悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~

みやもと春九堂@月館望男

文字の大きさ
172 / 200
【第16部】グランドフィナーレ・物理帝国編 ~神様、残業代(寿命)はいりません。この世界は最高に退屈しませんもの!~

第172話 結婚式(物理):誓いの署名は筋肉と鉄の香りがしますわ

しおりを挟む
 空気が、物理的な質量を伴って爆ぜていた。

 大陸の中央、かつて世界を分断していた「大断裂帯」。
 今やそこは傷跡ではない。古代技術と東方のからくり、そして「物理」が融合した人類の到達点、皇都アクシスだ。

 今日、皇都の象徴である「国立競技場」を埋め尽くした数万の群衆は、理性のタガを完全に粉砕していた。
 屋台からは、無料で振る舞われる特製「建国ちゃんこ鍋」の暴力的な香りが立ち込めている。
 ヒューマン、獣人、エルフ、ドワーフ。本来交わるはずのなかった種族たちが、巨大な魔導スクリーンを見上げ、歴史が確定する瞬間を今か今かと煽り立てていた。
 地鳴りのごとき歓声は、主役の登場を待たずして限界値を振り切っている。

「……素晴らしい轟音ですわね。まるで、これから世界を壊しにいく興行メインイベントの前のようですわ」

 窓ガラスがびりびりと震え続ける控室で、わたしは鏡を見つめた。
 最高級の純白ドレス。だが、その布地を内側から押し留めているのは、鋼のごとき「筋肉」だ。
 清楚な白が、ドレスの下に秘められた「ドス黒い暴力」を、皮肉にも鮮明に際立たせていた。

「はぁ……レヴィーネ様、最高です。最高に『映えて』います。ああ、やはりこの大胸筋の光沢、広背筋の隆起……私の計算通り、いえ、計算を遥かに超えた神々しさです……!」

 背後で、冷徹な宰相面をパージしたミリアが、うっとりとした声を漏らす。プロの手つきで、ドレスの乱れを修正しながら。

「ちょっとミリア、鼻息が荒いわよ。……それに、さっきからドレスの裾を直しすぎじゃない?」

 わたしが呆れて振り返ると、ミリアは狂信的な微笑みを浮かべた。

「当然です。今日のレヴィーネ様は、世界という市場における『究極の正解』なのですから。一ミリの乱れも、一ミクロンの損失も許されません。……ああ、アレクセイ様には勿体なすぎます。いっそこのまま、私とアリスさんでレヴィーネ様をどこかへ連れ去ってしまいたいくらいですよ」

「レヴィちゃん! わあ、すごい……本当にお姫様……いや、女帝様だね! レヴィーネ陛下、本日の意気込みを一言!」

 いつの間にか隣に来ていたアリスが、聖女の杖をマイク代わりに差し出しながら笑った。彼女も最高礼装だが、中身は相変わらずだ。

「そういえばさ、レヴィちゃん。……アレクセイ殿下……あ、もう殿下じゃないんだっけ? あ、でもレヴィちゃんのお婿さんになるんだから王配殿下? そうなるとやっぱりアレクセイ殿下、でいいのかな……?」

「どちらでもいいんじゃない?……彼自身は『作業員』を自称しているけど。アレクセイ様、と呼べば間違いはないんじゃないかしら」

 わたしが苦笑すると、ミリアはスッと眼鏡の位置を直し、本来の顔に戻った。

「アレクセイ殿下といえば……。レヴィーネ様……あの貴族院での、身勝手な追放劇からここまで、本当によく走ってきましたね」

 ミリアの声に、戦友への深い情愛が混ざる。アリスもまた、わたしの手をギュッと握りしめた。

「うん。……全部、レヴィちゃんが椅子ひとつでブチ抜いてくれたおかげだね。私、レヴィちゃんに出会えて、本当によかったよ」

 わたしは二人の顔を見て、ふっと笑みをこぼした。
 この「黄金のトライアングル」の温度だけは、三人で帝国を出てから少しも変わっていない。

「……ええ。だけど、ここからが本番よ。さあ、わたしたちの『国』を、文字通り物理的に盤石なものにするわよ」

 わたしは不敵に笑い、重厚な扉を、指先ひとつので押し開いた。

 会場は、元天蓋都市の中枢ビル。
 本来なら厳粛であるはずの式典会場だが、防音壁をも透過する数万の民衆の「熱」が、室内の空気を振動させている。
 そこに座す大陸の支配者たち――「証人」たちもまた、その熱に浮かされ、獰猛な笑みを浮かべていた。
 これは「平和条約」の調印式ではない。最強の猛者たちが同盟を結ぶ、血の誓いの儀式だ。

