初恋の先へ

咲 カヲル

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通信鏡を受け取り、アスベルトが、胸ポケットにしまうと、モーガンは、嬉しそうに瞳を細めた。

「とりあえず、公爵達の力を借りて、神殿や神官を調べることになったんだ」

「あ~だから、タラス公も呼び出したのか。これから、大変だね」

「そうだね…婚約のこと、僕から父上に伝えてみるよ」

「本当!?」

キラキラと瞳を輝かせて、パーっと明るい笑顔を浮かべて、アスベルトが、顔を近付けると、モーガンは、苦笑いを浮かべながら、一歩後ろに下がった。

「ただ、破棄できるかは分からないよ?父上も母上も、リリアンナが、好きみたいだから」

「それなら仕方ないか。とりあえず、婚約式は、延期になるでしょ?」

「そうだね。ありがと」

嬉しそうに微笑むモーガンに、アスベルトも、瞳を細めて、優しく微笑むと、その肩に腕を回した。

「ところで、アルベル公は?」

「アルベル公なら、リリアンナの所だよ」

皇后と楽しそうに話してるリリアンナの向かいに座り、ニコニコと笑ってるアルベル公爵を肩越しに、チラッと見てから、アスベルトは、モーガンに顔を寄せた。

「あのさ、アルベル公って、何が好きとか分かる?」

「さぁ?」

頬をポリポリと掻きながら、モーガンが、困ったように笑うと、アスベルトは、乱暴に頭を掻いた。

「だよね。あの人、掴みどころがなくて、正直、なんにも分かんないんだよねぇ」

「それなら、二人に聞くほうが、いいんじゃないかな?」

モーガンが手で促すと、アスベルトは、目の前で、息子を抱える二人に視線を向けた。

「三人は、幼少期からの仲だから、二人の方が、僕よりも知ってるだろうし。それに、エルテル公は、こう見えても、女性の好みも熟知してるから」

「そうなの?」

「恋愛や女の事なら、キースに聞けば、大体は、なんとかなる。俺も、シューベルスも、その辺の事は、からっきしで、キース頼みだったからな」

「ご享受、お願いします」

アスベルトが頭を下げると、エルテル公爵は、フンと鼻を鳴らした。

「タダでは、教えられないね。とりあえず、殿下の知ってる帝国式魔法術、その魔法具の設計構成、帝国が所有している魔法具の詳細、それらを全て話してくれるなら、教えてもいいが」

