エイミーとマンホール下のハロウィン界

Haru

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第19章

【悔い無き冒険】

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やっぱり、液体は未完成のままだった。
無事、魔物の再生を阻止することに成功したのだ。
エイミー達は液体を処理し終え、城の外に出た。
エイミーは思いっきり空気を吸い込んだ。
久しぶりに外に出たようで、新鮮な空気だった。

アナベラは、ほうきを取り出してなにやら呪文を唱えた。
すると、ほうきが宙に浮かんだ。

アナベラは、丸いオレンジ色のランプをドクロに渡した。

「この世界には朝が無いからね。
ドクロ、暗闇の中でも安全なように、その斧と一緒にぶら下げていておくれ。
おまえは長身ででっかいからランプの灯りがちょうどいい位置になるだろう。
後ろ側にまたがってくれると助かる」

「ああ、分かった」

ドクロはアナベラからランプを受け取ると頷いた。

アナベラは先頭にまたがると、エイミー達に手招きしながら言った。

「さあ、全員あたしの後ろに乗りな。
最後の冒険は、空の旅だよ」

エイミー達は順にアナベラのほうきにまたがった。

「準備はいいかい?
しっかり掴まっているんだよ!
落ちたら命の保証は無いからね!」

アナベラはエイミー達を確認し、釘をさすように言った。

エイミー達が頷くと、アナベラはまた呪文を唱えた。

すると、ほうきが空高く浮かび上がった。

エイミーは幼い子供のようにはしゃいだ。
今まで冒険してきたハロウィン界の景色が、空の上から広々と見渡せた。
魔女のほうきに乗って空を飛ぶだなんて、あまりに非現実的で、夢のようだった。
空飛ぶほうきは、ロンのいる時計屋の方角に向かってスピードを上げて飛び出した。

どれだけ飛び続けたことだろう。
ふと、キルが口を開いた。

「なあエイミー、さっきのイナベラとの戦いの時、1度諦めかけただろう?
その後の動きを見ていたら、10年ほど前の…幼き日のエイミーを思い出したよ。
時間が巻き戻ったみたいだった。
それで気になったんだ。
俺の言葉が届いたのか?
……つまり、記憶が元に戻ったのか?」

エイミーは、少し考えてから答えた。

「私も、この冒険が終わるまでには記憶が元に戻って、あなた達のことを思い出せると願っていたわ。
さっき私が立ち上がることが出来たのは、私が幼い日…初めてこの世界に迷い込んだ時の記憶が、元に戻ったわけじゃないの」

そして一呼吸置いて続けた。

「ただ、あなたの言葉を聞いた瞬間、感覚が蘇った気がした。
あの剣を、過去にも握ったことのあるような感覚になったわ。
ジャック達のことも、アナベラのことも、キル…あなたのことも、どこか懐かしいような気がしたの。
それで私は私の心に打ち勝つことが出来た。
ありがとう」

キルは納得したように頷いた。

泣き虫なフレディが今にも泣き出しそうに表情を歪めて言った。

「あとたった1度の鐘が鳴ったら、同時に時計の修理も終わって、エイミーはまたあの時と同じように跡形も無くこの世界から消えてしまうんだね。
僕達はずっと覚えていることが出来るけど、エイミー自身の記憶は全て無くなっちゃうんだ……。
ねえ、エイミー。一緒にいたかった」

エイミーは少し俯いて、考えた。

ーこの世界にはこの世界の掟がある。
私の住む人間界と同じように。
それは私の力ではどうにもならない事だ。
冒険を繰り広げる中で、ドクロ、そしてアレクにも教えてもらった。
それでも忘れたく無い。
ジャック達はずっと覚えていてくれるだろう。
それなのに私だけがこのかけがえのない冒険の想い出を忘れてしまうなんて、哀しい。
それでも私には帰るべき場所がある。
居場所がある。

エイミーが考え終わったところで、ジャックが静かに口を開いた。

「もうすぐ、5度目の鐘が鳴る……」
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