 司式を務めるラノリア王ギルベルトが、外の轟音に負けない声を張り上げた。

「これより、婚姻の儀、および大陸共同体条約の調印を執り行う! ……証人たちよ、前へ! 民衆の叫びを聞け! その熱量に応え、其方らの意志を歴史に刻み込むのだッ!」

 最初の証人が立ち上がる。ガルディア帝国第一皇女。
 彼女が姿を現すと、スクリーン越しの民衆から「帝国万歳!」のコールが巻き起こる。

「おめでとうございます、レヴィーネ陛下。……アレク、皇籍を捨てると言い出した時はどうなるかと思ったけれど、今のあなたは誰よりも強く、雄々しい顔をしているわ」

 彼女は万年筆を取り、わたしたちの前へ歩み寄った。

「貴族院のサロンであなたと初めて出会った十年前。あの令嬢が、まさか世界を繋ぐ女帝となられるとは……。父上、兄上からも祝辞を預かっています。……ガルディア帝国は、貴女方二人を祝福いたします」

 ペンが紙を走る。書き終わると同時、ドォォォォンッ!! とスタジアムが揺れる。
 その余韻を切り裂き、豪快に椅子を鳴らして立ち上がったのは、我が祖父マラグだ。

「ガッハッハ! か細い声援などいらぬ! もっと叫べ、もっと喉を枯らせ! 今日は我が孫娘が、星の頂点に立つ日ぞ!」

 マラグはアレクセイの肩を、並の戦士なら即死しかねない力で叩いた。アレクセイが顔色一つ変えずにそれを受け止めると、マラグはさらに破顔した。

「良い体幹だ、アレクセイ! お前が孫娘の『楔』になるというのなら、わしも武人として、一人の男としてお前を認めよう。存分にこの星を耕してこい! ……北のハニマルは、お前ら二人を祝福するぞッ!」

 署名がなされるたび、歓声のボルテージは階段を登るように上がっていく。
 続いて、ギルベルト自身も教皇としてのペンを執った。

「筋肉がもたらす揺るぎない力と、陛下がこの大陸に示した圧倒的な速度! それこそが、迷える衆生を導く新たな福音となるでしょう!」

 彼はアレクセイの瞳を見つめ、力強く頷いた。

「アレクセイ殿、君が彼女を支えるその背に、聖なる加護があらんことを。……聖教国ラノリアは、貴女方二人を祝福いたします!」

 四人目。不敵な笑みを隠そうともせずに歩み出たのは、トヨノクニの天下人、ノブナガだ。
 彼がスクリーンに映った瞬間、東方の民たちから割れんばかりの歓声が上がる。

「カッカッカ! 良い熱気だ! この狂乱こそが、新しい時代の産声よ! 貴様が敷く鉄の路、余の天下を走らせるのが今から楽しみだ。古い理を轢き殺し、退屈な世界を物理で塗り替えろ!」

 ノブナガは、軍記物に判を捺すかのような鋭さで署名を終えた。

「……トヨノクニは、お主ら二人を祝福しよう!」

 そして最後の一人。大森林の女王エルウィンが、親友のアリスを伴って優雅にペンを取る。彼女はわたしの隣で、興奮を隠しきれない様子で囁いた。

「……アリスと共に、私も認めよう。おぬしらは、この大陸の緑を、そしてすべての命を繋ぐ『庇護者』じゃ。……それにしても、なんという熱狂じゃ。森では決して味わえぬ、命の奔流を感じるのう」

 エルウィンは、署名をしながら、ふと鼻先を動かした。

「……ところでレヴィーネ、この凄まじい熱気の向こうから、あの『ずんだ』の香りがするのじゃが……気のせいか?」

 わたしは、噴き出しそうになるのを必死で堪えた。
 エルウィンは満足げに居住まいを正し、凛とした声で締めくくった。

「……エルフの里と大森林は、大世界樹とともに、貴女方二人を祝福しようぞ」

 すべての署名が終わった。
 部屋の温度はサウナのように上がり、外の歓声はもはや音ではなく、肌を叩く衝撃波となって空間を支配していた。

「最後に!! 当事者二名の署名をッ!!」

 ギルベルトの叫びが、導火線に火をつけた。
 わたしは、隣に立つアレクセイと視線を交わした。かつての帝国第二皇子。「現場監督」としてわたしの前に現れた男。

 彼は静かに、わたしの前で片膝を突いた。その瞬間、民衆の叫びが一瞬だけ、さらに一段階跳ね上がる。
 その動作は、騎士の礼というよりは、これから始まる果てしない「労働」への覚悟を秘めたものだった。