「…それだけ?」

パチパチと、何度も瞬きをして、コテンと、不思議そうに、首を傾げたアスベルトを見て、エルテル公爵は、瞳を大きく開いた。

「本当に、それだけでいいの?」

「まぁ、とりあえずは。だが、無理にとは」

「無理でもなければ、普通に、全部開示出来るけど?」

エルテル公爵が、ポカンと、口を半開きにして固まると、アスベルトは、モーガンに視線を向けた。

「サイフィスでは、エルテル公が、言ってたことは、全て、国王の許可がないと、開示できないんだよ」

「そうなんだ。そうなると、開示するにも、手続きや選考なんかもあるんだね?」

「そう。エルテル公は、国王の許可が出た情報を開示するときに、書類選考や文章制作する大臣職に就いてるんだ」

「なるほどね」

「ついでに、タラス公は、サイフィスの五つある騎士団の全てをまとめる統括職で、アルベル公は、この国の宰相職なんだよ」

「あ…なんか、アルベル公に、バレた理由が分かった」

「皇太子殿下の本性なら、すぐに気付いてたよ」

「…タラス公も?」

表情も変えず、首を傾げたエルテル公爵から、アスベルトが、視線を移すと、タラス公爵は、困ったように、ニカッと笑った。

「悪いな。仕事柄、色んな奴見てきたからさ」

「そんな…上手くできてたと思ったのに」

「大丈夫だよ。父上は、どうか分からないけど、母上達は騙せてるから」

「僕の狙いはそこじゃないの!」

悔しそうに、地団駄を踏むアスベルトを見て、モーガンは、一瞬、驚いたように、瞳を大きく開いたが、ケタケタと、大きな声で笑った。

「本当の殿下は、凄く素直なんだね」

「まぁね」

ニカッと笑うアスベルトを見つめ、モーガンは、寂しそうに、瞳を細めながら、小さく微笑んだ。

「いつか、リリアンナのように、僕も、愛称で呼べたらいいな」

「別に、呼んでいいよ」

モーガンが、パチパチと、何度も瞬きをすると、アスベルトは、大きなため息をついた。

「ウィルセンだと、みんなして、僕のこと、坊っちゃんって呼ぶんだよ。それに比べたら、愛称で、呼ばれたほうが、まだいいよ」

「その年で坊っちゃん」

「ちと、キツイな」

「でしょ?やめろって言ってんのに、聞いてくれないし」

「でも、愛されてる感じがするね。僕なんか、ずっと、王子か殿下って呼ばれてるし」

「親は、愛称で呼んでくれるでしょ?」

「さぁ?記憶の中では、呼ばれたことないかな」

「まるで他人だね。二人は?流石に、屋敷だと呼ぶでしょ?」

「この国じゃ、男親は、ほとんど愛称を呼ばないし、男児になると、母親が、小さい時に使うくらいで、ある程度になったら、呼ばれねぇよ」

「そっか。だから、アルベル公も、リリのこと、愛称じゃなかったんだ…てか、モーガン殿下の愛称って、なに?」

「確か、ガンだったと思うけど」

「なら、これからは、ガンって呼ぶよ」

ニカッと笑ったアスベルトを見つめて、モーガンは、キラキラと瞳を輝かせた。

「ありがとう。アス」

互いに、ニコッと笑うのを見て、二人は、安心したように微笑んだ。

「んじゃ、俺らは、そろそろ、お暇するぞ。このバカ息子の事もあるからさ」

「モーガン殿下は、どうしますか?」

「僕は、もう少し居るよ。アスの義妹イモウトも見てみたいから」

「あまり、遅くならない内に、お帰り下さいね?」

「分かってるよ。ありがとう」

アスベルトとモーガンが、笑いながら、ガゼボに向かうのを見送り、エルテル公爵とタラス公爵は、それぞれ、ローデンとデュラベルを抱えたまま、馬車に向かった。

「あの年で、ありゃ相当だな」

「あぁ。かなりの修練を積んでるようだね。出来れば、敵に回したくない」

「あのまんま、仲良くやってくれんなら、万々歳なんだけどなぁ」

「それには、この子らをなんとかしなければ」

「それな。一番の問題が、自分の子供だなんて、なんだかぁ」

「仕方ないことさ」

「だな。んじゃ、またな」

「あぁ。気を付けて」

それぞれの馬車に乗り込み、ガタガタと揺られながら、公爵達は、屋敷に向かった。

『一番右側の紐で、他の紐をまとめるようにクルッとして、下から輪っかみたいになってる隙間に紐を入れて、詰めるようにして引いて。そうそう。そしたら、同じように、ずっと編んでいくのよ。上手ね』

「…これは、どうゆう状況?」

カップや皿に混ざり、色鮮やかな紐や鉱石、小瓶や小さな蓋付きの容器、更には、シルクやレース、リボンや刺繍セットなど、様々な物が散乱していた。

「殿下の母君のおかげだよ」

疲れたように額に触れ、アルベル公爵が、皇后に視線を向けると、アスベルトは、大きなため息をついた。

「母上。これは、一体、どうゆうこと?」

『あら。もう戻ったの?早かったのね』

「アス、おかえりなさい」

パーっと明るい笑顔を向けたリリアンナに、アスベルトは、眉間にシワを寄せながら、目尻を下げて、怒ったような、困ったような、複雑な顔をした。

「この通信鏡って、すごいのね?小さな物なら、すぐ相手に届くなんて」

「魔力が使えればね。教えてなかったよね?」

「お義母さんに、教えてもらったの」

「そう。ちゃんと送れた?」

「リボンやコサージュなら、送れるようになったわ」

〈チョキン〉

紐編みを作り上げると、リリアンナは、通信鏡の上に置いて、包むように触れた。
スーッと光を放つと、通信鏡の中に、出来上がった紐編みが吸い込まれ、静かに光が消えた。

「どうです?」

『リリちゃん、凄く上手よ。これなら、贈り物にしても、恥ずかしくないわよ』

「やった」

『ちょっと、教えただけなのに。ホント凄いわね』

「ありがとうございます」

リリアンナが、嬉しそうに笑ってるのを見て、アルベル公爵は、眉尻を下げながらも、嬉しそうに微笑んだ。

「リリ、そろそろ、終わりにしないかい?」

『そうね。そろそろ、暗くなるものね』

「…まだ、やりたいです」

「リリアンナ、アスも、そろそろ、離宮に戻らないと、色々と問題になっちゃうから」

プクッと頬を膨らませて、唇を尖らせたリリアンナを見て、モーガンも、ポリポリと、頬を掻きながら、困ったような、嬉しいような微笑みを浮かべた。

「リリ、覚醒したばかりの魔力で、何回も、通信鏡に物を通してたら、明日が辛くなるよ?」

「どうして?」

「覚醒したばかりの魔力は、とても不安定なんだ。何回も使ってたら、体に負担が掛かるんだよ」

『アス、リリちゃんを甘くみない方がいいわよ?魔力、かなり安定してるから』

「…確かに」

ジーッと見つめ、納得したようだが、不思議そうに首を傾げたアスベルトに、リリアンナは、不安そうでありながら、安心したような、複雑な顔で、首を傾げた。

「本当?」

「本当だよ?さっきまで、かなり乱れてたのに…何かしたの?」

「アスが教えてくれたみたいに、手じゃなくて、足元から、拾って、回して、流してっしてみたの」

リリアンナが、嬉しそうに、瞳を細めて、優しい微笑みを浮かべると、アスベルトと皇后は、驚いて、瞳を大きく開いた。

「そしたら、ずっと、体があったかくて、羽が生えたみたいに、軽くなって、なんだか、元気になったの。だから、もっと色んなこと、教えてほしいなって。もっと、色んなことしたいって、思ったの」

