスが、空に浮かぶ天蓋都市を見上げていた。

「……ミリア殿。トヨノクニは今回の件でどれほど『先』に進んでしまったのでしょう……」

 イエヤスが震える声で尋ねる。
 ミリアは眼鏡の位置を直し、冷静に答えた。

「レヴィーネ様の意志と、アリスさんの農業的手腕次第ですが……他の国、例えば帝国や王国の最新技術や最新農業と比べても、100年や200年の進化では済まないくらいにはなったと思いますよ? もはや次元が違います」

「……計算が……計算が出来ない……」

 イリスの冷静な試算を聞き、イエヤスが頭を抱えてしゃがみ込む。
 ノブナガは豪快に笑い飛ばした。

「わはは! まあ、レヴィーネのやることだからのう。……しかし、あのデカブツがずっと空にあるのは、ちと圧迫感があるな。なんとかならんもんか?」

「イリスとデメテルに相談してみます。光学迷彩とか太陽光透過迷彩とかで、なんとでもしてくれると思いますから」

「……どういうからくりかわからんが、なんとかできるもんなら頼むぞ。空に陸があるというのは、どうにも尻の座りが悪い。……それにしても、つくづく退屈しない国になったものよな!」

 ノブナガは盃を干し、楽しげに空を見上げた。

 そして、城下の実験農場。
 アリスは、泥だらけになって「種」を植えていた。
 デメテルから託された、環境適応型の古代米と野菜の種だ。

「大きくなぁれ、大きくなぁれ……」

 アリスが祈るように土を被せる。
 スマートフォンの中にいるデメテルも、画面越しに優しく語りかける。

『大丈夫ですよ、アリス様。土壌の魔力値は最適です。……この子たちは強い子です。きっとすぐに芽吹きます』

「うん。……この種が育てば、寒い冬も、日照りの夏も、誰もがお腹いっぱいになれる。……レヴィちゃんのおかげだよ」

 その横で、わたしはタカニシキのおにぎりを齧りながら、空を見上げた。
 昼間の月のように浮かぶ天蓋都市を見上げる。

「……お礼を言うのはこちらよ。……貴女がいなければ、私はただの『強盗』で終わっていたもの」

 わたしは笑い、アリスの頭についた泥を払ってやった。

「私が欲しかったのは『力』と『美味』。でも、それを『希望』に変えたのは貴女よ、アリス」

 オワリ城の3000メートル上空に、わたしたちの「冷蔵庫箱舟」がある。あそこにある全ての種を芽吹かせ、この星を「美食の惑星」にする。
 それが、わたしの新しい野望だ。

「さあ、忙しくなりますわよ。……まずはこの種を、トヨノクニ全土に、そして海を越えて世界中に広めなくては」

「うん! アリス乳業改め、『アリス農林水産省』の出番だね!」

 平和な午後。
 だが、わたしは知っていた。
 空の扉を開け、古代の叡智を地上に降ろしたこと。
 そして何より、あんな目立つ「要塞」を空に浮かべてしまったこと。
 それは、世界の均衡を大きく崩す「引き金」でもあったことを。

 懐の端末が震える。
 イリスからの緊急通知だ。

『報告。……帝国方面、および聖教国ラノリア周辺にて、大規模な軍事行動の兆候を検知。……また、世界的規模での「魔素濃度」の上昇を確認。……システム管理者開発者による、地上への干渉レベルが上がっています』

 わたしは端末を握りつぶさんばかりに強く握り、ニヤリと笑った。

「……あら。どうやら、ご飯の匂いにつられて、招かれざる客が動き出したようですわね」

 わたしは立ち上がり、ドレスの裾を翻した。
 見上げる空には、私の城。足元には、私の仲間たち。
 恐れるものなど、何一つない。

「上等ですわ。……美味しいご飯を邪魔する奴は、神様だろうが運命だろうが、まとめてへし折って差し上げます!」

 空への挑戦は終わった。
 だが、本当の戦い――世界そのものを相手取った大喧嘩は、ここからが本番だ。

 悪役令嬢レヴィーネ・ヴィータヴェン。
 彼女の覇道は、まだ始まったばかりである。



 * * *

 空飛ぶ都市、お持ち帰り成功です!

 セキュリティを物理でこじ開け、古代AI姉妹を味方につけ、最後は都市ごと地上へ引っ越し。

 これでトヨノクニの科学力は数百年進化するでしょう!

 規格外すぎる「お買い物」に笑ってしまった方は、ぜひ【24hポイント】や【お気に入り登録】をお願いします!

▼次回のレヴィーネは?

 第15部「大陸横断大工事編」。

 世界を分断する「大断裂」と「壁」をぶち抜き、経済封鎖だのなんだのを物理でぶっ壊します!

 お楽しみに!
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