「……改めて誓おう、レヴィーネ。私は今日、帝国という殻を完全に脱ぎ捨て、君という女帝に仕える最も頑丈な『楔』になる。大陸の果てまで、君の覇道を支え続けるよ、陛下」

 わたしは、漆黒の万年筆を手に取った。この一本のペン先が、今、大陸全ての「理不尽」を書き換えようとしている。

「……一生などという、生ぬるい言葉は不採用ですわ。わたくしがこの世界に飽きるまで、永遠に働きなさい。これは雇用契約であり、運命のタッグマッチ。逃げることは許しませんわよ?」

 わたしは羊皮紙に、自らの名を力強く刻みつけた。ペン先が紙を削る音が、魔導マイクを通じて民衆の心臓を叩く。

「望むところだ、陛下」

 アレクセイが、わたしの署名のすぐ隣に、自らの名を記した。
 書き終えた、その刹那。

「「「レヴィーネ陛下万歳!!!! アレクセイ殿下万歳!!!!」」」

 理性のタガも、計測器の針も、すべてが吹き飛んだ。
 数万の民衆が一斉に拳を突き上げ、歓喜の叫びを上げている。それは祝福の声であると同時に、新しい時代の幕開けを告げる「ゴング」の音色であった。

 わたしは、アレクセイの手を強引に引き、彼を立ち上がらせた。そして、カメラの向こう側にいるすべての民に向けて、不敵な笑みを浮かべて言い放った。

「連邦皇国国民諸君! よくぞ吠えました!! この国に足りなかった『優秀な政治家』は手に入れましたわ! これであなたたちの生活を支えるインフラ整備は、さらに加速しますわよ!!」

 わたしは、高らかに鉄扇を開いた。

「腹を空かせて待っていなさい。わたくしがすべての理不尽を轢き殺し、最高のご飯を届けて差し上げますわ! ――わたくしの支配する世界リングへ、ようこそ!」

 熱狂の渦は留まることを知らない。祝福の鐘さえも歓声にかき消されそうだ。
 鉄と筋肉、そして飽くなき食欲が支配する、新しい時代の「汽笛」が鳴り響いていた。

「……ふふ、陛下、完璧です。今のスピーチで、支持率がさらに跳ね上がりました。……さあ、レヴィーネ様。お仕事結婚式はおしまいです」

 ミリアが、いつの間にかわたしの隣で、いたずらっぽく耳打ちしてきた。

「お祝いのちゃんこ、冷めないうちに平らげに行きましょう。ずんだも、これでもかってくらい用意させましたから……ずんだに埋もれたいというエルウィン様の願いも、厨房が叶えてくれるはずです」

「ええ。行きましょう。アレク、遅れないでくださいませ?」

 わたしが振り返ると、アレクセイは苦笑しながら、しかし確かな信頼を瞳に宿して頷いた。

「ああ。君の覇道と食欲に追い付くのは大変そうだが、死ぬ気でついていくよ」

 わたしたちは、証人たちの拍手と、民衆の絶叫に包まれながら、新時代の扉を物理的に押し開いて進む。
 悪役令嬢レヴィーネ・ヴィータヴェンの、本当の意味での「建国」が、今ここに始まった。

◆◆◆

 熱狂冷めやらぬまま、民衆が待つバルコニーへ向かおうとしたその時だった。
 会場の空気が、不穏なアラート音によって切り裂かれた。

『――警告。緊急事態発生』

 懐の通信機からイリスの声が響き、同時に会場のスピーカーからデメテルの補足アナウンスが流れる。

『重大な式の途中に申し訳ありません。東の方角にワイバーンの群れを検知しました。皇都アクシスの方向に向かってきています』

 大回廊の敷設を終え、大断裂帯に蓋をしたとはいえ、世界から魔素が完全に消えたわけではない。いまだその残り香に引かれ、魔獣が現れることは珍しくなかった。
 民衆の歓声が一瞬どよめきに変わるが、そこに悲壮感はない。「今度は何が起きるんだ?」という、更なる興奮への期待すら混じっている。