リリアンナが、花が咲いたような笑顔を見せると、アスベルトは、薄っすらと、頬を赤くしながら、困ったように微笑んだ。

「リリは、本当に凄いね」

『ホントね。リリちゃんなら、通面鏡トウメンキョウも使えるかもしれないわね』

リリアンナが首を傾げると、皇后は、ニコッと笑った。

『通面鏡を使えたら、好きな時に、好きなだけ、ウィルセンに来れるわよぉ?』

リリアンナの瞳が、一段とキラキラと輝き、三人は、視線を合わせて、小さく微笑みながら、フッと、鼻で小さなため息をついた。

「母上。それは、アルベル公の了承も必要でしょ?」

『大丈夫よ。リリちゃんのお願いなら、アルベル公爵だって、断れないでしょ』

「パパ」

リリアンナが、キラキラと輝く瞳で、真っ直ぐ見つめると、アルベル公爵は、両手を上げて、苦笑いを浮かべた。

「リリの好きにしなさい」

「ありがとう!パパ大好き!」

胸の前で指を組み、本当に嬉しそうに笑うリリアンナを見て、アルベル公爵は、ほんのり頬を赤くして、小さく頷いた。

『リリちゃんが欲しいなら、送ってあげるわよ?』

「欲しいです」

『いいわよぉん。後で、アスの所に送るから、頃合いを見て設置してあげてね?』

「分かったよ。ところで、通面鏡って、結構大きいけど、置けそうな場所ある?」

リリアンナが首を傾げると、アスベルトは、座りながら、眉尻を下げて、困ったように微笑んだ。

「姿見よりも大きいんだ。公爵とリリが、並んでも大丈夫なくらいあるかな。実寸が知りたいなら、今、僕が使わせてもらってる離宮にもあるから、見に来る?」

「いつの間に?」

「持って来たんだ」

「あ~だから、あんな大荷物だったんだね?」

「そう。城だったら、どうしようかなって、ちょっと悩んだけど、離宮に通されたから、普通に使ってるよ」

「…もしかして、行き来してる?」

「そうだけど?」

モーガンとアルベル公爵が、一瞬、キョトンと、間の抜けた顔をしたが、ハハハと、同時に、声を出して笑った。

「なるほどね」

「余程、リリに会いたかったようだな」

リリアンナと視線を合わせて、アスベルトが首を傾げると、二人は、ふぅ~と息を吐き出してから、静かに微笑んだ。

「アルベル公、出来れば、力を貸して欲しいんだけど」

「出来る限り、ご協力しますが、こればかりは、殿下が、どうにかしなくて頂かないと、私だけでは、なんともなりませんよ」

「そうだね…できるかな?」

「今から弱気になっていては、出来ることも出来なくなりますよ」

「そうだね。ありがとう、アルベル公」

「いえ。申し訳ございません、モーガン殿下」

視線を合わせて、クククッと、小さく笑う二人を見て、アスベルトとリリアンナは、首を傾げた。

『…ママ~?クッキー焼いてみたんだけど。あれ?パパは?』

『今、調べ物中よ。そうだ。キア、ちょっと、こっち来て』

〈ザザッ〉

皇后の隣に、黒髪を後ろに結ったキアナ・ダルトン・ウィルセン皇女が座った。

『アスが言ってたお嫁さんの話、覚えてる?』

『どっか、国政が傾いた隣国に、いるんだとか言ってたやつ?』

『サイフィスに居たのよ』

『うそだぁ~』

『ホント、彼女が、そのお嫁さんなんだって』

皇女のハイグレーのように見えるが、薄い桃色の瞳が向けられ、リリアンナは、ニコッと笑った。

「初めまして。リリアンナと申します。リリと呼んで下さい」

『キアナです。キアと呼んで下さい』

ジーッとリリアンナを見つめてから、皇女は、皇后の腕を引っ張った。

『ねぇ、ママ、ホントなの?ホントに、リリちゃんが、お義兄ニィのお嫁さん?』

『らしいわよ?』

『…やったーー!!』

〈ガタガタガタン!ザザッ〉

皇女が、皇后に抱きつくと同時に、映像が乱れた。

「おい!キア!暴れんなよ!」

『ごめんごめん』

映像が戻ると、皇女は、キラキラと、瞳を輝かせた。

『リリちゃん、いくつ?』

「十歳になりました」

『年齢も近い…お義兄サイコー!』

「お前の為じゃねぇから」

『なんでもいいよ。リリちゃんは、お菓子好き?』

「えぇ。好きですよ?」

『じゃ、これ、よかったら食べて?私が作ったの』

通信鏡が光を放つと、焼き立てのクッキーが現れた。

「お前さ~」

〈サクッ〉

「…美味しい~」

クッキーを見つめて、キラキラと、瞳を輝かせながら、リリアンナが、皇女に視線を向けると、アスベルトは、目元を手で覆い、大きなため息をついた。

『でしょでしょ?今日のは、上手く出来たんだよ~』

「これ、木苺?」

『そう。ハナバナのエッセンスとモニラのエッセンスを数滴入れたけど、いい感じでしょ?』

「凄くいい。私もできるかな?」

『リリちゃんなら、すぐ出来るわよ。刺繍も、紐編みも、すぐに出来たんだから』

『そうなの?』

『リリちゃん、ホントに器用で飲み込みが早いのよ。見て、これ』

『…リボンに小花が刺繍してある。凄い』

『ね?紐編みも、ちょっと教えたらこれよ?』

『上手…ねぇ、これ貰ってもいい?』

「えぇ。どうぞ」

『やった!今度、私が作ったらあげるね?』

『そうだ。今度、みんなで一緒に作りましょうか?』

『賛成!リリちゃんは、いつ、ウィルセンに来るの?』

『後で、通面鏡を送ることにしたから』

「…アス、これ、どうするの?」

アスベルトが、テーブルに突っ伏して、頭を抱えると、アルベル公爵とモーガンは、苦笑いを浮かべた。

「こうなったら、もう、どうしようもない」

「僕、そろそろ、本当に帰らないと、まずいんだけど」

「僕だって帰りたいよ。アルベル公、止めてよ」

「こうも矢継ぎ早に話されると、流石に、私でも割り込めない」

「父親でしょうが。娘を止めるのも、親の仕事」

「今のリリを止められるとでも?」

三人が視線を向けても、リリアンナは、映像の皇后と皇女を相手に、キラキラと、瞳を輝かせながら笑っていた。

「どうにかならない?」

「仕方ない。父上に頼んでみるか」

〈カチ…ザザッザーッ〉

『…どうした?』

眼鏡を掛けた皇帝が映ると、アスベルトは、頭を掻いた。

「父上、ちょっと、母上達を止めてくれない?」

『何した』

「キアまで、母上と一緒になっちゃって。お喋りが止まらないんだよ」

『なるほどな』

「それに、母上が、リリに通信鏡の使い方教えたらしくて」

『それで、侍女達が走り回ってたのか』

「もう、僕らじゃ、どうにもならないんだよ」

『仕方ないな。ちょっと待ってろ』

〈ザザッ…ザー…パッチン〉

「すぐに父上が止めてくれると思うから、少し待ってて」

「陛下には、感謝してもしきれない」

「だね。これで帰れるね」

「そうとも言い切れないんだよねぇ」

「なんで?」

『ベラ、いつまで…これは、一体』

『パパ!見て見て!リリちゃんから貰ったの』

『紐編みか…上手く出来てるな』

『あと、これも、リリちゃんの手作りよ?』

『そうか。上手いもんだ。ところで、ベラ、そろそろ』

『パパ、ひど~い。リリちゃん、初めて作ったんだよ?』

『それは』

『キア、ドルは、こうゆうのに興味ないから、仕方ないのよ』

『そうゆう訳じゃ』

『確かにね。私が、一生懸命作ったクッキーも、美味いな。しか言わないもんね』

『それに、私があげたハンカチも、良いねってしか言わなかったのよ?』

『ひど~い。リリちゃんは?どう思う?』

「一生懸命作ったなら、少しは、褒めて欲しいかな」

『ほら~。ちゃんと褒めきゃダメなんだよ?』

『だから、ちゃんと褒めて』

『なんでも、軽くハイハイって感じなのが、イヤなのよ。ねぇ?』

「…皇帝でも、敵わないらしいね」

「仕方ないんだよ。アルベル公なら分かるでしょ」

「痛い程に」

〈サクッ〉

「…あ…美味い…」

モーガンが呟くと、アスベルトは、苦笑いを浮かべながら、ヒョイっと、クッキーを摘んだ。

「なんだかんだ言って、キアの作るお菓子って、美味いんだよね」

〈サクッ〉

『当たり前でしょ?愛情込めて作ってるんだから』

「お前の愛情より、リリの愛情が欲しい」

『アスも、まだまだねぇ。女の愛情が欲しかったら、望みを叶えないと』

『そうだよ。早く、リリちゃんと会わせてよ』

『早く会いたいなら、そろそろお開き』

『私、リリちゃんと喋ったの少しだけなんだけど』

「また話せば良いだけでしょ」

『お義兄は、すぐ側に居るんだからいいじゃん』

『そうよ。なんなら、この通信鏡、リリちゃんにあげてもいいのよ?』

『ベラ、そんなホイホイと』

『そしたら、リリちゃんと、いつでも話せるね?』