『周辺のキャラバンには重大な被害が出る可能性があります』

「やれやれ……。国というものは、都市を作っておしまいというわけではないのが厄介だね」

 隣でアレクセイが、呆れたように、しかしどこか楽しげに肩をすくめた。

「今日という日くらい、『めでたしめでたし』で終わらせてくれてもいいと思うんだがね」

「ふふっ、わたくし達らしくていいじゃありませんか?」

 わたしはドレスの裾を翻し、ニヤリと笑った。退屈な式典の締めくくりには、極上のスパイスだ。

「イリス、デメテル、ワイバーンの情報の詳細を。――わたくしが直接出ますわ」

 その言葉に、会場にいた武闘派たちが即座に反応した。

「ガハハ! 待てレヴィーネ! 花嫁が動く必要はない! ワシがひと揉みで叩き落としてきてやる!」

 祖父マラグが豪快に立ち上がり、拳を鳴らす。

「いいえ、私が! 筋肉神官団を待機させています! 姐さんの晴れ舞台を汚す害虫は、私が駆除します!」

 ギルベルトもまた、上着を脱ぎ捨てて筋肉を誇示する。
 だが、わたしは鉄扇をパチンと鳴らし、彼らを制した。

「お待ちになって。お祖父様も、ギルも、下がっていてくださいな」

「な、何故だ!? 遠慮はいらんぞ!」

「遠慮ではありませんわ。皆様は今日、『国賓』としてお招きしたのです。ゲストに頼るわけにはいきません」

 わたしはバルコニーの向こう、なおも熱狂し続ける数万の民衆と、その中に混じる諸外国の商人たちの気配を感じながら、断言した。

「それに……今日というこの日に、国立競技場に集まっている国民達や諸外国の商人達に、わたくしたち初代女帝と王配という存在を改めて知らしめる必要がありますの」

 わたしはアレクセイと視線を交わす。彼もまた、覚悟を決めた瞳で頷いた。

「この国は、誰の庇護も必要としない。……わたくしとアレクセイ、この二人が揃えば、どんな災厄も『物理』でねじ伏せられるのだと、証明しなくてはなりませんわ」

 そう。これはただの迎撃ではない。建国最大の「デモンストレーション」なのだ。
 世界最強の武力と、それを支える魔導。その両輪が揃っていることを世界に見せつける、絶好の機会(チャンス)。

「……ふむ。花を持たせる、というわけか。良いだろう、見ていてやる!」

 マラグが満足げに座り直す。
 わたしはイリスとデメテルに指示を飛ばした。

「イリス、デメテル! ばっちり生中継を頼むわよ! ……アレク、共同作業ですわよ!」

「ああ! ケーキ入刀の代わりには、少し大きすぎる相手だがね」

 わたしたちは転移魔法の光に包まれ、一瞬にして上空へと跳躍した。
 眼下には、皇都を狙って滑空するワイバーンの群れ。その数、およそ二十。
 強風がドレスを煽るが、わたしは足元に展開された魔力の足場をヒールで踏み砕き、さらに加速した。

「ごきげんよう、招かれざるお客様! お祝い代わりの『一撃』、受け取っていただきますわよ!」

 わたしは影から、愛用する「漆黒の玉座オリジン」を引き抜いた。

 ズヌゥ……ッ!

 結婚式だからといって、純白にするつもりはない。このドス黒い鈍器こそが、わたしのアイデンティティ。

「アレク、逃がさないでくださいまし!」

「了解! 『氷結結界アイス・プリズン』!」

 アレクセイが詠唱と共に手をかざすと、ワイバーンの群れの周囲の大気が一瞬で凍結し、見えない檻となって彼らの動きを阻害した。
 逃げ場を失い、混乱する魔獣たち。その脳天に向けて、わたしは重力を味方につけたフルスイングを叩き込む。

「――消えなさいッッ!!」

 ドゴォォォォォンッ!!!