「あのさ、一応、通信鏡も、貴重な」

『パパも、お義兄も、ケチだよね~』

『そうね~。私達は、リリちゃんと仲良くしたいのに。通信鏡一つで、文句ばっ』

『あーーもう!アス、その通信鏡は、リリにくれてやれ。あとで、新しいの出してやるから』

「分かった」

「…いいの?」

「仕方ないよ。僕のお古だけど、それで、リリがいいならあげるよ」

「ありがとう」

嬉しそうに通信鏡を見つめるリリアンナを見て、三人は、諦めたように、小さく微笑んだ。

『それと、通面鏡も、お願いね?』

『あれは、そんな簡単に』

『そう。リリちゃんが、頑張って、アルベル公に』

『だーーーもう!アス!』

「持って来たのを設置し直せばいい?」

『すまんな。リリ、とりあえず、しばらくは、アスのお古で我慢してくれ。その内、新しいのを用意して送る』

『やったね。早く会いたいね』

「私も。早く会いたい」

リリアンナの細めた瞳が、キラキラと輝くと、アスベルトは、小さなため息をついた。

「…お嬢様、風も冷たくなってまいりましたので、こちらをどうぞ」

メイドが、リリアンナの肩にブランケットを掛けると、皇女は、瞳を大きく開いた。

『リリちゃん、外にいたの?』

「本日は、お庭のガゼボにて、皆様と、お茶会でしたので」

リリアンナの後ろに侍女が立つと、皇女と皇后は、口元に手を当てた。

『あらやだ。早く言ってくれれば、良かったのにぃ』

『ごめんね?部屋だと思ってたから、つい』

「二人に感謝だね」

リリアンナの後ろで、メイドと侍女が、ニコッと笑うと、モーガンは、皇女に視線を向けた。

「…明るくて可愛い子だね」

「でしょ?」

「でも、ちょっと大変そう」

「それな。うるさいけど、ちゃんと節度は弁えるほうだから」

「これで?」

「ごめん。うそ。正直、ずっと一緒だと疲れる」

「でも、楽しいでしょ?」

「まぁね」

「そうゆうの羨ましいなぁ」

「いる?」

「ちょっと考える」

〈ザザッ〉

『娘はやらんぞ!』

巨大な皇帝の映像が現れ、アスベルトとモーガンが、ビクッと肩を揺らすと、辺りに明るい笑い声が響いた。

『ちょっとパパ!私の婚期遠ざけないでよ!』

『だが、サイフィスは、今』

『それとこれとは話が別よ!私が結婚できなかったらパパのせいね!』

『それは』

「…アルベル公の寛大さが、身に沁みるよ」

アルベル公爵が、ニコッと笑って、カップを傾けると、皇帝は、我に返ったように、ハッと、大きく息を吐いた。

『アルベル公、愚息が、色々と申し訳ない』

「いえ。お気になさらず。ただ、私も親ですので、それなりの抵抗はしますが、宜しいですか?」

『大いに結構。アルベル公が気の済むまでやってくれ』

「ありがとうございます」

アルベル公爵が、ニコッと微笑むのを見て、アスベルトは、ゴクッと喉を鳴らしながら、唾を飲み込んだ。


皆様、そろそろ、お時間でございます。これにて、お開きとさせて頂きたいと思いますが、いかがでしょうか?」

リリアンナの後ろで、執事が、ニコッと笑うと、皇后と皇女も、ニコッと笑った。

『そうね。リリちゃん、今日は楽しかったわ。ありがとう』

『今度は、いっぱい、お話しましょうね?またね~』

「はい。また今度」

手を振る二人に、リリアンナも手を振り返すと、スーッと映像が消え、通信鏡から光が消えた。

〈パチン〉

「ありがとう。アス」

「どういたしまして」

通信鏡を胸に抱いて、嬉しそうに微笑んだリリアンナを見つめて、アスベルトが、髪に触れようとすると、アルベル公爵が、大きな咳払いをした。

「リリ、二人も、お帰りにるから、見送りしようか」

「そうね」

アルベル公爵が立ち上がると、リリアンナは、スッと立ち上がり、その手を自然と繋いだ。

「さぁ、行きましょうか」

アルベル公爵が視線を向けて、得意げな顔をすると、アスベルトは、行き場を失った手に拳を作り、悔しそうに下を向いた。

「アス、我慢、我慢」

「ん、ん。頑張れ、僕」

モーガンに、ポンポンと、背中を軽く叩かれ、歯を食いしばりながら、アスベルトも、立ち上がり、馬車に向かった。

「今日は楽しかったよ。リリアンナは?」

「私も。とても楽しかったです。アスは?」

「僕も。なんやかんやで楽しかったよ」

アスベルトが、ニカッと笑うと、モーガンとリリアンナも、ニコッと笑った。
そんな三人を見つめて、アルベル公爵や執事、侍女やメイド達も、穏やかに微笑んだ。

「今度は、ウィルセンの花園にでも行く?それなりに広いから、あの二人が一緒でも大丈夫だろうし」

「二人って、ローデンとデュラベルのこと?」

「そう」

「二人が一緒だと、僕が疲れるからイヤだ」

「…ガン、変わり過ぎじゃない?」

「これが、本当の僕なの」

胸を張って得意げに、ニカッと笑うモーガンに、リリアンナとアスベルトが、クスッと笑うと、周りからも、クスクスと笑い声が溢れた。

「まぁいいや。それじゃ、また今度ね?準備出来たら、また来るよ」

「そしたら、僕も呼んでね?」

「どうかな」

「アスが呼ばないなら、私が呼ぶので」

「え~、せっかくのデートが」

「僕がいれば、アルベル公も、簡単に許してくれるよ?」

「その時は頼むよ」

「任せて。じゃね。リリアンナ」

「またね。リリ」

「二人とも、またね」

馬車に乗り込み、ニコッと笑うリリアンナが手を振ると、二人も手を振った。

「…アスの恋路は、前途多難だね」

「仕方ないさ。男の最大の敵は、父親らしいからな」

「分かる気がする。アルベル公も、ドルト陛下も、一筋縄ではいかない感じする」

「それを超えて、好きな子と結ばれるってのも、いいんじゃない?」

「確かにね。ところで、キアナ皇女って、養女だよね?」

「そうだよ?もうないけど、ヴァリンパって小国の公爵子息と叔母上の子」

「ヴァリンパって、薬師と聖者の?」

「そう」

「なるほど…ヴァリンパの公爵子息とルアンダの公爵令嬢の子…母上に話しても問題ないか…」

「お。本気?」

指で唇を撫でていたモーガンが、真っ赤になって、視線を泳がせると、アスベルトは、嬉しそうに瞳を細めた。

「お互い、助け合って頑張ろうな?」

「ありがとう…まずは、エルテル公を味方しようか」

「だね。だけど、タラス公のほうが、色々、聞いてくれそうだよね?」

「なら、アスはタラス公、僕はエルテル公で、どうかな?」

「よし。それでいこう」

二人は、しっかりと握手を交わして、力強く頷き合った。

「ところで、ガンって、魔法使える?」

「少しなら」

「剣は?」

「ちょっと」

視線を泳がせながら、ポリポリと、頬を掻いたモーガンを見て、アスベルトは、額に触れた。

「ガン、先に、そっちだわ」

「だよね~」

「運動苦手?」

「いや?そんな苦手でもないんだけど」

「…なんかあった?」

アスベルトが、ジーッと見つめると、モーガンは、困ったように、鼻から、フーっと息を吐き出した。

「アスって、凄いよね」

「何が?」

「ちょっと話しただけで、色んなことが分かるでしょ?」

「色んなって、ただ直感みたいなもんだから、何かあったとしか分かんないし」

「それでも、分かるんだから凄いよ。どうしたら、そんな風にできるの?」

「色んな人と話す。身分とか、仕事とか、性別も年齢も関係なく、とにかく、沢山の人と話してみる。そしたら、なんとなく、こうゆうときは、何かあるなって分かるようになるよ」

「アスは、どんな人達と話したの?」

「メイド、侍女、執事、庭師、料理人、騎士、魔法使い、薬師、調香師、絵師。とりあえず、その辺にいる人達と話したね」

「よく、陛下や殿下に怒られなかったね?」

「なんで?」

「なんでって、僕は、使用人と話すと、父上や母上に怒られてたから」

「あ~なるほど。威厳の為ってとこかな?」

「そう。王族としての威厳」

「まず、威厳の使い方が違うね。父上と神殿のこと話したとき、どうだった?」

「あれは凄いね。自然と膝着いちゃったよ」

「あれが本当の威厳。リリや僕と話してるときは?」

「普通に、カッコいいなぁって」

「でしょ?それに、僕だって、アルベル公の執事と話してたし、母上だって、侍女と話してたでしょ?」

「…そっか。要は、何かをしようとするときに、きちんとできればいいんだね?」

「そう。例えば、僕が、お茶会でやったことは、序列を乱そうとしたやつを皇太子が否めた。つまり、皇太子としての地位を使って、公爵令嬢を陥れた令嬢を諌める為に、親である候爵を引っ張り出したんだよ」