 鈍い音がした直後、生肉と鋼鉄が衝突する暴力的な衝撃音が響き渡った。
 先頭を飛んでいたリーダー個体が、わたしの椅子の一撃を受けて、隕石のように垂直落下していく。
 続けて、アレクセイの放った「焔創剣」が、残りの群れを正確に焼き払い、あるいは「氷壊槍」が翼を貫いた。

「ナイスアシストですわ、あなた!」

「君のインパクトも強烈だったよ。……さあ、仕上げだ!」

 わたしたちの連携攻撃は、わずか数十秒で空の脅威を排除した。
 黒煙を上げて荒野に落下していくワイバーンの山。それを見下ろしながら、わたしは満足げに椅子を肩に担いだ。
 スクリーン越しに見ていたであろう民衆の歓声が、ここまで届くような気がした。

 そして、数時間後。
 国立競技場は、先程までの厳粛な式典会場から、巨大な「野外レストラン」へと変貌していた。
 香ばしい肉の焼ける匂いと、食欲をそそるスパイスの香りが充満している。

「さあさあ、連邦皇国国民諸君! 祝いの膳です! 空からの恵み、心ゆくまで味わってくださいまし!」

 わたしが高らかに宣言すると、屋台から次々と料理が振る舞われた。
 メインディッシュは、もちろん先ほど撃墜されたばかりの新鮮なワイバーン肉だ。
 資源の無駄遣いは許さない。襲ってきたミートは、美味しくいただくのがこの国の流儀だ。

「へいお待ち! 『ワイバーンのピリ辛スタミナちゃんこ鍋』だ!」

「こっちは『ワイバーンモモ肉のケバブ』だぞ! 焼きたてだ!」

「『ワイバーンカレー』に『タンドリーワイバーン』もあるぞ!」

 アクシス国民と訪問客たちは、魔獣の肉というゲテモノへの恐怖など微塵もなく、「美味い!」「力が湧いてくる!」と貪り食っている。これも長年の啓蒙活動(物理)の成果だろう。
 一方、肉を忌避するエルフ族のテーブルには、東の大回廊を通じてトヨノクニから緊急輸送された、色鮮やかな料理が並んでいた。

「おお……! これは『ずんだ餅』に『ずんだシェイク』! それに『豆乳ちゃんこ』に『ベジタリアンカレー』まであるぞ!」

 森の女王エルウィンが、目を輝かせて震えている。その威厳ある表情は崩壊し、ただのスイーツ好きの乙女になり果てていた。

「これじゃ……! わらわが求めていたのは、この緑の宝珠じゃ!」

 エルウィンをはじめとするエルフ族たちが、ずんだの甘みと豆乳のコクに骨抜きにされ、大満足の笑みを浮かべている。
 その光景を見渡しながら、わたしは特製ちゃんこ(ワイバーン入り)をよそった椀を手に、アレクセイと乾杯した。

「……平和ですわね」

「ああ。君らしい、騒がしくて美味しい平和だ」

 わたしたちは顔を見合わせ、笑い合った。
 こうして、ヴィータヴェン・アクシス連邦皇国の歴史は、爆発と筋肉、そして世界中の人々を笑顔にする「美食」と共に、華々しく幕を開けたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

【完結】異世界で幽霊やってます!?

かずきりり
ファンタジー
目が覚めたら、豪華絢爛な寝室……に、浮かぶ俺。 死んだ……? まさかの幽霊……? 誰にも認識されず、悲しみと孤独が襲う中で、繰り広げられそうな修羅場。 せめて幽霊になるなら異世界とか止めてくれ!! 何故か部屋から逃げる事も出来ず……と思えば、悪役令嬢らしき女の子から離れる事が出来ない!? どうやら前世ハマっていたゲームの世界に転生したようだけど、既にシナリオとは違う事が起きている……。 そして何と!悪役令嬢は転生者! 俺は……転……死?幽霊……? どうなる!?悪役令嬢! ってか、どうなるの俺!? --------------------- ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

【完】相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)

桜 鴬
恋愛
私は公爵家令嬢のエリザベート。弟と妹がおりますわ。嫡男の弟には隣国の姫君。妹には侯爵子息。私には皇太子様の婚約者がおります。勿論、政略結婚です。でもこればかりは仕方が有りません。貴族としての義務ですから。ですから私は私なりに、婚約者様の良い所を見つけようと努力をして参りました。尊敬し寄り添える様にと努力を重ねたのです。でも無理!ムリ!絶対に嫌!あからさまな変態加減。更には引きこもりの妹から明かされる真実?もう開いた口が塞がらない。 ヒロインに隠しキャラ?妹も私も悪役令嬢?ならそちらから婚約破棄して下さい。私だけなら国外追放喜んで!なのに何故か執着されてる。 ヒロイン!死ぬ気で攻略しろ! 勿論、やられたら倍返ししますけど。 (異世界転生者が登場しますが、主人公は異世界転生者では有りません。) 続編として【まだまだ宜しくないヤツだけど、とりあえず婚約破棄しない。】があります。

処理中です...