「そこで、国王は、皇太子を抑えることで、周りの貴族達に王としての威厳を見せた」

「まぁ、僕だけを抑えた状態だから、貴族達からすれば、自分達は、国王に守られてるって思うだろうけど」

「…自国の貴族を抑えるなら、アスだけじゃなく、リリアンナを馬鹿にした候爵令嬢達の親にも、圧を加えないといけなかった」

モーガンが、唇を撫でていた指を止めて、視線を向けると、アスベルトは、ニヤッと片頬を引き上げて笑った。

「やればできるじゃん」

「…ねぇ、アス、明日って時間ある?」

「明日?まぁ、あるにはあるけど」

「じゃ、迎えに行くから、ちょっと付き合ってよ」

「どこに?」

「それは、明日のお楽しみで」

モーガンがニコッと笑い、アスベルトが、不思議そうに首を傾げると、馬車が停まった。

「じゃ、また明日ね」

「あ、あぁ。じゃね」

手を振りながら、モーガンが、城内に走って行くのを見送り、馬車は、離宮に向けて走り出した。

「お帰りなさいませ。モーガン王子殿下」

「父上は?」

「国王陛下でしたら、書斎にいらっしゃいます」

頭を下げる執事を横目に、真っ直ぐ自室に向かっていたが、モーガンは、向きを変えて、書斎に足を向けて、立ち止まった。

「…いつも、ありがとう。これからも、よろしくね」

執事は、一瞬、驚いたように、瞳を大きく開いたが、優しく細めて、書斎に向かったモーガンの背中に頭を下げた。

〈コンコン〉

「誰だ」

「モーガンです。国王陛下」

「あぁ。入りなさい」

〈ガチャ、パタン〉

モーガンが中に入ると、国王は、机に向かって、書類を広げていた。

「国王陛下。お話したいことがあります」

「なんだ」

「リリアンナとの婚約を考え直して頂けませんか」

「何故だ」

「確かに、公爵令嬢との婚約は、王家にとって、有益だと思いますが、現在、公爵以下の貴族、特に、ターサナ候爵達に怪しい動きがあります。今、リリアンナの婚約が広まれば、サイフィス国の中心核である、三大公爵の勢力が傾く可能性があります」

「だから、婚約を考え直せと?」

「はい。一時的に、婚約を保留とすれば、ターサナ候爵他、様々な貴族達が行動を起こすでしょう」

「それを利用して、画策している貴族達を一掃するつもりか?」

「はい。そうすれば、サイフィス国は」

「モーガン、国とは、貴族が居なければ成り立たぬのだ。一掃すれば、それこそ、均衡が崩れ、我ら王家は」

「ウィルセン帝国、キアナ皇女との縁談と、変えることはできませんか」

国王の片眉が、ピクッと動くのを見つめ、モーガンは、グッと唇に力を入れた。

「キアナ皇女との縁談が出れば、帝国と友好関係であると、隣国に示すこともでき、王家としても、貴族達の画策を一掃しても、威厳を保つことができます」

「皇女を通して、帝国が、サイフィスに介入する可能」

「介入前に条約を結べれば、サイフィスの国政が、揺るがされることはないはずです」

「条約を結べなければ、介入されるやも」

「婚約状態であれば、深くは、介入できないはずです。更に、婚約状態を続けていれば、ウィルセンとの繋がりが保たれ、隣国の侵略や侵入も阻止できます」

黙った国王が、顎を撫でるのを見つめ、モーガンは、拳を握っていた手に力を入れた。

「…分かった。但し、リリアンナとの婚約を保留とするだけだ。その後は、ウィルセンの出方を見てから決めるとする」

「ありがとうございます」

「話は、それだけか?」

「はい」

「ならば、部屋に戻りなさい」

「はい。失礼致します」

〈ガチャパタン〉

自室に向かって歩きながら、モーガンは、小さく、ガッツポーズをすると、満たされたように、晴れやかな顔で、離宮がある方に視線を向けた。

〈…ウォーン〉

離宮での食事を終えてから、通面鏡を通り抜け、自室に戻ったアスベルトは、机に向かい、書類を確認し始めた。

〈バタン!〉

「お義兄!」

「っ!キーアー!ノックしろ!」

机に額を付け、胸を触れたアスベルトが、勢い良く、起き上がりながら振り向くと、皇女が、扉の前で、腰に手を当てて、仁王立ちしていた。

「そんなことより、リリちゃんのこと、ちゃんとやってくれるんだよね?」

「やるよ。やるから、あっち」

「いつやってくれるの?私、早くリリちゃんと会いたいんだけど」

「分かったから、あっち行ってろよ。仕事中」

「キアを邪険に扱ったら、リリちゃんに嫌われるわよ?」

扉に寄り掛かる皇后に、アスベルトは、大きなため息をついた。

「リリちゃん、年の近い友達居ないんでしょ?キアと仲良くしたそうだったもの」

「私も、リリちゃんと仲良くなりたいし、一緒に、お菓子作ったり、紐編みしたり、刺繍したりしたい」

「リリちゃん、お花が好きらしいから、庭園でピクニックも良いわね」

「楽しそう。ねぇ、お義兄~」

「わーったよ!この仕事終わったら、すぐ設置するから」

「いつ?いつ終わんの?」

「お前が、邪魔しなきゃ、ニ、三日で終わるよ」

「そしたら、五日後で良いんじゃない?」

「そうだね。んじゃ、お義兄、リリちゃんにも、それで約束しとくね~」

「はぁ!?おま!待て!キアナ!」

〈バタン〉

〈ゴン〉

机に額を打ち付けたアスベルトを見て、皇后は、クスクス笑った。

「遅れたら、きっと、リリちゃんも、残念がるわね?未来のお嫁さんの為に頑張るのよ?アス」

「母上!そんな」

〈パタン〉

「…だぁーーーー!!もう!!」

アスベルトは、頭を掻きむしりながら、絶叫するように声を出すと、書類を睨み付けた。

「っとにもう!!」

机に向かって、書類を確認しながら、頭を掻くアスベルトの背中を扉の隙間から見て、皇后と皇女は、クククッと喉を鳴らすように、小さく笑って、それぞれ自室に戻った。

〈…ウォーン〉

外が明るくなり始め、アスベルトは、フラフラと通面鏡を通り、離宮に戻ると、ベットに倒れ込んだ。

〈コンコン〉

「アス~。迎えに来たよ~」

〈…ガチャ〉

「アス?」

モーガンが、ヒョコッと顔を出すと、アスベルトは、静かに瞳を閉じた。

「ガン、少しだけ、寝かせて、僕、死ぬ」

瞳を閉じたまま、ボソボソと呟くアスベルトに近付き、ベットの横に屈むと、モーガンは、その顔を覗き込んだ。

「徹夜?」

アスベルトが、黙って、コクコクと頷くと、モーガンは、苦笑いを浮かべた。

「分かった」

アスベルトが、スースーッと静かな寝息を発て始めたのを見つめて、モーガンは、優しく瞳を細めた。

「…おやすみ」

モーガンが、開けっ放しのカーテンを締めようと、静かに、窓に向かったが、途中で立ち止まった。

「…でっか」

ベットと同じくらいの鏡を見上げて、モーガンが呟くと、上の方にある赤い石が、チカチカと点滅し始めた。

「…アス。アス、起きて。アス!」

「ん~…もうちょっと…」

「鏡が光って」

〈…ウォーン〉

モーガンが、急いで、アスを揺すり起こすと、白髪混じりの男性が、鏡から抜け出てきた。

「坊っちゃん、お時間でござ」

頭を下げて、顔を上げた男性とモーガンの視線がぶつかり合い、互いに、ピタッっと動きを止めた。

「…坊っちゃんに、何か」

「ロム、やめろ」

男性に、手のひらを見せながら、ムクッと起き上がったアスベルトが、乱暴に頭を掻いた。

「彼はモーガン。サイフィスの王子で、僕の友人だ。ガン、彼は、皇室に仕える執事だから、怖がらなくてもいいよ」

「して?そのご友人様が、何用で?」

「その…僕…」

「出掛ける約束してたんだ。てか、坊っちゃんって呼ばないで。もう、そんな年じゃないんだから」

アスベルトが、ベットから降りると、モーガンは、ベットに座って、二人の様子を見つめた。

「私共にとって、坊っちゃんは、いくつになっても、坊っちゃんでございます」

〈バシャ…バシャ〉

アスベルトが顔を洗うと、執事が、タオルを差し出した。

「…一体、いくつになったら、やめてくれんの?」

「そうですねぇ。坊っちゃんに、お子様が、お生まれになれば。でございますかね」

「…は?僕、結婚しても坊っちゃんって呼ばれんの?」

「ドルト様も、坊っちゃんが、お生まれになるまで、坊っちゃんでしたからね」

「父上も?」

「さようでございます。坊っちゃんが、お生まれになった時、ドルト様は、それはそれは、喜ばれておりました」

「なんとなく分かるかも…ガン?どうした?」

顔を拭きながら、鏡越しに、ニコニコと笑っているモーガンを見つめて、アスベルトは、不思議そうに首を傾げた。

「なんかいいなぁって」

「どこが。王室にだって、古くからいる使用人くらい、いるでしょ?」

「いるよ?でも、みんな、黙々と仕事をするだけで、父上の話なんてしないよ」

「それは、お寂しゅうございますね」

「そう、だね…凄く寂しい」

モーガンが寂しそうに、瞳を細めるのを見つめて、執事とアスベルトは、悲しそうに瞳を細めた。

「でも、お茶会の時に、エルテル公から、ちょっとだけ、話を聞いたんだ。父上と、三大公爵は、僕とローデンとデュラベルみたいだったって」

ニコッと笑ったモーガンを見て、二人も、優しく瞳を細めて、ニコッと笑った。
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